438話

第438話:夕暮れの寸劇


――小鳥と野兎が、夕暮れの空の下にいた。
 小鳥は、そびえ立つ塔の窓辺を舞っていた。
 野兎は、城門に立つ人影を追っていた。


野兎は見ていた。
達観とも呆れともつかぬ表情を浮かべる、中年の男の姿を。
その視線の先にある、不機嫌そうに先を行く女性と、必死で追いすがる青年の姿を。

「ユウナ、何でそんなにスネてるんだよ……俺、何か悪いことでもしたッスか?」
「別に、拗ねてなんかないよ」
「だったら、何でさっきから俺の方向いてくれないんだよ?」
「キミだってそうじゃない」

野兎は知っている。
青年は、ここにはいない仲間を案じる言葉だけを言い続けていたことを。
そして青年と同世代の少年二人、彼らが森の中で交わしていた会話は
単純に身体や心を労わっているだけとはいえなかったことを。

流行のスポーツ、自分達の町、欲しい物、将来の夢、ファッション、食べ物……
文明レベルが近いからこそ分かち合える話題、同性だからこそ話せる事柄。
そこには、女性や他の二人が入り込む余地は少なく。
三年間という溝と、女性の知らない誰かをも心配していた青年の態度が、疎外感に拍車をかけた。
そうして、マキナという言葉が通じなかった時に感じた一抹の寂しさは、時とともに募り続け。
――気がついた時には、苛立ちに変わるぐらいに膨れ上がってしまったのだろう。

「なぁ……ホントどうしちゃったんだよ? 悪いことしたなら謝るから……」
「どうもしてないってば。ね、早く行きましょう、プサンさん」
「……ユウナぁ~!」

情けなさが溢れる声を背に、女性は鉄扉に手をかけ、中年男の袖を引っ張り城の中に入っていく。
青年がその後を追っていくのを確かめてから、野兎はゆっくり森へと引き返した。



小鳥は静かに聞いていた。
止まらぬ涙が落ちる音を、沈んだ少女の声を。
不幸に見舞われた親と子を、案じる男達の足音を。
けれどやがて、何かを思い立ったかのように、バルコニーに舞い降りた。
そして小さなくちばしで、コツコツとガラスを叩く。

「入りたいの?」
気付いた少女が問い掛けた。
彼女の視線に気付いた青年が、微笑みながらガラス戸を開ける。
鳥はしばらく部屋を駆けてから、少女の手に止まった。

「お兄さん……小鳥さんがね、"お父さんが泣いてる"って言ってる……」
「どこの世界でも物知りだねぇ、小鳥さんは。彼らなら……完璧に人の悲しみを取り除く方法も知ってるのかな」
青年の声を聞きながら、少女は導くように、手を外に差し伸べた。
「お願い小鳥さん。お父さんが泣くのを、今は止めないであげて……お願い」
涙の代わりに祈りをこぼして、小鳥を薄紫の空へと戻す。

彼女の言葉を聞いたか聞かずか。
小鳥は懸命に羽ばたいて、何度か塔の周りを旋回し、別の窓へ止まった。
そして、錆びた鉄と生臭い死臭が漂う部屋へ飛び込む。
金色の瞳に赤い色彩を映して。
窓辺に止まった小鳥は、泣き崩れる男を見つめた。



――その城には、二匹のネズミがいた。
 一匹は塔の一室に、一匹は地下の泉の傍に。
 人の存在に臆することなく、二匹はただ、じっと見ていた。


上階から伝わる振動に、ネズミは身を固くする。
同時に、少年が目を開けた。
「気付いたか」
男の声に、少年は小さく肯く。
「ここまで無遠慮に入ってこられればな。
 ……それよりレオンハルト、僕の本が見当たらないが何処にやった?」
「お前には判らない所に仕舞った」
「勝手に仕舞うなよ。人の形見なんだぞ?
 母さんみたいな事を言ってないで返してくれ」
「官能小説なんぞを形見にするな。それにあんな内容を朗読されたら気が散って敵わん」
「別にいいだろう。ささやかな休息の合間に読書を楽しむぐらい……」
「想像で楽しむぐらい、の間違いじゃないのか」

