FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 253話


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第253話:命 煌く


「そうですか…ハッサンさんも世界を救うための旅を…」
「ああ、辛く苦しい、でも楽しい旅だった。あいつらが一緒にいたからな。
それとハッサンさんはやめてくれ。あんたも言いにくいだろうしハッサンでいい」
「そうですか…そうですね。分かりました、ハッさん」
少しアクセントが気になったがハッサンは気にしないことにした。
状況が変わるまで動くこともできず、彼はミネアと共に雑談に興じている。
今こうしている間にも助けを求めている人がいるだろう。
消え行く命もあるかもしれない。しかし呪われしハッサンには今成す術がない。
夢の中で助けを求めていたエルフのことを思うと今にも感情が暴発してしまいそうになる。
そんなハッサンを気遣ってミネアは懸命に気を紛らわせようと話をしてくれている。
その懸命の献身は今のハッサンにはとても有り難く、
せめてこの人だけは守ろうとハッサンは固く決意するのだった。

ザシャ

突然の物音に二人は振り向く。そこには栗色の髪の少女がいた。
笑みを浮かべてこちらに手を振りながら小走りに駆け寄ってくる。
警戒して腰を浮かせかけるハッサンだが、ミネアはそれを見て喜びの表情を浮かべた。
「ミネアー!」
「アリーナさん!」
彼女の呼び声に立ち上がって喜色満面に答える。ああ、やっと頼れる仲間と出会えた。
「ハッさん、安心してください。彼女は先程話した私の仲間です。」
それを聞いてハッサンも安堵して再び腰を下ろす。
この時の彼は少し軽率だった。ミネアを守ると決意したばかりだったのにあまりの
ミネアの喜びように警戒を怠ってしまったのだ。
もし彼が腰を下ろしていなければ…すぐにミネアと少女の間に入れる体勢であったなら…
少なくともこの後の悲劇は避けえたかもしれない。
「いやーやっと知ってる人見つけたよー。良かったー」
「ええ、私もそうです。途中であちらのハッサンと一緒になったのですけど
少し事情があってここから動けなかったんです。アリーナさんは大丈夫でしたか?」
「ああ、うん。それよりもさ、金髪の男がこっち走ってこなかった?」

その時ミネアはふと目の前の少女に違和感を感じた。
彼女が「金髪の男」と口にした瞬間に、ざわり、と何か邪気のようなものを感じてしまったのだ。
「え?…い、いいえ。こちらには来ていませんが」
ミネアの中で少女に対する違和感が膨らんでいく。
私の知っている少女はこんなだったろうか?私は何か別のものと対峙しているのではないか?
ミネアの答えを聞いて少女はあからさまに落胆した。
「なーんだ、役に立たないなぁ。話しかける前に会話を聞いてたら
そっちの彼も呪われてるようだし…あんたたちやっぱ必要ないね」
ミネアは一歩退く。
チガウ…シラナイ…ワタシハコノショウジョヲシラナイ…
ナラバメノマエニイルノハイッタイダレナノダロウカ…
気付くと少女の手にはすでに先端が三本に分かれた鞭が握られている。
――グリンガムの鞭――
不穏な空気にハッサンはいぶかしみ、再び腰を上げる。
少女の目にはすでに殺気が宿っていた。
「ハッさん!逃げ――」
彼女は最後まで言う事ができなかった。
最初の一閃でミネアの左頬の肉がそげ、左鎖骨を砕かれ、肋骨を破壊される。
瞬時に二閃目が訪れ、ミネアの右手首をもぎ、左太腿の肉をそぎ、右耳が切断される。
三閃。ティアラが弾き飛び、髪が散る。左肩を砕かれ、左乳房も抉られてしまった。
四閃。一撃は空を切り、右のこめかみから左目までを抉り取られ、再び打たれた左肩から左腕が千切れ飛んだ。
死のダンスを強制的に舞わされたミネアは全てが終わった後、フラフラとよろけ、倒れた。
ビクビクと痙攣し、彼女の身体の下から血だまりが広がっていく。
そんな光景をハッサンは硬直したまま見つめていた。
「あれ~~、まだ生きてるよ。結構しぶといなぁ。
グリンガムの鞭も攻撃力は高いんだけど必殺には向いてないのかなぁ」
そんな無邪気な、しかし残酷極まりないセリフにハッサンは正気に戻る。
「う、うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
慟哭しながら奇跡の剣を抜刀し、少女へと斬りかかる!
そんなハッサンを少女は笑みと共に迎え、鞭を振りかぶった。
「遅いよ、おじさん」

