467話

第467話:どうにもならない状況で


「どうして、助けてあげられなかったのかな」
俯いて、膝を抱えた少女の耳に、若者の声が届く。
「『大切なのは結果じゃない』」
共に旅した仲間が、旅の終着点で言い放ったフレーズ。
奇妙な懐かしさを覚えながら、リルムは瞼を閉じる。
脳裏に浮かぶのは、誰よりも頼りになった二人の女性の姿。
「リルムじゃなくて、ティナやセリスだったら……きっと助けられてたよね」
物真似師は夜空を仰ぎ、呟く。
「『過ぎ去ったことにしばられ、未来の時間をむだにすることはたやすい。
 だが、それは何も生み出さぬ。前に進むことができぬ』」
様々なものを失った侍が、大切な者を亡くした女性に届けた言葉。
奇妙な服の奥にある眼差しも、心なしか、文面をしたためた男のそれに似ているような気がする。
「……けど」
リルムはまだ心の整理ができないのだというように、顔を伏せる。
そんな彼女を見たゴゴの口から出たのは――

「『こらあー!! リルム!! しゃきっとせんかあ!!!』」
「!?」
なんと、少女と同じ声。
思わず目を丸くしたリルムに、ゴゴはさらに言葉を続ける。
「『弱音ばっかりはいてると似顔絵描くぞ!』」
彼女が持っている絵筆の代わりなのか、右手に持った枯れ枝をぴょこぴょこと動かす。
道化じみた、あまりにも道化じみた挙動に、リルムはようやく破願した。
「似てないよ、ゴゴ。全然似てない。ガンホーのジジイ並みの大根役者だよ」
涙を拭いながらこぼした、少女の感想に、物真似師は小さく肩を落とす。
物真似に生きる彼にとって、似ていないという評価は最大にして唯一の屈辱だ。
けれども、本気で落ち込まずにいられるのは、少女の微笑があったからか。
そんな彼を余所に、小さな声でリルムは囁く。

「ありがと」
吹き荒ぶ風に紛れたそれは、果たして物真似師の耳に届いたかどうか。



二人から数メートルも離れていない場所で、揺れる焚き火が、特徴的なシルエットを映し出す。
「つまり、詳しい事はわからぬということか?」
同行者であるゴゴ達とは反対側。
わだかまる闇の中にて墓を作っている少年達を横目に、マティウスは状況の把握に努める。
もっとも、相手をするゼルも、戦況を理解しきれてはいないのだが。
「ああ。アイツが戻ってきたのと同時に襲われたからな。
 あの子供達をどこで拾ってきたのか、それもわかんねぇ。
 ま、わかんねーといえば、リルムの付き合いもよくわかんねーけどよ」

双方にとって幸いだったのは、リルムとゴゴが知己であったことだ。
乱入者が現れたために生まれた隙。それを突かれ、奪われたものの重さ。
ゼル達からしてみれば、やり場のない怒りを感じざるを得ない。
決裂してもおかしくない関係を修復したのが、リルム達の存在だった。

「あんな年で、物真似師だの、王様だの、泥棒だの、将軍だのと知り合いだってんだからなぁ。
 どういう人生歩んできたんだか、気になっちまうぜ」
「確かにな。どういう関係で仲間となったのか、興味はあるが……」
ゼルのぼやきを余所に、パラメキアの皇帝は手にしたロッドを弄ぶ。
一振りすれば、高出力のエネルギーで敵を薙ぎ払う、恐るべき兵器。
けれども今は、短い鉄の棒として、マティウスの掌で踊るのみ。
――『今』は。

「だが、それよりも気になるのは、あの魔道士だ」
マティウスの呟きに、ゼルは目をしばたたかせる。
「あ、アイツが? なななな、なん、なんで?」
動揺をストレートに態度に出す。
ここまで嘘をつけない人間も珍しいと、マティウスは内心苦笑する。
「白魔導士の姿をしているくせに、何故か白魔法を使わない。
 カインという名で呼ばれているが、リストに乗っていた男とあの魔道士は全く似つかない。
 それに、お前とリルムは奴の名を呼ぶことを避けているだろう? どれ一つ取っても不自然だ」

