110話

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*第110話:騎士の誇り アレフとわたぼうは、その洞窟から出ることをまず第一前提にした。 アレフのレミーラで洞窟の中はサクサクと探索することが出来た。 「…リレミトを使うことが出来れば良いのだが……どうも効き目がないようだ」 先ほどからレミーラとは違う呪文を口にしていたアレフがそう言う。リレミトが効かないと分かった彼は長年の冒険の勘から階段をスムーズに見つけていった。 一階にやっとついたときだった、わたぼうと二手に分かれ入り口を探していた。 アレフの視界になにやら人影が見えるのだ。レミーラの先をその人影に当てると…。 「うわぁっ!」 パイナップル頭の少女がアレフの視界に映る。その少女は光を向けられた後、ナイフを構えて此方を睨みつけている。 (――まずいな…完全に警戒されてるぜ?) アレフは…彼女はどうすれば警戒を解いてくれるか?まずそれを考えていた。 (―剣を捨てる…これが一番だが襲い掛かられたらとんでもない。  両手を上げる…これも良いが相手には微妙に分からない。  一か罰か、剣を捨ててみるか。) すると、カランコロンという音と共に、シルバーメタルの光沢が目立つ剣が地に転がる。 彼女は一瞬訝しげに剣を見たが、まだ警戒を解いてくれない。 「おーい、こっちに戦う気はないから。罪もない人斬るなんてサラサラ御免だぜ?」 アレフがゆっくりと両手を掲げて前へ出る、それを見て少女もやっと構えを解く。 「よかったぁ、アタシ速攻で襲われちゃうかと思ってたもん」 少女は気さくにアレフに話し掛けてくる、引き締まっていた空気が急に緩む。 「そうそう、良かったら一緒に行動しない?一人より二人だし、そいでチョイチョイっとあのオバハンをやっつけちゃおうよ!」 アレフは頭をポリポリと掻いた後、名前ともう一つの名前を言った。 「俺は…アレフ、それと………おーい!わたぼーう!!」 洞窟に声が響く、響く声と共にわたぼうが出てくる。 「アレフ!階段が見つか…ってこの人は?」 いきなり現れた謎の物体に、再度警戒の構えを取る少女、しまったという表情を隠せないアレフ。 また説明かよ…説明は苦手なんだぜ?と頭の中だけにその言葉をしまいこみ、少女にわたぼうの説明をした。 理解してもらえるのに、数十分掛った。 「――オッケー、そうそうアタシはリュック。伝説のガード…って言っても分からないか。  とりあえず、すんごい役割やってたんだ」 どこがどう凄いのか、世界の違う一人と一匹には理解しようがない。 「わたぼうはさっき説明したとうり、タイジュって国の精霊。  俺はラタドームのローラ姫に仕える剣士、アレフ」 と、さらりと自己紹介を済ませる二人と一匹。 「で?わたぼう、出口…いや入り口はどっちだって?」 わたぼうは頷くと、二人を誘導し始めた。 入り口に差し掛かったときぐらいだった。 ズッドドドドドドドドォォォン!! ものすごい地響き、洞窟内が強烈に揺れる。 「俺に掴まれ!転がってくる岩は何とかする!」 アレフが叫ぶ、リュックとわたぼうが咄嗟にアレフにしがみつく。 転がってくる小さな小石や岩を、両足が動かない状況でも華麗に後ろへ流していくのは流石というべきだろう。 地震が収まった、もしかするとこれは…二人と一匹は外へと急いで駆けた。 「生贄共よ…最初の日はどうであったか?」 魔女の声がする、リュックはその放送を拳に力を入れ、アレフは歯をギリリ鳴らし聞く。 …放送のあとに、一律の沈黙が訪れる。二人も、一匹も、悲しい表情で下を俯いたままだった。 最初に口を開いたのは、リュックだった。 「アーロン…あんな強かったアーロンが…」 それに続いて、わたぼうも口を開く。 「イル…いいマスターだったのに…どうして…」 しかし、二人は呟いたあとに気がついた、アレフが、涙を流していることを。 何も語らなかったが、今の放送にはローラという名前が有った…使えるべき姫を失ったのだ。 「なぁ………わたぼう、リュック。  俺は…剣士失格だな」 唐突に、アレフが口を開く。それは悲劇の始まりだった。 えっ?と二人がアレフに顔を向けたときだった。 ズブリ、と肉の切れる嫌な音がする。アレフが、自ら剣で心臓を突き刺していたのだ。 「バ、バカッ!何やってんの!!」 リュックがその剣を引き抜こうとするが、アレフの力はそれを上回っている。 ゲホッ、ゲホッと血を吐きながらアレフは二人へ向けた。最後のメッセージを。 「…仕えるべき人は……此処には居ない…ゲホッ…なら居るところ……まで俺がついていく。  それだけの……話さ、何も泣くこたぁ…ねぇ……ぜ……ガハッ!」 黒い血塊がアレフの足元に落ちる。リュックもわたぼうも、剣を引き抜こうとするがやはり抜けない。 剣からも、綺麗な赤色の液体が、滴り落ちていた。 「そうだ…俺の袋にあった……謎のこの玉、だれか使える人を…探してくれないか?……ガハッ…ああ、やべぇ……そろそろ行くわ、俺」 じゃあな、と小さく言い残し。瞼を閉じた。 「うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」 リュックは叫んだ、目の前の人物が死んだことに対し。 わたぼうは涙を流した、自分が、何も出来なかったことに対し。 その悲痛な叫びは、洞窟の奥深くまで…響いた。何度も、何度も。だが、アレフは帰ってこない。 彼は姫の元へ逝くと言う、最後の道を選んだのだ。彼は天国で、きっとローラに仕えローラを守るのだろう。 そう考えると、余計に涙が流れた。 アレフが死んでから数十分立つ、簡単な埋葬が終わったとはいえ、やはり重い悲しみが残る。 ふと、リュックは気がついた、アレフが最後に握っていた玉。アレはドレススフィア? 知らずの内に握っていたそれを使い、彼女はドレスチェンジを始めた。 そのドレススフィアは…見たことも無い…未知の服。ただ伝わるのは聖なる剣士のオーラと力、アレフにそっくりの。 リュックはアレフのことを思い出し…そして、もう一度泣いた。 アレフの持っていた剣が、輝いていたような気がしたのは、気のせいだったのだろうか。 【リュック(パラディン)   所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣 ドレスフィア(パラディン)  わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ  第一行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】 【現在位置:いざないの洞窟入り口】 【アレフ 死亡】 【残り 106名】

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