461話

第461話:ウル ~ある会話の風景~


「みんなーヘンリーとソロ、連れてきたよー」
「レナ、エリア! 良かった目覚めたんだな……」
「エリアさん、良かった。レナさんも」
「うん、ありがとうソロ。ヘンリーも……ごめんなさい。私どう謝ってもいいのか判らないけど」
「いいさ、俺はこの通りピンピンしてる。エリアも回復した。だから、いいさ」
「はい、私もこうして元気……とはいえないけど、ここで今笑えています。だから気にしないでください」
「ヘンリー、エリア……それレナを追い詰めてる」
「うう……ごめんなさい」
「さて、今ウルにいる全員がここに揃ったわけだな」
「あのヘンリーさん、わたぼうが寝てるんですけど。一応ビビが今様子をみています」
「ん、なんだ疲れがでたのか? まぁそっとしておいてやろう」
「じゃあこれからのことを検討しようぜ、ずっとこの村にいるわけには行かないだろう」
「いえバッツさん、エリアさんは目覚めたとはいえまだ無理できる状態ではありません。
 ヘンリーさんもバッツさんも……そして僕も無理な戦闘は厳しい状態です。
 しばらくはこの村に留まるしかないと思いますが……」
「専守防衛、か……リュカ達を探しに行きたいが今は仕方ないな。
 よし、見張りは俺がやるからおまえらは休んでろよ。ちょうどいいアイテムもあるし俺が適任だ」
「動ける奴らでパーティを組んで外に行くのはどうだ? 探したい仲間がいる奴もいるだろう。
 俺の足の怪我も歩けないほどじゃないし……できるなら留まるより動きたい」
「止めたほうがいいと思います。ここの守りが薄くなるし、外にはピサロ達が行っています。
 僕たちの役目は彼らの帰る場所を護ることだと思います」
「そうか……そうだな。レナもまだ無理はできないし」
「私なら大丈夫よバッツ、でもエリアの傍に居てあげたいから……」
「ああ、わかってる」
「…………」
「どうしたソロ、考え込んで」
「ヘンリーさん……いえ、そうですね。みんなにも言っておいた方がいいかもしれない」
「どったの? なんか深刻なこと?」
「はい、首輪を解除する方法についてなんです」
「え?」
「本当かよ?」
「まだ判りません。でも、可能性がないわけじゃないと思います」

「……話せよ、ソロ」
「……はい。一度ロックさんに話したことなんですけど、天空の剣があればもしかしてこの首輪を
 外せるかもしれない」
「天空の……剣? それで首輪を斬るってこと?」
「いえ、天空の剣にはあらゆる魔力を打ち破る力が宿っています。その凍てつく波動なら……」
「天空の剣なら俺も知ってる。リュカの一族にとって因縁の深い武具だからな。
 だがそれが可能だとしてそんな道具を支給するほどあの魔女がマヌケだとは思えねぇんだけどな」
「多分、支給はされてると思うんです。この天空の盾も支給されていましたし、それに……感じるんです。
 天空の剣の存在を。僕の中に流れる天空の血が教えてくれるのかもしれない。
 でも、確かに魔女の視点から見ればそれで首輪が解除できるなら支給するはずがない。
 このことから天空の剣では解除できないという推測はできます」
「なーんだ、結局無理なんだ」
「それなら話す必要はありませんよね……つまり、まだ何かあるんじゃないですか?」
「はい、エリアさんの言う通りあれから考えていたことがあるんです。
 天空の剣単体では無理かもしれない。でも……他の力で剣を強化することができたら」
「他のアイテムと組み合わせることで可能になるかもしれないってこと?」
「天空の剣は僕が最初に手に入れた時は長い年月のせいかその力の大半が失われていました。
 しかしマスタードラゴンに会い、その力を注ぎ込まれることでかつての力を取り戻したのです。
 それと同質の力を剣に注ぎ込むことが出来れば、恒久的にとはいかなくても一時的にでも剣の波動を
 強化できるかもしれない」
「ちょっと待ってくれ、話は分るがそのマスタードラゴンと同質の力とやらはどっから手に入れるんだよ。
 そのマスタードラゴンとやらがこの世界にやってきてくれるわけじゃなし、その力に当てはあるのか?」
「この盾を始めとした同じ天空の武具から抽出できれば、と思っていますが……難しいでしょうね。
 武具に秘められた力を扱える能力を持った人がいれば……」
「ラミアスの剣を打ちなおしたサリィさんなら……あぁ、駄目だわ」
「ターニアちゃん?」

