FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 555話


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第555話:冬来たりなば、嵐遠からじ

目を覚ますと、黒スーツ姿の変な角付きの男に拘束されて荷物もなかった。
アリーナを探している、知っていることを全て話せ。
剣を突きつけられながらそう言われて、アルガスは簡単に情報を渡した。
そもそも義理なんてない。
その結果として焼け跡となった屋敷跡で
マティウスは瓦礫を引っ掻き回し、アルガスは固まったように立ちすくんでいる。
焼け落ちている屋敷を見たあとで向けられた氷のような視線が忘れられない。
このマティウスという奴、アリーナに恨みを抱いているのは間違いないが
ただ死んでいればいいと考えているわけでもないようだ。
成り行き次第では、とばっちりがアルガスに向くことも十分予見できるものの
はっきり言って逃げられる気がしない。
心中で悪態をつき反面顔色を青くしながら固まっていたところに――放送がやってきた。

『――楽しみにしているぞ』
放送が終わり、浮かび上がった魔女の姿が霧消していく。
正直アルガスはホッとしていた。
死者の新しいリストの中にアリーナはいなかった。
焼け死んではいない、というわけだ。
待てよ、だとすると屋敷を離れたのか。するとここにはいない?
…………
自分の責任と、マティウスに吊るし上げられることを想像して寒くなったその時。
地面が噴き上げるように爆発した。
唖然とするアルガスが見たのはゆっくりと姿を現したクリムトであり、
すでに情報を渡しているその姿を見て動き出すマティウスの姿だった。
逃げるには、このタイミングしかない。
閃くような思考に衝動的に突き動かされてアルガスは走り出していた。
――こんなところにいられるか! せいぜい勝手に潰しあいやがれ!




この二日間のうちに何度か経験したことのある地震が地下を襲う。
一晩ずっと身体を休めていたアリーナとクリムトは、
それで再び朝が――放送の刻が――やってきたのを知った。
けれど、地下室には揺れの後にいかなる声も続かない。
不気味な沈黙。
もしかして、例の放送は地下室までは届かない?
音の無い時間が長くなるに連れだんだんと強く確信できるようになる。
「む……私が行こう」
瞑想といった様子で床に座っていたクリムトが音もなく立ち上がり、部屋から出て行く。
きっと同じことに気がついたのだろう。
そういえば、ウネやライアンやおまけでアルガスはどうなったのだろうか。
朝になったのに、この部屋に帰ってきてくれた人はいない。
アリーナの心に不安が影を差す。
多くの時間をかけ、継続してかけ続けてくれた回復呪文により外傷は何とか塞がれている。
クリムトには休んでいるようにと言われているが、
アリーナは痛みに顔を歪ませながら外へ向かうために身を起こす。
肩、腕、脚、何より腹に痺れるような痛みが重く響くが、気合で乗り切れる範囲だ。
感謝しながら、久しぶりに自分の足で動いてクリムトの後を追う。
どうしても自分の耳で確かめて、不安を打ち消したかった。

すでにドアの外にはクリムトの姿は無い。
――と。
何かが爆発するような音と地下にありえない風が、狭い地下の通路を通り抜ける。
アリーナはあるはずの痛みも忘れてそれらがやってきた方向へと駆け出した。


薄暗い足元に気をつけながら、外を目指し走る。
「………………とは、違うと?」
威圧感のある、アリーナの知らない男の声が入り口から聞こえてくる。
必然的に、その声の主がクリムトに攻撃を仕掛けたのでは? という推測が生じた。
「…………隠された一面…………しかし、………自らの……恐れ、
 向かい合う………決めている。故に、貴方の敵は、彼女ではない」
地上に近づくに連れて言葉がはっきり聞こえるようになっていく。
はっきりとは理解できないが、何か感覚のようなものがアリーナにその内容を悟らせた。
自らの仄暗い部分に由来するこだまが戻ってきたことを。
「……賢者クリムトよ。大勢は把握した」
少なくとも、激昂しているとかそういう感じはしないことにホッとする。
階段を、一つ飛ばしに駆け上がる。
「しかし、それでも判断は変わらん。行く手を阻むならば仕方がない!」
最後の数段を跳ね上り、外へと飛び出す。
焦げ臭い空気の匂い、空気を切る音、肉が焼けるような音。
のたうつ輝く蛇、あるいはリボンのようなものが見え、アリーナの目の前でクリムトの身体が撥ね飛ばされた。

