486話

「486話」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

486話」(2008/02/17 (日) 22:12:33) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*第486話:不愉快な彼は歩き出したばかり こいつは、オレの自信とプライドの問題だ。 自分はもう戦場の人間としてダメになっちまった。 どれだけグロいったって死体にさえビビるなんざもう言い訳できるレベルじゃねえ。どこの女子供だ。 引き裂かれる人の肉、流れ出る人の血液、そういう光景が神経に焼きついちまってる。 想像するだけで………人になんか剣は振るえないだろうな。 だいたいそんな状態じゃ遅れをとるのがオチだ。 「おいイザ、お前テリーとか言うヤツを探していたな?」 真っ暗とはいえ記憶に新しい街路を抜け、あいつらの隠れ家へと飛び込む。同時に言葉を吐く。 聞こえたはずの三人は突然のこと、突然の訪問に短い音で聞き返すしか出来ない。 「テリーだ。仲間にそういう名前の奴がいると言ってたろ?」 「あ、ああ、そうだよ、アルガス。いきなり何だい?」 彼の善人振りを示すように問い返すイザの表情には悪い予感と言うものはまだ見えない。 傍らで驚いた顔のライアンが見える。少し黙って聞け、というニュアンスで手のひらを見せる。 「いいか? テリーは死んだ。殺したのはアリーナだ」 剣はやめておこう。いや正直に言えばそれで人を刺すということが今の自分には出来そうも無い。 魔法のカヌーは移動用。盾は盾。しっぽは旅の扉を見つけてくれるし、時計も便利だ。 だがこれで人を殺せと言われてもどうしろと? では残りはなんだ。インクと羽ペン。灰。本体の無い弾倉。服。 こいつらは今のところ有用性を見出せないアイテム。 もちろん、誰かにとっては意味のあるものかもしれない。 だがほとんどの人間はこいつらに有用性を見出せないと言う自分の考えに賛同してくれるだろう。 …文句言っても仕方ない、今更ながらあとで説明書でも隅まできっちり見てみるか。 「そのような言い方は無いでしょう、アルガス殿!  まだ事態の詳細はわからないのですぞ!」 分かっていたとはいえ側面の中年から擁護の大声が響きうんざりする。 これは聞き流すとして、ターゲットの二人は明らかにさっきと目の色が変わっている。 それだけで少しだけアルガスはいい気分になる。しかし、まだ足りない。 「さあ? しかしひどい有様だったぜ、テリーだったものはよ。  どうしたらああなるんだって感じのな。腕も足も。…頭もぐちゃぐちゃさ。  もっともアリーナも似たようなもんだったけどな」 小さなせせら笑いをあとに続けた。 言葉が無い、言葉に詰まるってのはああいう状態を言うのだろう。 イザの奴は精一杯強い視線を崩さないように懸命だし、嬢ちゃんは口に手を当てて固まっている。 隣からいっそう怒気を孕んで自分の名前が呼ばれた。 「わかったよ、全くうるせえな、ライアン。  おまえらとにかく見てきたらどうだ? 何なら案内もしてやるぜ」 こいつは、オレの自信とプライドの問題だ。 できるってとこを自分に見せつけてやらなきゃならない。 俺は誰も殺せないだろう、しかし手段はいくらでもある。 人が死ぬのは何も戦闘ばかりじゃあない。どころか政治なんてやつはもっと多くの人を殺せるじゃないか。 自分の手が使えないなら舞台を、道具を、策略を使えばいい。 上手い具合に舞台は整いつつあるし、道具はそこらにいる。策は無ければ生み出せばいいだけ。 「あの…ライアン様、それでアリーナ様のご様子は…?」 オレではなく、ライアンへ向けて嬢ちゃんがか細くたずねる。 イザのアマちゃんが激昂して動いてくれりゃ面白かったんだが、そう簡単には行かないか。 「あ、ああそうですな、今のところはウネ殿とクリムト殿が手当てをしております。  拙者は回復呪文というものに疎いため詳しくは分かり申せぬため…その」 「そう………ですか」 途切れた言葉の間にイザを見た視線は明らかにそいつに気を使っているものだった。 つられてイザを見、一緒に表情を曇らせたライアンがこちらを見る。 件のことも教えてやればいい、というようにあごで示してやった。 少しの逡巡ののちに元々伝えるはずであった情報について切り出すライアン。 「……イザ殿、ロザリー殿、心して聞いてもらいたい。実は……」 結果として追い討ちになる話。淡々と伝え聞く三人。 冷淡にそれを観察するアルガス。 イザ、ロザリー、ライアン、ウネ、クリムト、アリーナ。 冷徹に値踏みする。 少なくとも自分を殺した男と比較するには軟弱すぎるとは思うが―――イザ。 こいつには一人の男がオーバーラップする。 できもしないくせに嘆きと抵抗する気だけは一級品、たいした力も持たねぇ人間。 同じ境遇に呼ばれたかわいそうな妹がいるところまで一緒だしな。 ともかくロザリーとライアンは身内、ウネとクリムトは妙に肩入れしているとなれば この舞台で狙うべき動かせる駒はこいつというわけだ。 与えられた情報によりますます沈む雰囲気に割って入る。 わざとらしく声を潜め、密談的雰囲気をわざとかもし出しながら。 