226話

第226話:私達の片翼が、それを告げた気がした


私は、部屋のドアを開けた。
そこにはレックスがいて、お父さんがいて、お母さんがいた。
私はさっきお花屋のお姉さんに貰った赤い赤い花を、お父さんたちに見せた。

お母さんはすぐにそれを花瓶に移してくれた。
綺麗なものを貰ったね、とお父さんが感動した様子で言った。
だけど、それをレックスが倒してしまって。
でもお父さんとお母さんは何故か気付かなかった。

「あら?いつの間に倒れたのかしら」

お母さんがそういうまで、時間は掛からなかったけれど。
それでもレックスが倒してしまったことに気付いていなかった。

―――――いや、
レックスにすら気付いていないんだ。
なんで気付かないんだろう。私は不思議に思ってレックスを見た。

レックスは何も言わずに、ドアを開けた。
そして、寂しそうな表情を浮かべて、「さよなら」と言った。
何故か声は聞こえなかったけど、私にはわかった。

そしてそのまま………レックスはどこか遠くに行ってしまった。



「セージさん…目が覚めたみたいよ」
「『セージ』でいいよ~…って、本当だ……あー、良かった」

ふいに目を覚ますと、そんな声が聞こえてきた。
あれは…夢?私は少しぼーっとしてしまった。

「んー、まだあるねぇ」

お兄さんが、自分のおでこと私のおでこをくっ付けてそう言った。
そうだ、私は倒れちゃったんだ。凄く苦しくなって、なんだか判らないけど、苦しくなって。
風邪だったのかな?と思う。だけど、なんか違う気がする…。

「顔の火照りも少し引いたし、まずは一安心ね」
「そうだね…さ、タバサ。頑張ってもう一眠りだよ」
「頑張るものなのか?それは。まぁとにかく風邪は寝て治すものだ…安心して休むと良い」

お兄さんとお母さんとギルダーさんがそう言ってくれた。
でも、違うの。もっと何か…とっても苦しい気がするって言いたかったけど…。

言えなかった。

だって、言ったら心配すると思ったから。
みんな疲れてるのに、私なんかの事で心配して疲れたら大変だもの。
私はまた横になって、目を閉じた。



レックスは大丈夫かな…。
大丈夫、変な夢は見ちゃったけど…皆がいるから大丈夫。
大丈夫だから……。



タバサが眠りに付いた頃、ギルダーはストロスの杖の話をビアンカから聞いた。
実はタバサの支給品を聞くだけのつもりだったのだが、興味深い話がいろいろと出てきた。

おそらく選ばれた魔術師の…この場合タバサの魔力と杖自体に込められた魔力が重なり、
そして不思議な力を起こしたのだろう、という仮説が立てられた。

「………その杖が、鍵になるかもしれないな」

杖自体の魔力を行使すれば、このゲームを覆す何かができるのではないか。
ギルダーは、そんな可能性の低そうな仮説を立てるものの…、

「まぁ、杖一つで何が出来るわけでもなさそうだ…」

そう言って、また見張りへと行動を戻したのだった。


夜の闇の中、ストロスの杖が静かに輝いた気がした。


【タバサ(風邪、睡眠) 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書
 第一行動方針:睡眠をとる 基本行動方針:家族を探す】
【セージ (MP消費) 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ
 第一行動方針:タバサの看病 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【ギルダー(MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:見張り 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する
 基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す/自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【ビアンカ(MP消費) 所持品:なし
 第一行動方針:タバサの看病 基本行動方針:家族を探す】
【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】

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最終更新:2008年02月05日 05:04
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