86話

第86話:バトロワお約束アイテム



殺し合いだなんて、冗談じゃない…僕がマチュアを殺せるわけがないじゃないか…」

途方に暮れている一人の男…ではなく、魔物、スミス。
彼は元人間だが、魔王に殺された後、魔物として復活させられたのである。
今の姿は腐った死体…ではない。恋人マチュアはどんな姿でもスミスであれば構わないと言ってくれるのだが、
さすがに仲間から見ると不憫らしく、何度か別の姿に転生させられた。
そうこうしているうちに戦い方も覚え、元凶を倒すこともできた。
そんな彼の戦闘力はかなりのものである。しかし、このゲームには恋人も、仲間も参加している。
どうすべきか。彼は思考を巡らせる。

全員殺して自分が生き残る…論外。
マチュアを生き残らせる…これもダメだ。
ずっと自分が正気を取り戻すのを待ってくれていた彼女を、また一人にしたくはない。
やっぱり、脱出、か。

そう結論づけたものの、何をすればいいのか分からない。結局は他人任せだ。
しかし、もし最終的に生き残れるのが複数だったら、自分は間違いなく他人を殺していただろう。
そんな自分がいやになる。

「…そういえば、支給品は?」

ここで、やっと支給品の存在を思い出した彼は、袋の中を探る。
出てきたのは変身の巻物、中身は空っぽの紫の小ビン、そして、拡声器。

拡声器…これで呼びかければ、脱出を希望する人間を集められる。それにマチュアと合流できるのはほぼ間違いない。
もしかしたら、よい脱出案が浮かぶかもしれない。
だが、逆に、呼びかければゲームに乗った人間が自分を殺しにくるのは明白だ。
ならば、ゲームに乗った人間に気付かれなければいい。


変身の巻物、変身の対象は一つ。
腐った死体。
心臓の鼓動もない、だから脈もない、目は飛び出ていて、体は半分腐っている。どうみても生きているようには見えない。
それに何故かこの姿だと安心する。気配を絶てば、大抵の相手はやり過ごせる。
塔に行こう、あそこなら目立つはず。

【スミス(腐った死体) 所持品:紫の小ビン、拡声器
 行動方針:ナジミの塔へ行き、拡声器で呼びかけ、マチュアと合流、仲間を集める、また、衣服などがあれば調達】
【現在位置:アリアハン大陸北東部、海岸に近い森の中】

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最終更新:2008年01月26日 18:07
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