417話

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*第417話:止まらぬ想い 『まぁいい、早くテリーを追おう。  混乱してるみたいだし、僕らで保護してあげないと……』 ラムザはアンジェロにそう促して移動しようとしたが、 肝心のテリーがどちらの方向にいったのか分からない。 「ねえ、君の鼻でテリーの居場所を探せないかい?」 『駄目だわ。さっきの落雷の影響であたり一面に木や地面が焦げる臭いが充満しているの。  しばらく待つか、もう少しここから離れないと……』 「そうか……あんまり長居はしたくないんだけど」 悩むラムザ。ふと視界の端に青いものが移る。 目をやるとそれはテリーの被っていた青いニット帽だった。 駆け寄って帽子を拾う。 「こっちの方向かな? どっちみち手掛かりはこれしかないんだ。  行こうアンジェロ。テリーの臭いがしたら教えてくれよ」 わん、というアンジェロの返事を聞いてラムザは青い帽子を被ると東の方角へと駆けていった。 その金色の髪は帽子で隠され、テリーと背格好も似通ったその姿は 遠目に見ればテリーと誤認されたかもしれない。 一方のテリーと言えば、実は南の方角へと木々の合間を縫って飛んでいた。 一度は東のほうへ飛んだのだが、天使の翼の制御がままならずに墜落し、その時に帽子を落としたのだ。 テリーは再び起き上がると、朦朧とした意識でただ姉を求めて今度は別の方向へと飛んだ。 時折、木に引っ掛かりながらも低空で飛ぶ。 「姉さん……レナ……どこにいるんだい」 ただ、それだけを思考に登らせ、ただ一心にテリーは飛ぶ。 その先に待っていたのは……。 「む?」 ピエールの治療を続けていたクリムトは近づいてくる気配を感じて身構えた。 この気配は感じたことがある。これは……テリー? 「どうした」 訝しそうに尋ねるピエール。 かなしばりの効果を受けてから大分時間も経過し、彼はようやくその影響からも解放されていた。 クリムトの回復呪文のおかげで体力もなんとか戦闘が可能な域までには戻っている。 身を起こし、スネークソードを手に取った。 「何者かが近づいている。恐らくは私の知り合い……だが」 何か妙だ。自分の知っているテリーは刃のような強く鋭い意志を持つ青年だった。 しかし近づいてくる気配から感じられる波動はとても弱弱しく、ひどく混乱している。 それに気配に時折混じる何かしこりのように小さく感じられる邪悪な波動。 (テリーは以前、デュランの配下であった時期があったという。  これはそれに関連しているのだろうか?) ピエールも対人レーダーを取り出し、眺める。 確かに北の方角、山の上から何かが近づいてきていた。 その速度は速くはない……が、遅くもない。 一定のスピードでこちらに向かってきている。 (? 山中でこのような移動が可能なのか?  まるで地形を気にしていないかのような動きだ) 警戒を強め、剣を握り締める。 ピエールの殺意に気付いたクリムトは手をかざしてそれを止める。 「剣をさげよ。テリーは敵とはならぬ。  もしも敵となったとしても私が説得しよう」 「……断る。例え敵とならずとも私は斬る。  邪魔立てをするならばあなたから斬るまでだ」 互いの間に緊張が走る。 「ならば力づくでも止めねばならぬ」 クリムトからまるで巨石を背負わされるかのような威圧感を受け、ピエールは戦慄する。 (やはり……ただものではない) 今魔力を消耗し、完調とは言い難いこの状態で正面から相手取るのは危険だ。 ピエールは剣を下ろす。すると威圧感はまるで嘘だったかのように消え去った。 「一度だけだ。治癒の礼として一度だけあなたの言うとおりにしよう。  だがその後は私が望むままに動く」 「良かろう。ならば今から現れる者を決して殺してはならぬ」 「承知した」 頷くピエールを見てクリムトは思う。本当なら今後一切の殺生を禁じたかった。 しかしそれを相手が承服するはずもなく、余計に話がこじれるだけだ。 そんな状態でテリーを向かえ、戦闘にでもなろうものなら また回復したピエールを殺戮へと奔らせかねない。 