421話

第421話:腹の探り合い


このケフカという道化師、一体何を考えているのだろうか?
顔のペイントで表情が読みとりにくいし、さきほどから踊っているように見えるが、意味があるのか無いのか分からない。
話しかけてみても、はぐらかされるばかりだ。あまり好んで関わりたい人間ではない。
そう思っていたが、周りがよく見渡せる場所に出たとき、ケフカの方から話しかけてきた。

「ヒャヒャヒャ、やっと二人になれましたね」
俺は武器を構えた。いきなり襲ってくるとは思えないが、こいつが襲ってきても別段不思議でもない。

「おやおや、武器なんか構えられたら困りますよ。別に戦おうってわけじゃない。
 あのガ…あのガタイのいい男とルカくんとがいるとどうにも話しづらくてね。他人に聞かれたら困りますし。
 実はお前に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと、だと?」
仲間に秘密にしておきたいような頼みだ。ロクなものではあるまいが。
「ヒャヒャヒャ、そうですよ。戦うのが好きなお前にね。殺すのを、と言った方がいいかな?」

俺が殺人者だと見抜かれたのか? いや、そんな素振りは見せていないはずだ。
「何故そう思った?」
「おや、違いましたか? 顔に書いてありますよ」

スミスにも心が丸見えだと言われたが…こいつも心が読めるのか?
そんなやつが何人もいたら、たまったものではない。
演技力には自信はある方なのだが。

「真面目に答えろ」
「つれないねぇ。なに、簡単なことですよ。
 お前、あの剣士を殺そうとした瞬間に笑っていたし、
 僕らが来た後でさえ、随分焦ってあの剣士を殺そうとしていたじゃないですか。
 他の二人は銃とやらの使い方の方に気を取られていましたけどね。
 僕の配下の兵士にも、お前のようなやつは何人もいましたよ。
 普段はおとなしいが、戦いの場では敵を殺すことを心の底から楽しみにしているようなヤツがね」

確かに、サックスを殺そうと焦っていたかもしれないし、追いつめたあの瞬間には油断して笑みを浮かべたかもしれない。
だが、いかに洞察力が優れていようと、それだけで分かるものだろうか? もしかすると。
「お前も、その手の人間なのか?」

これを聞いて、ケフカは一瞬顔をしかめた後、高笑いを始めた。
肯定しているのか、それとも馬鹿げたことだと考えて、俺を嘲って笑っているのかは分からない。
ただ、今一連の発言には後悔した。即座に否定しなかったということは、相手の言ったことを認めたと同義。
ケフカの目をにらみ返すが、受け流されただけだ。
「まあ、一番おっきな理由は、僕のカンなんですけれどね」

コホン、と咳払いをして、ケフカが話を続ける。
「話がそれましたね。殺してほしいヤツがいるんですよ。
 レオといってね。頭がカタくて、しつこくて、不細工で、愚劣な男だ。お互いに死んでほしくてたまらない」
まるで親友のことを話しているような口ぶりだ。だが、目に憎悪の色がありありと浮かんでいるのが分かった。

「ただの私怨か?」
ゲームに乗っているとバレないように人を殺すには、それなりの理由や口実が必要だ。
レオとやらがどんな男なのかは知らないが、場合によっては周りの人間に殺人者に認定されかねない。

「なに、大義ならあるさ。あいつを生かしたまま帰すと、帝国の発展が遅れることになるからね。
 お前も騎士団長なんてやっているような身分なら、分かるだろ?
 生真面目な忠臣とかいう輩どもは、ときに邪魔になるんですよ」
「お前の世界のことなど、俺や、他の参加者の知ったことではない。
 それに、お前は知らないかもしれないが、金髪に気を付けろとかいうふざけたメモが出回っている。
 生真面目な忠臣、ということは、人望もそれなりにあるのだろう。そんなやつを殺せば、俺が不利になるのは明らかだ」