二人が言い争っている間にも、音と振動は少しづつ近づいてきている。
そして、それがはっきりとした足音と囁き声として聞こえ始めた時。
二人は言い争うのを止め、お互いの得物を手にした。
「そこで止まれ」
階段の奥から現れた二つの影に向かい、少年は静かに言い放つ。
影達は一瞬竦み、同時に、後ろから別の影が踊り出る。

「戦う意思がないならば、武器を投げ捨てろ」
「……あんた達もそうしてくれるってなら、やってもいいッスけど」
少年の言葉に若い男の声が応じた。彼が、他の二人を庇うように立つ影の主らしい。
勇者と黒騎士は顔を見合わせ、肯き合う。
「わかった。同時に武器を捨てよう。
 合図は君たちに任せる。それでいいか?」

わずかな沈黙の後、「オッケーッス」という返事が戻ってきた。
そして女性らしき澄んだ声が、「5、4、3……」とカウントを数えはじめる。
それが「1」になった時、ネズミはびくっと毛を逆立て、部屋の隅へと走った。
階段の上と下で、幾つもの金属音が盛大に鳴り響いたものだから。

「良かった、話が通じるヤツでさ」
強張りの消えない笑顔を張り付かせながら降りてきたのは、緑のバンダナを巻いた青年だった。
続いて、風変わりなドレスを身に纏った女性と、何とも冴えない風体の中年男性が姿を表す。

「良くここがわかったな」
ここに来るには、巧妙に周囲の石壁にカムフラージュされた扉を見つけ出さなければならない。
男たちも、偶然の加護がなければ気付かなかっただろう。
だからこそ、感心したように呟いたのだが。

「いや、扉開きっぱなしだったから……誰かいるのかなーと思って」
青年の言葉に、黒騎士は顔を引きつらせ、少年を見やる。
「レオンハルト。肝心の戸締りを忘れてどうするんだ」
「それは俺のセリフだッ!!」
すまし顔をした少年の鳩尾に、拳が滑り込んだ。ネズミからすれば本日二回目となる光景だ。
今回は多少手加減したのか、少年が気絶する事はなかったが。

「ま、まぁ……入り口付近に、貴方達の足跡やら痕跡やらが残っていましたからね。
 きちんと閉じていたとしても、この場所は見つけていたと思いますよ」
中年男が取り成すように言った。
「そうそう、それに悪いヤツには見つからなかったんだしさ」 
青年にも言われ、それでようやく男性は攻撃の手を止める。
解放された少年は、息を整えてから三人に向き直った。
「そ、そうだな……名乗るのが遅れたが、僕はアルス。この男はレオンハルトだ。
 訳あってここでずっと身を休めていたのだが、東塔の方にいたのは君達か?」
「東塔?」
「ああ。数人が潜伏しているような気配を感じたのだが……その様子では違うみたいだな」
「俺達、さっき来たばっかだし……なぁ?」
「とりあえずこの建物が目についたから、中に入ってみたんです。
 他の所はまだ調べていません」

青年の言葉を引き継いで、女性が答える。
少年は軽く首を傾げながらも、嘘をついていない様子だけは悟ったのか、話題を切り替えた。

「そうか、わかった。
 ところで、フリオニールという銀髪……あるいはギルダー、アーヴァイン、スコール、マッシュという奴らを知らないか?
 セージという青髪の男や、フルートという水色の髪の女性についてでもいいんだが」
「フルートにアーヴィンにスコール?!」「フルートさんにアーヴァイン君にギルダーさん!?」

