FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 530話


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第530話:心を覗いたものは手痛い反撃を受ける


カインはいない。ライアンもいない。ウネもいない。
ほんの少し前まで、カナーンでは剣音が響いていた。誰かが戦っていたのは明らか。
だが、勝者どころか、死体すら残されていない。どこへ行ったのか?


目薬草が切れた視覚はもどかしいほど不便だ。
アリアハンではかなり離れた場所だって見ることができたというのに、
今はちょっと向こうがどうなっているのかすら認識できない。
皆は遠くで戦っているのか。
耳を済ませても風の音が聞こえるだけ。目を凝らしても深い闇が広がるだけ。
光が何か関係しているとは考えるのだが、その方向には最初に飛ばされてきた険しい山があり、行くのはさすがに面倒。
結局、何がどうなっているのかはさっぱり理解できない。
彼はただ一人、無防備な状態だ。

思えば、アリアハンでは地獄耳の巻物と目薬草があることで、危うきには近寄らずに済んだ。
この舞台ではライアンらの護衛や、カインとの同盟のおかげで、後ろに引っ込んでいても大丈夫だった。
出会った他の人間はみな多少なりとも怪我、もしくは疲労しているのに自分は肉体的にはまったくの無傷、大した疲れもない。
すでに半分以上が死に絶えているというのに。これは奇跡的なことだといっていいだろう。
だが、今護衛はいない。五感も元に戻った。魔法屋にいたはずのイザたちは、いつの間にかいなくなっていた。
ライアンやアリーナには真正面から戦えば勝てないだろうし、カインはライアンを格下と言い切った。
残っているゲームの参加者にはさらに強い連中もいる。
そして、悪いことに動かせるような駒は一つもない。

とにかく、無駄に時間の過ごすのは避けるべきと考え、アイテムの使い方や立ち回りを再考。
机の上に支給品を広げる。
適当に店に入り、商品を手にとって調べる。イヴァリースと文明レベルはほぼ同じ。いや、むしろ多少遅れているかもしれない。
ちゃんとした材料さえあれば、ポーションを変質させ、衝撃を受けることで回復の効果を巡らせられるように加工できるのだが、
ないものねだりをしても仕方がない。

キンパツニキヲツケロというメモがあることを耳にしている。キンパツとやらはおそらくはカインのことだ。
厄介なものではあるが、知らぬ存ぜぬで通すことも出来るし、いざとなればサイファーあたりに押し付ければいい。
逆に、上手く利用すれば役には立つかもしれない。

現在いる場所はカナーン。盆地内へは谷を除いて出入り口はない。この谷で待ち伏せている連中がいるのは容易に想像できる。
通らないほうが賢明だろう。この地方にも一箇所は旅の扉は出現するはずだ。
また、この地方は唯一海に出られる。
持ち物にはももんじゃの尻尾とカヌー、そして時計がある。海の上でギリギリまで粘るという選択肢もあるが、
潮に流されて陸から離れて時間切れでは話にならない。実行するにしても、最後の手段だ。
ペンはペン。少しだけインクは残ったが、ペン以上でも以下でもない。
インパスの指輪をしても未だに使い方がよく分からない灰は保留。

草薙の剣はそのまま使えるとして、問題なのが皆殺しの剣だ。
ライアンに聞いた簡単な説明によると、これは呪われた武器であり、
相手が誰だろうが、たとえ身内だろうが殺したくなってしまう危険な代物なのだという。
が、一般人でも、それこそ子供でもその衝動を抑えることは可能らしい。
ただ、衝動を抑えようとすると他に気を向ける事が出来なくなるので、その間無防備になってしまうというわけだ。
一方で、本人と同調してしまえば狂戦士と化してしまうとのこと。使いどころに困る代物だ。

一つ気付いた事がある。この皆殺しの剣を初めとする呪われた装備品は、手に取ると外せなくなってしまうという。
だが、朝方これを拾ったときはなんともなかった。
「呪われているわけじゃないのか?」
インパスの指輪を付けた手で触れ、調べてみる。
突如、アルガスの脳裏に映像がなだれ込む。


正面に見える美しき町並みと広大な平野。殺し合いの舞台であると忘れさせてくれるくらいの、のびのびとした風景。
向こうには、太陽の光を受けてきらきらと輝く湖、荘厳さを感じさせる古き塔。
さらに向こうに広がる、岬を覆い尽くす森林地帯の鮮やかな緑色との相乗効果もあいまって、絶妙な美しさを醸し出す。

