183話

第183話:幸運の若いの


エッジは静かに見ていた。
ウネが何をするのか、静かに。
殺されるとは考えにくいが、やはり警戒はしてしまう。

人間が腕を喪失してしまう程の状況なのだから。

「しかしながら、あたしも恵まれたもんだねぇ」

エッジを尻目にそう呟きながら、ウネは杖を使った。
ユフィの傷が少しずつ回復していく。流石は癒しの杖、と言ったところだった。
だが少し頼りない。腕も再生をするわけでもなく…まぁ、それは最初から期待はしていなかったが。
ウネの魔力が低いのかと考えたが、それにしても頼りない。

更に、エッジは気づいていなかったが、癒しの杖に少し悪い異変が起こっていた。
それほどまで、この世界には強力な回復という手立てが貴重すぎたのだ。

まだそれにはエッジは気付いていない。否、少し冷静さを欠いている今の彼が気付くはずも無かった。

だが、それでも少しずつ少しずつ腕の傷が治っていく。
時間を掛けていくと、腕が千切れ飛んだ様には見えない程に傷は閉じていた。
どうやら混濁していた意識もマシにはなってきたらしい。顔色も戻りつつある。
だが、少し時間を掛けすぎた。マリアが心配だ。

「さて、これで体の方は大丈夫だね」
「ありがとう、じゃあ俺はそろそろ…」
「もう行くのかい?せわしないねぇ」

仲間を待たせてあるので、と付け加えると、
エッジはまたユフィを担いだ。そして走り出そうとしたとき、

「ちょっと若いの。これを持って行くと良い」
「…な、何だ?支給品?」
「この杖以外はどうもあたしには必要なさそうだからね。貰っていくと良いよ」

そう言うとウネは、自分の袋の物を出した。
一つは、刃が波状になっている剣。近くに落ちた解説書には「フランベルジェ」と書いてある。
そしてもう一つは銃。だが大きい。恐らく地面に固定して打つタイプのマシンガンだろう。三脚もある。

「……いいのか?」
「貰ってくと良いって、聞こえなかったのかい?」

ウネはそう言うと「若いの」の袋に難儀しながら支給品を入れていった。
そして一言

「行ってきな」

その言葉を聞いて感謝の意を示すと、エッジは急いで元きた道を戻ろうと走り出した。
マリアへの報告と合流を急いで済ませるために、早く早く走った。


「はぁ…」

暫くしたあと。
静かに溜息をつくウネの手には、ヒビが入った癒しの杖があった。

【エッジ 所持品:風魔手裏剣(30) ドリル 波動の杖 フランベルジェ 三脚付大型マシンガン
 第一行動方針:マリアの元へ戻る 第二行動方針:仲間を探す】
【ユフィ(傷回復/右腕喪失) 所持品:プリンセスリング フォースアーマー
 行動方針:同上】

【ザンデ 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
【ウネ 所持品:癒しの杖(損傷 使い続けると壊れるかも)
 第一行動方針:エッジが見えなくなるまで見送り 第二行動方針:ドーガを探し、ゲームを脱出する】
【現在位置:アリアハン北の森、橋の近く】

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最終更新:2008年02月15日 01:35
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