363話

第363話:飛行物体≒畏怖


急ブレーキの音が聞こえた。
それはあの軽トラからだった。
そして登場していた人間たちが、その音を合図にしたかのようにぞろぞろと降りる。

ここはカズスの街の入り口。
時間をかけて走った先に、この街の入り口が見え…そして止まったのだ。
そして早速全員が街に入ろうとする。が、それをフルートが止めた。

「あの~中にどんな人がいるのかも分かりませんし、一度偵察してみてはどうですか?」

珍しくフルートは、的確なことを言った。
確かにこんな大人数では目立ってしまう。もしも殺人者がいたら即行で目をつけられるだろう。
状況が状況だけに、この案には反対する理由は無かった。

「じゃあ言いだしっぺですし~、私が行きましょうか?」
全員が案に賛成した瞬間、フルートはこんな事を口にした。
その瞬間場が凍りつく。当然だ、彼女だったら絶対見当違いな場所に進んで道に迷うのが落ちだ。
そしてそれを代表して代弁するように、ロランが前に出た。

「じゃあ僕も行くよ。1人くらい増えても何も心配はないだろうし」
ロランがそう言ってフルートの手を引こうとすると、サックスが待ったをかけた。
「待ってください!フルートさんが行くなら僕も行きます」

ロランはその彼のあからさまな態度に、心底微笑ましい…と苦笑した。
そしてやはり少しでも少人数であった方が楽だという事をやんわりと伝えようとしたが、
「どうやら…というか地図を見ると確実にここは……僕たちが住んでた世界なんです。地の利は必要でしょ?」
先手を打たれてそう言われてしまった。しかもその言葉には嘘偽りもなさそうだ。

「じゃあ、3人で仲良くいきましょう~」

そう言って、フルートは何故か運転席に乗っていた。


いや、いやいやいやいやいやいやいやいや!?
ほぼ全員が心の中で、彼女の奇行にツッコミを入れた。
先程まで偵察がどうとか言っていたのに何故目立つ車で移動しようとするのか。
というかフルートさん君車運転できるのできないのできないでしょ本当に何考えて―――――

混乱するロラン。どこからツッコむべきなのだろうか。
サックスはサックスで何故か納得して助手席に座っている。

「だって、誰がいるかも分からないんですよ?これの方が安全ですよ~。
 大丈夫ですよ~、ゼルさんの真似をすれば良いだけですし。きっと私にも出来ます!」

頭が痛い。ロランは心底そう思いまた苦笑する。
だがこのフルート節はちょっと止められる自身が無い。
彼は観念して荷台に乗った。そして他の全員を見ると、全員が全員苦笑して手を振っている。

「気をつけろよ?」
「気をつけてくださいね?」

いくつかのその問いに、ロランは片手を上げて答えた。
「じゃあ、行ってきます……」

そしてフルートはエンジンを吹かし、

「では、出発進行で~す」

そう言って、思いっきりアクセルを踏んだ。


そして、制御できなくなった車は偶然にも鉱山の入り口方面へと向かい、
そして、そこの近くの民家の壁にぶつかり、
そして、大きな音を立てて幸運にも炎上せず、


そして、止まった。


サックスは失神ギリギリだったが何とか助手席から降り、
ロランもふらふらになりながら何とか荷台の上から降り、
フルートは「失敗失敗」と少しだけ教訓しながら降りた。

目の前には男が一人、少女が一人、少年が一人。
非常に気まずい状態だ。

しばらく睨み合いが続いた。
張り詰める空気。

サラマンダーも、唐突なこの状況に手を出せないでいた。
だが、確実に構えは取る。
ロラン達もそのサラマンダーの殺気に気づいていた。
だが隣の少年と少女の存在が解せない。

