126話

第126話:共通認識


「く、クルルが…ッ!?」
静寂に包まれた薄暮の森の空気を、意図せずともファリスは乱した。
金髪の少女の、あどけない笑顔、時折見せる寂しい表情。
そのどちらもが失われた、と感じたから。

ふらふらと一人胡坐で座り込み、参加者リストを開く。
目に入ったのはクルルの輝く金髪ではなく、その名の上に引かれた朱色の線だった。
レナの髪のような薄明るい桃色でも、カルナックの勇気の炎のような鮮やかな赤でもなく。
ただ滲んだ血のようなその色が。

呆然としたままリストを眺めていたファリスは、先程の男の写真を見つけた。
素顔を晒す事は無く、黒装束に身を包んだ姿を。
そして、その名前にも違わずに朱色の線が引かれていたのを。
(何故だ?)
あの男はただで死ぬ男ではないと思っていた。
だが、彼は死んだのか。
数時間前に自分に忠告をした男が。
パタンと力なくそのリストを閉じ、ザックにしまう。

「……!?」
先程とは違い、背後の気配にすぐに気づいた。
立ち、振り返ると、其処には剣を手にした武人らしき人物。
――薄暮の中でも輝く、血に濡れた剣を。

「…ヤる気かッ!?」
ファリスは咄嗟に叫ぶ。
男の長剣に比べてあまりに頼りないナイフを構え、男を睨みつけた。
「待て、話を聞くんだ」
男は、諭すように冷静に言った。
「私の名はレオ。戦う気は無い。だが聞きたいことがある。…顔にペイントのある男を見なかったか?」
「俺が今まで見たのは焼けた死体と黒い覆面の男とあんただけだ!」
ファリスの叫びに、レオは予想外の反応を見せる。
「黒い覆面…。そうか、シャドウと会ったのか」
男の声に、ファリスも一瞬戸惑う。
「何だって…?」
思わずナイフの構えを解く。そしてやっと、レオも構えを解いていた事に気づいた。
「黒い覆面の男は知っている」
レオはフッとため息をついた。
「放送で名があった。シャドウという男だ」
「知り合いなのか…?」
「まぁ、知り合いといえば知り合いか」
レオは一寸空を見上げる。
「暗殺者だったがな…強い奴だったのだが」
視線をすぐに戻し、話を繋いだ。
「まぁいい。先程言ったペイントのある男、私の知っている男だが…このゲームに乗っている」
レオの口調が急に厳しくなる。
「奴は私が始末せねばならない。フザけた精神の持ち主だ。何をしてくるかは予想も出来ぬが…」
レオは、再び剣を構えた。剣先に殺気が纏う。
「この近くにいる。姿を消して潜んでいるようだ。今すぐにこの場から逃げたほうがいい」
レオの口調はなんとなく事務的で。
それでも、覚悟を秘めたその声を、ファリスは受け取った。

何故この男を信用したのか分からない。だが、この男は正しいことをしていると、本能的に悟った。
「…それを聞いたら離れるわけにはいかない。俺の名はファリス。腕には自信が…」
「奴を殺すのは私の義務だ。手助けなどしてくれるな」
レオは、ファリスに背中を向ける。相変わらず、表情は険しい。
「…手助けじゃない。あんたと共通認識を持っただけだ。…生かしておくべきじゃない」
ファリスは、きっぱりと言い、ナイフを再び構えた。
レオの目の前に突如出現した、不気味な笑みを浮かべた人型の靄を睨み付けて。
まさに先程のレオの言葉の如くに、何かを企んでいる様なその表情に嫌悪感を覚えながら。
薄暮の森に、殺気による静寂が訪れた。

【レオ 所持品:吹雪の剣 鉄の盾 神羅甲型防具改
 第一行動方針:ケフカ殺害 第二行動方針:ゲームに乗らない】
【ファリス 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:レオと共に闘う 第二行動方針:仲間を探す】

【ケフカ(負傷) 所持品:ソウルオブサマサ 魔晄銃 ブリッツボール
 第一行動方針:企んでいる事を行動へ 第二行動方針:ゲームに乗る】

【現在位置:レーベ南の森南東部】

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最終更新:2008年02月16日 01:15
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