第227話:殺すコト 殺さないコト
―――1st
「どうしたんだい?あの技のキレが、あの俊敏さがないじゃないか」
ジタンとクジャは、戦っていた。
リノアとケット・シーが「支援が邪魔になってしまいそうだ」と感じてしまうほどに、あの2人は鬼気迫っていた。
だがやはり足の傷がジタンの邪魔をする。暫くすると押され始め、ついには倒れてしまった。
駆け寄ろうとするリノア達……だが、後ろからジタンの元へと走ってくる人影が見えた。その正体を見て、足が止まった。
「こんな状態で僕を倒そうなんて…口にすることすら罪だよ」
それに気付かず、クジャは大袈裟にブラスターガンを構えた。
そしてしっかりとジタンを見据えて、言った。
「さようなら、ジタン」
―――その頃…リュカは、静かに息子の喉に刺さっている木片を抜いていた。
全て抜き終わると、レックスを傍らに寝かせて穴を掘り始めた。
本当に簡単で、みてくれも悪いだろうが…けれど墓を作らなければ、救われないと思ったから。
静かに地面を掘りながら、リュカは城にいた頃の事を思い出していた。
レックスはいつもタバサと一緒だった。
暴走気味のレックスをタバサは制するというのも最早お約束だった。
体を動かすことが大好きで、いたずらも大好きで、そしてあの国の人たちのことも大好きだった。
………タバサとビアンカは、今どうしているだろうか。
あっちはあっちで再会できたんだろうか、だがもしかすると……。
せめてあの2人は無事であってほしい。そして、この殺し合いから抜け出そう…。
「生きて待っていてくれよ…2人とも……」
―――2nd
「リュカとレックスは元気かしら…」
「大丈夫だよビアンカさん、きっと…いや、絶対生きてるさ。ねぇ?ギルダー」
「俺に振るのか……まぁ、俺も大丈夫だろうと睨んでいる」
「………セージさん、ギルダーさん…2人とも、ありがとう…」
アリアハンで戦いが繰り広げられている頃。
ビアンカは、不安に狩られていた。重い恐怖がのしかかっていた。
だが2人の言葉を聞いて、安堵するように溜息を付いて、そして微笑んだ。
ギルダーはそれを見て、少し顔をそらした。そして少し赤くなった顔を帽子で隠す。
何故そんな事をするのかとビアンカが首をかしげる……が、しかしギルダーにとってはその行動もある意味反則だった。
決して惚れたとか、そういう訳ではない。だが相手が単純に美しくて、鳥肌すら立ちそうで。
そんな人がこの自分等に微笑んだ事に、正直照れていたのだ。
だがギルダーは、そう思いながらもある事を決意していた
それは、自分のやって来たこと、そしてここに来るまでの自分の思いを言う事。
だが恐らく、それを言ったら彼女の顔からは…あの綺麗な微笑みは消えてしまうだろう。
自分のせいでそうなったら、この美しい人の夫に申し訳が立たない。
だがそんな事を言っていては始まらない。落ち着け、冷静に…冷酷になってでも伝えなければ。
「おい…いや、あの……ビアンカ…さん……」
「おいおいギルダー、何モジモジしてんのさ。それにあの威圧的な喋りができなくなってるし?」
「五月蝿いぞセージ!それにモジモジなどしてない!…というか威圧的とは何だ!」
そこまで反論して…彼は静かに溜息を付いた。そして肩の力を抜いて、ビアンカに視線を移した。
そして言う。静かに、あの事について。
「貴女に言わなければならない事がある。
貴女の仲間の、ピピンという男についてだ……」
――――3rd
「………何を…」
ジタンの目の前で、キーファが立っていた。
背中を焦がしたキーファが仁王立ちをしていた。
「ジタン…命拾いしたねぇ……いやぁ、不愉快だよ」
クジャはその光景を見て毒づいた。
そしてすぐに倒れたキーファを、睨んだ。
血が滴り落ちる肩口を気にせず…睨んだ。
――キーファは、ジタンを護っていたのだった。
本来ならジタンが受けるはずだった銃弾を、その身に受けて。
そして更に、釘バットでクジャの肩に一撃見舞わせて。
体力はもう既に限界まですり減らしているのに、気を失っていたのに。
ただ、生命力の全てを使ってジタンをかばったのだ。リノアとケット・シーが見たのは、そんな彼の姿だった。
「…っあ~……さっきまで眠かったけど…完ッ璧に目ぇ冷めたぜ…やっぱ痛みは効くな~……」
「キーファ、喋るな……」
「あー、でも折角…げほっ……目は冷めたけど…死ぬよなぁ…これじゃ」
「キーファ………なんで助けるんだよ…キーファ……」
「人を助けるのに…理由なんて要らないだろ?必要性なんか…無い」
そう言ってキーファは軽く笑った。
そして、血を吐いて…目が虚ろになっていく。
「一方的な頼み事だけどよ……がはっげほっ…あいつ、倒せよ」
『頼んだぜ』
そう言って、キーファは目を閉じた。何故か微笑んだままで、静かに横たわるだけになって。
―――Last
「嘘…冗談でしょ?」
「本当だ……」
「嘘はやめてよ!!」
「本当だと言ってるだろう!!」
ギルダーは、全てを話した。
自分が人殺しをしていた事から始まり…そして本題の、"ピピンを殺したのは自分だ"という事を。
