FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 308話


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第308話:AeroBlaster


ザンデをも吹き飛ばした技を持つ相手に対し出し惜しみも小細工も不要。
そう考えたウネは即座に持てる最大の呪文、トルネドの詠唱に入る。
耳鳴りの音が次第に大きくなり気圧の急激な変化を知らせる。
ベアトリクスの前で空気が渦を為し始め、現れた旋風が瞬く間に天へと伸び、その勢いを増す。
渦の発生に反応して大きく飛びのくベアトリクス。
すぐに竜巻は天を衝き、ゆっくりとその身をうねらせていた。

(トルネドは外れちまったか。ま、そんな簡単にはいかないもんだね)
発達した白い障壁が二人の間を裂き、お互いの姿が見えなくなる。
「さーて、どう来る?接近か、それとも魔法かい?」
両手に魔力を集中して、魔法反射の魔法、リフレクを準備する。
二人の間では白くうねる風速100mの牙が無作為に暴れまわっている。
竜巻に触れた森の木々が破片と化す。巻き上げられる砂や石。
転がっていたわるぼうの死体が渦へ呑みこまれ、空へと消えていく。
近寄ってくるにしろ渦を突っ切ることはできない以上左右から回るしかない。
ならば姿を見てから対処することも可能と判断してのリフレクである。


(…おかしいね?もしや逃げたんじゃないかねぇ)
防御の準備をしたウネであるが、竜巻の向こうからは何の動きも無い。
徐々に竜巻はその勢いを弱め、渦が見る間に痩せ細ってゆく。
細くなった渦の向こうで、ベアトリクスはただ、何もせずに立っていた。
光の無いうつろな瞳と目が合う。
刹那、スイッチが入ったかのように強力な魔力を感じる。
一瞬の間をおいて白い光が残った風を貫いてウネへと襲い掛かった。

「こいつは…もしやホーリー?できるのは剣だけじゃないってか?なんて奴だい!」
ともかく両手をかざし己に重ねて反射の防御膜、リフレクを張るウネ。
魔力を受けて青く光る防御膜が特有の音ともにホーリーの光を弾き返す。
再び竜巻へと向かった光が形を崩しつつあった渦を消し飛ばした。

跳ね返されたホーリーの光が目の前に迫る中、
離れた間合いからベアトリクスが選んだ選択肢は『ショック』。
自身を包むホーリーの炸裂の間から渾身の衝撃波が大気を切り裂き、ウネへと向かう。

(こいつ…どこかおかしいんじゃないかい?普通は身を守るもんだろう)
そう思いつつショックに対し追撃に用いるはずだったエアロガを防御へと転用することを考えるウネ。
「まったくゴツい技だね?でもねっ!」
詠唱の完成と同時に前面の大気が乱れ、不規則に突風、乱気流が舞う。
「衝撃だって空気を伝う波さ!風と一緒さね!」
エアロガにより生み出された乱流がショックとぶつかり、相殺され消えてゆく。
それでも衝撃波は乱流を抜けるが、その威力はかなり減衰していた。
「はっ!年寄りにはきついねぇ」
口でそう言いながらもいくらか弱まった衝撃波をウネは悠々と受けてのけた。

呪いの支配下にあるその目は虚ろにしてただ獲物を映している。
―ただ、血を、破壊を望む―
トルネド、そしてショックで破壊され開けた空間になお立っている相手を瞳に映し、
ベアトリクスはホーリーの発射ともに切り込んでいく。

(リフレクを見ておいてなお魔法だって!?)
「まったく!命は大事にしなよ!」
準備しておいたリフレクを完成させ、再びホーリーを弾き返すとともに
ベアトリクスの斬撃を両腕で受ける。裂けた傷から人のものではない血が零れ落ちた。
肉を切らせて骨を絶つ。人ならざる身を持つゆえに可能な戦法。
しかし、受け止めた一撃はウネの予想以上のものであった。
電撃がウネの身体を走り抜ける。雷鳴剣。

(今度は属性剣だって?こいつ、なんでもアリかい!?)

