FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 429話


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第429話:湖に炎が踊る


ドーガは気配が動くのを感じ、瞑想から目を覚ました。
見るとブオーンが再び立ち上がっている。
その気迫とドーガに背を向けていることから、対岸を攻撃しようとしているようだ。
対岸は流石に離れすぎているためドーガの視力でも何があるのか判らない。
身体の回復は充分ではない。しかしこれ以上ブオーンの凶行を許すつもりもない。
ドーガは再び氷結魔法で氷の船を造り、己の異形の手足を櫂として
ブオーンへと向かって進み始めた。


「な、何だコレは!」
突如として湖に現れた怪獣を目の当たりにしてデールは驚愕した。
小さな山ほどもある巨体はデールを押し潰すほどの威圧感を放ってくる。
そう、魔獣は怒り狂っていた。
「俺は戦うつもりはなかった! なのに何故邪魔をする!!」
「う、うわあああああああ!?」
ブオーンの咆哮に怯え、デールはマシンガンを取り出してブオーン目掛け乱射した。
銃弾はブオーンの身体の肉をこそぎとって行く。
「ぐおおおおおおおおお!!」
ブオーンの目にはスミスのかけたマヌーサの効果によって敵であるデールの姿が幾十人にも見えている。
その全てから一斉に攻撃を受けたと錯覚し、ブオーンは逃れるためにそのデールの軍勢に向かって
激しい炎を吐いた。
強烈な火勢がデールのいる南岸一帯を焦がす。
「ぎゃぁああああ!?」
こうなればマヌーサも何も関係はない。成す術もなくデールは炎に焼かれてしまう。
攻撃が止んだことを確認し、ブオーンはデール「達」に向かって進み始めた。
今度は特大のいなずまをお見舞してやるつもりだった。
全身を焼かれながらも距離があったため致命的なダメージを避けることができたデールは
炎上するマントを脱ぎ捨て、地面に転がってまだ燃えている服の消火をする。
(こ、こんな奴に勝ち目などない! ここは逃げなければ!!)
初めて出遭った自分ではどうしようもできない圧倒的な敵を前にデールは逃げ出そうとした。
森の中に駆け込んだところを今度は無数の光条が閃き、森の木々を破壊する。
ブオーンのいなずまだ。

「ぬぅ!? 通じない?」
いなずまを放ってもデールの幻はその場を動かない。
それを見て攻撃が効いてないと錯覚したブオーンは再びいなずまを放った。
距離がまだあるためにブオーンは遠距離広範囲攻撃しかしてこない。
それがデールにとっては仇となった。
マヌーサで幻覚を見せられていてもほとんど関係がないからだ。
しかも相手の攻撃にはデールのリフレクトリングも効果がない。
森の木々が避雷針となってデールを護ってくれているが、飛び散る木の粉や枝が
デールの進行の邪魔をする。
このままでは直撃を受けてしまうと、デールはブオーンの動きを止めるために
再びマシンガンをブオーンへと向けた。
カチリ、引鉄を引く。

――――暴発した。

「うっぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

マシンガンは弾層部分から破裂し、デールの右手首を吹き飛ばした。
微細な鉄片がデールの右半身と右目を貫く。
乱射によって加熱していたところにブオーンの激しい炎を受け、マシンガンは限界まで加熱していたのだった。
「ひ、ひぃ!」
デールは全身を掛け巡る激痛を堪え、恐怖と共にその場を駆け出した。
今度こそわき目も振らずにその場を離脱していく。
デールがブオーンの射程範囲内から離脱した瞬間、ブオーンを縛っていたマヌーサの効果が解ける。
湖の南岸を取り巻くようにしていた人影が一つ残らず掻き消えた。
「な、何だったんだ?」
ブオーンは今までのことは全て幻だったのだろうかと疑う。
だが全身を貫くこの傷と痛みは現実の物だった。
そういえばあのドラゴンもいつの間にか居ない。
死んだのか、逃げたのか……考えようとしてブオーンは止めた。
関係ない、これでもうこの場には誰も居なくなったのだ。もう自分の潜伏の邪魔をするものはいない。
そうして再び島に化けようと振り向いた先に……湖の上に立つドーガがいた。

