426話

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*第426話:彷徨う羊の行く先は  ――人はみな彷徨える羊   己の行く末さえ知らず 道無き荒野に放られた 俺はふらふらと歩いていた。 一人でもセフィロスを倒しに行くか。 リノア達を探して、事情を話して合流するか。 どうすればいいのか、決められずに。 ――実際に剣を交えた今ならわかる。 いくら重傷を負っていようが、セフィロスは決して一人で勝ちきれる相手ではない。 負けが許されないことを考えると、やはり迂闊に追いかける気にはなれない。 だが……リュカ達を見つけて、追いつけたとして、果たして力を貸してくれるだろうか? 二人からすれば、自分は裏切り者同然だ。 なにせ、子供や仲間の仇であるクジャを助けろと懇願したのだから。 そんな相手を、再び仲間として受け入れてくれるものだろうか。 それに探しても見つけられなければ、相手に回復する時間を与えてしまうことになる。 今という最大最高の好機を逃してしまったら、二度と勝機を見出せなくなるかもしれない。 悩んで悩んで、悩みぬいた。 それでもやっぱり道を見出す事はできなくて、仕方なしに歩くことにした。 とりあえず移動していれば、セフィロスなり、リュカ達なり、俺の知らないヤツなり…… 誰かしらに出会えるだろうと考えて。 そうして、見つけた相手次第で、自分の出方を決めようと思って。  ――見果てぬ地を探し 閉ざされた門の前を彷徨う   哀れな羊よ その身体 安らぐ時は訪れず その六人組を見かけたのは、太陽が大分傾いてきた頃のことだ。 格闘家っぽい金髪の男と、髪を切ったダガーにちょっとだけ似た女性と、酒場でシェーカー振ってそうなオッサンと、 絵筆を持った子供と、似合わないバンダナを巻いた剣士と、背の高い白魔道士。 そのうち最初のヤツが、リノアの言っていた『仲間』と似ているように思えた。 『こーんなツンツンのトサカ頭で、顔にペイントしてるの。  身長はわたしよりちょっと高いぐらいかな。男の子にしたらちっちゃいよね』 名前は確か、ゼル……だったか。 着ている上着と帽子こそ、参加者リストや攻略本に載っていた写真とは違っていたけど、他の特徴は完璧に一致する。 俺は声を掛けようと、六人に近づいた。 だが、目的を果たす事はできなかった。 彼らの傍に作られた土の山を見てしまったせいで。 彼らの会話が聞こえてきたせいで――俺の足は、止まってしまった。 「……早く、サスーンへ……リノアの仇を……」 その言葉の意味を理解するまでに、数分を要した。 受け入れるには、もっと長い時間が掛かった。 俺が我に返った時には、六人組はとっくの昔にサスーンの方へ歩き出していた。 声を掛けて事情を聞き出す勇気は、俺にはなかった。 木陰の影で立ち竦んだまま、六人組の後ろ姿を見送った。 それでもやっぱり信じたくなくて、否定する材料がほしくて。 連中が去った後、俺は大急ぎで盛られた土を掘り返し始めた。  ――人の愛を求め 夢なき眠りの中を彷徨う   哀れな羊よ その魂 癒される事は決して無く 出てきたのは、あまりにも予想通りで、想像だにしていなかった代物だった。 一体どこのどいつが想像できるっていうんだ? たった半日前まで自分の隣を歩いていた相手が。談笑してた相手が。 上半身を蜂の巣のように撃ち抜かれ、首を切り落とされた無残な姿で、土の中に横たわってるなんて。 しばらくの間、俺はリノアの遺体を見つめていた。 そうしているうちに、自分の心に黒い何かが沸き起こるのを感じた。 絶望なのか、無力感とでも言えばいいのか。 虚ろな何かが、覚悟や決意や正義感といったもの全てを飲み込む暗闇が、心に広がっていくのを感じた。 どれほどの時間、呆然と突っ立っていたのかは、自分でもわからない。 やがて俺はリノアを埋め直し、その場を後にした。 やらなきゃいけない事があると頭は告げる。 リノアの仇を探す、姿の見えないリュカを探す、セフィロスを倒しに行く。 