実際はエドガー達から聞いた情報と照らし合わせているのだが、説明するのも面倒だし、多少のハッタリは必要だ。
眼光鋭く見据えるマティウスに、青年はわずかに顔を引きつらせる。
二人の視線はしばし交錯し――ゼルの方が折れた。
「鋭いな、アンタ。
 ……確かにアイツは魔道士なんかじゃないし、カインて名前でもねぇ」
ゼルは仲間の姿を見やりながら、困ったように眉をひそめる。
「大きな声じゃ言えねーけど、アイツも色々ワケありなんだ。
 下手すりゃアイツの身の安全にも関わるし、俺が勝手に喋っちまうわけにはいかねーよ」
気まずそうに頭を掻くゼル。その態度自体が、どのような『ワケ』なのかを雄弁に物語っている。
そう。セージ達と赤魔道士のような関係が、他にないとは限らないだろう。
マティウスはそれ以上問い詰めることを止め、子供達の方に視線を向けた。



「カイン兄ちゃん、カインて人じゃない……?」
光の傍から聞こえてきた言葉に、目を充血させたテリーが、不安げな表情で問い掛ける。
十分大きな声で喋っているゼルの口を、ガムテープで塞ぎたい衝動に駆られながら、アーヴァインは答えた。
「ゴメンね。さっきのストーカー女に名前を知られたくなくて、ウソついたんだ。
 ホントは……アーヴァイン。友達はアーヴィンって呼んでる」
「あーばいん? あーびん?」
眉を潜めるテリーに、アーヴァインは一瞬、自分の悪名が知られていたのかと肝を冷やす。
だが、不安は杞憂に終わった。
テリーは鼻を啜りながら、普段とは比べ物にならないほど濁り、掠れた声で呟く。
「そういや、姉ちゃん達が言ってたっけ。
 弱くはないけど、オンナ好きで、キザで、影が薄くて、ハクジョーモノで、気弱でヘタレなのがいるって」
「エエエエエ~。リノアがそう言ったの~?」
「半分ぐらいはサイファー兄ちゃん」
「サイファー? あいつもいたんだ……
 もー、相変わらずサイファーなんだからなぁ。ヒドイヤツだよ、まったく」
アーヴァインは呆れたように言いながら、手についた土を払った。
砂や泥の奥にある粘ついた感触は、アーヴァイン自身の血だろうか、トンヌラの血だろうか?
それとも―― ……

「どうしたの?」
掌を凝視していた青年は、幼子の声で我に帰る。
心配そうに自分を見上げるテリーに、アーヴァインは微笑みを浮かべてみせた。
「何でもないよ。ただ、トンヌラ君やリノアが、天国で幸せにしてるといいなって思ってさ」
「……天国、かぁ」
テリーは顔を上げ、星の瞬く空を仰ぐ。
瞳から溢れていた幾筋もの涙が、月明かりに照らされる。
「いつかオレが死んで、天国に行く日がきたら、トンヌラ達ともまた会えるよな?」
その呟きに、アーヴァインは目を閉じる。
「大人になって、恋とかして、飽きるぐらい人生楽しんでからさ。
 今はまだ、幾らなんでも早すぎるよ」
「わかってる」
テリーは両目をごしごしと拭う。それでも、涙は後から後から溢れ続ける。
ぼろぼろと顔を濡らしながら、テリーは手にした竜のうろこに視線を落とす。
「トンヌラ、オレに、ありがとうって言ってくれたんだ。
 オレ、いつもトンヌラ達に守られてばっかりで、それなのに……ありがとうって言ってくれたんだ」
二人分の形見になってしまった鱗に、雫がぽたぽたと落ちて、弾けた。
それをぎゅっと握り締める。固く、固く、握り続ける。
「オレはモンスターマスターだ。信じてくれたトンヌラ達のためにも、頑張って生きないとさ。
 それで、生き抜いて強くなるんだ。誰も死なせずに済むぐらい、強くなるんだ。
 強くなって、みんなが胸張れるような――最高のファイターになるんだ」
いつか出会った剣士が、剣を振る力も無い少年に贈った称号。
真にその名に相応しくなってみせるという決意が、テリーの胸に宿っていた。
「そうそう、その意気だよ」
アーヴァインはそっと、テリーの頭に手をやる。
優しく頭を撫でるつもりの右手は、しかし、どこにも触れぬまま、下げられた。
「肩、大丈夫?」
青年の挙動に気付いたテリーが、突き立ったままの矢を見つめた。
リルムが落ち込んでいるのとトンヌラを埋葬するのとで、本人が治療を先送りにしている。
刺しっぱなしなのは、迂闊に抜けば出血することを知っているからだ。
「全然、大丈夫だよ。そんなに深手じゃないしね~」
アーヴァインは笑顔を作り、苦痛をおくびにも出さずに右腕を動かしてみせた。

