382話

第382話:ザンデの構想


「……」
バッツは考える。
視線の先、まるでエクスデスを見ているような凶悪な魔力。
間違いなくさっきの爆発音のもとはこいつだ。
できるんなら戦いじゃなくて交渉したいところだけど、向こうはどうだろうか…?
洞窟の出口がこっちにしか無いというのなら待ち伏せってのもありえる話。
敵だとしたら当然次に爆発を体感するのは俺達…か?
いや、最初っから疑うのはよくない。良くない、けど…

「………」
ローグは考える。
視線の先、お前はアークマージかだいまどうかってレベル、いやもっと上か?
はっきり言って嫌な気配がぷんぷんしやがる。例えるならそう、魔王だな。
交渉できりゃ…いいんだけどよ。
あのツラ、贔屓目に見れないほど悪人面だしなあ。関わり合いにもなりたく無いってヤツ?
とは言え俺達には退路は無いワケで…ついてねぇ。
もし、バッツと俺、たった二人だけで戦ったら。勝てるかっての。
何とかなんねぇかなぁ?

「ファファファ……そう怯えるな。大人しく出てくれば何もしない」

…怪しい、怪しすぎる。それ思いっきり悪役のせりふだろ。
隣のバッツを見ると何やら思案顔。そりゃ疑うよな。
どう動けって言うんだよ。不信感は三割増しってくらいだぜ?
これでまたしばらく睨み合いか。

「ファファファ……大人しく従えば貴様らを攻撃しようというつもりはない。
 私は話し合いをしようというのだ」

もう、呼びかけの流れが悪役以外の何者でもねぇな。
だからって俺達に取れる選択肢、今は『にげる』すら無いんだよなぁ。
本当に、どうしたらいい?
ってちょっと待て、おい、バッツ?バーーッツ!

俺の心配をよそにバッツはひらりと階段からフロアに飛び上がり、男の正面に躍り出る。
そこに魔法が炸裂する!って感じは無い。
少なくとも話をする所までは本当のようだ。まずは一安心。

「ふむ、お前が交渉役というわけか。全滅の危険を冒さぬためには必要なことかも知れぬな」
男の口元が歪む。
「さて、交渉の前に失礼かも知れぬ。だが話の前に――」
男のその指がバッツを指す。おい、それはやばいぜ? やめろ、やめてくれ。

一瞬だった。
魔法の扱いに詳しくは無いローグにもバッツの周りに
何がしかの力が集まっていることが感知でき、
それはあっという間にバッツを取り囲む透明な二重の直方体を為す。

「バーーッツ!」
「うわぁあっ!」

二人の声と同時に二つの直方体が小さくなってゆき、バッツの身体に重なるようにして消えた。

転がるように駆け寄るローグ。立ち尽くすバッツには…傷ひとつなさそうだ。

「おいバッツ、なんともないのか!?」
「ああ、特に痛いとか苦しいとかは」
「身体が動かないとかは?」
「いや……今のはもしかしてライブラ」
「ふむ…、こんなものか…」
「何しやがる!やっぱりお前は…!」」
「ファファファ……非礼なのは承知、いくらでも詫びよう。
 だがライブラは私の生来の性分でな、未知のものは分析せねば気分が悪い。
 自己紹介が遅れたな。私はザンデ」
「んな問題じゃねぇだろ! 行こうぜバッツ、こんなヤツ相手すること無い」
「落ち着けローグ。謝ってくれてるんだし敵意はなさそうだし…」
「だからってあんな意味のわからねぇ不意打ちだぜ? 悪党のやり方だぞ」
「だから話だけでも…」

「バッツにローグか。ファファファ……そうだな、謝礼というわけでもないが
 この世界を抜け出る可能性がある、と言ったらどうする」
「それがどうし…」「えっ!?」
「あくまでほんの僅かの希望という程度ではあるがな」

やはり反応したか。まあ普通だろう。
だが、魔女への反抗であることは間違いないこの推論は、そう、まだ推測の域を出ていない。
そして魔女はおそらくどこかに監視の目をもっているのだろう。例えば首輪だ。
ならばうかつなことは言えないし、信用できない相手に教えることもできない。
以上二点より今はまだ私の頭に留めておくべき話である。
冷静な口調で続ける。

