207話

第207話:希望の鍵


「そろそろ大丈夫か…。デッシュ、後ろはどうだ?」
ザックを肩にかけ、ウインチェスターを手にしたエドガーがデッシュを振り返り、言った。
デッシュはかぶりを振った。注意深く、今しがた歩いてきた後方の道のりを睨み付ける。
「……大丈夫みたいだな。追ってくる気配はねぇ」
「そうか…」
エドガーはデッシュの返事に軽くうなずき、地図を広げた。

先程、マシンガンの襲撃を受けた場所から反対の方角へと逃げてきたが、
いつの間にか森のかなり奥地に入り込んでしまったようだ。このまま更に北に行くと、
大きな川 ── すなわち見通しの良くなる川岸だろう ── にたどり着くらしかった。
(広いところには出ないほうがいいな……)
そう考え、決めた進路を頭にたたきこむと、地図を折りたたんだ。
エドガーが考えをよぎらせていた、その時…急に嫌な感じがした。敵が襲い掛かってくる直前のような。
目の前の木陰から!?
前方にウィンチェスターを向けるのとほぼ同時に木陰から人影が飛び出してきた。
その人影は全く無駄のない動きでエドガーの間合いに入り、首筋に緑色の剣を突きつける。
エドガーは襲撃者の方を伺うと、凍り付くような鋭い視線とぶつかる。黒い髪のまだ若い青年だった。
「…動くな!」
黒髪の青年が警告する。
「キミも死ぬぞ?」
エドガーもウインチェスターを青年の心の臓にゼロ距離でポイントしている。
まさに一触即発。
お互い少しでも手元を動かせば相手を殺害できる状態にある。
「エドガー!!」
「…大丈夫だ」
背後でデッシュが叫ぶがエドガーは落ち着き払った声で答える。
(この状態なら最悪、相打ちに持ち込むことができる。そうなれば少なくともデッシュは助かる…)
その考えこそがエドガーに心理的優勢をもたらせていた。パニックに陥ることなく。
その状態でどれほど硬直していただろうか。
時間にして僅か数秒だったのだが、エドガーには半刻ほどにも感じた。
デッシュの方は一触即発の雰囲気に呑まれ、とてもじゃないが動ける状態ではなかった。
しかし事態は動き出す。

「う…う、動くな!」
デッシュの背後の木陰から、エドガーにとってはとても見慣れた武器を構えた金髪の青年と、
ピンク色の髪の女性が現れたのだ。
(…やれやれ、こちらは囮だったか)
金髪の青年が持つオートボウガンはエドガーとデッシュの背中をポイントしており、
そちらに武器を向ける余裕がないエドガーはただ唇を噛むことしか出来なかった。
「武器を捨てるんだ」
「…分かった」
黒髪の青年の言葉に対し、エドガーは実にあっさりとウインチェスターを手放し両手をあげる。
首筋に剣を突きつけたまま姿勢で青年はエドガーの顔と地面に落ちたウインチェスターを交互に見ていたが、
やがて首筋から剣を放し、鞘に収めた。
この行動に驚いたのがオートボウガンを構えた金髪の青年だった。
「お、おいザックス!何してんだ!?」
黒髪の青年――ザックスはエドガーが手放したウインチェスターを拾い上げ、金髪の青年に掲げる。
「まあ落ち着けランド。少なくともさっき俺たちを襲った奴はこの人達じゃねえよ。確かに銃をもってたけど
こいつはショットガンだ。さっきのマシンガンの野郎とは違う」
「けどよ!まだこいつらがゲームに乗ってないと断定できた訳じゃ…」
もっともな反論を返す、ランドと呼ばれた金髪の青年の言葉を遮り、エドガーが二人の会話に割り込む。
「マシンガン?…そうか、キミ達も奴に襲われたのか」
この言葉にいち早く反応したのがザックスだった。
「キミ達も、って…あんた達もあのマシンガンの野郎に?」
「そういうことになるかな。そこのデッシュとこのゲームについて話し合っていたら背後から突然な。
我ながらよく無傷で逃げ切ったと思うが、相手が予想以上に鈍かったせいで助かったというか」
あの時の状況を思い出しながら、苦虫を噛み潰したような表情して語るエドガーはさらに言葉を紡ぐ。
「我々はゲームに乗る気は無いし、デッシュと脱出方法も考えていたのだ。
…どうだろう?キミ達も見たところゲームには乗っていないみたいだしここはお互い協力するというのは?」

「ああ、いいぜ」
ザックスのあまりの即答ぶりに逆にエドガーが驚いた。
「いいのか?」
思わずもう一度聞きなおしたエドガーの言葉にザックスはコックリと頷いた。
「ありがとう・・・」
「断る理由はないしな。こっちとしても仲間が増えるのは大歓迎だ」
ランドはまだ納得いかなげな表情をしながらもオートボウガンをおろす。
とりあえずザックスの決定には従うようだ。
その横ではシンシアが「大丈夫ですか?」と言いながら、
緊張感から開放され腰が砕けたデッシュに手を伸ばしていた。

そしてお互い簡単な自己紹介を終えるとエドガーがあることに気づく。
「ところでミス・シンシア、その手に持っているものは?」
エドガーがシンシアが持つ対人レーダーを指差す。
「…あ、これは、自分達に近づく参加者の人達に反応する道具みたいです。
どういう仕組みなのかはよく分からないですけど…」
「こいつのおかげでさっきあんた達の背後を簡単に取れたわけだけどな」
ザックスとシンシアの言葉にエドガーとデッシュは顔を見合わせた。
「エドガー、こいつは…」
「ああ…いけるかもしれんな」
エドガーとデッシュは思ってもみなかったヒントをを手に入れた。
そして森で運良く出会えたザックス達とともにゲームを壊すためにその場を後にしたのだった。

【エドガー 所持品:バスタードソード 天空の鎧 ラミアの竪琴 
 イエローメガホン ウインチェスター+マテリア(みやぶる)(あやつる)
【デッシュ 所持品:なし
【ザックス 所持品:スネークソード 毛布 
【シンシア 所持品:万能薬 対人レーダー 煙幕×2 毛布 
【ランド 所持品:オートボウガン 魔法の玉 毛布
 第一行動方針:森で夜を明かす 最終行動方針:ゲームの脱出】
【現在位置:アリアハン北部の森奥地】

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最終更新:2008年02月05日 05:20
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