それでテリーは安心したのか、「良かった」と呟いた。
微笑んだつもりだったのだろうその顔は、涙と鼻水で、どうにもならないほど汚れていて。
自分の愚かさと無力さを思い知らされ、青年は目を閉じる。
――できることなら、このまま泣かせてやりたい。
けれども、二人には、やらねばならぬことがあった。

「テリー。辛いの、我慢できるかい?」
少年は首を縦に振る。
「これからみんなに事情を説明しないといけない。
 思い出したくない事も思い出すことになる。……我慢、できるかい?」
もう一度、振る。真っ赤な目を何度も何度もこすり、深呼吸する。
「大丈夫。ちゃんと、話せるさ」
「…よーし。それじゃ、作戦会議と行きますか」

二人は焚き火の傍に戻ると、リルム達に声をかけた。
そして、地図と参加者リストを取り出し、左右に陣取っているマティウスとゼルを見やる。
「じゃ、遅くなっちゃた分、手短に状況説明するよー」
四人が肯いたのを確かめ、アーヴァインは話を始めた。
襲撃が起きた場所。襲撃者の構成。置き去りにしてしまったギード。彼とトンヌラの戦いぶり。
ティーダを狙ったストーカー少女、『我が主君』がどうのこうのと言っていた魔物、弓矢を射掛けた第三の襲撃者。
時にはテリーに答えてもらいながら、知りうる限りの事実を伝える。
話を終えた時、マティウスの瞳には、氷のような怒りが満ちていた。

「アリーナめ……性懲りもない真似を」
静かな声で呟くマティウスに、テリーが顔を上げる。
無表情の下に隠された激情に気付かず、少年は問い掛けた。
「アイツ、そんなに悪いヤツだったのか?」
元皇帝だった男は、面白くもなさそうに鼻を鳴らす。
「少年よ。私は正義を語る気もないし、善悪などという基準で物事を計る気もない。
 重要なのは敵か味方か、それだけだ」
「スコールみたいなコト言うんだな」
茶々を入れるゼルと肯くアーヴァインを黙殺して、マティウスは言葉を続ける。

「あの小娘は私の敵であり、お前の敵であり、我々の敵だ。
 故に、倒さねばならぬ。更なる被害が及ぶ前にな」
「だけど、カメさんやバカップルや、サスーンにいる人達のことも、放っておけないと思うよ」 
リルムはマティウスとゴゴを見やる。
「アリーナって人、一度ゴゴ達に返り討ちにされたわけでしょ?
 それにさっきのモンスター、サスーンの方に逃げてったしさ。
 三人パーティ組んだの、二人に復讐するためで、みんなサスーンに行くつもりなんじゃないの?」
少女の危惧を、マティウスはあっさり肯定する。
「その可能性は高いだろうな。確率で言えば七割強と言ったところか」
「じゃ、じゃあヤバイじゃねーか!
 あの魔物、魔法やオートボウガンまで持ってたんだぜ?
 いくらユウナやティーダが強くても、奇襲や狙撃を喰らったらひとたまりもねえ!
 こうしちゃいられねぇよ。俺、アイツらを連れ戻してくるぜ!」
慌てふためきながら、荷物をまとめて立ち上がろうとするゼル。
それを制止したのは、マティウスの一言だった。

「今から追って間に合うとすれば、それは南東の森で戦っているというアリーナ達の方だ。
 手負いの魔物とはいえ、先行された十数分もの差を縮める方法はない。
 サスーンに向かうよりは、アリーナ達二人を倒して追撃を防いだ方がよかろう。
 城にも頭数が揃っているのだ。魔物一匹、多少の被害は払うかもしれんが、倒すぐらいはできるだろう」
ピエールに逃亡されてから、最低でも十五分。下手をすれば二十分以上が過ぎている。
マティウスの言う通りかもしれないが、しかし、多少でも犠牲が出てしまったら――
苦悩するゼルの耳に、アーヴァインの呟きが届く。
「いや……もしかしたら、ゼルの足なら、サスーンに先に着けるかもしれない」


五人の視線が白のローブに集中する。
アーヴァインは顎に手を当てたまま、独り言のように話し出す。
「アイツは、トンヌラとテリーを連れた、ヘトヘトの僕に追いつききれなかった。
 元々遅いのか、ボウガンなんか担いでるからなのか、ホーリーで吹っ飛ばされたせいかはわからないけどね。
 少なくとも、子供に毛が生えた程度の速さでしか走れない」
それに、と、アーヴァインは懐から小型の機械を取り出す。

