FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 538話


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第538話:マーダー・ライセンス


何を期待していたのだろうか。
かつてともに戦った小さな黒魔道士に相対して、サラマンダーは自分を哂った。
勝利への飢え……
いや、敗北への恐れが心に染み付いたのはどの時点からだろう。
命懸けで戦って、戦い続けた先に自分の結末がある。
なんて思いつつも、全力を出し切れない――こんなのは自分のすべてではない――
そんなふうに言い訳をし続け完全敗北、つまり死の前に逃げ出してきたのは誰だ。


戸惑ったように自分を見上げる視線を感じる。
「ごめんね、ヘンな質問して」
気まずくなりすぎた空気を取り繕うように小さな腕を振り回し、謝る。
ごめんと繰り返し、少しでも仲間を疑った自分を責める。
どうしようもなく、その流れを断ち切りたくなった。
かつての仲間として、すべてを秘してビビと足並みを共にするか。
ここまで何人も襲撃し、戦ってきた真実をぶちまけてやるか。
究極的な二択の瞬間はここだったと、後で思い返すことはできるかもしれない。
しかしそのときのサラマンダーは、ビビにまで嘘をつくことを選び取れなかった。
言葉を発せずに2メートルの間合いを歩いて詰めていく。
縮まっていく距離、近づく戸惑った表情。
見せ付けるように、判断の余裕を与えるように、拳を握り身体にためを作っていく。
サラマンダーが出会った相手にそうしてきたのだと、理解できるように。
慌てるように目を丸くしたビビを見て、それでいい、と心中呟く。
ついに解き放たれた豪腕は、しかし避けようともしないビビを捕らえ、吹き飛ばした。

素人ではない、何をされるかくらいは予測はできたはずだ。
なのに、ビビは僅かな身じろぎもせず拳に甘んじた。
それほどまでに自分が信頼されていることが、居心地悪く内なる怒りを煽った。
「サラマンダー………どうして?」
離れた位置に転がっていたビビが小さな声で言葉を吐きながら立ち上がる。
そこから、全力で反撃してくれたら。
相容れぬ敵として、向こうから決別してくれたらば。
けれど心の弱さがいだく希望は叶わない。
「ボクがヘンな質問したから……怒ったの? ……ごめんなさい」
冷静さが失われていくのがわかる。同時に心が引き裂かれていくのがわかる。
欲しかったのは決別。仲間との、ではない。自分とのだ。
駆け出していた。
ビビへとその力を剥き出しにして、拳を叩きつける。今度は容赦しない。
怯えた、しかし迷いのない両目と眼が合った。
二つの光が残像として残り、再びビビが避けることなく殴り飛ばされる。

助け合ってもこなかった。
自分で蒔いた種の責任さえ負っていない。
ビビがそんな自分さえ仲間だと思っていま身をさらしているのなら――
どうやって断ち切ればいい?
乱れた心が混乱し、くすぶる怒りがサラマンダーを駆り立てる。
「気が……済んだら。また、……いっしょに…」
ぞっとするほど明晰に、ビビの声が耳に届いていた。
サラマンダーの困惑した部分は動くのを止め、ただ激情だけが機械的に腕を振るわせる。
三度、拳がビビの身体を打ち抜いたとき。
「ストーーーーーッッップッ!!!」
聞き覚えある声が割り込んできた。

現れた声の持ち主――リュックが駆け参じ、背負ってきたエリアを少女に預ける。
それから軽装のまま短刀と盾を手に自分とビビの間に来るまで。
サラマンダーは一言も発せず、身動きもせずただ見ていた。
「あんたっ、やーーっぱり悪いヤツだったのねっ!?
 こんな小さい子を殴るなんて……許せない!」
宣戦布告を投げつけ、タイミングを計って自分への攻撃が開始される。
少し前は互角の攻防ができたはずの相手に、今は押されているのが実感できた。
ナイフの切っ先が肌をかすめ、小さな傷を増やしていく。
それでもその差の正体と遂に正面から睨みあえてサラマンダーは満足していた。
リュックと、サラマンダーの差。
迷いの、有無。
心の、強弱。
彼女にその力を行使させるものこそが仲間というものなのだ。
それと戦うならば。
それを相手とするならば、負けて悔いの無い戦いができるに違いない。
錆び付いた心が、腕が、少しずつ磨がれて戻っていく気がした。
混乱し離散していた精神が少しずつ、この戦場へと戻ってくる気がした。
ぐあん、と鈍い音を立て反撃の一撃がリュックの盾を鳴らす。
ビビも参加してくれたらいい。ビビの仲間も参加してくれたらいい。
そうやって編みあげられる力こそ、自分を断罪するに相応しい。
敗北への恐れが溶けていく。戦いに、引き込まれていく。
この場所なら、迷うことなく力を振るうことができる。
闘志、殺意、情熱を身に帯びながら没頭していく。
解毒剤のビンを囮に投げ、相手を攻撃することに純粋な迷い無き一撃を振るう。
けれど、その手が掴んだものは――