「なあ、お前等、信じられねぇかも知れないがちょっと聞いてくれ。  あ…ライアンはもう聞いているんだったか? まあいい。  アリーナだ。いいか、あいつは二人いる。…ふざけてるんじゃないぞ」 冷静に聞けばとんでもない戯れ言だが意外にも誰も驚いた顔をしていない。 どういうことかと訝ったアルガスに対して逆に説明が為される。 「知っているなら手間が省けていいな。そのアリーナについてなんだがなあ……」 説明が省けたこと、そしてイザ自身に改めてこのことを確認させたのは好都合。 「いいか、落ち着いて聞けよ。本当のところあの女、ゲームに乗っているんじゃねえのか?  あいつは悪い分身が人を殺して回っているって話してるみたいだが  本人とつるんだ上での策略じゃないなんて誰が証明してくれる?」 「アリーナ殿に限ってはそのようなことはありえませんぞ!!  何を言い出すのですか!」 「本当か? なあ、本当に本当か? 下手な仲間意識は人の迷惑、邪魔なだけだぞ。  お前等はそうやって盲信して騙されるかもしれねえがオレは無関係、もっと客観的さ。  わかるよな、後ろからやられたあとじゃ遅すぎる。  いいか、完全に同じ姿だってんなら見分ける手段さえないんだぞ?  意思疎通の利くもう一人の自分と善人役と悪人役を演じ分けてみせる。  追及すれば『私を信じて』油断すれば『影』のおでましってな。  どうやって考えたかは知らねえがとんでもなく恐ろしいね」 焚き付けられるだけ悪し様に表現したが、自分で言っていて空恐ろしいな。 考えるほどに、あの女はどれだけ恵まれた立場にあるのやら。 本当のところどちらなのかは想像の彼方だが、生き残る立場という奴は十分にあるってわけだ。 …マジで気にいらねえな。 ライアンが煩い。 事実と、悪意をこめた推論の突きつけは十分終わった、だからアルガスはさっさとここを離れることに決めた。 すぐに動かなかろうと答えの出ない時間を与えれば動くように仕向けられるだろう。 「とにかく。オレから伝えたいことは全部言ったぞ。後は自分で考えて行動しな」 「アルガス殿っ! 何と勝手な…イザ殿、アリーナ殿なら大丈夫でござる。  他人を虐げるような考えなど持つ筈がござらん! では失礼いたす!」 彼らは現在隠れているという前提を忘れたのか声量の大きいその台詞を背後から受け、 アルガスは静かにほくそえみ暗い街路を歩んでいく。 それから。 「ああ悪かった。さっきはオレが言い過ぎたよ。少し神経質になっているのかもしれない」 橋の上。明かりなき町と今も懸命な回復が行われているであろう奥の灯を一望する位置。 やや熱くなって咎めるライアンと欄干にもたれかかって聞き流すアルガス。 「ああ、わかってるって、お前の仲間の名誉のために謝っておくよ。  目を覚ましてちゃんと話を聞けばきっとオレも信用できると思う。まあ…お互いこれぐらいにしとこう。  夜は長い。あんまり頑張っても持たないぜ?」 「……そう、ですな。きっとわかって頂けると思っておりますぞ」 それきりで二人の男は会話を打ち切り、あたりは沈黙の闇に没入していく。 頬をなでる夜の風はさらに冷たさを増していた。 見切りをつける、ってのは大事な判断だ。 曲がりなりにも賢者とかいう二人を除けば残りの連中に何が期待できる? 役立たずはそろそろ整理すべき段階へ移りつつあるのかも知れない。 別に急ぐ必要は無いが仕掛けは丁寧に準備しておくべきだろう。 だとして、どこに屠殺如きに己の手を汚す領主が居るよ。 いいか、お前等。 誰が上にいるのか、誰が支配するべき立場なのかを理解しやがれ。 家畜は所詮家畜だってことを…理解すべきだろうが。 そうだ、オレは貴い側だ。オレは生き残るべき。オレは下賎な存在を利用して良い人間だ! 証明してやる、こいつは、オレの自信とプライドの問題なんだッ!! 【アルガス  所持品:カヌー(縮小中)、皆殺しの剣、光の剣、ミスリルシールド、パオームのインク  妖精の羽ペン、ももんじゃのしっぽ、聖者の灰、高級腕時計(FF7)、  マシンガン用予備弾倉×5、タークスのスーツ(女性用)、エクスカリパー  第一行動方針:様子見  最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る 【ライアン 所持品:兵士の剣、折れたレイピア、命のリング  第一行動方針:町の警戒  第二行動方針:アルガスに借りを返す】 【現在位置:カナーンの町 中央部の橋】 【イザ(HP3/4程度) 所持品:ルビスの剣、マサムネブレード  第一行動方針:次の行動を思考中  基本行動方針:同志を集め、ゲームを脱出・ターニアを探す】 【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル、E猫耳&しっぽアクセ  第一行動方針:イザを見守る  基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出】 【現在位置:カナーンの町 魔法屋】

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示:
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。