素っ頓狂な大声に、ネズミは驚いて飛び上がった。
対照的に、少年は冷静な態度を装い、感情を抑えるように問い掛ける。
「……知っているのか?」
「知ってるも何も……そのラインナップは何なんッスか?
 スコールって、ゼルとアーヴィンとこの班長とかって人じゃ……」
「ギルダーさんって、サックスさんのお友達だよね?
 あ! そういえばアルスって、フルートさんが言ってた……勇者さん!?」

きゃいきゃいと騒ぎ出すカップルに、少年は刃のような視線を注ぐ。
「……フルートと、ギルダーの仲間と、アーヴァイン……?
 どういうことなんだ? 彼女と奴らと君たちは、どういう関係なんだ?」

少年がそう言った途端、二人ははっとした表情を浮かべ、気まずそうに口をつぐんだ。
しきりに視線を交し合いながら、沈黙を続ける二人に変わって、中年の男が進みでる。
「私から説明しますよ。……話し難いことも色々と有りましたからね」



十字の大剣を墓標として冷たい腕に抱かせた後、三人の男は無言でその場を去っていく。
彼らの動向に気づいたネズミは、四つの手足を小刻みに動かし、飛ぶような速さで追いかけた。

「良かったのか?」
歩きながら、金髪の男が問い掛ける。
亡き女騎士から譲り受けた黒服に身を包んだ男は、静かな口調で答えた。
「優れた剣とは、例え無銘であろうと持ち主を選ぶものだ。
 あれは人を守るための剣。私が携えたとて使いこなせぬわ」

――騎士の誇りと生き様を刻んだ剣。その主は、永遠にアグリアス一人しかおらぬ。
その呟きを聞いたのは、男自身とネズミだけで。
「人を選ぶ、か。……確かに、私もこの剣を扱う自信はないな」
名前に『光』を冠する剣。
幾多の血に汚れながら、なお輝きを失わぬ刀身を、砂漠の王は頭上に翳しながら見やる。
かつて皇帝と呼ばれた男は、薄紅の刃を一瞥し、思い出すように言った。
「本音を言えば、今一度あの血塗られし剣を携えたいところだがな……
 私も無粋な真似は好かぬし、あれが真に私に相応しき剣ならば、三度会いまみえる機があるはず。
 しばしの間は、この鞭を使わせてもらうことにしよう。
 扱い馴れているわけではないが……愚か者共への仕置きに振るってやるのも、悪くはなさそうだ」
金髪の男は、彼の手に握られた鋼鉄製のグリップに視線を移した。
彼の国の技術レベルさえも超えた、科学の粋を結集したともいうべき機構に気を引かれたのだろう。
だから黒服の男が一瞬見せた、冷酷な眼光には気付かない。
最も――気付いたとしても、何も言わなかっただろうが。

「そういえば……鞭で思い出したが、こちらの二つはビアンカの持ち物だったそうだな」
金髪の男は顔を上げ、焔のような魔力を纏った鞭と、風変わりなデザインの指輪を取り出した。
怜悧な声が「そうだ」と首肯する。
「……私個人の願望としては、リュカかタバサに渡してやりたいのだが」
「勝手にすればよかろう」
突っぱねるような物言いに、金髪の男は「感謝する」と頭を下げた。
そしてふと、窓辺に視線を移す。

「もう日没か……カズスでの約束は、確か二時間後だったな……」

紅から薄紫に、そして暗闇に。
紫陽花のように移りゆく光を見やりながら、彼は足を止めた。
ネズミは壁と柱の間に陣取り、耳と首とをせわしなく動かす。

「約束?」
「ああ。ここに来る途中で出会ったカインという男と待ち合わせをしたんだ。
 ……正確に言えば、一方的に押し付けられたんだが」
「……何処の馬の骨ともわからぬ人間に義理立てする道理はなかろう」
「彼はアリーナの正体を知らない。簡素なものといえ、手当てをしていたのだからな。
 伝えるべきことは伝えた方がいいだろう」
「下らん事だな。愚者が招いた災いの責を負ってやる必要などどこにある」
黒服の男に、しかし金髪の男はゆっくりと首を横に振る。
「彼は手当てこそしたが、助からないと踏んで、あの女を殺そうとしていた。
 それを止めたのが私で、リュカとシンシアが回復魔法を使えるということを伝えたのも私だ。
 全ての責は私にある。私さえいなければ、あの女が生き長らえることなど無かったのだからな」