倒れたクリムトの姿を見たアリーナ、倒すべき相手の姿を確認したマティウスは
なし崩し的にそのまま交戦状態に突入していた。
威力とリーチ、そして扱う技量が合わさった攻撃は苛烈を極める。
光り輝く帯の姿をした鞭が今戦っている相手、
パラメキア皇帝マティウスと名乗った男の武器。
盲目のクリムトが(例え何らかの感覚が視力代わりに働いているとしても)為すすべも無かったのも当然で、
アリーナにとっても踏み込むことも出来ず何とかクリーンヒットを避けるのが精一杯だった。
おそらくは経験――自分の分身と戦った経験が、こういう戦法をマティウスに選ばせたのだろう。
近づけずにいたところに魔法が飛んでくる。ブライン、そしてアリーナは視界を奪われる。

「人を殺したとき悪いのは凶器なのか? いや、そんな法は無い。
 咎あるべきはそれを使った者だ。無論凶器の方も早晩砕くつもりだが――
 己の死の理由は理解できたか?」
威圧する勝ち誇った声が闇の中、前方より響く。
納得が2、反発が8。それが死刑判決を聞いたアリーナの気持ち。
すでに苦悩し、後悔した時間を通過したからこそ命懸けで分身を止めることを決意しているのだ。
何より、目が見えないクリムトをかまわずに攻撃したことが気に入らない。
無用な人殺しが悪いなんてわかりきってる。
それがわかってるくせに、どこの皇帝だか知らないけど自分は法の側だからなんて偉ぶっている姿は
結局のところ力を振るうために理由をつけているだけとしか思えない。
あたしもそうなんだろうけど。
だけど、これでもかと言うほどにグロテスクな分身の姿を見て――突きつけられて――

勇者と呼ばれる彼の顔を思い浮かべる。
その姿に「ねえ、こんなときどうしたらいいんだろう?」と問いかけながら、
アリーナは大きく右にステップした。
直後、さっきまでたっていた場所をマティウスの鞭が打ち据える。
達人レベルの技量で扱われる鞭の先端は音速を超える、という。
アリーナはそれを言うならば経験と勘――
蓄積した実戦の経験、鞭という自分も扱いなれた武器への応対、何より天性の才能――
でかわしてみせた。
二度、三度。距離が離れているため薙ぎ払うような攻撃はこない。
スウィート・スポットは点のようなものだ、だからそこさえかわせば何とかなる。
頭の中に描くのは鞭を扱うアリーナ自身と、その標的となるアリーナ。
四度、五度。倒すべきアリーナに鞭を振るいながら、描いたとおりに現実の鞭を避ける。
マティウスは、当てられない。驚嘆すべき反応、けれども。
音を上げたのは回復しきらない傷で、傷付いた肉体がついていけなくなった。
がくりと足の力が抜ける。

