FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 256話


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第256話:呪われし者たち


それは夜明けの絶望の声が響く前に起こった出来事だった。

「失敗しちゃったなぁ…まさかメガザル唱えられるとはねー。
 ホント、しぶといったら」
「彼女を侮辱するな」
ハッサンは涙を流しながら憤怒の表情でゆっくりと少女へ近づいていく。
「何故、殺した。あんたはミネアさんの仲間じゃなかったのか!」
「仲間だったよ。でもあたしが勝利するのに邪魔だから。
 少しでも役に立つようだったら生かしておいたんだけどねー」
あっけらかんと答える少女にハッサンの顔はさらに険しくなる。
「一応、聞いておくけどおじさん逃げないの?
 さっきやりあって勝てないのわかったと思うけど」
『逃がすつもりなんかないけどね』
胸中でそう呟いて戦闘体勢をとる。
「勝てるさ。今ならな」
そう言ってハッサンの筋肉が膨れ上がっていく。
視界を遮る涙を拭った時、瞬時に間合いを詰めた少女の蹴りが腕ごと顔面にヒットした。
そのまま右肩、左脇腹、左腿に蹴りを入れられる。
「ぐぶぶっ!」
「その割には隙だらけなんだけど」
舌打ちして腕を振るうが、少女は咄嗟に彼の腕を足場にしてバック宙し、再び間合いを取る。
「それじゃ無理そうだねー。お・じ・さ・ん」
「黙れ!おれはおじさんじゃねえ!おにいさんだ!!」
その場の石を拾い、少女に向かって投げつける。
だが少女はかわしもせずに全ての石つぶてを受け止めた。
両手が塞がった隙を逃さずハッサンが間合いを詰める。
そして今度は少女がハッサンに向かって受け止めた石を投げ返した。
ハッサンもまた避けはしない。顔だけをガードしてあとは鎧に当てるがままだ。

一気に少女の眼前に躍り出て豪腕を繰り出す。
カウンターで回し蹴りを合わされた。
首筋にヒットしたが、固く太い首はなんとか持ちこたえる。
ハッサンが体勢を整える前に少女は彼の肩を足場に飛び、高く上空に逃れる。だが。
「待ってたぜ!」
なんとハッサンは地面に貫手を食らわし、そのまま岩盤をくり抜き持ち上げたのだ!
そして少女に向かってぶん投げる、その間実に0.7秒。バトルマスターの大技「岩石落とし」である。
空中にいる少女には逃げ場がない。
が、少女は少し驚いたようだが、冷静に飛来する岩に足を合わせて力の方向を逸らし、受け流した!
あらぬ方向に飛んでいく岩石。
そして少女は力の方向を計算したのか、偶然か、真っ逆様にハッサン目掛け急降下してきた。
『馬鹿目!狙い撃ちだぜ!』
拳を腰溜めに構えて狙い済まし、必殺の急所突きを放つ!
しかし少女は身を捻り、それさえも回避してしまう。
ハッサンの首にすがりつく様にぶら下がり、そのまま首を支点に回転して
遠心力を加えた膝蹴りをハッサンにの顔面にぶち込んだ!
咄嗟に額で受けるものの流石に吹っ飛ばされるハッサン。
一転、二転し、何とか身を起こして勢いを止める。
しばし対峙する二人。
『つ、強えぇ。覚悟はしていたがこれほど実力差があるとは思わなかったぜ。
 これでも魔王討伐を成功させた身なんだが…あいつ一体何匹のメタルを狩ったんだ?』
眼前で悠然と立つ少女を見つめる。
『武器はない。探している暇もない。
 俺が持つ技で奴に通用するのは何だ。バトルマスター、レンジャー。二つの上級職。
 それらの下級職を合わせて奴の異常な素早さに対抗する術は…』
ハッサンは今までの戦闘経験を照らし合わせ、戦術を組み立てる。
『一か八か、賭けるしかねぇ!』
ハッサンは裂帛の気合を入れると、少女に向かって駆け出した!