淡々とした声の裏に隠された激情は、どれほどのものだったのか。
ネズミの見ていた床に、赤い雫が弾けた。
唇の端から流れた血の筋のせいで。

「昔、私が皇帝だった頃、部下の一人が言っていた。
 失敗を悔いることは簡単だが、それだけでは何も生み出せぬと」
「良い部下だな」
「……野心も覚悟も貫けぬ、つまらぬ男だったがな」
黒服の男は、何故か自嘲するように笑い、唯一沈黙を保っていた男に振り向く。

「ゴゴよ。私はこれからカズスに向かおうと思う。
 お前はどうする。そこの男はお前の仲間なのだろう?」

目を見開く金髪の男の前で、ゴゴと呼ばれた男は事もなげに答える。
「私はお前の物真似をしている。今までも、これから先も、お前の物真似を続けるだろう」
「そうか」、と、銀髪の男は静かに呟いた。
そして二人はネズミの前を通り過ぎ、下り階段に足をかける。
そのまま下へ降りていこうとする彼らを、金髪の男が呼び止めた。

「待ってくれ、どういうことだ? 貴方達が行く理由など、それこそ何処にもないだろう?」
「私はマティウスの物真似をしている。それが理由だ」

物真似師の言葉に、青い視線が黒服の男に注がれる。
ネズミの瞳も、流れるような銀の髪に向けられた。
三対の目を前に、男は指を三本立てる。

「私の理由は三つある。
 まず、私は元々この城を出るつもりだった。今まで残っていたのは傷の治療を済ませるために過ぎん。
 タバサ達の容態も安定したようだし、これ以上留まる必要はあるまい」
薬指が折られる。
「次に、今の状況で守りに入っても、事態が好転するとは思えん。
 後の被害を減らすためにも、戦える人間は率先して敵を倒しに行くべきだろう。
 それに私は人の情などというものを解するのが不得手でな、あの親子が必要としているような支えにはなれぬ。
 戦力を保持し、かつしがらみの無い者が戦いに赴く。当然の帰結ではないか」
――あの親子の力には興味が尽きんが、そんなことにかまけている場合ではないからな。
そう続いてから、中指が折られた。
「……最後の一つは?」
金髪の男が促すように聞く。
黒服の男は呟くように答えた。

「何故か、下らぬ事をしてみたくなった」

呆気に取られた砂漠の王に、皇帝と呼ばれた男は口の端を歪める。
それから、柱の影で動いていた小動物に目をやった。
「――西の棟にネズミが数匹入り込んでいるようだ。
 今さら接触してくるとも思えんが、油断しない方が良かろう」
それだけを言い残し、二人は階段を下りていった。



中年男の話を聞き終えた少年は、怒りとも悲しみともつかぬ表情で、三人を見つめた。
「――つまり、フルートとサックスが結託し、イクサスを殺した。
 その直後に爆発が起こったため、君たちは二人の生死を確かめることなく、仲間とアーヴァインを連れて町を出た。
 そう言うことなんだな?」

「そうッス。でも、爆発で運良く生きてたとしても……他のヤツに殺されたかもしれない」
「どういうことだ?」
男が問うと、青年は項垂れながら、躊躇いがちに答えた。
「悪いヤツだった頃のアーヴィンと組んでたカインって男が、カズスの町に行ったんだ。
 でも、最初、あいつが人殺しだなんてわからなくて……フルート達に気をつけろって言っちまって、だから……」