「あの魔物はコイツ――参加者の位置を指し示すレーダーを持ってた。
 相手の居場所がわかるってのは、それだけで強力なアドバンテージだよ。
 こいつがあれば、生い茂る森の中でも、敵の襲撃を気にせずに済むんだから」
唐突な説明に、テリーとゼルが『?』という表情を浮かべる。
「それが…どうなんだよ?」
不思議そうに首を傾げた少年に、アーヴァインは薄く微笑みながら、話を続けた。
「テリーは、急に目が見えなくなったら、どうする?」
「そりゃ、慌てるし困るよ。何がどこにあるかわからなくなるだろ?」
「そうだね。『どこに何があるか急にわからなくなったら』、誰だって困るし戸惑うよね~」
教師と生徒のような二人のやり取りに、リルムが「あっ!」と声を上げる。
「そっか。今まではレーダーに頼ってたのに、急にそれがなくなったら……」
「なるほど。奴も手負いの身、万が一戦闘になれば命が危うい。
 不安にもなるだろうし、警戒して進まざるを得なくなる――」
少女の言葉を、マティウスが引き継ぐ。
「この一帯からサスーンにかけては、深い森だ。
 障害物も死角も多い。城の位置も方位磁針で確認していかなければならない。
 肉体的・精神的・物理的に、それほどの速さで移動することは不可能ということか」

得心するマティウス。「僕のセリフなのに~」と拗ねるアーヴァイン。
二人を交互に見やり、ゼルは問い掛ける。
「つまり、急げばどうにか間に合うかもしれねぇってこったな」
「まぁ、ね。全力ダッシュでギリギリってところだろうけど」
「なら、やっぱり行くぜ。俺が本気出しゃあ、十分もありゃ充分だ」
大見得を切りながら、右手と左手を打ち合わせて気合を入れる。
その身体に、赤く輝く光――加速の魔法が降り注いだ。
驚くゼルに、魔法を唱えた張本人は、そっぽを向いて言う。
「ニワトリ頭。行く以上は、バカップルとオッサンとゴゴ達の知り合い、きちんと助けてこいよ。
 怪我させたり、どっかでくたばったりしたら、似顔絵二十枚描いてやるんだからね!」
少女の啖呵に呆気に取られる青年。
そんな彼の手に、アーヴァインは、持っていたレーダーを押し付ける。
「お、おい。いいのかよ?」
ゼルのうろたえを余所に、アーヴァインはぱちりとウインクした。

「前線に出るのはあんただ。身を守る手段は多いほうがいいだろ?
 あんたに死なれても面白くないし、今の僕には仇討ちなんてできないからな」
昼間のことを思い出したのか、一瞬だけ沈んだ表情を浮かべる。
内心の不安を覆い隠すように、ふざけた調子を装いながら、アーヴァインは右手をゆっくりと上げた。
「無理したら承知しないぞ。図書委員ちゃん、僕が奪っちゃうからな」
「バーカ。あの子より先に、手ぇ出す相手いるだろうがよ。
 それに前にも言っただろ。テメーに心配されるほど落ちぶれちゃいねえってな」
ガーデン流の敬礼に敬礼で応え、ゼルはレーダーを手に駆け出す。
真紅の帽子と煌くベストは、瞬きする間に、夜の闇に飲み込まれていった。


「良かったのか?」
青年の背中を見送っていたマティウスが呟く。
彼はゼルから、三人がここに残った理由を聞いていた。
リルムは口を尖らせ、頬杖をつく。
「ち~~~っともよくないに決まってるじゃん。
 でも、一番足が速くて体力が残ってるの、ニワトリ頭だってのは事実だしさ」
「こんな事にならなきゃ、死んだって行かせてないよ。
 元々、ゼルをサスーンに行かせないために、ここで待機してたんだからさ」
不安と苛立ちがない交ぜになった表情で、アーヴァインは息を吐く。

「リノアを殺した犯人だっているかもしれないし、何度も言うけどアイツの身だってアレだしね……
 だけど放っておいたら、ティーダとユウナとついでにプサンさんとかも危ないんだ。
 特にティーダ特にティーダ特にティーダ、狙われてるし鈍感だし見つかってばかりだし、絶対ヤバイよぉ~~!」
頭を掻き毟りながら叫ぶアーヴァイン。
唐突にテンパった青年に引きつつ、テリーはマティウスに声をかける。
「お、おじさん達は、どうするんだよ?」
「私達はアリーナを追うつもりだ。
 ただ、魔力が残っていないのなら、お前達の手当てを引き受けてもよいがな」
「これぐらいの傷なら、リルム一人で何とかできるよ。
 だからゴゴ達は、そのアリーナってヤツ、ギッタギタにやっつけてきてよ」
「そうか。ならば行かせてもらおう」

