177話

第177話:RED MOON


リディアは、呆然とその惨劇を見つめていた。
その瞳に映るのは、幾多もの死体。大地を染める血。
そして、見知った者の成れの果て。
その全てが、眩しいほどの月に照らされ、彼女の瞳に映りこむ。
見たくないと思った。でも、目を逸らせない。
月光がそれを許さないから。それをいつまでも照らし続けているから。

最も見知った男が横たわるその横で、彼女は腰が抜けたように座り込む。
「嘘でしょ?」
これが、現実。わかっているのに。
「目を覚ましてよ…」
二度と目を開けることは無い。わかっているのに。
「ほら、月がすっごい綺麗でしょ?」
意識も何も、空っぽになったんだ。わかっているのに…
「ね、行こうよ…まだ終わってないから…」
彼らはもう、動かない。わかっているのに!

――涙は枯れることはないんだと、思った。
また、止め処ない涙が彼女の頬を濡らしていたから。

放送のときに理解したはずなのに。
どうして、目の当たりにすると、また悲しくなるのだろう。
彼らを死に至らしめたのが槍で貫かれた傷ではないことも、今はどうでもいいこと。
幾多もの横たわる死体の真ん中で、彼女は、泣いた。
大声で。無防備に。悲しみを隠す事無く。
薄情な月はまだ、惨劇を照らすのを止めない。
涙を流す少女の瞳にそれが映り続けるのを望むかのように。

【リディア 所持品:いかずちの杖、星のペンダント
 第一行動方針:泣く 第二行動方針:カインを止める(?)】
【現在位置:アリアハン南の平原】

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最終更新:2008年01月26日 18:27
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