「おい……俺はゲームに乗っている。逃がすつもりは無いが、逃げるなら今のうちかもしれないぞ」
サラマンダーが、唐突にそう話しかけた。
「そうか。でも君達がゲームに乗っているとわかった以上は……君たちを倒さないと」
ロランがそう答え、ガイアの剣を構えた。それに続くようにサックスも草薙の剣を構えた。
バーバラはイクサスにここから離れるよう説得している。だが、イクサスは動かない。

サックスは、その瞬間この状況を理解した。
少女はこのゲームには乗っていない。男はこちらを殺す気マンマン、そして少年は……きわどい。
だが邪魔をする者を全て排除するような、そういう冷たい目を持っている。こちらの出方によっては…敵になるか。
こういう不確定要素が多い時は、できるだけ冷静に事を運びたい。
だが、今の自分にはそれが出来そうに無い。彼のかつての友ならそれができただろうに。

「はぁ…ギルダーだったら……こういう状況はどうやって打破するんだろ」

サックスは、溜息をつきながら…確かにそう呟いた。
そしてそれを聞いたイクサスが、躊躇いも無くサックスに向かってラケットを振った。

風の塊がサックスを襲う。
そして近くにあった道具屋の壁に叩きつけられる。

「サーックス!」
「余所見をしていて良いのか?」
「な……ッ!!」

それを呆然と見ていたロランも、サラマンダーの斬撃に襲われた。
間一髪避けはしたが、傍で爆発が起こり顔を青くする。
フルートはその唐突な暴力を見て、腰が砕け目に涙すら浮かべていた。
バーバラの方はというと、できるだけ離れ余計な戦いをしないよう心がけている。

「ギルダー!?ギルダーだったら…今そう言ったか!?言っただろ!!
 ふざけるな!あれか!?ギルダーの仲間なのかお前は!!人殺しの仲間なのか!?」
イクサスが怒り狂って叫び、サックスを罵る。
サックスには、彼の言っている言葉の意味が分からなかった。
「人殺しの仲間……?」
「とぼけるな!ギルダーは俺の仲間を殺したんだぞ!2人も、2人もだ!!」
「嘘だ……あいつは……っ!!」


覚悟はしていたつもりだった。
だがこの少年は嘘を言っているわけではないだろう。彼自身に嘘を言う余裕などなさそうに思える。
もしそれが本当だとしたら……自分はどうすれば…………。

サックスは立ち上がれなかった。
戦意を全て失い、座り込んでしまう。
ロランもその話にショックを受け、どうすれば判らなくなってしまった。
目の前の男を倒さねばいけないのはわかる……だが動けない。

「おいどうした!立てよ!お前も俺を殺したいんだろ!?
 なんせ殺人者の仲間だ!!俺の首を狙ってるんだろ!?来いよ!人殺し!人殺し!!」

イクサスの罵声が響く。ロランとサックスは動かない。
だが、その時……。

「うるせええぇえぇぇぇえぇぇええぇえぇぇぇぇえぇぇえぇえぇぇえええぇえぇえ!!!!」

それよりも大きな怒号が、辺りを支配した。
声の主は…そう、フルート。「あの人格のフルート」だ。

「さっきから聞いてりゃ!ぁあ!?こっちが何も言わなかったら調子乗りやがって!!
 これだから餓鬼は嫌いなんだよ!!殺してやろうか!?いや、そんな質問じみた事は言わねぇやらねぇ企まねぇ!!」

辺りの雰囲気が一気に変わった。
ここにいる全員が、フルートに気圧されている。

「いいか餓鬼!人に喧嘩を売ったら自分も死ぬことを考えておくのが基本だ!!判ってるよなぁ!!
 剣を取れば戦いだ!!魔力を溜めれば戦いだ!!人のモン盗めば戦いだ!!命の賭け合いだ!!
 だからよぉ……今からあたしがてめぇをぶっ殺しても!!なんッッッッッッの文句もねぇよなぁ!!!!」