身体を運びきれず、ついに傷付いている左肩を熱を帯びた鞭に打ち据えられる……ものの、
それでも暗闇の中でアリーナは今度の攻撃からも命を守って見せた。
光を帯びた鞭が静かに発する小さな震動音が、離れる。
「……目にせねば信じられぬ領域ではあるな。
 それがゴゴを葬った力、か」
ゴゴって誰?
まず素直に疑問が湧き、それからもう一人のアリーナに殺されたのだろうと気付く。
それがきっと、少なくともマティウスが戦う理由の一つなのだろう。
次の攻撃を予測しようと集中を切らさないまま、一つ納得するアリーナ。
鞭の間合いはマティウスの呪文詠唱を聞こえさせない。
「………フレアー!」
突然に異常な音が耳に飛び込んでくる。
攻撃範囲が点の鞭はかわせても、広範囲の魔法などかわしようがない。
あきらめがアリーナの心を支配する、よりも早く。
「イオナズン!」
後ろから、別の呪文が唱えられた。
アリーナとマティウスの間で魔法と呪文が衝突し、爆散する。
闇の中に現れた突然の衝撃の波によろめくアリーナを後ろから支える手。
穏やかな波動がそこからアリーナを包み、視界を塞いでいた呪いから解き放つ。
クリムトだった。
光を取り戻したアリーナの視界で、マティウスに向かい賢者が一歩進み出る。

「皇帝よ! 我が論駁を聞くがいい!
 死のみが罰ではあるまい。悔恨し、生を続けることこそが彼女の罰となろう!
 この無秩序なる世界で復讐を法と為せば、それは報復の連鎖となるだけだ!」
「賢者よ、これがパラメキアの法だ!
 友の仇も討てずして、私の皇帝としての……いや、私自身のプライドが許すものか!」
「……それでも、言葉を用いよう。さすれば、」

言いかけたクリムトの顔の前で鞭が空間を打ち据え音を炸裂させる。
もはや交渉の余地などありそうもなかった。
ゆっくりと、マティウスの空いた手が空を指す。
「鞭と、魔法と生き延びた。では、これはどうだ?」





――夢を、見ていた。
いや、夢と現実の区別がつかないくらいに消耗していたのだろう。
どちらのウネもただとりとめもなくとぼとぼと歩みを進めていた。
異なっていたのは、「どちらか」で途中で誰かに会って話を聞いたこと。
はっきりした最後の記憶が山から突き落とされた直後でその時は動けないと考えたが、
今、ウネがカナーンの町の外れに独り立っていることから鑑みるに、
話を聞いたのは夢の中で、現実の世界では夢遊病のように歩いて来たように思えた。
深手を負っているのは変わらないが命は繋ぎとめていられる。
カナーンでは厳然と運命を語るように頭上から、新たな死者を読み上げる声が降っている。

放送だ。
夜中に別れた仲間の一人がその名前の列に含まれたことを知り、
同時に夢の中でウネに言葉を残した主は同じ名のその男、ライアンであることを思い出す。
やはり受けた傷が元で命を落としたのだろうか?
嘆息。
それから、放送の余韻が残る中を歩きながらライアンが伝えようとしていたことを思い出そうとした。
星と闇とクリスタルの空間。
魔女の城と思しきものをそこで見たこと。
できあがっていく世界。
完全ではなくところどころ記憶が途切れているとはいえ、一考してもどういうことなのか見当がつかない。
魔女の城へ近づいたことを語ったのだとすれば、それはライアンとどう結びつく?
そのうえ既に当人の死亡が宣告されてしまった。
カナーンに残ったライアンの身に何があったのか、想像もつかない。
嘆息する。
とにかく、戦闘の場所へ、アリーナ達のいる屋敷へ戻ろう。

