264話

第264話:永遠にセリス


俺はまた守れなかった。

離れるべきではなかったのに。

俺は……俺は同じ事を………

また…守ってやれなかった………


ロックの目から涙が溢れ出す。

俺はレイチェルを守れなかった。
そして、セリスも守れなかったんだ。

辺りが霞んで見える。
この世の全てが絶望に覆われたように感じる。
心の底で危惧していたことは現実になった。

ギルガメッシュが俺の異変に気づいたのか、声をかけ続けているように見える。

「ダイジョウブカ!?モシカシテオマエノシリアイガ…」

何を言っているのかがよくわからない。
わからない。
言葉が意味を持ってないみたいだ。
いや、単に俺が理解しようとしていないだけか。

太陽の光が美しく大地を照りつけている。
絶望というのはこれほどまで、目に映る光景を綺麗にするものなのだろうか。
そして俺は今、フリオニールと同じ顔をしているのだろう。
ああ、きっとそうに違いない。

(俺は…
 そう…俺は…………)

ギルガメッシュが俺に何度も問いかけてくるのが見える。
その視界の隅で、レオンハルトがギルガメッシュに黙っておいてやれと諭しているのが目に映る。

「俺は…」
誰かがまた声を出したのだろうか。
…いや、今の声は俺自身が出したもの…だ。
俺は自分が声を出したという事実に驚いた。
まるで俺とは別の人間が話しているようで。

「俺は……俺は探さなければ…いけな……い。決して手を…離さ…ないって約束したから…」

(そう…か、そう…だ…
 俺は…セリスを……離さないと…決めたんだ…
 …そうか…セリスの………………死体を…探さなきゃ……
 生き返らせなきゃ…
 レイチェルの…ように例えわずか…な時間でも…)


ロックはうつろな顔で自分の荷物をおもむろに纏めてゆく。
「おい、お前は腐ったパンのようなこのゲームを破壊するって言っただろ!!」
無表情のロックを見て、ギルガメッシュが耐え切れず叫んだ。
「ああ…そう…俺はこのゲームをぶち壊す…つもり……………だった」
ロックはギルガメッシュに背を向けながら微かな声で答える。
「何だよ、オイ!知り合いが死んだのは別にお前だけじゃ――」
待て、とレオンハルトはギルガメッシュの言葉を遮る。

「…そうだな、俺達はそのままギルガメッシュについていく事にしよう。
 あんたは好きなことをしたらいい。
 腑抜け野郎はフリオニールだけで十分だ。二人もいらない。
 かえって一緒にいられたら迷惑だ。
 後追いでもなんでも勝手にしてくれ」
レオンハルトは突き放したように言い放つ。
「おい、それはちょっと言い過ぎ――」
ギルガメッシュの言葉を今度はロックが遮る。
「…そう…だな。俺は…今は戦えそうにも…ない。
 約束したのに…悪かった…」

ロックは荷物を纏め終わり、一人立ち去ろうとする。
当てもないが、セリスがどこにいるのかは今なら分かる気がしていた。
その去り行くロックにレオンハルトは呼びかけた。
「心の整理がついたら、また会おう」

「……ありがとう」



ところで一方、気絶していたフリオニールは先程の放送で意識を少し取り戻していた。
そして闇の中で聞こえた「マリア」という名前に心を大きく揺さぶられていた。

(…マリアは、また殺されてしまった…のか?
 ……魔女…に?)

「うわぁぁああぁああああああああ!!!!!!!!!!!!」

ロックが立ち去った後、辺り一帯に大声が響き渡ることになる。


【レオンハルト(負傷) 所持品:消え去り草 ロングソード
 第一行動方針:ギルガメッシュについていく 第二行動方針:ゲームの消滅】
【フリオニール(感情半喪失) 所持品:銅の剣
 第一行動方針:叫ぶ】
【ギルガメッシュ 所持品:厚底サンダル 種子島銃
 第一行動方針:サリィとわるぼうの所へ 第二行動方針:剣が鍛えあげられるのを待つ】

【ロック 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード
 第一行動方針:セリスの死体を捜す 最終行動方針:?】

【現在位置:レーベ北の平原】

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最終更新:2008年01月26日 18:43
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