それを考えると先の提案が妥協のしどころであると判断した。 その後のことは自分が彼を命を張って食い止め、救う方法を模索する以外あるまい。 そしてテリーがやってきた。 空を飛んできたことに驚いたクリムトだが、その満身創痍の状態を悟ると慌てて声をかけた。 「テリーよ! 私だ、クリムトだ!」 その声に反応し、テリーはクリムトの居る場所へと降りてきた。 接地すると同時にそこに崩れ落ちる。 クリムトはそれを抱きとめ、回復呪文をかける。 「あんたは誰だ……俺を知っているのか?」 「牢獄の町でおぬし等に救ってもらったクリムトだ。覚えていないのか?」 「牢獄……? わからない、いや、そんなことはどうでもいい。  アンタ、俺の姉さんを知らないか? レナという女でもいい」 「……あまり無理に喋るでない……」 思った以上に混乱しているようだ。それに直に触れると余計によくわかる。 テリーから感じる黒い波動。それはクリムトもよく知る魔王の力に酷似した力。 恐らくは自分が彼と出会う前、デュランの配下であった頃から呼び出されたのだろう。 であれば彼が自分を知らないことにも納得がいく。 テリーにとって自分は未来に出会う人物なのだ。 そして……姉を探しているという。レナという人物はわからないがミレーユは既にこの世にない。 それを今伝えるべきか。クリムトは悩み、今しばらく黙することに決めた。 「話は後としよう。今はお主の治療を優先する」 ピエールはテリーを見て些か驚いていた。 あの青年とは何度か対峙している。いずれのときも自分は窮地に追い込まれていた。 そして彼が姉と呼ぶ女性。 最初の時の金髪の女性を彼は姉と呼んでいた。彼女は自分が殺害している。 数刻前にカナーンで対峙したときはまた別の女性を姉と呼んでいた。 彼女はテリーがその手で殺害したはずだ。 そして今また、姉を探しているという。そこから導き出される結論は。 (錯乱したか……憐れな) 僅かな憐憫と共にピエールはテリーを見る。だがそれで感情が揺らぐことはない。 何のためらいもなく彼はテリーを切り裂くことが出来る。 しかしそれはクリムトとの約定で禁じられている……が、これは逆に好機だ。 クリムトによって彼の動きは牽制されていたが、彼がテリーの治療に集中することで こちらに対する警戒が薄くなっている。 今ならばここを容易に去ることが出来るだろう。 そう考え、ピエールが踵を返そうとしたその時、テリーがピエールを見た。 「お前……姉さんを殺した、いや姉さんは死んでない、これは何かの間違いだ」 テリーは混乱し、クリムトを振りほどく。 「テリー、どうした! おとなしくせよ!」 蜂蜜色をした髪の綺麗な女性。喉元を剣で貫かれ、鮮血が飛び散る。 薄紅色をした髪の男装の麗人。突如として自分の前に現れ、首が飛ぶ。 その向こうにいたのは目の前の……。 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 テリーは雷鳴の剣を構え天へと翳す。 空気が乾き、パチパチと静電気が走った。 「これは!? ピエールよ、伏せよ!」 クリムトは咄嗟にマジックバリアを張り、雷撃に備えるが 離れた場所に居たピエールまではカバーしきれない。 クリムトの警告にピエールはすぐさま身を伏せ、ザックから何かを取り出した。 落雷が、落ちる。 クリムトはバリアのおかげでその威力を軽減することができたが、 至近に居たため吹き飛ばされて木に激突した。 「ぐはあっ」 強く背中を打ちつけ、息が詰まる。 それに加えて軽減したとはいえ雷撃のダメージもこの老体には深刻だった。 全身が痺れ、動くこともままならない。 テリーの方を見やると彼は剣を杖にして身体を支え、呼吸を荒げていた。 ブツブツと何かを呟いている。 すぐに第二撃が来ることはないと判断し、次にピエールの姿を探す。 防御する手段のない彼はまともに電撃を受けたはず。死にはしないまでもかなりの重傷だろう。 すると少し離れた場所に真紅の絨毯が敷かれていた。 いや、絨毯ではない……マントだ。まるで王者が纏うかのような荘厳な装飾が施されている。 そのマントは不自然に盛り上がっていて……マントを肌蹴、そこから現れたのはピエールだった。 