200話

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*第200話:灯りは二人を照らし 夢を見ていた。昔の夢だった。 旅をしていた頃。僕がまだ魔法使いから賢者になりたてだった頃。 僕は皆と火を囲んで談笑していた。 昔のことを話して、笑って、大変だったんだねと答えてみたり。 皆が腹を割って楽しく過ごした時間。 その時に、みんなの過去も聞いた。僕の過去も曝け出した。 アルスは父親が死んで、でも熱心にその後を追った。 ローグは両親とも既に死んでしまっていて。でもがむしゃらに生きていた。 フルートは昔武闘家だったらしい。でも今は癒し手として頑張っている……一応。 そして僕。 僕は昔両親を無くして、遠く離れた街で暮らしていた。 敵討ちとでも言うように魔道にのめりこみ、アリアハンへと渡った。 その頃から既に賢者への道を理想と掲げていた。 そして今は…言うまでもないのだけれど、理想へとたどり着いた。 更なる理想は、僕やアルス、ローグの様な人を一人でも多く無くす事。 魔王を倒すことで、僕等はそれを成しえた。 火を囲んで笑う僕等。 他愛も無い話。昔の話。これからの話。 僕の心には氷で出来た鋭い棘があったはずなのに。 それを溶かしてくれた皆、それを折ってくれた皆。 ―――絶対に、これは壊させやしないと誓おう。 そこまでが、セージの夢だった。 目が覚めた。少し寝ぼけてはいるが、多少の寒さで完全な覚醒を手伝ってくれた。 まだ夜中だ。 でもあのまま眠ってしまっていたら、見張りが出来ない。 眠ってしまった事が既に不覚だが、マシだとは思った。 「……昔の夢なんて、あまり見ないクチだけどねぇ」 夢に出てきた仲間達は大丈夫だろうか、とふと不安になる。 大丈夫かもしれないが、もしもの事があったら…。 再会できるかわからない。地味に広いこの大地で、どうなるのだろうか。 そこまで考えて、ふと前を見た。今もやはりタバサは寝ているのだろうか…? ふと前を見ると……見ると……。 いなかった。 え?嘘でしょ流石に。 もしや自分が寝ている間に拉致された?または殺されてどこかに棄てられた? 気分が暗いのが相まって不安を掻き立てる。 不安を隠しきれない顔で今度はベッドを見た。 もしやビアンカさんまで手に掛けられているのではと思ったからだ。 ベッドに近づいた。そして覗き込むと、 タバサがいた。 じゃあビアンカさんは……。 「寒いだろうから私が移動させたの。ごめんね驚かせて」 「…ああ、お気遣い有難う。確かに少し冷えるよ」 さっきの不安は既になくなっていた。 タバサをベッドへと移動させたのはビアンカだった。 彼女はセージよりも前に起きていて、そしてタバサを自分の寝ていたベッドに…という事だったのだ。 「容態は大丈夫なの?随分汗だくだったからねぇ」 「ええ、大丈夫。これでも旅をしてたから体力は自信があるのよ」 「なら良いんだけど…。ああ、そうだ。今の状況を説明したいんだけど…いいかな?」 「私からもお願い。正直ちょっと困惑してるの。記憶もないし…」 「わかった。できるだけ簡潔に纏める様努力するよ」 そしてセージは今までの出来事をビアンカに話した。 タバサと自分が出会ったときのこと。それからした行動の事。ビアンカと自分が繰り広げた死闘のこと。 そして…ピピンとサンチョが死んだこと。 「彼らに関しては、タバサから話は聞いてたからね。どうやら惜しい人だったらしい」 「うん、2人ともとても素敵な人だった…」 「……だろうね。僕も話を聞くだけでそう思えた」 「そんな事が起きてるのに…私はもっと犠牲者を出そうとしてたのね」 母親失格かもね、とビアンカは笑って言った。 声が少し涙混じりだ。かけがえの無いものを失ったのだ、当然だろう。 それを見て、セージは静かに語りだした。 「タバサはピピンさんが死んだと知って、悲しんでいた…。  サンチョさんも死んでいたけれど、何故か僕の前で呟いた名前はピピンさんだけだった。  2人の死は平等に悲しいはずなのに……なのに目の前で悲しんだ理由を1人で片付けようとしていたんだ。  更にあの子は泣きもしなかった。