「懲りないなぁ、そろそろ飽きたし終わらせちゃお!」
そう言って猫足立ちに構え、ハッサンを迎え撃つ。
「爆・烈・拳!!」
ハッサンが放つは岩をも砕く高速四連突き。武闘家職の奥義だ。
「止まって見えるよ!」
それでも少女は襲い来る全ての拳を紙一重で回避する。
「パンチってのはさぁ、こう打たなきゃ!」
ハッサンの踏み足に合わせるように踏み込み、足首、腰、肩、腕と回転を伝え遠心力を最大に生かす。
そして気によって硬化された右拳が充分な速度とともに撃ち出された。
それはまさに会心の一撃。恐らくは分厚い鉄板でさえ撃ち抜くであろう威力を持った一撃。
それを証明するかのようにその一撃は神秘の鎧を砕き、寸分たがわずハッサンの腹筋に撃ち込まれた。
ドン、と鈍い音がしてハッサンの喰いしばった歯の間から鮮血が飛び散る。
そして、上がった悲鳴は…少女のものだった。
「あぁああああぁあぁぁあああああ!!!」
何が起こったのか…少女の一撃はハッサンの腹筋に撃ち込まれた瞬間、衝撃を跳ね返されたのだ。
手首と肘、肩を順に衝撃が貫き、少女は絶叫する。
それはハッサンの奥の手。レンジャーの特技「だいぼうぎょ」による効果だった。
大自然の力を借り、通常の防御とは比較にならない防御力を発揮する特技。
爆烈拳が回避されることを見越し、空ぶった瞬間にハッサンは行動を切り替え大防御に入っていた。
それにより少女の一撃は一割ほどの威力しかハッサンに伝わらず、残りの九割の反動をまともに食らい
少女の右腕は破壊されたのだった。
「ご丁寧にパンチのレクチャーありがとうよ。早速実践させてもらうぜ」
少女と全く同じモーションで突きの体勢に入る。
右腕を破壊され、その場に硬直していた少女は慌てて口を挟む。
「ちょ、ちょっとタンマッ」
「タンマなし!」
少女は咄嗟に防御体勢を取ったが、ハッサンの正拳突きはそんな薄っぺらな盾ごと少女を撃ち貫いた。

目覚めると地面の上に大の字で寝ていた。
冷静に自分の状態を確認する。右腕は脱臼していたようだが、すでにはめ込まれていた。
動こうとすると胸に激痛が走る。しかし、それは胸筋打撲によるもので
骨折の類や、内臓の損傷によるものではないようだ。
つまり、五体満足だった。
『何故?』
彼の膂力、あのタイミング、速度。自分の胸には風穴が開いていてもおかしくない。
何故自分は無事なのか?その理由は……明白だった。
手加減、されたのだ。
屈辱に涙が溢れそうになる。
「よう、起きたのか。あれから三分もたってないってのにたいしたもんだ」
首を回して声の方を見やると、そこにはすでに剣と鞭を回収したハッサンが立っていた。
「なんで、殺さないの」
息を吸うのも億劫なので最低限の言葉で尋ねる。
彼は真剣な表情で少女を見下ろした。
「あんたが、ミネアさんの仲間だったからだ。だから助けた。
 アリーナ、あんたはそこでしばらくミネアさんにしたことを後悔するんだ。
 思い出せ。ミネアさんの言葉。表情。思いやりを。
 仲間だったなら自分が何をしでかしてしまったのか分かるはずだ。
 …彼女は、メガザルを唱えたとき笑っていたよ。
 あんたを許していたんだ。その優しさを、噛み締めるんだ。
 今度会うときはあんたと仲間になれると、俺は思っているぜ。」
それだけを言ってハッサンは少女に背を向けた。
彼女があれほど信頼した仲間だったのであれば、それだけで分かってもらえると信じた。
本当ならば彼女を抱えて行きたいところだが自分にはやらなければならないことがある。
夢で見たエルフの呼び声に応えなければならないのだ。
夜明けも近い今ではすでに遅いかもしれない。
しかし行かないという選択肢はハッサンにはなかった。