誰にも会えず、誰の死体にも出逢わなかった。
ここまで戻ってこれたことの代償とはいえサイトロ一つ使えないことがもどかしい。
町を離れていた数時間の間に火事でもあったのか、あたりに焼けている建物が増える。
そういえば、強大な力を持つ連中がカナーンに向かってきていたことが思い出される。
あれは、何時間前のことなのか?
はるか頭上に生じた魔力の動きに気がついたのはその瞬間だった。
それは強力な破壊の魔法、メテオに良く似ていて。
ある危機感に導かれるように、ウネは自分の身体の具合も忘れて屋敷の方向へと全力で走った。
すぐに、焼け落ちた屋敷跡が見えた。
対峙する二人と一人が見えた。
その片方へ向けて流れ落ちていこうという隕石の存在も、感じ取っていた。
……覚悟を、決める。
年齢の分でも、二度目の生という意味でも、身を捨てることに躊躇など無い。
人としての姿から外れつつある身体にヘイストを併用し、
ウネは小範囲、カナーンの一角のみをピンポイントに狙い撃つ火の玉と化した隕石と
二人の仲間の間へと一息に飛び込む。
熱と衝撃がウネに与える非情なるダメージは
ジェノラ山で傷を負ってからここまで少しずつ回復してきた分を無駄にするに余りある。
これでは、もう長く持たない。
分かっていた、なにせ自分で盾になることを選んだのだから。
当然もう、彼らと共に脱出の方策を探ることは続けられない。
だが、せっかく身を捨てるいい機会なのだ。さあ、別の覚悟を……しよう!

どちらの側も、新たに現れたモンスターに様子見のために動きを止めている。
「……ウネ?」
そこに何を見たのか、アリーナが疑い混じりにウネの名を呼んだ。
「アリーナ、クリムト。久しぶりだね。ありゃ誰だい?」
変貌した姿形と異なり、変わらない声で二人に応じる。
魔物としての形でさえ傷を負い、ボロボロではあるが――
トルネド、OK。エアロガ、OK。何発弾が残ってるかはわからないけれど、
まだ気力が生命を繋いでいてくれる。そして短い間なら全力で戦えるだろう。
求めるものは戦い、全力の戦いのエネルギー。
材料は壊れた杖なのがちょいと心配だが、一世一代の秘術――鍵は作れるだろう。
「パラメキア皇帝マティウス、友の仇をとりに来た。
 魔物よ、お前も行く手を阻むか?」
対峙。
ウネの集中が高まるのに従って一帯の温度は急速に下がり始めていた。
アリーナを、クリムトを、マティウスを包み、焼け跡に雪が舞い始める。
真剣な表情の三人をウネはからからと笑い飛ばす。
「勘違いするんじゃないよ。わたしはただね、もう小細工にゃ飽きたもんでねぇ……
 戦ってカタつけることにしたのさ!
 要件はなんだか知らないがいいじゃないかマティウス、相手してもらおうか。
 その次はアリーナとクリムト、あんた達だよ!
 さあ……時間も惜しい、始めようか!!」
何かを言いかけた、アリーナの前を白い嵐の壁が遮る。
突然にカナーンに舞い降りた冬の領域で、
命を燃やす戦いが始まろうとしていた。


【マティウス(MP 1/4程度)
 所持品:E:男性用スーツ(タークスの制服) ソードブレイカー 鋼の剣 ビームウィップ
 第一行動方針:アリーナ、及び行く手を阻む二人を討つ
 第二行動方針:アリーナ(2)を見つけ出し、ゴゴの仇を討つ
 基本行動方針:アルティミシアを止める
 最終行動方針:何故自分が蘇ったのかをアルティミシアに尋ねる
 備考:非好戦的だが都合の悪い相手は殺す】

【ウネ(HP 1/10程度、MP残り僅か) 所持品:癒しの杖(破損) マシンガン用予備弾倉×3
 第一行動方針:戦闘
 基本行動方針:死戦して杖から鍵を完成させる

【アリーナ (左肩・右腕・右足怪我、腹部負傷) 
 所持品:無し
 第一行動方針:戸惑いながらも、ウネを助ける
 基本二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【クリムト(失明、HP3/5、MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:戦闘の停止、平和的終了
 基本行動方針:誰も殺さない。
 最終行動方針:出来る限り多くの者を脱出させる】
【現在位置:カナーンの町・シドの屋敷跡】

【アルガス
 所持品:インパスの指輪 E.タークスの制服 草薙の剣 高級腕時計
 第一行動方針:様子を見る
 最終行動方針:脱出・勝利を問わずとにかく生き残る】
【現在地:カナーンの町】