予想外の電撃を受けその場にひざをつくウネ。
見上げた視線の先には二度目のホーリーをその身に受けながら立ち尽くすベアトリクス。
ホーリーの光が消えてゆき、あの、何も無い、戦慄しか覚えない瞳が再びウネを捉える。
今受けたダメージなど気にする様子も無い。
―命あるものを、壊せ―
無言のまま、ただ命じられるままにその剣が振り上げられ、なぎ払われる。

(最初といい、さっきといい、今といい、こいつもしかして―)
剣に触れることもできない、そう考えたウネは腕の振りに合わせるようにエアロを唱え、
横から来る剣に気流を下から上へアッパーのように叩きつける。
空気で剣を弾いた格好になり、その隙にウネは体勢を立て直すと、バックステップして―
消えた。

目の前で獲物を見失ったベアトリクスの虚ろな目があたりを探している。
殺戮しか考えられない思考故に、目標を失った今は呆然と立つのみである。

「…ほんと、しんどいねぇ。イヤになるよ、まったく。
 何かに取り憑かれるなり操られるなりしてるんだね。相手を視認しないと動こうとしない」
どこからか、ウネの小さな小さな声が聞こえた。
同時にベアトリクスの足元に旋風が生まれ、その身体を回転の中心として上昇を始める。
あっという間に白く見える風の壁が立ち上り、風速が力を増してゆく。
そして、トルネドの渦はベアトリクスの身体を遥か上空へと吹き飛ばした。


「はあ…やれやれだよ。ザンデとも離れちまうし、今日は厄日かねぇ?
 …歳を取ると愚痴っぽくなってやだね。ミニマム!」
誰もいなくなった空間に愚痴をこぼしながらウネが現れる。
空へと開けた空間でただ平然と天を衝いている竜巻を見あげ、今吹き飛ばした女のことを考える。
女を助けるべきであろうか、彼女も被害者なのではないか?
ふとそう考えたウネであったが、あの虚ろな瞳を思い出す。
(正気を失ったままってのは哀れだけど。甘いことは言ってられないし、ね)


傷ついた両腕で苦労しながらライアンを背負うと、ウネは旅の扉へ向かう。
最後に一度だけ空にまだ渦を巻くトルネドの残滓を見上げ、
新たなるフィールドへと歩みを進めた。

【ウネ(HP 1/2程度、MP消費) 所持品:癒しの杖(破損)
 第一行動方針:ライアンの治療
 基本行動方針:ドーガとザンデを探し、ゲームを脱出する
【ライアン(重傷、気絶)所持品:レイピア 命のリング】
 行動方針:不明】
【現在位置:新フィールドへ】



全身に響く、鈍い嫌な音と共にベアトリクスは地面へと叩きつけられる。
皮肉にも死を前にした瀕死のダメージがようやく、自らの意思を呼び戻す。

―そうか、私は死ぬのだな。このダメージだ、助かるまい。
 …指輪を身につけたあの時から私は私でなくなった。
 身体の自由が失われ、それからの記憶は飛び飛びの断片しか無い。
 この有様は、呪いに打ち克てなかった私への当然の報いなのだろうな。
 …ガーネット様、申し訳ありません。私は、ここまでのようです。
 ジタン、ビビ、フライヤ、サラマンダー、エーコ。
 みんな、ガーネット様を頼みます……―――

長く正気を失っていたベアトリクスには今までの放送も聞こえてはいなかった。
閉じたまぶたの裏に愛すべき主君、ガーネットの姿を思い浮かべる。
今もどこかで無事にいてくれているだろうか。私がいなくて大丈夫だろうか。

ただ時が無常に過ぎてゆく。

【ベアトリクス(呪いによる精神支配・暴走・瀕死)
 所持品:血のエンゲージリング 君主の聖衣 アルテマソード
 第一行動方針:死を待つ】
【現在位置:レーベ南の森中央】

【フライヤ(瀕死、全身骨折、気絶)
 所持品:アイスソード(破損)】
 行動方針:不明】
【現在位置:レーベ南の森中央】