一度に三箇所を攻撃できるグリンガムの鞭に加え、装備した者の攻撃を乱れ撃ちに変える
「皆伝の証」を持つ自分の速度にかなう者などいはしない。
彼もまた、自分の攻撃の前に崩れ落ちるはずだった。しかし……。
それは勘だった。戦闘センスに秀でる彼女は、野生の勘が送る警告音に迷わず従い、その場に伏せる。
何かの光が視界の端をかすめ……閃光。そして衝撃が来た。
遅れてきた轟音と共に吹っ飛ばされる少女。しかし伏せていたおかげで受けた衝撃は少ない。
接地とともに受身を取り、ごろごろと転がり事なきを得る。
しかし手にしていた鞭はどこかに飛んでいってしまったようだ。
ふと前を見ると彼もまた吹き飛ばされている。自爆したのだろうか?
が、彼が起き上がろうとしているのを見て、彼女は地を蹴り彼に向かって走り出した。
先の爆発が何なのか分からない以上、彼が起き上がる前に勝負をつけるつもりだった。
ハッサンは近づいてくる少女に気付き、剣をとろうとするが見当たらない。
どうやら爆発でハッサンもまた剣を手放してしまったらしい。
ならば…ハッサンは自分の右の指に装備された指輪を見る。
もう一度くらわせてやる!
最後の力を振り絞って起き上がり、少女に向かって指輪をはめた拳を突き出す!
それを見て、少女は確信した。爆発の前に視界の端で光った物の正体。
「その指輪ね!」
少女の気を込められて硬化した手刀がハッサンの右手首を斬りとばす!
「ぐがぁああああああ!」
ハッサンは斬り飛ばされた右腕を押さえて咆哮し、右手首は地に落ちると同時に小爆発。
指輪を残して消失した。
少女はその隙を逃さずハッサンの背後に回り両の腕で太い首を絡めとる。
「がっ…あ、ごあ」
ハッサンは呻き、残った左腕で少女を引き剥がそうとするがまともに力が入らない。
少女は躊躇せずに渾身の力を込めていく。そして…。
…メ…キ………ゴキンッ。
彼の首が有り得ない方向に曲がり、ハッサンは崩れ落ちた。
少女は両の手首をほぐすように上下に振る。
「ふぅっ、かったい首~。結局砕けなかったや」
そしてブクブクと泡を吹くハッサンを見下ろす。
「あれ~~?また死んでない。タフだなぁもう!」

そういってハッサンを思い切り蹴飛ばした。
僅かに宙を舞い、ゴロゴロと転がっていくハッサン。
「ま、いいや。どうせすぐ死んじゃうだろうし、面倒だから止めはささないでいてあげるね♪」
そして彼女はもう気にも留めずグリンガムの鞭を捜し始めた。
まだ息がある二人を放って。


白い靄に包まれた何もない世界。
目覚めるとハッサンはそこにいた。周りを見渡すが何も見えない。
「オレは…何でこんなとこにいるんだ?」
キョロキョロと見回しながら訳も分からず歩いていく。
ふと靄の中からアモスの姿が浮かび上がってきた。
「アモっさん!?」
アモスはハッサンに近づき、ふと哀しそうな笑みをこぼして通りすぎていく。
すれ違いざまに一言、アモスはつぶやいた。
「頑張れよ」
なぜかハッサンは動くことも声を上げることもできなかった。
そしてアモスの姿は白い靄の中に消えていく。
次に現れたのはミレーユだった。
彼女は俯いて涙を流しながら歩いている。
そしてまた、彼女もハッサンの脇を通り過ぎていく。
同じように一言。
「テリーを…弟をお願いします」
消えていく彼女を見て、ハッサンは叫びたいのに声を出すことができない。
そして……次に現れたのは、ミネアだった。
彼女もまた、ハッサンへと近づき……目の前で止まった。
彼女を見てハッサンは全てを思い出す。それと同時に金縛りが解けた。
「うぉおおおおおおおおーーーー!!オレは!オレはぁああ!!」
地に手を着き、拳を地面に叩きつける。
「守りたかった!あんたを!仲間を!全ての弱い人たちを!!
守りたかったんだ!!なのに、なのに…ちくしょうっ!」
そんなハッサンの肩にミネアはそっと手を添えた。

