211話

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*第211話:分裂の代償 アリアハンの鳴動が図書館に届く少し前のことである。 「おいおい、こんな物もあるんだってよ…」 ジタンが本の一頁を指差し、キーファとリノアに見せた。 「分裂の壷…この壷は、入れられた対象の物質的性質をそのままコピーし複製を作り出す…」 「つまりどういうことだよ」 キーファが頭をボサボサ掻いて言った。 「つまり、アイテムをコピーするって事?一つのアイテムを二つに…」 リノアが口を挟んだ。 「多分そうだろうな」 「じゃぁ、キューソネコカミとか言う武器をそれで二つにすれば、いや、無限に増やせるじゃないか!」 「無理だな。一個の壷では限度があるし、入れたものは割らないと取り出せないらしいぜ」 一瞬で気落ちするキーファを尻目に、リノアは別の質問をした。 「分裂の壷なのに、分裂するんじゃなくてコピーするの?」 「あぁ…ここには、オリジナルとコピーの見分けがつかない為に分裂と呼んでも構わないから…と書いてある」 それを聞くと、リノアはもう一つ気になる事を聞いてみた。 「ねぇ、それって…人間もコピーできる?」 「さぁ…書いてないしなぁ…」 ジタンは少し腕組みをして考え、こう結論付けた。 「無理だと思うな。物質的性質をコピーするって書いてあるだけだから、このアツ~いハートまではコピーできないと思うな」 自分の心臓を指差し、ニヤリと笑った。 「もしコピーできても、きっとそれは…ハートが未完成だと思うぜ?」 「まさか、自分を分裂させようとか思う人はいないだろうけどな」 キーファの一言に、頷く3人だった。勿論、本当に自分を分裂させた人がいるなどと知らずに。 そして、直後に彼らを襲った爆音と振動によって、彼らはそれをすっかりと忘れることになった。 ――それは突然の出来事だった。 クリムトは死亡者通知を一通り話した後、二人のアリーナと向かい合うように座った。 膝を抱え泣く二人のアリーナを見て、少し気を許した瞬間だった。 片方の――クリムトから見て右側だったと事以外もう一人と何の違いも無かった――アリーナが、いきなり顔を上げた。 そして、一瞬の間に彼女は立ち上がり、彼女の指は目の前に座っていたクリムトの両目を抉っていた。 「ぐ…がっ!」 「ちょ、ちょっと何すんの!」 クリムトの呻きともう一人のアリーナの声が重なった。 「何…何って、決まってるじゃない。生き残るために殺すの」 アリーナの声で、アリーナらしからぬ台詞を彼女は吐いた。 アリーナは(便宜上こちらを以降アリーナ2と呼ぶことにする)クリムトの目から指を勢いよく引き抜く。 ぼたぼたと滴り落ちる血とその中に落ちた眼球、倒れ顔を手で押さえて呻くクリムトを一瞥しアリーナ2はアリーナに対し話を続ける。 「あなたも一緒に闘わない?あたし達が力をあわせれば絶対にこのゲームに勝ち残れるよ」 「ちょ、ちょっと待ってよ!」 自分の分身であるはずの彼女の凶行に、まだ思考がついていかない。 「決断はお早めにね」 ケラケラと、アリーナ2は笑って見せた。 「さっきまであたしと同じようにしていたのに…!」 思わず本音が出た。自分と同じ様に動いてくれる分身だと思っていたのに、という本音が。 「あのねぇ。相手の隙を作ってそこを狙うって、基本中の基本じゃない」 狂ってる、とアリーナは思った。 これは自分の分身。それでも、まるで自分とは違う人物のよう。信じられなかった。 ――ジタン曰く、ハートが未完成。 そして、分裂の壷が生物には向いていない事をこのとき初めて悟った。 「あたしはゲームになんか乗らないわよ!」 「わからないの?あたしとあなたが力をあわせればこのゲームに勝て…」 「冗談じゃないわよ!」 思わず声が裏返った。怒りで、自分への怒りで、今、一杯だ。 「あなたはあたしの分身だけど、あたしじゃない!今ここであたしと勝負して!」 「嫌よ。あたしは勝ちたい。勝ち残りたいの」 アリーナ2は当然とでも言うように胸を張って言う。 アリーナの声で、彼女らしくない冷静な声。 癪に障る言い回し。 「あなたに正義は無いの…!?」 「…あたしの正義は、勝利を得ること」 アリーナ2はまた高らかに笑って見せると、アリーナに背中を向けた。 「あなたに勝つ気が無いなら、あたし一人で他の奴ら片付けてくる。甘い考えに付き合っている暇は無いの」 言うなり、アリーナ2は走り出した。 クリムトに止めを刺す事無く、アリーナらしからぬ高笑いを響かせて。 運が良ければ最後に闘うことになるかもね、という捨て台詞すら吐いて。 「…何と言うことだ…ッ」 クリムトが、ようやく上半身を起こした。 「あっ…大丈夫!?」 アリーナが駆け寄る。 「う、む…眼をやられた…これでは動き回ることは出来まい…」 クリムトは二、三言呟き回復の呪文を自らにかける。 何度か繰り返すうちに血は止まったが、眼が見えるようになる訳ではない。 表情を――といっても眼が無いのだからそれはかなり制限されたものだったが――歪めたクリムトを見て、アリーナは決意した。 自分の罪は自分が償わなくてはいけないと。 しかし今は、この人の身を守らなくてはならないと。 闇の奥に消えた自身の分身を思い、深く溜息をついた。 【アリーナ 所持品:なし  第一行動方針:クリムトの安全確保 第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】 【クリムト(両目重傷、失明) 所持品:力の杖、プロテクトリング  第一行動方針:不明 最終行動方針:ゲーム脱出】 【現在位置(共通):レーべ南東の山岳地帯近くの、南の森】 【アリーナ2(分身) 所持品:なし  第一行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない  最終行動方針:勝利する】 【現在位置:レーベ南東の山岳地帯近くの、南の森から移動中】

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