「き、貴様! 生きていたのか!」
「そうやすやすとは殺されてはやれぬよ。まだ目的を果たしていないのでな」
そういってドーガは湖の南岸の破壊痕をみやる。
「また誰かを襲ったのか……やはり捨て置くことはできぬようだ」
ドーガは魔力を収束して最大攻撃魔法の準備をする。
そしてブオーンのほうにはある疑惑が沸き起こっていた。
(何だ? あの幻だか何だかが消えた後にこうも都合よくコイツが現れるんだ?
 まさかコイツが全部仕組んでいたのか?)
あのルドルフのようにコイツにも自分はしてやられたのだろうか。
疑惑は瞬間確信へと変わり、怒りが噴きあがってくる。
「だから人間は嫌いなんだ! 姑息な手段ばかり使いやがって!!」
ブオーンは大きく息を吸い込み最大級の炎を吐こうとする。
そうこうしているうちにドーガの準備が整った。
「殺生は好まぬ。だがお主をこのまま放置することは出来ぬ!
 この場にて焼滅せよ! フレア!!」
その瞬間ブオーンの口からも超高温火炎が生み出された。
「ぐぁあああああああああああああああああああああああ」
フレアの生み出した爆熱によってブオーンの全身は焼け爛れ、爆風がその巨体を破壊していく。
巨大な水しぶきを上げ、ブオーンは崩れ落ちた。
ドーガもまたブオーンの炎によって吹き飛ばされた。
異形となったその時から属性攻撃には耐性のあるドーガだったが、生命力の弱っているこの時に
この激しい炎に抗するのはいかにも無理があった。
僅かに残った生命力をも焼き尽くされ、ドーガは湖の水面へと叩きつけられた。

――フィンよ……おぬしの仇は取った……だがどうやらこれまでのようじゃな……
  ウネよ……ザンデよ……サックスとギルダーを……頼む……

その思考を最期にドーガの意識は暗い闇の中へと沈んでいった。


全てが終わってしばらくしてから。
ブオーンの近くの水面にブクブクと泡が立った。


「プハァッ」
そこから水飛沫をあげ、現れたのはずっと湖底に隠れていたスミスだった。
口にはザックを咥えている。
ブオーンがやられた衝撃で湖へと落とし、沈んできた物だった。
スミスは水の中では上手く動くことは出来ないが、竜であるため人間よりはずっと潜水可能時間は長い。
キョロキョロと辺りを見回す。
湖の南岸は破壊しつくされ、湖には焼け爛れたブオーンが浮かんでいる。
そこからしばらく離れた場所にはこちらも焼け爛れた老人が浮かんでいた。
どうやら湖に浮かぶ木の枝に引っ掛かって沈まなかったらしい。
「相打ちになったのか……勿体ないなぁ。あの翡翠色の髪した人はどこいったのかな?」
それもあの岸辺の破壊されようを見ると生存しているとは思いにくい。
ブオーンをけしかけることでブオーンに戦闘意欲が生まれ、あの襲撃者も逃げ延びるというのが
最善だったが、どうやら最悪の結果に終わったようだ。
向こうで浮いている老人のことは良くわからないが、役に立たないなら興味はない。
「まぁ終わったことはしょうがないよね。最後にサスーンでも見てからカインの所に戻ろう」
ジャブジャブと泳いで岸へと目掛けて移動する。
その時――