「兄さんから聞いたんです。魔王を倒した武器、ラミアスの剣はさびていたのをサリィさんという方が
 打ち直して元の力を取り戻させたそうです。でも、彼女は放送で名前を呼ばれてしまった……」
「…………駄目か」
「うーん、釜に放り込んでコトコト煮込めば出来上がりってわけには行かない物かなぁ」
「リュック……料理じゃないんだから。そんなの錬金術の領域だわ」
「……マスタードラゴンの力、当てならあるぜ」
「「「「な、なんだってぇー?」」」」
「……ヘンリーさん、本当なんですか?」
「これ見ろよ」
「名簿……プサン? なんだこのバーテンが似合いそうなヒゲメガネのおっさんは?」
「マスタードラゴン」
「ヘンリーさん、こんな時に冗談は……」
「それが冗談じゃねぇんだよ。俺もリュカが魔王倒した時のパーティで一度しか会ってないんだけどよ。
 リュカの話じゃマスタードラゴンは時々人間に変身して下界でお忍びで遊んでたらしい。
 で、その変身した姿がそのバーテンってわけだ」
「それマジ?」
「それが本当なら天空の神さえも魔女には成す術なくこのゲームに連れてこられたってことですよね」
「ああ、でもマスタードラゴンはプサンの姿の時はドラゴンオーブって宝玉に竜神としての力を封印
 してるんだそうだ。だからプサンの力は普通の人間と変わらないらしい。
 そんな状態じゃ魔女に抗えなくても仕方ないさ」
「でもマスタードラゴンとしての力がないなら剣に力を注ぐのも無理なんじゃないのか?」
「バッツの言う通り。そこでドラゴンオーブが支給されてるか否かが問題になるわけだ」
「それってマスタードラゴンしか扱えない道具なんだろう?
 そんな他の参加者に意味のない道具支給されるか? プサンって奴が死んだら無意味じゃないか」
「マスタードラゴンが簡単に死ぬなんて思いたくないけれど……」
「今、ただの人間なんだろ?」
「……同じドラゴンの属性を持つ者ならそのオーブを扱えないかしら?」
「ドラゴンの参加者? 確か、竜王とドルバって奴がいたけどそいつらはもう放送で呼ばれちまったぜ?」
「ううん、もう一匹いるのよ。名簿ではスミスって名前になっていたけれど……」
「スミス……ああ、こいつか。確かに竜だな、飛竜ってやつか。ソロ、分かるか?」

