116話

第116話:現実味のない事実


「…うむ、何か成果があがったら連絡するよ、レディ。期待していてくれたまえ」
エドガーは一旦、ひそひ草での会話を切った。
――バーバラが信頼できる少女であることはわかった。
お互いの仲間の情報などを交換し、これからのことについても随分話した。
位置が近ければ合流していたのだが…地図を見る限り、合流するには大陸をほぼ一周するしかない。
そこまで歩くのはお互いに危険だ。次のステージで近くなる事を祈るしかない。
そして何より、大事な用事があり自分はここから動けない。そう、バーバラに話した『成果』とは――

「あれ、もういいのか?」
「ああ、ずっと話しているわけにもいかないだろ。研究が進んだらまた連絡をとる事にするよ。
 ちなみに、期待しておいてくれ、と言っておいたから」
「げ、責任重大じゃねえか…」

エドガーの目の前で青年――デッシュが、銀色に輝く首輪と鉛筆を手にごちゃごちゃしたメモを取っている。
あの騒ぎに城下町から脱出してすぐ、後ろから走って追いかけてきたデッシュ。
話によれば彼はエンジニアで、首輪をはずす方法を考えているという。
デッシュはエドガーを護衛として仲間にしたかったようなのだが、エドガーも機会関連ならお手の物であり、
首輪を外し脱出という研究は、エドガーにとって護衛だけでなく最大限に協力できるものであった。
かくして、二人で協力して研究をすることになった。
今、デッシュとエドガーが手にしている首輪は、身を潜め研究できる場所を探し、
森へとやって来た二人が、偶然見つけた死体から外したものだ。
少女と兵士。見知らぬ二人の死体は今、少々離れた場所に埋葬されている。
死体の首を切断するという行為はとても気分の悪いものだったが…それは、どうしようもない。
「で、俺がレディと話してた間、君の研究の成果は?」
笑いながら質問するエドガーを見ながら、デッシュは鉛筆を動かす。
「とりあえず、今わかったのはこんなとこ」
(…やっぱりな)

『予想通り盗聴器が内臓されてる。
 分解ができないからまだ断定はできないが、爆発の仕組みは機械的なものじゃなくて魔法を使用しているかもしれない』

手渡された紙には、走り書きでこう書かれていた。
盗聴器のほうは、デッシュも書いたように二人の予想通りである。盗聴はずっと警戒していた。
二人は今まで"首輪を外す"という具体的なことは一度たりとも口にしていない。バーバラにも既に遠まわしに警告してある。
まあ、決定的なことを口にしなくても、研究だなんだと言い続けていればそのうち主催者にはバレるかもしれないが…。
「つーかさ、大分暗くなってきたよな。ランプ付けてくんねえ?」
「おい、そのぐらい自分で付けろ」
気さくなデッシュの性格のおかげか、二人のウマが合うのか。
一歩間違えば主催者に殺されるような重要な仕事をしているにも関わらず、二人の空気は明るかった。
――その時までは。


死者の名を並べた放送が流れたのは、それから暫くしたころ。
エドガーは、その中に知っている名を聞いた。

「…ティナ…」

呆然と名前を呼ぶ。…それに、シャドウ。
――エドガーは、唇を噛み締めうつむく。
まさか、信じられない。…なんて現実味のない…事実なんだ。
悲しみよりも、言いようのない怒りが心を満たす。
なぜ、こんな形で生涯を終らせられなければならないのか?

暫くの間呆然としていたエドガーだが、ふと視線に気がつき顔を上げる。
心底心配そうに、少しだけ困ったようにこちらを見ているデッシュと、視線が交錯した。
…デッシュは何か声をかけようとするが、それよりも早くエドガーが声を出した。
「…大丈夫だ」

そう、夜空を見上げて…言い聞かせる。
本当は、大丈夫じゃない。まだ、怒りと悲しみで身体は震えている。
だがそれでも、今すぐにでもやらなくてはならないのだ。
(犠牲となったティナ達のためにも…)
きっと。

【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ひそひ草 ラミアの竪琴 イエローメガホン 首輪×1 紙や鉛筆など
【デッシュ 所持品:ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる) 首輪×1 紙や鉛筆など
 第一行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】
【現在位置:アリアハン北の森】

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最終更新:2008年02月05日 05:17
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