―― オマエノセイダ ――

――声が聞こえた気がした。
「え?」
キョロキョロと辺りを見回すが何もいない。
(気のせいかな?)
思い直して再び岸を目指す。
するとまた声が聞こえた。

―― オレハタタカウツモリナカッタ……ナノニオマエガキタカラ…… ――

今度はハッキリとその声を認識してスミスはブオーンを見る。
その巨体がブルブルと震えていた。
いや、声ではない。強烈な思念。それも憎悪の思念だ。

「 オ バ エ ド ゼ イ ダ ァ ア ア ア ア ア ア ア ア ! !」
死んだと思っていたブオーンが突如として立ち上がり、盛大な水飛沫を上げる。
大波がうねり、スミスは足を取られ溺れそうになる。
翼の皮膜が損傷しているのが不安だが、こうなったらそうも言っていられない。
スミスは翼を広げ、湖から飛び立とうとした。
しかしそこに影が落ちる。
見上げるとブオーンがその大槌のような巨腕を振りかざしていた。
「ちょ、ちょっと待って! 話を聞い……」
「ジネェェエエエエエエエエエエエ!!」
聞く耳も持たずにブオーンは腕を振り下ろし、スミスの身体を砕いて水面へと叩きつけた。
スミスは翼を砕かれ、全身を打たれ、血を吐きながら深い湖底へと沈んでいく。
ブオーンはそれを確認もせずにゆっくりと移動し、岸へと上がった。
ずるり、べちゃ、と爛れた皮膚が捲れ、地面を擦る。
立ち上がることもできずにブオーンは四つん這いのまま進んでいく。
「ブォオオオオオオオオンッ!」
咆哮。
フレアの炎によって喉を焼かれ、声がかすれている。
だがそんな状態でも声を出せるということが逆にブオーンの異常な耐久力を示していた。
ブオーンには戦うつもりはなかった。ずっと隠れていることが望みだった。
だが他の奴らはそんなことはお構いなしに自分を襲ってくる。
自分は死にたくはない。一度死を体感すればそれで充分だ。
何があっても生き延びる……それが彼の決意。隠れても無駄なのならば……殺すしかない。
(殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる
 俺は生き延びるんだ。こんな所で朽ち果ててたまるものか……)
生への渇望、執念。それだけが今のブオーンを動かしていた。
ずるり、べたん、ずるり、べたん
全身は爛れ、剥がれた皮膚を引き摺り、動くたびに全身に激痛が走る。
その痛みはブオーンに正常な思考を許さない。。
ただ、痛みから逃れるために、このゲームから逃れるために、ブオーンは進む。
自分以外の参加者を皆殺しにするために。
ゆっくりと、ゆっくりとブオーンは南へと向かって這い進んでいった。



ザパァ

ブオーンが湖から去った後。またしても湖から浮上するものがあった。
それは魔法の絨毯に身を横たえたスミスだった。
最後のブオーンの攻撃で瀕死の状態だが、未だにその息は途絶えていなかった。
ゴプッ、と血の混じった湖水を吐き出す。
(さすがに……ヤバイかな? これじゃ死んじゃうかも……)
絨毯を水面スレスレに移動させ、水面に浮かぶ死魚を掬い上げる。
先ほどの爆発の影響でそこらじゅうに魚が浮いていた。
数匹ほど掬い上げ、食べる。咀嚼し、飲み込むと再び魚を掬い上げ、食べる。
(駄目だ……こんなのじゃ栄養が足りない。この怪我を癒すにはもっと栄養を取らないと……
 栄養、栄養を……栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養栄養)
栄養を探して湖の上を絨毯で飛び回る。
そして……見つけた。
先程より更に北岸の方向に流されていたドーガの死体を。
(栄養!)
すぐに近づいて、何も考えずにその死体に齧り付いた。
ガブリ、グシャ、バリ、ボリボリ、グチャ、ゴブリ、ゴクン、ゴクン、ゴクン……
ドーガの肉を啄ばみ、骨を噛み砕き、内臓を食い破り、その紫の血液を飲み下す。
どのくらいの時間が経っただろうか。
そこにはもう、紫に染まった水面と黒く焼け焦げたボロ布しか存在しなかった。
「フゥ~~~ごちそうさま」
紫色に染まった口元を湖に浸して濯ぐと、今度は北岸に向かって絨毯を進ませた。
(何とか栄養は取れたけれど身体はボロボロのまんまだ。
 飛ぶことはもちろん、動くことすら難しい。ここはおとなしくしばらく隠れるべきだね)
湖を隔てた場所に近づくものは、恐らくいないだろう。
空を飛ぶことが出来る者がいるなら話は別だが、自分以外にそういう者がいるとは思えない。
湖の北岸はこの上ない安全地帯である筈だった。そして進んでいくと洞窟が見える。
(こりゃ都合がいいや。あそこで休もう)
絨毯に横たわったままスミスは洞窟へと入り、しばらく進むとゆっくりと絨毯を着地させる。
(さすがに限界だぁ……ごめんねカイン。約束の時間までには戻れそうもないや。
 まぁ僕が戻るまでしばらく一人で頑張ってよ……)
そして……スミスは身体を癒すための眠りへとついた。
かの大魔道士ノアの魔力を受け継いだドーガ……その血肉をスミスは取り込んだ。
それが彼に何をもたらすのか……まだ誰も知らない。


