386話

第386話:因縁の対決


先に動いたのはピエール。
オートボウガンでザックスを狙う。それを上手く回避するザックス。
もちろんピエールもこれが容易く命中するとは考えていない。むしろ、上手く壁際に追いつめるためのものだ。
ピエールはボウガンの矢に混じえて、魔法の玉をザックスに向かって投げつける。
手榴弾と思い、実際そのようなものなのだが、回避行動をするザックス。着地点となる場所からできるだけ下がる。
体が上手く動かないのか、投擲距離も短いようだ。回避は容易だと考えるザックス。確かにそのとおりだった。
が、地面に落ちても、魔法の玉が爆発しない。これは衝撃のみで爆発するような代物ではなかったのだ。
そのままころころと転がってくる。右は壁。後ろに下がり続ければ、相手との距離が空きすぎて、不利になってしまう。
左に逃げればボウガンの的になるだろうか。

目の前の爆弾が勝手に爆発することはあるまい、自分と爆弾との距離が近くなったその瞬間、誘爆させるに違いない。
となると、あの爆発の魔法だろう。ならば。
魔法の玉との距離はまだ空いている。今爆発はさせられまい。集中。そして、一閃。空気を斬り、かまいたちを放つ。
かまいたちは、ボウガンの矢を弾きながらピエールに迫る。ザックスはそれに続く。

ピエールにとって、遠距離攻撃がくるのは想定外だった。今魔法を使えば、誘爆は可能だが、自分も真っ二つになってしまう。
イオを使うのは一旦諦め、かまいたちをかわそう、とするが、またも体が上手く動かない。
仕方なく、オートボウガンで受け流すことにする。
だが、衝撃が大きく、オートボウガンが弾かれてしまう。
さすがに頑丈にできてはいるようだ、かまいたちを受けても壊れない。回収すればまだ使えるのだろう。
今そのようなことをする暇はないのだが。


ザックスがピエールに肉薄し、追撃を放つ。
ピエールはとっさに取りだしたダガーでなんとかそれを受け止めるが、体に思うように力が込められない。
ダガーは宙を舞い、後方の川に落ちてしまった。
第二撃。今度は跳んでかわすことができた。同時に毛布を前方に放り投げる。
毛布のような、柔らかく、抵抗の少ないものは斬り飛ばしにくい。
剣で払いのけたとしても、刃の部分に巻き付いてしまう可能性がある。
よって、一旦下がり、回避する。その隙に、ピエールは言霊を紡ぐ。

「イオラ!」

ザックスとピエールの間に爆発が起こる。
視界を遮るためのものだ。イオよりも大きな爆発。そこに落ちていた毛布にも引火する。
毛布は黒い煙を出しながら、派手に燃え始める。
その後ろで、ピエールは杖をいくつも振る。

爆煙の中から現れる幾多の魔法弾。多少自分から逸れていたこともあり、一つ目は上手くかわした。
二つ目は見当違いの方向だ。手元が狂ったのだろうか。
三つ目。前の二つより速いが、かわせた。後ろに下がると、魔法の玉を爆発させられる可能性がある。動きにくい。
四つ目。効果が違うのか、速い。少しかすってしまった。
五つ目。これはかわせず、剣で受け止める。が、すべてを受け止めることはできなかった。多少、体にも受けてしまう。

ザックスの体には、今のところ体に異常は見られない。
相手の追撃が来ない。ネタが切れたのか。
一旦呼吸を整えようとする。
「………!!」
口で息ができない。口が開かないのだ。おかしな効果だが、先ほどの魔法弾の効果はこれだったのだ。
そのため、調子を整えるのに少々時間がかかって、イオラの煙が晴れ始めるに至った。ピエールの姿が見当たらない。
かわりに、魔法の玉があった。目の前の、燃えている毛布の上に。
魔法の玉は激しく熱され、ついに大爆発を起こした。

ピエールはザックスの後方にいた。
先ほどの魔法弾。それぞれ別の杖から放ったものだ。
一つ目の魔法弾はひきよせの杖。魔法の玉を引き寄せ、再利用するためのものだ。
二つ目はとびつきの杖。ザックスと魔法の玉から距離を取るためのもの。
三つ目以降はようじゅつしの杖。相手の行動を封じて損はない。
残念なことに、即効で動きを封じる効果は現れなかったようだが。