「カインだと!?」
男は目を見開いて叫んだ。
「そいつは……青い飛竜を連れていなかったか?」
「飛竜……あ、ああ、連れていたっつーか乗ってたッスよ。けど、なんで……」
困惑する青年に答えることもなく、彼は急いで自分の荷物を拾い上げる。
「ど、どうかしたんッスか?」
「奴の飛竜、スミスは、俺の友フリオニールを唆して殺人者へ変えた張本人だ。
 そして、フリオニールもカズスに向かったらしい。
 俺の推測だが……恐らく、奴らはカズスに集結して、何か事を仕掛ける気だ」
そこまで言って、男は少年に向き直る。

「アルス。お前とイクサス、フルート、アーヴァインがどんな関係だったのかは俺は知らん。
 だが、この話が真実ならば、事態は急を要する。
 俺はカズスへ発つ。お前が行く、行かぬに関わらずともな」

少年は黙っていたが、やがて、男と同じように荷物を拾い上げた。

「僕の知るフルートは……手に負えない部分はあったけれど、命惜しさに罪を犯すような人間ではない。
 だが、君たちの言う事が真実ならば、僕は彼女を殺してでも止めよう。
 レオンハルト、僕も行く。これ以上の犠牲者を出さない為に、殺人者を殺す為にな」

少年の目に宿る強い光。
その意味をネズミが解することはなかったが、青年達には伝わったらしい。
俯いて、ゆっくりと、悲しさと寂しさが入り混じったような声を絞り出す。

「なぁ……心を入れ替えて、生き直そうとしてるヤツでも……殺すのか?」
「遺された人が悲しむ事を知っていて、なお他人を殺せる様な奴ならばな」
少年は切り捨てるように答え、踵を返して階段を上り始めた。

「……フルートさんとサックスさんは」
唐突に女性が呟く。
「もし仲間が過ちを犯したら、一発殴ってしまうかもしれないけれど、その後でうんと話し合おうと言っていました。
 ……例え、それが私達を騙す為の、偽りの言葉だったとしても……
 私も……断罪するより、そうやって許す事を選びたい」

――少年は足を止めなかった。
ただ、一言だけ残した。
自分自身にも言い聞かせようとするかのように。

「ある男が言っていた……覚悟があるのにやり遂げぬ人間は傲慢だと。
 ――僕は悪を討つと決めた。真に傲慢な人間にならぬためにも、この覚悟を貫き通す」


そうして二人が出て行った後、ネズミは二つの呟きを聞いた。
一つは青年のもの。悲しげな声で、下を向いたまま囁いた。
「どんなヤツだって……死んでも、誰にも悲しまれない人間なんて、どこにもいないっつーの」

ネズミは知らない。彼がどんな人物と出会い、どんな経験をしてきたかも。
その言葉に込められた、複雑な気持ちも。

そして青年と女性が上階を調べに行き、一人残った中年男が、ネズミに向かって呟いた。
「いつの世であろうと、覚悟と命は万能の免罪符か。
 ……異界の勇者よ。悪を討つことは赦されても、悪に味方する者を討つ事までが赦されるとは限らぬぞ」

ネズミにはわからない。彼がどんな存在で、何を見てきたのかも。
その言葉に込められた、複雑な思いも。



小鳥は静かにさえずった。
血の匂いが満ちた部屋の中で。
果てようとする涙と声に、アンコールを促すように。

野兎は見ていた。
皇帝と物真似師が城を出て行くのを。その数分後に、勇者と黒騎士が森へと駆けていったのを。
木の根元に腰を落ち着けて、ただ、見ていた。

塔にいるネズミは聞いていた。
砂漠の国の王が、少女と賢者の前で語るのを。
ナレーションを聞き逃すまいとするかのように、耳をせわしなく動かしながら。

泉の傍で、ネズミは静かに目を閉じた。
劇を見ていた観客が、その退屈さに疲れて眠りにつこうとするかのように。


昼という時は終わりを告げても――この劇はまだ終わらない。




【幕間】
森の中。少年はふいにあることを思い出し、隣を走る男を睨みつけた。
「そういえばレオンハルト、小説はどうしたんだ?」
「まだ言うか」
「当たり前だ。仲間の形見だぞ」
男は小さく息を吐き、諦めたように首を横に振る。
「……一冊だけは俺が持っている。後はあの城に置いてきた」
「――なんだって?」
「二重人格者の男性強姦だの、ペドフィリアだの、爛れた趣味を他人に見られたらどうするんだ?
 比較的まともそうな一冊を残してやっただけでも有り難いと思え!」