「ひぃ、ひぃ、ひぃいっ」
デールは走っていた。
すでに失われた右手首を押さえ、右目から血の涙を垂らし、それでも走っていた。
右の脇腹と肩口ににマシンガンの破片が突き刺さり、動くたびにデールに痛みを伝える。
それでもデールは走っていた。
「ひぃいっ、ひぃ、ひぃ、……」
どうしてこうなってしまったのかわからない。
何が間違っていたのかわからない。
運が悪かったとしか思えない。
自分は上手くやっていた筈だ。歯車は上手く回っていた筈だ。
なのに何故こうなってしまうのか。
デールは走る。訳の分からない恐怖に突き動かされて。
湖から東へと駆け、すでに山岳地帯へと入っている。
木々を掻き分けながらデールは闇雲に進んでいく。
(嫌だ、嫌だ、死ぬのは嫌だ。僕は壊すんだ、全てを。
 そうだ、あのマリア義姉さんも、リュカさんもタバサ王女も壊した。
 その他の奴らも僕がみんな壊すんだ。そうだ、ヘンリーも僕が壊すんだ。
 嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ、だから死ぬの嫌だ。僕が死ぬわけがない。僕は全てを壊すんだ!)
ただそれだけを思い、駆けていく。
普通ならばもう動くことなど出来る筈もないダメージを受けながら、
それでも走っていく。その姿は……ティファの最期に似ていた――。
デールはただ一心に駆けて、駆けて、駆けて、そして……彼は足を踏み外した。
山の斜面、いやもはや崖と呼ぶべき傾斜に足を取られデールは成す術なく転がり落ちていった。

【スミス(両翼骨折、重度の全身打撲、変身解除、洗脳状態、ドラゴンライダー)
 所持品:魔法の絨毯 ブオーンのザック
 第一行動方針:眠り、身体を癒す
 第ニ行動方針:身体が癒えたらカインと合流する
 行動方針:カインと組み、ゲームを成功させる】
【現在地:封印の洞窟 地下1F】

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷、)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し
 基本行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:封印の洞窟南の湖→南へと移動(速度は遅い)】

【デール (中度の火傷、右目失明、右手首喪失、いくつかの鉄片が右半身に食い込んでいる)
 所持品:アラームピアス(対人) ひそひ草、デスペナルティ リフレクトリング
 賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能) ナイフ
 第一行動方針:逃げる
 基本行動方針:皆殺し(バーバラ[非透明]とヘンリー(一対一の状況で)が最優先)】
【現在地:湖と南の森との境→東へ】

※マシンガンの残骸は湖の南岸付近に放置


【ドーガ 死亡】
【残り 61名】