「これはドラゴンライダーですね。僕の世界のモンスターだと思います。レナさん会ったんですか?」
「うん、前の世界で旅の扉を探している時に会ったんだけれど」
「え、そうでしたか? 私は会ってませんけど……」
「ほら、あの動く山を見つけたときエリアへたり込んじゃったじゃない?
 それで私だけで山を追いかけた時に会ったのよ」
「ああ、あの時……」
「動く山ぁ!? なんだそりゃ?」
「わからないのバッツ……モンスターだとは思うんだけど……」
「山のようなモンスター? まさか」
「知っているのかヘンリー?」
「多分……えーと、どのページだ? ああ、こいつだ。ブオーン……サラボナの伝説にある魔物だ。
 リュカの話じゃとんでもねぇ強さだって言うぜ」
「とんでもないな……そんな巨大な怪物まで参加してるなんて本気で滅茶苦茶なゲームだぜ……。
 そいつには気をつけたほうがいいかもな。何か弱点とかないのか?」
「いや知らん」
「役にたたねぇ……」
「オメーよりは役に立ってる自信はあるぞバッツ。それより話を戻そう」
「あ、うん。それでそのスミスって飛竜と会って……死んだはずのギルバートの声を聞いたの」
「レナさん……?」
「バッツには話したよね。信じられないかもしれないけど私は確かにギルバートだと思った。
 もう、詳しい話の内容は覚えてないんだけど……」
「そいつもまた胡散臭い奴だな……」
「……それでそのスミスならドラゴンオーブを使えるかもってことか?」
「そう、神様とモンスターでは力が違いすぎるけどその属性が同じなら……」
「多分無理だな」
「どうしてそういい切れるんだ?」
「レナも言ったとおり神様と一介のモンスターじゃレベルが違いすぎるってことさ。
 もしかしたらドラゴンオーブの力を解放することは出来るかもしれない。
 でも力の制御なんてできるわけないと思うぜ。死ぬか暴走するのが落ちだろうよ」
「ま、普通に考えればそうだよねー」
「そのスミスって奴が魔王に匹敵するような強大な魔力を持ってりゃまた話は違ってくるけどな。
 レナ、そのスミスと会ってそんな強い魔力感じたか?」

「いいえ。弱い魔物だとは思わなかったけど、そんなとても強いってほどの力は感じなかったわ」
「だろ? この竜王って奴の方が生きてればまだ可能性あったかもな」
「そうですか……」
「まぁそもそも天空の剣はソロの感覚を信じるとしてもドラゴンオーブが支給されてるかは
 分からないわけだからな。ここで話してても机上の空論って奴だ」
「あーあ、また考え直しかぁ」
「お前が何を考えたよ」
「それは言いッこなしでしょ。アレ? バッツのつむじって何か緑っぽいね?」
「ん? ああ、髪も大分伸びてきたからなぁ。そろそろ散髪して染めなおす頃か……」
「バッツって髪染めてたの?」
「あれ、レナに言ってなかったっけ? 地毛は緑なんだけど以前ボコに草と間違えられて齧られたことが
 あってさ。それから染めてるんだよ」
「……髪……緑……」
「どうしたんですか、レナさん?」
「…………」
「レナ?」
「へ? あ、ううん。何でもないの、何かを思い出しそうになっただけだから……ボソッ(まさかよね」
「さて、話はここまでだな。そろそろ俺は見張りに立ってくる。おまえらはゆっくり休んでな」
「あ、ヘンリー。見張りに行く前に手の包帯替えたほうがいいよ。血が滲んで真っ赤だよ」
「ん? ああ本当だ、サンキュなリュック。痛みも大分治まってたから気付かなかった」
「……取ってきました。どうぞ、この包帯使ってください」
「ありがとな、ターニア」
「貸して、傷つけたお詫びになんてなるとは思わないけど私が巻くわ」
「いや、レナ」
「どうしたの? 私じゃ駄目?」
「そうじゃない、そう……」
「あの、ヘンリーさん? 私なにかいけないことしました? そんなじっと見つめられると……」
「いや……そう、ターニアがこの包帯巻きなおしてくれるか」
「え、でも……」
「ヘンリーさん! ターニアは血を見ると……」
「分かってる。だからやってもらうんだ」
「そんなぁ、非道いよヘンリー。分かっててやるなんて」

