95話

第95話:じっと見つめる目


クラウドはまだ出方を決めかねている。
凄まじい気の満ちる二人のバトルフィールドには、容易に踏み込めない。
(この二人……強いな)
クラウドはぎりりと奥歯を噛みしめた。
この場に自分がいることなど、目の前の二人はまったく関係ないことのように対峙しているのだから。


セシルは怒りの剣を、ガーランドは狂気の剣をそれぞれ相手にぶつけ合った。
火花が散る。二人の剣士が相手の目を睨む。
「貴様は絶対に許さない」
「ほざけ、小僧」
剣と剣が悲鳴をあげて弾けとんだ。セシルは吹き飛びざまに長い足から蹴りを放ち、
ガーランドは身を反らせてかわす。
距離をとり、荒い息をつくセシル。目を血走らせ、憎い仇の顔を睨みつける。
ガーランドはニヤリと笑う。
「この剣が血を欲しがっている。貴様の血をな」
その顔は狂気に満ちていた。
顔だけではない。手にした剣がガーランドの声に反応し、身震いするほど暗い輝きを放った。
離れたところで、クラウドは息をのんだ。
あれが狂気を増幅させる暗黒の力なのだ。剣は、己を使うものに、力と狂気を授けている。
ガーランドは剣に使われ操られる道具となっていた。
「……五人目、その命もらったっ」
ガーランドが、出た。

セシルは、もう何をするでもなく、ただ迎えうった。掌に爪が食い込むほどに手を強く握りしめ、
凄烈な気合の声が迸った。
「貴様だけはぁーーっ!」
セシルが光の剣を振るい突撃する。
ガーランドは口元に薄ら笑いを浮かべて舞うように狂いの剣で空をなぎ払う。
ガーランドの剣は先が触れただけで相手の意思をくじく力があるようにクラウドは思えた。
その先にいるセシルの銀色の髪は逆立ち、狂気の剣の力に抵抗するかのようだった。

その時、ふっと遠くできらびやかなものが光った。
――銀髪?
クラウドは一瞬、二人の戦いから気を奪われた。
セシルの銀髪の力など取るに足らない輝きが遠くで見えたものから放たれたからだった。

ドスン。
空を舞っていたガーランドが突然機械じみた奇妙な動きを見せ、地に潜りこむように頭から前のめりに倒れていった。
「覚悟!」
セシルは剣を振り下ろし、ガーランドの頭蓋を真っ二つにした。
ガーランドは地に伏し、ぴくりとも動かなかった。
赤い血が流れ、まばらに草の生えた原野に広がっていった。

「勝った、のか……」
セシルは茫然とガーランドを見下ろした。
確かに勝ったが、最後の瞬間ガーランドは見えない力に押さえ込まれるように体勢を崩した……
なにかあったのか?
そういえば剣を振っていたガーランドの背で光が見えたような……

釈然としないセシルの身体に銀の銃弾が撃ち込まれた。
「がはっ……」
胸から口から、血が噴き出す。
セシルは自分の身体に何が起こったのか理解する間も無く、崩れ落ちた。
心臓を貫かれていたので、即死だった。

(あ、あれは……)
クラウドは戦慄するものを見た。
遠くで放たれた輝きは自分の想像を悪夢という形で具現化された。
――セフィロス
最強のソルジャー、セフィロスがクラウドの方を見ていた。

クラウドは背筋を凍らせた。見てはいけないものを見てしまった、そんな気がした。

彼らは確実にクラウドに近づいてくる。セフィロスと、もう一人。
歩き続け距離をつめ、クラウドをじっと見るや、ずっと無表情を決め込んでいたセフィロスがつくり笑いをうかべた。
『クラウド、殺してやるぞ』
そう言っているのが、クラウドの耳に届いた。
あるいは、少なくともそう聞こえた気がした。

クラウドは恐怖のあまり逃げ出した。

【クラウド 所持品:アルテマウェポン おしゃれなスーツ
 第一行動方針:セフィロスから逃げる  最終行動方針:ゲームから生きて抜ける】
【現在位置:アリアハン南の平原→北へ】

【セフィロス 支給品:村正
 行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘】
【クジャ 支給品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
 行動方針:最後まで生き残る】
【現在位置:アリアハン南の平原→アリアハン】

【セシル 死亡】
【ガーランド 死亡】
【残り 111名】

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最終更新:2008年01月26日 18:26
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