それに気付いたのかハッサンは地を叩くのを止め、嗚咽する。
「畜生…何もできず…、オレは終わっちまった。ちくしょう…ちくしょう…」
ミネアは涙と鼻水でグシャグシャのハッサンの顔を愛しそうに触れ、抱きしめた。
「大丈夫。まだ、終わっていません。あなたは生きています」
ハッサンはミネアの腕の中、嗚咽を止める。
「嘘だ」
「いいえ、本当です。私があなたを生かします」
ハッサンはおずおずと顔を上げる。
「本当……なのか?」
ミネアはニッコリと微笑んだ。
「私はようやく分かったのです。あなたのもとに導かれたわけを。
私があなたにできることを。
私は…あなたを導くためにあなたの傍にいたのだということを…」
ミネアはゆっくりと立ち上がり、それを追うようにハッサンもまた立ち上がる。
「何を、する気なんだ?」
彼女はそれに答えず、右の指に光を灯し、自分の正面に十字を描いた。
呪文を唱え、祈りを捧げる。その呪文はまた、ハッサンも聞き覚えのある呪文だった。
瞬時にミネアの意図を悟る。
「いけねえ!そいつだけはやっちゃいけねんだ、やめてくれミネアさん!」
ハッサンはミネアの肩を掴み、声を張り上げるが彼女は目を閉じ詠唱を続ける。
そして…詠唱が終わった。


血だまりに付すミネア。彼女は残された命の全てを振り絞って言霊を風に乗せた。
「メ、ガ……ザル」
その小さな小さな音に鞭を捜し続ける少女は気付かない。


「ああ、ミネアさん…」
「ふふ、どのみち私は助からないほどの傷を負ってしまいました。
ならば私にできることは残された命を未来へと繋げること。姉さんもきっと褒めてくれます」
ミネアは空に向かって両手を広げ、金色の粒子をまき散らす。

その粒子はハッサンの身体を包み込み、身体を浮き上げていく。
「ミネアさん、約束するぜ!今度こそオレは望みを果たしてみせる!
見ててくれ!あんたの仲間も、おれが守る!」
ハッサンは親指を立ててミネアに向かって突き出す。
ミネアはハッサンを見上げ最後の言葉を贈る。
「フフ期待していますね、ハッさん」
そして――世界は光に包まれた――――


突如としてハッサンの身体から立ち上がった光の柱に驚愕して少女は振り向いた。
その巨大な光の柱は少女にも見覚えがある。正確には少女のオリジナルの記憶だが。
少女が咄嗟にミネアのほうを振り向くと、ミネアの身体は光の粒子となって分解され、
光の柱へと吸収されていく。ふと光の柱の中に影が現れた。
影は人の形をしていた。その人影はゆっくりと、しかし確実に光の柱の中を歩き近づいてくる。
光の柱もそれに呼応するように薄まっていき、影の正体がだんだんと見えてきた。
やはり、その影は…ハッサン。涙を流し、毅然と少女を見つめながら力強く歩いてくる。
右手首も健在で首も折れてはいない。気付くと少女は無意識のうちに後ずさっていた。
「ミネアさん…ありがとう。この命、この腐ったゲームをぶっ壊すその時まで借りておくぜ。」

【ハッサン(HP MAX、危機関知能力上昇)
 所持品:E神秘の鎧 奇跡の剣(現在行方不明)
 行動方針:アリーナ2を倒す 最終行動方針:仲間を募り、脱出】
(ハッサンの危機関知能力はミネアと同等)

【アリーナ2(分身) 所持品:皆伝の証 グリンガムの鞭(現在行方不明)】
 第一行動方針:ハッサンを倒す
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する】

【現在地:いざないの洞窟西の山岳地帯】

【ミネア 死亡】
【残り 87名】