「ちょっと黙ってろよリュック。なぁ、ターニア。いつまでこの現実から目をそらすんだ?
 酷い目にあったのは解る。とても怖い目に遭ったんだろう。でも、いつまでもそのままじゃ駄目だ。
 血を見るたびに身体を竦ませてたんじゃ戦うことなんてできやしない」
「わ、私戦うことなんて……できません」
「何も剣もってドツキ合う事や魔法でドンパチすることだけが戦いじゃないさ。
 危険から身を護ること。傷ついた人を救うこと。それだって立派な戦いだ。
 そりゃ俺だってソロだって身体を張ってターニア達を護るさ。
 でもそれじゃ足りない場面が来るかもしれない。そんな時ターニアはどうする?
 傷ついた仲間が君の目の前で倒れるかもしれない。そんな時どうするんだ?
 黙って、震えて、何もしないままじっとしているのか?
 自分が殺されるまで? 目の前の仲間が息絶えるまで?」
「私……私は……」
「ヘンリーさん、言い過ぎです!」
「黙ってろソロ。ターニア、ここ一時でいい。勇気を出すんだ。
 ここ一時動けたらきっといざという時にも動くことが出来る。きっとできるから」
「いざという時……イザ」
「おいヘンリー、やっぱり酷だぜ。言うことは解るが今はそれくらいに……」
「待って! バッツさん待ってください!」
「うお」
「ターニア……」
「わかりました。やります、いえやらせてください!」
「……いい娘だ」

「……………………」

「ハァ、ハァ、ハァ、……終わり、ました」
「ありがとな、手首もしっかり固定されていい感じだ」
「はい、お兄ちゃんやランドが怪我した時なんかはよく私が手当てしてあげてたんです……」
「やったな、ターニア! 良く頑張った! 感動した!」
「凄い汗よ……ほらお水」
「ありがとう、バッツさんレナさん」
「一時はどうなるかと思いましたよヘンリーさん」

「言ったろソロ? 案ずるよりは産むが安しってな」
「……ヘンリーさんの口からは初めて聞きましたが」
「気にするな」
「そうします」
「さて……そんじゃ、今度こそ見張りに行って来るぜ」
「気をつけてくださいヘンリーさん。しばらくしたら交代にいきますから。
 何かあったら無理せずに僕たちを呼んで下さい」
「ああ、わかってる」
「あの、ヘンリーさん」
「ん? どうしたターニア」
「ありがとうございました。私、動きます。その時が来たら……きっと動きます」
「ああ、ターニアなら大丈夫だ。じゃあ行くからみんな身体休めとけよ」
「はい、いってらっしゃい」

【ソロ(魔力少量 体力消耗)
 所持品:さざなみの剣 天空の盾 水のリング
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:これ以上の殺人(PPK含む)を防ぐ+仲間を探す】
【ヘンリー(手に軽症)
 所持品:G.F.カーバンクル(召喚可能・コマンドアビリティ使用不可、HP3/4)
      G.F.パンデモニウム(召喚不能)
      キラーボウ グレートソード アラームピアス(対人) デスペナルティ リフレクトリング ナイフ
 第一行動方針:宿屋周囲の警戒
 基本行動方針:ゲームを壊す。ゲームの乗る奴は倒す)】
【バッツ(左足負傷)
 所持品:ライオンハート 銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ
 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:レナのそばにいる】

【レナ(体力消耗 怪我回復) 所持品:なし
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:エリア、バッツを守る】
【エリア(体力消耗 怪我回復)
 所持品:妖精の笛 占い後の花
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:レナのそばにいる】
【ビビ 所持品:毒蛾のナイフ 賢者の杖
 第一行動方針:休息 /わたぼうの様子を見ている
 基本行動方針:仲間を探す】
【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:イザを探す】
【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:睡眠中(時間が経てば勝手に目が覚める)
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【リュック(パラディン)
 所持品:バリアントナイフ マジカルスカート クリスタルの小手 刃の鎧 メタルキングの剣
 ドレスフィア(パラディン) チキンナイフ 薬草や毒消し草一式 ロトの盾
 第一行動方針:休息
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】

【現在位置:ウルの村 宿屋】

※この話は「闇にもう一度火をつけろ」に続きます。

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最終更新:2008年02月15日 01:04
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