先ほどの亀たちも、今の爆発があればこの町に来るのは控えるだろう。
レーダーを見ると、ちょうどこの家を挟んだ向こう側に、二人いるのが確認できた。
ここから出ていってくれた方が今は都合がいいのだが。
ザックスのいると思われる方向を見る。
大きな噴水が見える。
(噴水か…。まさか!)
爆風に吹き飛ばされて落ちたのか、
吹き飛ばされる前に自分から飛び込んだのかでは、大きく意味が違う。

答えは…後者の方だった。
ザックスは、魔法の玉が爆発する直前に、とっさに目に付いた噴水の池に飛び込んだのだ。
魔法の玉は、破壊力自体はかなりのものだが、範囲はそこまで広くはない。
池の中なら、熱風から免れることも出来るのだ。
そのおかげで、大した怪我はせずに済んだ。飛び込んだときに、少し頭を打ってしまったが。
非常に強い殺気を感じる。先ほどまでピエールがいた方向か、その建物の影だろう。
早く対処しないと、次に何をしてくるか分からない。
(何を俺は焦っているんだ?)
どうも感情を上手くコントロールできない。 この異常な状況のせいか。
が、相手を早く倒すに越したことはない。
建物の影にいる相手。普通の武器攻撃では届かない。
だが、スネークソード。この剣はその名のごとく、蛇のように曲がりくねった刀身を持つ。
空気の切り口が曲線になるため、これでかまいたちを放てば、曲がるのだ。

相手は建物の影から動いていない。
相手は武器はもう持っていないようだった。奇襲をかけ、もう一度接近戦に持ち込めば、勝てる!

集中。ザックスは建物の影にいる相手に向かって、かまいたちを放つ。
さらにそれを追い、追撃をかけんとする。
かまいたちは上手く弧を描き、…片腕の剣士に襲いかかった。
(な!?あの魔物ではなかったのか!?)
「フン、派手にやりあっていたから、どんなヤツらかと思って様子を見ていたら、
 いきなり攻撃してくるとはな…。姉さんの敵になるヤツは全員殺す」


ザックスのミスの理由。
他の人間が来る可能性を考慮にいれていなかったこと。
ファリスを守ろうとしていたテリーの殺気があまりにも強く、ピエールの気配を打ち消していたこと。
とびつきの杖によるワープに気付かず、テリーの気配をピエール本人のものだと考えたこと。
そして、ようじゅつしの杖の、おびえの効果によって、冷静な判断が下せず、勝負を急いでしまったこと。
このため、望んでいない戦いをするはめになったのである。

一方で、ピエールも思わぬ事態に戸惑っていた。
戦況は変わったとはいえ、ここにいる相手は全員敵である。
行動を一つ間違えれば、身の破滅を招きかねない。
(次はどう動くべきか…)

【ピエール(HP1/5程度) (MP一桁) (感情封印)(弱いかなしばり状態:体が重くなり、ときどき動かなくなります、時間経過で回復)
 所持品:魔封じの杖、死者の指輪、対人レーダー、ひきよせの杖[4]、とびつきの杖[4]、ようじゅつしの杖[2]
 (オートボウガン、ダガーはカナーンの町に落ちています)
 第一行動方針:この状況を切り抜け、休息
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す
【現在位置:カナーンの町、宿屋の脇】

【ザックス(HP9/10程度、口無し状態{浮遊大陸にいる間は続く}、弱いおびえ状態{時間経過で回復})
 所持品:バスターソード スネークソード 毛布
 第一行動方針:事態の対処
 第二行動方針:ピエールを倒す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【テリー(DQ6)(左腕喪失、負傷(八割回復)
 所持品:雷鳴の剣 イヤリング 鉄の杖 ヘアバンド 天使の翼
 行動方針:『姉さん』(ファリス)の敵を殺し、命に代えても守り抜く】
【ファリス(MP消費) 所持品:王者のマント 聖なるナイフ 
 第一行動方針:事態の対処 第二行動方針:レナとバッツを探す】
【現在位置:カナーンの町、サリーナ宅裏】

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最終更新:2008年02月16日 01:23
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