第187話:邂逅
底知れない恐怖。
長らく感じていなかった死の恐怖。
それは自分を操っていたゼムス、そいつが憎しみが生み出した「もの」と対峙したときに感じた恐怖と似ていた。
いやな汗が背中を走る。
夜風に草が揺れてざわめいている。
ゼロムスという物体と戦っているとき俺は幾度も裏切りの衝動にかられた。
目の前にある恐怖から逃げ出したくなった。
俺が裏切ったのは本当に操られていただけだったのか。
途端に俺は自分が信じれなくなった。
だから俺は試練の山に篭った――俺自身の弱さを克服するために。
(…俺は変わっていなかったな。セシル。ローザ。
過去を捨てて修羅の道を歩むと決めたのに、俺はこんなことで生き延びられるのか?)
…ふと、裏切ってしまった友に、そしてもういない友に、問いかけている自分が嫌になる。
ただ先ほどの『化け物』との圧倒的な戦力の差を見せ付けられるとといろいろと考えずにいられなかった。
カインはあの『化け物』は多分人外の者だろうと推測できた。
そしてこのゲームにあのような実力の者がいるという事実に驚いた。
(つまり、魔女アルティミシアはあれほどの者でさえも手中に入れられるということか…。
所詮は俺は駒の一つでしかないわけだ。……どうも、こんな思索にふけっている場合じゃないみたいだな)
カインは前方から近づいてきた一つの気配に気づく。
そしてその気配が自分と同じような竜の気をまとっていることに気づき身構える。
「お主も気がついておるようじゃな。主もわしと同じように竜騎士であるか?」
気配の相手も身構えているようだった。
「…少し考え事をしていたとはいえ、俺に今まで気配を感じさせなかったとは相当の使い手みたいだな。
そうだ、俺の名はカイン。竜騎士だ。」
「…!!お主はあのランスオブカインに名を残した伝説の竜騎士か!?
わしの名前はフライヤじゃ。わしには戦意は全くないんじゃが、お主はどうなんじゃ?」
カインは竜騎士同士、力を試したかった。
そして彼女に対しては闇夜に紛れて相手を討つというまねはできないと思った。
だから、包み隠さずこう言った。
「悪いが俺は人を既に殺している。先ほども人を殺そうとしていた。
どうも、お前の世界では俺が有名のようだが、こんな殺人者で悪かったな。
とにかくお前とは一戦交えてみたい。同じ竜騎士として、そしてこのゲームの勝利者になるために!!」
フライヤは悲しそうな声で続ける。
「この状況をゲームといってしまうんじゃな。わしは戦う気はなかったんじゃが、どうもお主を止めなくてはならないようじゃ。
剣しか持ってないのじゃが、仕方ないみたいじゃな。お主にもう一度正しい竜の気を纏わせてやらねば。
同じ竜騎士として、そして一人の者として!!」
そういうと二人は同時に地面を強く蹴った。
【フライヤ 所持品:アイスソード えふえふ(FF5)
第一行動方針:カインと戦って止める】
【カイン 所持品:ランスオブカイン ミスリルの小手
第一行動方針:フライヤと戦う 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【現在位置:レーべ南】
最終更新:2008年02月15日 22:46