リルムの言葉にマティウスは立ち上がる。
その背中に、幼子の声がぶつかる。
「お、おじさん。……ギードのこと見つけたら、助けてやってくれよ。
 あいつら、ギードのこと痛めつけて……頼むから、助けてやってよ。
 お願いだから、ここに連れてきてくれよ!」
必死の形相で訴えるテリーに、マティウスはしばし思案する素振りを見せる。
「確か、アリーナはギードとやらの魔法で眠らされたのだったな?」
「? う、うん」
「…敵の敵は味方。味方は助け出すべきか」
マティウスは同行者に声をかける。
「ゴゴ。一旦北に抜け、山脈沿いに南東に向かうぞ。
 ギードの身柄も確保せねばならん。奴らがある程度足止めされていることを期待しよう」
「わかった」
そして、じっと視線を送っていたアーヴァインに、命令を下すように告げる。
「万が一、連中を取り逃した時は、サスーンで決着を着けることになるだろう。
 青年よ。場合によっては、お前達の力や道具を借りるやもしれぬ。
 今後の戦況次第だが……覚悟は固めておけ」
「…Aye aye, Sir」
青年は、ゼルに向けたのと同じポーズを二人にも行う。
皇帝と物真似師は、お互い肯き合うと、闇の彼方に姿を消した。
残された三人は焚き火を囲み直し、休息と傷の治療を始める。

少女が唱える魔法と、火の粉が爆ぜる音が、夜の山中に響く。
小さな炎を見つめながら、『静かだ』とテリーは思った。
同じ三人でも、あの頃は、ずっとずっと賑やかで楽しかったのだ。
トンヌラとレックスと、三人で仲間を探していた『あの頃』。
わたぼうとルカとイルとわるぼう。
リュカ、ビアンカ、タバサ、サンチョ、ピピン、はぐれメタルのはぐりん。
そして、スライムナイトのピエールを探していた、あの時は――


どうして今まで気付かなかったのだろう。
信じたくなかったからか? 認めたくなかったからか?
レックスを傷つけて、イルとドルバとトンヌラを殺した魔物が、『レックスの仲間』だったなんて。
――信じたくないからか? 認めたくないからか?
思い出して、気付いても、誰にも言えないままなのは。
伝えるべき言葉の代わりに、嗚咽と涙ばかりがこぼれてしまうのは。

アーヴァインとリルムが何かを喋る。
半分は「ごめんね」。残りは「自分が悪かったんだ」。
テリーでも、ピエールでもなく、二人は己の無力さを責め続ける。
それだから余計に、隠し事をしている自分が卑怯に思えた。
けれども、喋れば喋ったで、レックスを裏切ることになるような気がした。

どうにもならない状況で、どうにかすることもできなかった。
ただ、涙と時間だけが、静かに流れ続けた。

【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、疲労、右肩負傷)
 所持品:竜騎士の靴、自分の服、ふきとばしの杖[1]、手帳、首輪
 第一行動方針:傷の治療&待機】
【リルム(右目失明、魔力消費)
 所持品:英雄の盾、絵筆、祈りの指輪、ブロンズナイフ
 第一行動方針:傷の手当て&待機】
【テリー(DQM)(右肩負傷、3割回復)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3
 鋼鉄の剣、コルトガバメント(予備弾倉×4)、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:ギードを待つ
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】

【ゼル(ヘイスト)
 所持品:レッドキャップ、ミラージュベスト、リノアのネックレス、対人レーダー
 第一行動方針:全速力でサスーン城へ向かう/ティーダ達を連れ戻す
 第二行動方針:スコールを探してネックレスを渡す
 第三行動方針:リノアの仇を討つ(?)】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近→サスーン】

【マティウス(MP1/2程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服)、ビームウィップ
 第一行動方針:アリーナ達を探し、倒す
 第二行動方針:カズスに行き、カインと接触してみる
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】
【ゴゴ(MP1/2程度)
 所持品:ミラクルシューズ、ソードブレイカー、手榴弾、ミスリルボウ
 第一行動方針:マティウスの物真似をする】
【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近→北から回って南東へ】

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最終更新:2008年01月31日 17:58
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