どれか一つでも――いいや、その全てを成し遂げなければならないのだと告げる。 でも、心が動いてくれない。 真っ黒に塗り潰されたようで、ぽっかりと穴を開けられたようで、気力が沸いてこない。 どこへ向かうべきなのか、何を考えればいいのかさえもわからない。 それでも、身体は勝手に歩き続けた。 行く宛てもないのに、歩き続けた。  ――時が流れている限り この世の全ては移ろい行くか   哀れな羊よ その心も 行く道すらも定まらぬ そうして、空が赤らんできた頃だ。 ふと、遠くに人影が見えた。 どこか見覚えのある気がする、緑の帽子を被った、自分と同年代の男。 俺としては声を掛ける気力なんて無かったけど、今回は相手の方も俺に気付いた。 「……あ、こんにちは」 ひどく青白い顔をしたそいつは、右手を剣の束に当てて、俺を見据えながら言った。 警戒しているんだか呑気なんだかわからない挨拶に面食らいながらも、俺は何となく会釈を返した。 こんなことをしている時間は無いんだと、頭の中で繰り返しながら。 何もしたくない、立ち話すらも面倒だと、内心で呟きながら。 「……あの……一つ聞いておくけど、殺し合いに乗ってるってことはないよね?」 男の言葉に、俺は呆れ帰る。 乗ってる人間が『ハイ乗ってます』と答えてくれるとでも思っているのだろうか。クジャなら言うかも知れないが。 「乗ってねーよって答えたら、あんたは信じるのか?」 「態度にもよるね……笑顔で肯定してたら疑ってた。  君みたいに、マリベル並にビシビシ言ってくる人は信じるかな。  ま、本当に殺し合いに乗ってる人は、最初から僕に付き合ったりしないだろうけど……」 「マリ……ベル?」 俺は引っ掛かるものを感じて、まじまじとそいつの顔を見た。 そして、記憶の中から、キーファの言葉と参加者リストの一ページを引き出す。 『俺の友達なんだけど、どっかズレてるヤツでさ。  会話もワンテンポ遅れるし、ボケたこと言うしで、マリベルにしょっちゅうどつかれて……』 そうだ。間違いない。こいつの名前は確か―― 「あんた、もしかして、フィンか?」 俺の言葉を肯定するように、そいつは大きく目を見開いた。  ――来た道行く道どちらも知らず お前は何を目指すのか   哀れな羊よ その道を 示す光はどこにある クジャ。俺の兄貴が殺してしまったキーファの仲間。 そいつが目の前にいるという事実が、止まりかけていた俺の心を動かした。 気がつけば、俺は今までのことを一気にまくし立てていた。 城の中で、キーファとリノアの三人で話したことを。 キーファの最期を、キーファを殺したクジャの最期を、クジャを殺したセフィロスのことを。 サイファー達のことを、リュカとリノアのことを、思いついたこと全てを手当たり次第に話した。 そうして何もかも話し終えた後。 フィンは俯いて、疲れたように呟いた。 「そうか……それじゃあ、アレはただの夢だったのかな……」 「夢って?」 俺が聞き返すと、フィンは何度か鼻をこすりながら話し始めた。 アルカートってヤツと一緒にいた時に、殺し合いに乗ったギルダーって男に襲われたってこと。 ドーガという老魔道士と一緒に、ギルダーを追いかけたこと。 けれど追いつけずに、この世界まで来てしまったこと。 湖に潜んでいた巨大な魔物に、ドーガを殺されてしまったこと。 そして、夢なのか現実なのかわからないけれど、誰かが囁いた言葉―― 『リュカと、リュカの娘でギルダーの仲間のタバサが、魔物を操って何人もの人を殺している』 昨日の俺なら「そんなことあるわけねえよ、ただの夢だろ」と笑い飛ばせただろう。 でも、今の俺にはできなかった。 全身を銃で撃ちぬかれたリノアを見た、今の俺には。 リノアは殺された。銃で殺された。 だが、リノアは主催者と同じ『魔女』だ。並みの相手に呆気なく殺されるようなタマじゃない。 ――その、リノアを、呆気なく殺せるとすれば……例えば、仲間に、急に襲われたとしたら……? 人の心なんて、何かの切っ掛けで簡単に転んでしまう。 クジャのように、あるいは俺自身のように、固い決意でも変わってしまう。 ――だから、例えば、息子の仇を救ってしまった自分を許せなかったとしたら? ――例えば、そんな罪悪感を抱いた状態で、殺人者になった娘や娘と一緒にいる殺人者と出会ったとしたら? ――例えば、大切な娘の為といって唆されたりすれば? 俺は心の中で否定する。(そして頭が反論する) リュカはそんな人間じゃない。(だが、銃を持っていることは事実だ) リノアは首を切り落とされていた。リュカもリノアも剣なんか持っていない、だから違う。 (アリアハンにあった死体と同じで、通りがかったヤツが首輪を取るために後でやったのかもしれない) だいたい、リュカは自分の家族の仇すら見逃してくれたんだ。そんな彼がリノアを裏切るはずが無い。 (殺人者が改心するなら、その逆だって有り得るだろう?) リュカは自分やクジャとは違うんだ。リュカに限って、そんなことはない。 (本当に? あのサイファーだって、一度はアルティミシアの手下になったりしてたって言うじゃないか) (弱みにつけこまれたら? 娘の命を盾にされたら? 魔女の意志に屈してしまったら?) (可能性は0じゃない。完全否定なんてできない――) 「僕、西の城に行くつもりなんだ」 唐突に響いたフィンの声が、葛藤し続けていた俺を正気に引き戻した。 「水に濡れたまま寝ちゃったから、ちょっと風邪っぽくて……少し休みたいんだ。  その、セフィロスって奴は許せないけど……今の体調じゃ、足手まといにしかならないからね」 ……当然の話だろう。 俺としても、鼻水垂らしてフラフラしてるようなヤツを、セフィロスとの戦いに連れて行く気なんかない。 けれども、俺は立ち去ろうとしているフィンを呼び止めた。 「なぁ。城って、サスーンに行くのか?」 「うん……そうだよ。そこが一番近そうだから」 フィンは首を傾げながらも答える。 俺はやっぱり迷ったけれど、今回はすぐに決断できた。 「なら、一緒に行かせてくれないか。  セフィロスを倒す前に、確かめたいことがあるんだ」 リノアの墓の傍にいた六人組が言っていた。 「早くサスーンへ」と。そして、「リノアの仇を」と。 その言葉とあの連中を信じるなら……サスーンに行けば、真実をつかめるはずだ。 誰がリノアを殺したのか、リュカを信じていいのか、はっきりするはずだ。 「いいのかい? 相手を倒すチャンスなんだろ? 逃したら後悔するのは君じゃないか?」 「いくらセフィロスが強いたって、半日やそこらで立ち直れっこないさ。  俺達だって結界と回復魔法使いまくって、丸一晩かけて、やっと6割回復したって程度だったんだぜ?  それにどの道、俺一人で勝ちきれる相手じゃないしな。  城に行けばリノアの仲間にも追いつけるだろうし、声を掛ければ協力してくれるかもしれないだろ」 こんな理屈、殆ど自分に言い聞かせてるようなもんだ。 本当は、リュカへの疑いをどうにかして晴らしたいだけなのに。 けど、それでもフィンは俺の言葉に納得したようだった。 「……そっか……うん、わかったよ。  よろしく、ジタン」  ――人はみな彷徨える羊   行く手に待つものさえ知らぬ 果て無き荒野の迷い子よ―― 【ジタン(左肩軽傷)  所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス  第一行動方針:サスーンに向かい、真相を確かめる  第二行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す  基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】 【フィン(風邪) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい  第一行動方針:サスーンへ向かい身体を休める  第二行動方針:ギルダーを探し、止める。  基本行動方針:仲間を探す】 【現在位置:カズス北西の森・北東部→サスーン城】

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