FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 519話

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第519話:It's a small world


『本当は気付いているだろ?』
気配は感じないのに、存在を主張する誰かは、おもむろに語りだした。
『マリアを取り戻すだとか、そんな目標は、生きる為の理由を作っているだけ。
 もう自分で気付いているんだろう?』
聞いた事があるような、けれどどこか違和感のある、そして朧げな声だった。
『だけどそれを認めたら、ここに居る理由が無くなってしまう。
 生きていて良い理由が無くなってしまう。だから、気付いていないふりをしている。
 違うか? フリオニール』
名前を呼ばれ、フリオニールは仰向けになったまま、目線だけを動かした。
『……いや、ここは“俺”と呼ぶべきか?』
自分と同じ姿かたちをした人物が、そこにいる。
だからといって、別段、フリオニールは驚いたりはしなかった。
これは幻想で、言わば自分の影だと、どこかで曖昧に認識していた。
いや、影なのはむしろ自身かもしれない。
『それとも“おまえ”とか“あんた”とか?』
呼び方なんて、どうだっていい。どうせ自分自身なのだし。
口を動かす事も億劫に思え、フリオニール──現実のフリオニールは何も答えなかった。
『どうだっていいか。俺らしいな』
思っている事は、自分自身に伝わるようだった。
幻想のフリオニールは足音など立てずに移動すると、瓦礫の残骸へと腰掛けた。
何をしに現れたんだ。
そう問えば、希望通りに返事が来る。
『自分自身と向き合う必要があると思った。それだけだ』
自分がそう言うのなら、自分もそれを望んでいたのだろう。
と、現実のフリオニールはその言葉を受け入れた。
『俺は今、生きる事に悩んでいる』
そうなんだろうな。
『けれど、そんな事に悩む必要は無い』
そんな事、なのだろうか。
『そうだ』

幻想のフリオニールは空を仰ぎ、降り注ぐ星屑を求めるかのように片手を掲げた。
『生きる事に、理由なんて要らないんだ』
握り締めた掌には、何も掴まらなかった。
『全ての生きとし生ける物は、他の生き物を犠牲にして生きる。
 俺達は、植物を殺し、動物を殺し、生きる為に食べる。
 すみかを作る為に木を切り倒し、観賞する為に花を毟り取り、耳障りな蝿を叩き潰し、庭を荒らす鼠を始末する。
 地位だ、名誉だ、財産だ、自らが作り出した強者の証明、くだらない称号を得たいが為に人同士は争う』
幻想のフリオニールは立ち上がり、横たわる現実のフリオニールの周囲を闊歩しながら、続けた。
『立派な理由があろうとなかろうと、俺達は弱者を犠牲にする。それが俺達の弱肉強食だ』
立ち止まり、現実のフリオニールを見下ろす。
『弱肉強食、とは?』
弱者が強者の餌食となり、弱者の犠牲の上に強者が栄える事。
それが弱肉強食。
『そう。全ての生き物は、各々の弱肉強食の下に生きている。世界は弱肉強食で成り立っている。
 元々、世界そのものが、殺し殺される殺戮劇の舞台なんだ。ゆえに……』
幻想のフリオニールは、切れ長の瞳を更に細めた。
『今、こうして殺し合う俺達は、単なる世界の縮図だ』
そして再び天を仰ぎ、両手を広げる。
『果てしなく思える世界でも、果てはある。
 終わりの判らない長い長い時間にも、終わりはある。
 数の計り知れない生き物でも、いつの日か来る最後の時には、ゼロになる。
 生きる為に弱者を犠牲にし、ただ純粋に生きる……ここは小さな世界だ』
果ての見える舞台と、制限された時間と、定めたれた数。
だから、小さな世界、なのか。
『生きる事に、理由は必要ない。生きているから、生きる。それだけだ』
幻想のフリオニールは、現実のフリオニールへと視線を戻す。

『全ての生き物の価値は同じで、そもそも価値なんて物は無い。
 生きるもの、犠牲になるもの、どちらになろうとも、それは当然の事で、気に留める事じゃない。
 生きる事は、犠牲にする事。生きる事は、殺す事。それが生き物の常識。世界の姿だ』
幻想のフリオニールは微笑を浮かべ、現実のフリオニールの手を取った。
『さあ、生きよう、純粋に。ここで──』
強い力に引かれ、フリオニールは立ち上がった。
「──ああ。小さな世界の上で」
今、フリオニールは一つしか存在しなかった。
幻想の自分は、はたして幻想だったのだろうか。
現実の自分は、はたして現実だったのだろうか。
そしてここに存在しているのは、現実か、幻想か、はたしてどちらの自分なのだろうか。
フリオニール自身にも判らないが、そんな事は、どうだって良かった。
これからは、純粋に、生きて、生きる為に、殺すだけだ。
それだけ、だ。

【フリオニール(HP1/4 MP3/5)
 所持品:なし 第一行動方針:? 基本行動方針:生きる=殺す】
【現在位置:カズスの村 廃墟の奥】