またもケフカはヒャヒャヒャと高笑いを始める。
「何が可笑しい」
「失敬失敬。お前もそのメモを読んでいたんですね。…読んでいなかったらラクだったんですけどね」
こいつ、俺をその気を付けるべき金髪に仕立て上げるつもりだったのか? 予想以上に食えないやつだ。

「なに、大丈夫ですよ。レオのやつも金髪だ。それに、お前はとっさに言い訳を考えるのは得意じゃないのかい?」
大丈夫ではないのではないか、それは…。窮地に陥ったら自分で何とかしろということなのか…。

どこからともなく、紙が飛んでくる。そういえば、このステージは風が強いな…。
ケフカが足下に落ちたそれを拾い上げ、さらに笑う。
「ヒャーッヒャッヒャッヒャ!! ほら、それに、こんなものもあるよ。できれば、僕以外に拾ってほしかったんだけどねぇ」
そこには、血で囲まれ、キヲツケロと書かれた顔写真が握られていた。
確かに、この写真なら十分な理由になりうるが。

「まあ、他にも死んでほしいやつは沢山いますけどね。
 マッシュのパンチは痛かったですしねぇ。エドガーはいつもうるさくて邪魔でしたしねぇ。リルムは生意気でしたしねぇ。
 …あいつら、僕を馬鹿にしやがって。ちくしょう。
 …おっと、関係ない話をして悪かったですね。ヒャッヒャッヒャ!」
続きがないところをみると、ただの愚痴か。ギャップの激しいやつだ。それとも、これも演技なのだろうか?

「殺すに値する口実があるのは分かった。
 だが、俺がそれを引き受けることに、どんなメリットがある? もし俺が断ると言ったらどうするつもりだ?」
「そうですねぇ」
ケフカは考え込んでいたかと思うと、またも突然に笑い出した。
「よし、引き受けてくれるなら、お前が殺し大好き人間だってことを僕やお前の仲間に黙っておいてあげましょう。
 バレたら、色々と都合が悪いでしょ? 仲間は多い方がいいですしねぇ。
 そうそう、ここで殺そうとしたって無駄だよ。あのモヒカンは、遠くのことが見えるらしいですしね。
 きっと今も僕たちのことを心配して見てるだろうさ。動けないだろうけどねぇ。
 ここで戦ってもどうせ僕が勝つだろうけどねぇ」

まあいい、どうせゲームに勝つには他の参加者を殺さねばならないのだ。
別にここでの口約束が大した意味を持つわけでもないだろう。
それに、この写真は案外役に立つかもしれない。
「いいだろう。レオを見つけたら、必ず殺すことにしよう」

相手の俺に対する認識は、悪人殺しを楽しんでいる偽善者、という程度のはず。(十分危険なやつのようにも思えるが)
まだ出し抜く余地はあるだろう。
手を組むには、こいつは少々厄介だ。スミスが戻ってから考えるべきだろう。

テリーという男、仲間なのに状況によっては殺さないといけない、とハッサンは言っていた。
すなわち、戦闘狂か、または精神不安定なやつだということだ。
そういうやつをスミスに紹介したら、泣いて喜ぶだろう。
砂漠をそろそろ抜ける。向こうで一瞬青が動いた気がする。
テリーは確か青い帽子をかぶっていたのだったな…。

【ケフカ(浮、MP消費) 所持品:ソウルオブサマサ、魔晄銃、ブリッツボール、裁きの杖、魔法の法衣
 最終行動方針:ゲーム、参加者、主催者、全ての破壊】
【カイン(HP5/6程度)
 所持品:ランスオブカイン、ミスリルの小手、えふえふ(FF5)、この世界(FF3)の歴史書数冊、加速装置
 草薙の剣、ドラゴンオーブ、レオの顔写真の紙切れ
 最終行動方針:殺人者となり、ゲームに勝つ】
【共通第一行動方針:西(テリー、アリーナ2,ラムザの戦場跡)へ行き、テリーと接触】
【現在地:カズスの村から西の砂漠】

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最終更新:2008年02月15日 22:52
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