ダメージは負っているが行動に支障はないらしい。 (リュカ様が護ってくださった。これは天命だ) ピエールは雷鳴の剣の効果を一度見て知っていた。 そこで瞬時に呪文を軽減する王者のマントを取り出し、傘のように頭上に広げたのだ。 結果マントは盾の役割を果たし、ピエールは軽傷ですんだ。 彼はスネークソードを手にするとテリーへと向かって駆ける。 その意図を察したクリムトは全力を振り絞って叫んだ。 「待て、ピエールよ! 踏みとどまれい!!」 しかしピエールは止まらず、テリーへと肉薄する。 ピエールの接近に気付いたテリーは剣を振るが、斬撃とも呼べぬその攻撃は容易に回避されてしまう。 支えを失い、倒れいくテリーの背後に回ったピエールは天使の翼を掴み取った。 「約定は守ろう」 そのままテリーを蹴飛ばして、ザックと天使の翼を剥ぎ取った。 テリーは倒れ、そのまま気絶する。 ピエールはその傍に落ちている雷鳴の剣を拾い上げた。 「ぐ、ピエールよ……」 「さらばだ。次にあうときは躊躇わずに殺す」 クリムトの呼びかけに無感情に応じ、ピエールは山の中へと消えていった。 後に残されたのは動けぬクリムトと気絶したテリー。 「無力なり」 クリムトはそう呟き、自身に回復呪文をかける。 まず自分が動けるようにならなければテリーを救うことは叶わない。 どのくらい時間が経っただろう。 すでに日は翳り始めている。 ようやく動けるようになったクリムトはテリーを背負い、杖を突いて歩き始めた。 回復呪文をテリーへとかけながらゆっくりとカナーンの村へと向かう。 彼は目が見えないため、そこに村があることは知らない。 だがいくつかの命がそこにあることは感じ取れた。悪意ももう、感じない。 自分ひとりではできることに限界がある。 テリーの治療もそうだし、ピエールも止めなければならない。 クリムトは仲間を求めて歩く。自分にできることはいくつもない。 だができることを一つずつ確実に果たさなければならない。 「魔女よ、クリムトは挫けぬぞ」 そう呟き、彼はゆっくりと、ゆっくりと歩く。強く地を踏み締めて。 【ラムザ(話術士 アビリティジャンプ)(HP4/5)  所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド アンジェロ テリーの帽子  第一行動方針:テリーを追い、保護する  第二行動方針:仲間を集める(ファリス、アグリアス、リノア優先)  最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】 【現在位置:カナーン北の山岳地帯→東の砂漠方面】 【ピエール(HP3/4程度) (MP一桁) (感情封印)  所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、オートボウガン(残弾1/3)、スネークソード  毛布 王者のマント 聖なるナイフ ひきよせの杖[3]、とびつきの杖[2]、ようじゅつしの杖[0]  雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼  第一行動方針:ひとまず山中に身を隠す  基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す 【現在位置:カナーン北の山脈の麓→山中へ】 【テリー(DQ6)(HP1/4程度、左腕喪失、左足骨折、気絶)  所持品:なし  第一行動方針:レナを探し、姉を見つけ出す  基本行動方針:自分の行動を邪魔する者、レナの敵になりうる者を皆殺しにする】 【クリムト(失明、HP2/3、MP消費) 所持品:力の杖  第一行動方針:テリーを背負い、カナーンへ向かう  基本行動方針:誰も殺さない。  最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】 【現在位置:カナーン北の山脈の麓→カナーンへ】

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