少女は彼の言葉を聴き、涙を流し後悔した。己がしでかしたことを思い知った。
自分の間違いを猛省した。そしてある思いを噛み締める。
嗚呼…自分はなんということをしてしまったのだろう。
そう、今度呪文使いと戦う時は真っ先に喉笛を噛み千切ろう。。
歯を砕き、舌を引き抜き、顎を割って忌々しい呪文など唱えられないようにしてから引き裂こう。
そう少女は決意する。そしてあの男もこのままでは済まさない。
生きている限り勝負は続いている。最後に勝利するのは自分しかいないのだ。
そうだ、呪いをかけてやろう。とびっきりの呪いを。
私が勝利するための呪いを。
その為にもう一人のあたしには囮になってもらうのが良い。
彼女の思考は急速に活性化していく。
自分を有利にする、それだけに特化した思考。
それは悪魔の計画を生み出した。
「待って」
男を呼び止める。
ハッサンは走り出そうとした矢先だったが、特に警戒した様子もなく足を止めた。
「どうした?」
「話したいことがあるの…実は、あたしはこのゲームの参加者じゃないわ」
ハッサンの目が驚愕に見開かれる。
「んなっ!?」
「あたしはオリジナルのアリーナから分裂したコピーといえる存在。
 あたしと全く同じ外見をしたオリジナルが本当の参加者よ。
 最も、首輪までコピーされてしまった以上、あたしも他の参加者と変わりはないけどね」
ここまでは真実だ。男は疑った様子もなく絶句したまま聞いている。
「オリジナルのアリーナはとびっきりの邪悪よ。
 そう、あたし以上のね。ミネアもまた彼女に最後まで仲間と騙され続けていたのよ」

「そ、そんな筈はねえ!ミネアさんが騙されていたなんて…」
「それができる人なのよ。本当のアリーナは。
 世界を救ったのだって彼女の国が世界の覇権を握るためにしたことだしね。
 彼女は慎重で狡猾よ。あたしみたいに正面から襲うのではなくて
 必ず標的に取り入ってから絶妙のタイミングで裏切るわ。
 あたしはあなたに説得されて目が覚めた。ミネアを手にかけた事を心から後悔しているわ。
 そうさせてくれたあなたに彼女の毒牙に掛かって欲しくない。だから気をつけて。
 多分、彼女がこのゲームの参加者の中で最も危険な存在だわ」
ハッサンは黙って考え込んでいる。
もう少しだ。もう少しで呪える。あと、一押し。
「今、彼女に騙されているのはあなたの仲間かも知れないわよ」
ハッサンはハッとして顔を上げた。ギシリ、と歯を食いしばる。
「あんたと区別をつける方法は?」
呪った。
少女は胸中で唇の端を吊り上げた。
「いいえ。あたしと彼女の外見は全く同じよ。
 見分けるのは難しいと思う」
「そうか、目印をつけておいて良かったな」
その言葉に少女はいぶかしむ。
『目印?』
彼女は気付かなかった。自分のお尻につけられたあるアクセサリー。
ミネアのザックに入っていた悪魔のしっぽ、というアイテムの存在を。
「心配してくれてありがとよ。それじゃあ行くぜ。
 ゆっくり養生しな」
『冗談。そんなことできる状況だと本気で思ってるのかしら』
そしてハッサンは今度こそ走り去っていく。
ハッサンもまた気付かなかった。少女の高速攻撃の正体。
皆伝の証、というアイテムの存在に。

ハッサンの姿が見えなくなりしばらくして、少女は身を起こそうとした。
途端に激痛が走り、すぐに断念する。
『あの筋肉ダルマッ!こんな状態で襲われたらひとたまりもないじゃない!』
しかしどうしようもない。少女は諦め、眠りにつくことにした。
目が覚めた頃には動けるようになっているかもしれない。
大丈夫。私は今日、生まれたばかり。生まれたばかりの命は神様に祝福されるんだって
ちょっと顔がおぼろげだけどあの頼りない若い神官は言っていた。
ならばあたしも祝福されているはずだ。次に目が覚めたときには…あたしは…

そうして少女の意識は闇の中に沈んでいった。
自らに自我が芽生え始めたことに気付かずに。

…そして、絶望の朝が来る。

【ハッサン(HP 2/5程度)
 所持品:E神秘の鎧(半壊) E奇跡の剣 爆発の指輪 いばらの冠 嘆きの盾 グリンガムの鞭
 第一行動方針:アリアハンへ行く
 第二行動方針:オリジナルアリーナと仲間を探す
 最終行動方針:仲間を募り、脱出】
【現在位置:いざないの洞窟西の山岳地帯→寄り道せずにアリアハンへ】

【アリーナ2(分身) (HP 1/10程度) 所持品:E皆伝の証 E悪魔の尻尾】
 第一行動方針:睡眠
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する
【現在地:いざないの洞窟西の山岳地帯】

(※アリーナ2はオリジナルと自分の区別がついていなかったが
 今はだんだんとオリジナルより自分の優先順位が高まってきている)