「ふむ、言い過ぎたかも知れん…失望するだろうがまだすべて推測、机上の空論の段階。
 ただ私が脱出を考えているということは覚えておいてほしい」

「なんだよ」と言う声が漏れ、やはり二人に明らかな失望の色が浮かぶ。

「信じる信じないはお前達の自由だ。
 少しでも信じてくれるというのならば、私からお前達に頼みたいことがある。
 高い魔力を持つアイテムまたは人、そして旅の扉とやらに詳しい人物を見つけてほしい。
 明朝、魔女が死者を読み上げる頃には私はこの部屋にいるつもりだ。
 可能ならでよい。私の頼みを引き受けてはくれぬか」

盗賊風の男、ローグにはよほど信用が無いらしくしばらく二人で相談していたが、
どうせ向こうにも当てなど無いのだろう、できればであるが請けてくれた。
尤も厄介払いにはいと言っただけという線もあるが、まあ別にそれでもいい。

「ファファファ……有難い。魔力の高い者には私にも二人ほどあてがあってな、
 ウネとドーガという老人だ。ザンデの名を持ち出せば信用するだろう」

向こうからも注意すべき人物としてカイン、緑髪の狂人。
彼らの仲間としてアルス、セージ、フルート、レナ、ファリスという人物の情報を得る。
味方となりうる人物が多いのはいいことだ。
また、ローグの世界には二点を固定した旅の扉が普通に存在しているという。
残念ながらローグにはそれ以上の知識はなかったが、
仲間のセージという者には期待できるかも知れん。

「ここの出口はその台座の裏、魔法陣だ。乗ればすぐに出られる。だが、その前に――」

ローグへとライブラを放つ。
「やっぱり信用できねぇよ!」
などと言い残しながら二人は洞窟から出て行った。



二人を見送った後、ザンデは自分の構想を改めてまとめる。

魔女が生み出した世界の外への移動は不可能だと思われているが、
我々はすでに、それが魔女の世界同士だとしても異世界への移動を二度経験している。
旅の扉。
私にとっては見慣れぬものだが、特定の次元同士をつなぐデジョンを維持しているといったものか。
これに干渉し、コントロールすることはできないだろうか。
放り出される場所が異なるなど安定はしていないようだから、可能性はあるだろう。
ともかくできるならだが詳しい話が聞ければ心強い。

さて、光と闇のバランスを崩し、弱いポイントを作り出すという方法ではあったが、
生前の私は二つの異世界を意図的につなげた経験がある。
何より大がかりな魔力を動かすという点においてノア門下でも私に優る者はいなかった。
干渉のためにどれほど魔力が必要かは不明だが、扱いきって見せようぞ。

しかし、繰り返すがこれは明確な反抗だ。おそらく向こうから妨害があるはずである。
それに、試みが成功しても首輪は残る。
ウネやドーガよりは機械にも詳しいつもりだが専門外であることは否めない。
これは別に解決すべき問題である。


とにかく、研究が必要である。次の扉でそれは行うとして、順調に行っても
実行に移るのは少なくともその次ということになる。
成果の時まで私、また幾人に命があるだろうか? それでも。
気づけばザンデは笑っていた。
人に依頼するような自分が、その義理を返すつもりの自分が、おかしくて。

【ザンデ(HP 4/5程度) 所持品:シーカーソード、ウィークメーカー
 基本行動方針:ドーガとウネを探し、ゲームを脱出する】
【現在位置:祭壇の洞窟 クリスタルの間】

【バッツ 所持品:チキンナイフ、ライオンハート、薬草や毒消し草一式
 第一行動方針:ザンデの頼みをきく?
 基本行動方針:レナ、ファリスとの合流】
【ローグ 所持品:銀のフォーク@FF9 うさぎのしっぽ 静寂の玉 アイスブランド ダーツの矢(いくつか)
 第一行動方針:ザンデの頼みをきく?
 最終行動方針:首輪を外す方法を探す】
【現在位置:祭壇の洞窟の前】

※ザンデの頼み
 『高い魔力を持つアイテムまたは人、そして旅の扉とやらに詳しい人物を見つけてほしい』

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月15日 22:18
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。