仲間を信じる、その決意ごと、サラマンダーのパンチがビビを吹き飛ばした。
ダメージと衝撃で飛びかけた意識が、しっかりと掴むものを探して戻ってこようとする。
どうしてこんなことするの、という答えを出したくない疑問と、
仲間を、サラマンダーを信じよう、という思い込むような信頼。
無意識下の二択において、ビビの小さな心は信じる道を選び取る。
見つめあえば――話し合えば――わかりあえるはず。
だって、ボクとサラマンダーは仲間なのだから―――
信頼はすぐに盲信へと変わっていた。
疑ってしまえば、もう二度と取り返しがつかなくなりそうで怖くて。
その純真さが余計にサラマンダーを困惑させ、心を荒立たせていることに気付かない。
三度パンチを身に受けて気絶するまで、ビビはひたすらに仲間を信じていた。
そして、信頼は変わることの無いまま、続く戦いの気配に呼び覚まされる。
ビビはただ、仲間を守るために二人の戦いの中へ飛び込んだ。



攻撃の線上に割り込んできた小さな影は、その瞬間呟いていた。
「サラマンダー、ダメ、だよ」
小さな声が骨に響いて全身に広がっていく。
引き換えに渡した攻撃のパワーはきっちり黒魔道士に伝わり、彼を弾き飛ばす。
背後にいたリュックが手にしていたナイフに引っかかるようにぶつかり。
異様な軌道を描いて、顔からビビは地面へと突っ込んでいった。
その軌道を目に捉えつつ、何が起こったのか、とわかっているはずのことを自身に問い直す。
腕に残った感触がその一撃の実在をありありと証明している。
そこから、サラマンダーははっきりと殺しの本質というものを想起していた。
殺害の一瞬に存在するのはただ実行するという意識だけであるということ。
それだけが殺人者であることを証明する心中のライセンス。
相手の命を打ち抜く瞬間に理由を求めるような者は殺人者としてあり続けることなどできはしない。
闘志、殺意、情熱に満ちたその一撃こそ、
サラマンダーが見失い、取り戻すことができなかった理想の一撃であった。



対峙していた二人は凍りついたように止まっている。
いや、その空間・時間そのものが凍りつき、誰も動けなかったのかもしれない。
一分か、二分か。いやもっとか?
「や……もう、ほんっっっとうに許しやしなぁああ???……」
永遠とも思えた沈黙と膠着を破ったのはリュックだった。
けれど、その怒りの言葉に反応するように。
邪魔をするなといわんばかりに、うるさい音を消すためサラマンダーはカプセルボールを投げつけていた。
地面で破裂したカプセルから広がる粉を思い切り吸い込んだリュックがその場に倒れ伏す。
崩れ落ちて眠りに落ちた彼女の様子をしっかりと確認し、
それからサラマンダーはもう動かない――決定的に何かが欠けてしまった――ビビの方へ力なく歩き出した。
けれど。
「それ以上、動かないでください」
凛とした声が予想もしなかった方向から聞こえる。
滑る様に視線を巡らせたサラマンダーに対して
怯えきったターニアをかばうように、エリアが杖をかざして仁王立ちしていた。

【サラマンダー(右肩・左大腿負傷、右上半身火傷、MP1/5)
 所持品:紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×1、各種解毒剤(あと2ビン)
 第一行動方針:動揺+呆然
 基本行動方針:参加者を殺して勝ち残る(ジタンたちも?)】

【リュック(パラディン)(眠り)
 所持品:メタルキングの剣 ロトの盾 刃の鎧 クリスタルの小手 ドレスフィア(パラディン)
 バリアントナイフ チキンナイフ マジカルスカート 薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:サラマンダーを倒す
 第二行動方針:エリア・ビビ・ターニアの安全を確保し、ソロ・バッツに合流する
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】

【ターニア(血への恐怖を若干克服。完治はしていない)
 所持品:なし
 第一行動方針:戦闘に恐怖
 基本行動方針:イザを探す】
【エリア(体力消耗)
 所持品:微笑みの杖 スパス ひそひ草
 第一行動方針:どうにかして三人を守る
 基本行動方針:三人を守る】
【現在位置:ウルの村・東南の井戸周辺】
※エリアはまだビビの死亡を認識しておりません。

【ビビ 死亡】
【残り 44名】