ビアンカの瞳から涙が零れ落ちるのを見て、ギルダーは胸を痛める。
セージはその2人の姿を極力見ないように、タバサの寝ているベッドの方に視線を向けた。軽い気持ちで介入は出来ないが故に。
「怒鳴ってすまない……だが、本当のことなんだ。
様々な人間を手にかけて…そしてそのピピンという者も殺した」
「本当なのね…」
「ああ、本当だ。
ベッドに眠っている貴女の娘の目が覚めたときに…2人に一緒に言おうと思っていたが……。
だが、俺のほうが我慢が出来なかった…だから言った」
ギルダーがそう言うと、セージの袋を見つめた。
大量に入っている武器。殺傷能力は折り紙つきのものが沢山入っている。
「俺のことが憎いか?などと尋ねる様な真似はしない。
許してくれ、と懇願する様な真似はしない。
俺のことが許す事が出来ないなら…俺のことが憎ければ……俺を殺してくれて構わない。武器なら、ここにある」
そう言うとギルダーはセージの支給品袋をビアンカに渡した。
セージが苦笑しながら「勝手につつくなよ」と言った。が、その声は…悲しそうで、重い。
ビアンカは、両目を擦ってギルダーを見た。そして言う…。
「私には…復讐なんて真似は出来ない……殺せない。許せないけど…ここで殺したらあの魔女とやらと一緒だから!」
「だが俺は人を殺した…魔女と同じだ!貴女に怒りの意思があるなら…殺せ!!」
「殺してあげるよ!そんなに死にたいんだろう?君たちは。
だから楽に殺してあげるさ…僕の理想のために散れ!」
クジャの右手では、魔力の塊が渦巻いていた。
それはあのレックスを殺した光にも似ていた。違うかもしれないが、似ていた。
「俺を許すことなど、貴女には出来ないはずだ!
それに……貴女が永遠に苦しむ姿を見たい人間は…いないだろう?」
ギルダーはビアンカを見てそう言った。
そして静かに、死を受け入れるように目を閉じた。
「クジャ……お前を止めるために…俺はお前を……殺すよ。
…これ以上お前の好きにさせてたまるか!!行くぞ!!」
ジタンはただただ叫んだ。
そして右足の痛みなど忘れて、ゆっくりと立ち上がって、キーファの持っていた釘バットを構えた。
「ギルダーさん…私はあなたを殺さない。これからあなたは生きて、困っている人に手を差し伸べて。
私はあなたに意地でもそうさせて…"過去のあなた"を、"殺人者だったあなた"を殺すわ!」
支給袋を机に置いて、ビアンカはそう言った。
強い意志を瞳に浮かばせて、しっかりと前を見据えてそう言った。
2つの場所の間には、"許せるか許せないか"、それが違っているだけなのに…大きな差と隔たりがあった。
その隔たりの狭間で、青年は静かに家族の無事を祈っていた。ただ静かに、隔たりの狭間で。
【ジタン(右足負傷) 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)
第一行動方針:クジャを殺す 第二行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【ケット・シー(かすり傷) 所持品:正宗 天使のレオタード
第一行動方針:クジャを倒す(見守る?) 基本行動方針:リュカを守る】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)
第一行動方針:クジャを倒す(見守る?) 第二行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【クジャ(HP 6/7程度) 所持品:ブラスターガン 毒針弾 神経弾
第一行動方針:ジタンを殺す 第二行動方針:皆殺し 最終行動方針:最後まで生き残る】
【現在位置:アリアハン城外】
【リュカ(HP 3/5程度) 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
第一行動方針:レックスの墓を作る 第二行動方針:クジャを倒す
基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【現在位置:アリアハン城堀】
【タバサ(風邪、睡眠) 所持品:ストロスの杖・キノコ図鑑・悟りの書
第一行動方針:睡眠をとる 基本行動方針:家族を探す】
【セージ 所持品:ハリセン・ファイアビュート・ライトブリンガー・雷の指輪・手榴弾×2・ミスリルボウ
第一行動方針:タバサの看病(ギルダー達の対話には介入せず) 基本行動方針:タバサの家族を探す】
【ギルダー 所持品:なし
第一行動方針:ビアンカと対話中 第二行動方針:ビアンカとタバサに全てを説明する
基本行動方針:セージと行動し、存在意義を探す/自分が殺した人の仲間が敵討ちに来たら、殺される】
【ビアンカ 所持品:なし
第一行動方針:ギルダーと対話中 基本行動方針:家族を探す】
【現在位置:いざないの洞窟近くの祠内部の部屋】
【キーファ 死亡】
【残り 92名】
最終更新:2008年02月05日 05:05