舞台に立つ人間は四人。剣士風の男と太めの男、それに弓使い風の女一人。そして倒れている男。
いや、もう一人、剣を握っている騎士風の男がいる。
礼でもしようというのだろうか、それとも治療をしようというのだろうか、女は騎士風の男に近づいてくる。
騎士風の男が三人を襲っていた者を倒したのだろう。
だが、彼は女に近付くと、まるで呼吸でもするかのように、自然に剣を抜き、彼女を貫く。
女は何が起こったのかも分からず、崩れ落ちる。そのまま騎士風の男は太った男に肉薄し、一刀の元に切り伏せる。
剣士風の男はザックから何か出そうとしたが、慌ててザックを落としてしまい、狼狽している間に袈裟斬りにされ、倒れ伏す。
あっという間に四人分の死体が作られた。瞬く間に作られた。


「ッッッッ!!!!!!」
剣がテーブルから転がり落ち、机の上のアイテムが散乱、おもちゃ箱をひっくり返したような派手な音を立てる。

「くそッ、なんだ今のはッ!?」
指輪をはめた手で剣に触れたところ、殺人の場面を見せられてしまった。
知らない場所での出来事ではない。一日目の朝、灯台から目撃した場面だ。
だが、遠くから眺めるのと、間近に見るのとでは全然違う。
腰掛け、支給品の水を一人分飲み干す。冷や汗が止まらない。

魔法の武具は普通の人間でも効果を引き出せるように作られている。
しかし、武具の中には魔法ではなく、怨念が込もっているものもあるわけだ。
侍のように怨念を利用できるものもいるのだが、大抵は装備者に害をなす。
インパスの指輪。アイテムを分析するだけでなく、魔力や念を覗き見る能力も得られる。
いや、念や魔力を覗き見る事が出来るから、アイテムを分析できるといったほうが正しいのかもしれないが。


皆殺しの剣の念は蓄積される。
深い森の中。日の光は届かない。そもそも太陽など存在しない。空の色は混沌。強い邪気と負の感情が立ち込める場所。
感じられるのは欲に塗れた人々の声と執念、それに伴う争い、金属音と悲鳴。そして、人体を切断する感触。
『くくくく……。それで いい。そうやって永遠に ころし合うが よい……』
地の底から湧いて来たような、魔女にも匹敵する恐ろしい声。魔王の喜びの声。
とある魔王によって作られた世界の、人々の負の感情に彩られた町で作られたこの剣は、
同じ時を何十度も何百度も彷徨い続け、数え切れないほど人間を斬り、魔王の念や人々の負の感情を受けてきた。
怨念の力、負の力は凄まじいものだ。
しかしそれでも、無差別な殺人を好まないなら、この剣はただの切れ味の鋭い剣以上にはなりえないのである。

アルガスには殺人への忌避、殺人への恐怖がある。この感情が存在する限り、剣に操られることはない。
しかし、もしこの剣と同調する人物の手に渡ってしまえば、その者はこの剣を手足のように扱い、そしてこの剣の手足となって、
その身が滅びるまで殺戮を繰り返すことになるのだろう。
一日目にこの剣を手にした、騎士風の男のように。


それははたして、どれほどの時がたったころだっただろうか?
彼はようやく落ち着く。
だが、アルガスの表情が誰の目にも明らかに、変わっていったのだ。
その目に宿る光は、殺意でも狂気でも正義でもない。



「飲みすぎた、こんな時に…ッ! トイレは……」
がちゃん。がらがら。
立ち上がろうとして、椅子から落ちた。
腰が抜けてしまっている。

「くそッッ!!!」
イラつきが頂点に達し、容器を壁に向かって叩き付ける。
こぽかん、というなんとも小気味よい音が部屋の中に響いた。
「不愉快だ!!」

【アルガス(不愉快)
 所持品:インパスの指輪 E.タークスの制服 草薙の剣 ももんじゃのしっぽ 聖者の灰 カヌー(縮小中)皆殺しの剣 高級腕時計
     妖精の羽ペン
 第一行動方針:様子を見る
 最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る】
【現在地:カナーンの街】