第342話:血の涙
「…レックス、さ…ま」
その死体を見つけたピエールは、その場に立ち尽くした。
何故アリアハンで亡くなられたはずのレックス様の死体がここにある?
これは全て殺そうとした私への、天からの当てつけなのだろうか?
とめどない考えがピエールを襲う。
いや、考えるな。
リュカ様のため、レックス様も殺す覚悟をしたではないか。
何を戸惑うことがある。
目の前にはただ、誰かに殺されたレックス様の死体があるだけの話。
この程度のことは乗り越えねばならない。
その考えとは裏腹に、死体を見つめるその体は動かない。
彼がもし泣けたのならば、その瞳は涙をこぼしていただろう。
「…レックス様」
死体に近づき、その頬に触れる。
冷たく固まったその頬は何の反応も返さない。
ピエールはその死体を見つめる。
どれほどの時間、そうしていただろう。
ピエールは迷いを振り切るように首を振ると。
ザックから鋼鉄の剣を取り出し。
それを死体に突き刺した。
感傷は捨てろ。
こんな感情は邪魔だ。
私には感情などいらぬ。
全てはリュカ様のため。
そのためなら私は、修羅の道を突き進もう。
鋼鉄の剣をレックスの死体に突き刺したまま、ピエールは歩き始めた。
硬直を始めた死体から僅かながらに飛び散った血液は、ピエールの目元に張り付き。
それは、流れ落ちる涙のように見えた。
【ピエール(HP2/5程度) (MP1/2程度) (感情封印)
所持品:青龍偃月刀、魔封じの杖、ダガー、死者の指輪、オートボウガン、魔法の玉、毛布、
ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 対人レーダー
第一行動方針:南に見える町に向かう 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:カナーン北の草地】
最終更新:2008年02月17日 23:15