イクサスはそう言われ、気圧され、先程のサックスのように動けなくなっていた。
そして目の前の彼女の言葉を聞きながら、彼は目を疑うことになる。


なぜなら最後の怒号の直後、
フルートが両腕で意図も簡単に、

「あの鉄の塊」を


, , ,, , , , ,, , , , , ,
軽トラを真上に持ち上げたのだ。



「フルート……さん?」

サックスが「信じられない」という言葉を形容した目でフルートを見る。
だがその目はすぐに、羨望の眼差しへと変わっていた。
一方ロランが彼女の姿を見るのは2度目だ。本人はまたあの人格を見ても多少は驚きはしないと思っていた。
だが、目の前の光景には驚かない方が異常だと思う。

「な……なんだっ、お前は!」

イクサスが幾分小さくなった声を搾り出して言う。
だがそんな震えた声にフルートは興味を持たない。

「あたしの仲間をなんの意味も無く……体だけじゃねぇ!心まで傷つけやがったのが許せねぇ!!
 だからこれが!あたしから渡すてめぇへの引導だ!!神の裁きみたいに小奇麗じゃねぇが喜んで受け取れ糞餓鬼!!!!」

そして軽トラは、奇麗な放物線を描いて宙を待った。
それをじっと見つめるイクサス。諦めにも似た感情が身を襲う。
だがそれをみたサラマンダーが急いでイクサスの手を引き、軽トラの着地地点から退避した。

そして先程イクサスがいた位置に、軽トラが着地した。
そのショックで軽トラは形が崩れ、そして爆破を起こし、炎上した。


「な……何が起こりやがった!?」
「爆発音ね…しかもなんか凄い!」
「まずいんじゃないですか?行った方が!」

一方の街の入り口前では、その軽トラの爆破音を聞いて仲間たちが動き出した。
恐ろしい人間がいたのかもしれない、そう思い全員が走っていった。


そしてまた舞台は「恐ろしい人間」がいる場所に戻る。

軽トラの焔が辺りの気温をぐっと上げ続けている最中、フルートはサラマンダーに怒号を上げていた。
そう……アリアハンにいた時に、彼女たちは彼の静かな襲撃を受けていたのだ。

「これがてめぇへの一方的な思いだろうが何だろうが関係ねぇ!!あン時の借りを返してやるよ!!」
「あン時の……ああ、そうか」

サラマンダーは彼女の言葉を理解した。
そして動けないイクサスを離れたところに避難させ、剣を構えた。

そしてサックスもロランも同じく剣を構えていた。どうやら一応は立ち直ったらしい。
いつかのレーベの景色を小さくしたかのような焔が、彼らを見守っていた。

【フルート 所持品:スノーマフラー 裁きの杖 魔法の法衣】
【ロラン 所持品:ガイアの剣 ミンクのコート】
【サックス 所持品:水鏡の盾 草薙の剣 チョコボの怒り】
【第一行動方針(三人共通):サラマンダーを倒す
 第二行動方針(三人共通):なるべく仲間を集める
 最終行動方針(三人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】

【サラマンダー(疲労) 所持品:ジ・アベンジャー(爪) ラミアスの剣
 第一行動方針:目の前の敵を殺す 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?) 】
【イクサス(人間不信 軽いショック?)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:避難? 第二行動方針:アーヴァインを探して殺す/ギルダー・スコール・マッシュを殺す
 基本行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:避難 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口】

【リルム 所持品:英雄の盾 絵筆 祈りの指輪 ブロンズナイフ】 
【ゼル 所持品:レッドキャップ ミラージュベスト】
【ユウナ(ジョブ:白魔道士) 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:ゼル達と共に行動する 第二行動方針:ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ、困ってる人や心正しい人は率先して助ける 最終行動方針:ゲーム脱出】

【第一行動方針(四人共通):フルート達の元へ向かう
 第二行動方針(四人共通):なるべく仲間を集める
 最終行動方針(四人共通):ゲームから抜ける。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】

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最終更新:2008年01月31日 23:51
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