――柱の影に隠されるように置いてあったソレに気付いたのは、不幸な事に青年の方だった。
「何だコレ?」
表紙に記されたタイトルに気付かぬまま、二冊の本を拾い上げ、その片方を何とはなしに捲ってみる。

 『腕も、足も、頬も、蜜を滴らせる花びらも。魔法使いは口付けを交わしたまま、幼い肢体をあますことなく愛撫する。
  未成熟ながらも、いや、未成熟であるが故に完璧な美しさを備えた姿。
  少女は宝石のような青い瞳を潤ませて、今にも理性が弾けそうな魔法使いに問い掛ける。
  「セージお兄さん……私のこと、好き?」
  「もちろんだよ」
  魔法使いは劣情を必死で押し隠し、にっこりと笑って答えた。
  「僕は、世界で一番――』

「……さっきから、何を熱心に読んでるのかな?」
「ユ、ユウナ!?」
「知らなかったな……キミがそんな人だったなんて」
「い、いや! 違う、これは全然違うんだって!
 たまたま落ちてて、気になって拾って確かめてみたらこんな内容だってだけで……」
「いいよ。キミも男の子だもんね、そういうの読んだりするよね。
 でも、リルム相手にそういうことやったら一発殴る程度じゃ許さないからね」
「俺はンな趣味じゃないって……信じてくれッスよ、ユウナぁー!」



少年と男、青年と女性。
それぞれが仲直りするのは……あったとしても、多分、先の話。

【ユウナ(ジョブ:魔銃士、MP1/2)  所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服 、官能小説2冊
 第一行動方針:サスーンを探索した後、リルム達と合流する
 第二行動方針:機械に詳しい人を探し、首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける】
【現在地:サスーン城、隠し通路の奥を探索中】

【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋 ポケットティッシュ×4 アポカリプス+マテリア(かいふく) ビアンカのリボン ブラッドソード
 第一行動方針:今はただ泣き叫ぶ 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【現在位置:サスーン城東棟サラの寝室】

【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 血のついたお鍋 再研究メモ
 ライトブリンガー ファイアビュート 雷の指輪
 第一行動方針:リュカを待つ/ビアンカの遺品をリュカとタバサに渡す
 第二行動方針:アリーナを殺し首輪を手に入れる
 第三行動方針:仲間を探す 第四行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度) 所持品:ハリセン ナイフ ギルダーの形見の帽子
 第一行動方針:リュカを待つ 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復) 所持品:E:普通の服 ストロスの杖 キノコ図鑑 悟りの書 服数着
 第一行動方針:リュカを待つ 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】
【現在位置:サスーン城東棟の一室】

【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ビームウィップ
 第一行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非交戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレーカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン城→カズスへ】

【レオンハルト(MP消費)
 所持品:消え去り草 ロングソード  官能小説1冊
 第一行動方針:フリオニールとカインを追い、カズスに向かう
 第ニ行動方針:フリオニールを止める 
 最終行動方針:ゲームの消滅】
【アルス(MP3/5程度)
 所持品:ドラゴンテイル ドラゴンシールド 番傘
 第一行動方針:フリオニールを追う  第二行動方針:イクサスの言う4人を探し、PKを減らす
 最終行動方針:仲間と共にゲームを抜ける】
【現在位置:サスーン城→カズスへ】

クロスクレイモアはアグリアスの遺体の上に安置

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最終更新:2008年01月30日 14:10
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