涙一つ出さずに僕に前向きに話しかけてきた。  ……やっぱりね、僕を心配させないようにさせないように、気を使ってるんだと思う。  あの子は強い。とても強い。  でも、今死んでいく人すら護れない僕が…彼女がもし強さを挫いてしまった時に…護れるのか判らない。  僕は結局他人だから…上手く立ち上がらせる事は出来ないかもしれない。でも…」 溜息を付き、一呼吸置いて、そして、 「母親であるあなたなら、できる。僕と違って確実にできるんだ。  だから、無理を言ってすまないけど…こんな事であなたに挫けて欲しくは無い」 こう、言った。 ビアンカは黙っていた。 黙って涙を拭いて、セージを見た。 そして、答える。 「ありがとう。そうね、あなたの言う通りだと思う。  あの子の母親は私だし…ここで暗い顔見せちゃ怒られちゃいそうだしね。  …頑張るわ。うん、絶対頑張る」 そして、ビアンカはセージと同じように溜息を付いた。 そして一呼吸置く。 「でもね…あなたの言ってることが1つ間違ってる気がする」 「どういう事?」 セージはつい反射的に答えてしまった。 気付いたセージが苦笑して「ごめんごめん、続けて」と言った。 「あなたはさっき『護れるのか判らない」『立ち上がらせる事はできないかもしれない』って言った。  でもね、今のタバサの寝顔を見てると……わかるの。とても安らかに眠ってる。  こんなふざけた戦場なのに…この子は不安の一つもなく眠ってる。  それはあなたのおかげ。だから、あなたも…きっと大丈夫。  タバサをこれだけ護ってくれたんだから、きっと他の人たちも護ることが出来る。  タバサがもし落ち込んだ時も、きっとあなたも手を指し伸ばせることが出来る。そう思う」 ―――だから、あなたも暗い顔を見せないでね。 と…最後にビアンカはそう言って締めた。 「結局、お互い自信を失う機会なんてのは存在しないわけだ」 「そういう事。落ち込みたくても落ち込めないのよ、私達は」 そう言って2人は、静かに笑った。 静かに、でも子どもの様に笑顔を浮かべる。 「本当に強い人揃いだね、そっちは」 「あなたも相当強そうよ」 「魔道には自信あるよ?強いよ?」 「私はお料理には自身があるわよ?調味料の暗記にも強いわ」 「そりゃありがたい。携帯食料くらいでげんなりしてた」 「まだ食べてないんだけど、そんなにマズイの?ちょっと気になるかも」 「やめといたほうが良いよ~?一時のテンションに身を任せると良いことが無い」 灯りを囲って、2人は談笑していた。 笑って止めるセージを無視して、携帯食料を食べたビアンカが微妙な顔をする。 「私ね…実は子ども達の10年間の成長を見てないの」 「なんで?」 「私は夫と一緒に…魔物の罠にかかって石像にされちゃったの」 「あ~、それで10年経っちゃったんだ」 「ええ。夫の方は2年早く解放されたんだけどね」 「………通りで若いと思った。明らかに10歳の子どもがいる人じゃない」 「あなたと同年代かちょっと年上ってところかな?」 「そうだね、実は勢い余って惚れてるから…今」 「それ本当?」 「すみません、冗談を言ってしまいました」 「私じゃなかったら怒ってるかもね~」 「あはは、ごめんごめん。でも冗談だとわかってくれたら結構」 灯りを囲んで談笑をする僕らの姿は、 以前の仲間達との談笑を思い出させてくれた。 この優しい心の火を、僕はもう消さない。 命という燃える炎を、僕はもう消させやしない。 【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート  第一行動方針:談笑ついでに見張り 基本行動方針:タバサの家族を探す】 【タバサ 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書   第一行動方針:睡眠 基本行動方針:同上】 【ビアンカ 所持品:なし  第一行動方針:談笑 基本行動方針:不明】 【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】

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