220話

第220話:行く者、残る者


(…さん)
 誰かが自分を呼んでいるみたいだ。
(みな…ん、私の声が聞…えますか…)
 ぼんやりとした映像と、今にも消えてしまいそうな声が聞こえる。
(私はロ…リー。参…者の一人です)
 何かの力に阻害されているのか、画質も音声も悪く、はっきりとは分からないが、綺麗な女の人が呼びかけてきている。
(私達…今、危機…陥って…ます)
 映像が少し変わった。女の人の視点なのだろうか。知らない人が何人もいるが…あいつは…テリー?
(敵の……に遭い、何とか結界に逃げ……ことができまし…が、それもいつ破られ…か…)
 また映像が変わった。大きなお城が映っている。そして、その城下町で絶え間ない爆発が起こっている。
(このまま…は、私達はみな……してしまい…す)
(無理を承知で…願いしま……どうか、私達…助けて…さい)
 ますます映像がぼんやりしてきた。異世界のお城で見たモザイクみたいだ。
(私達…今、アリ……ンの城下町……)
 もう音声もはっきりしない。
(どうか…助けて…)
 最後だけ映像が鮮明に映り、向こうにいる全員の姿がはっきり見えたかと思うと、ぷっつりと映像は切れてしまった。


「竜王様…」
ドルバが、元は竜王であった黒こげの死体の前で悲痛な表情を浮かべている。
泣いているのだろう。だが、純粋な竜族に涙は無いのだろうか、目から液体がこぼれ出ることはない。
ドルバが竜王に触れると、その途端に、触れた部分から徐々に竜王の体全体が灰と化し、そして灰の山が築かれた。
もはや竜王の体は原型をとどめず、その名残は灰の山の中の頂上にある首輪だけであった。

「ドルバ…」
イザがドルバに声をかける。しばしの沈黙の空気が流れる。
「イザよ、心配は無用。我は大丈夫だ」
灰の山からドルバが首輪を取り出す。
「首輪がここに一つある。ギードとやらのところへ持っていけ」
「…いいのかい?」
「これも仕方のないことだ。ゲームの犠牲者を減らしたいのだろう?早く脱出の手がかりをつかめ。我も後で行く。
 …ただ、今少し、今少しだけここにいさせて欲しい」
「…分かった」
イザは塔の中へと向かっていった。
竜の咆吼がし、塔の内部に木霊した。

イザが元の部屋に戻ろうとしていると、そこからルカが走り出してきた。
ギードが後を追っている。…意外と速い。
「ルカ!一体どうしたんじゃ!?」
「いいから、早く付いてきて!」
「ギードさん、どうしたんですか?」
「分からん、突然起きたかと思うと、ワシに付いてくるようにと言って飛び出して行ったんじゃ」
「とにかく、追いましょう」

ナジミの塔の入り口。ドルバがいたところからはちょうど反対側だ。
ルカは東の方角を見ながら呟いていた。町が赤々としている。
「やっぱりあの夢は本当なんだ…早く助けに行かなくちゃ!」
「いい加減理由を話しておくれ」
ルカは夢で見たことを話す。アリアハンがとんでもない状況に陥っていること、女性が助けを求めていたこと、
そして、友達であり、ライバルであるテリーがその場所にいたこと。
「夢、か。イザ殿、信用性はあるじゃろうか」
「多分、事実だと思います。僕らのいた世界では、夢の世界が実在していましたし、現実の世界と行き来することもできました。
 夢に干渉できる人間が来ていてもおかしくはない」
「このままテリーにも死んでもらいたくはないんだ!ギード!早く行くぞ!」
ルカが魔法を使い、湖に大きな貝殻を出し、乗り込もうとした。

「待つんじゃ。お主はここに残れ」
「どうしてさ!?俺が行っちゃいけない決まりごとでもあるの!?」
「そんなものはないが、向こうの状況は、お主にはあまりに危険じゃ。助けに行って、逆に死んでしまっては元も子もない。
 ここはお主のいた世界とは違って、相手はマスターであろうと、モンスターであろうと襲ってくるのじゃからな。
 ワシらにまかせておけ。お主の言う友達とやらは無事に連れ帰って見せるわい」
「でも、マスターがいないと命令変更だってできないよ」
「…なら、こうしよう。僕がギードの一時的なマスターになる。向こうに着いたら、テリー君と合流できるはずだ。
 そこで、さらにテリー君にギードのマスターになってもらう。これでいいだろう」
「マスターとモンスターは、信頼関係が一番大切だと言っておったじゃないか。
 ワシらを信頼して欲しい。無事に連れ帰って見せよう」
「ここの反対側に、ドルバっていうドラゴンがいるんだ。僕たちが戻るまでは、彼に守ってもらうんだ」
「…命令を変更するよ。作戦はいのちだいじに。かならず生きて返ってこい!」

【ギード 所持品:不明】
【イザ 所持品:きんきらの剣、エクスカリパー、マサムネブレード、首輪】
 行動方針:アリアハンへ加勢
【現在地:ナジミの塔東の湖(イザはギードの背中の上)】

【ルカ 所持品:霜降り肉、ほしふりのオーブ
 行動方針:待機】
【現在地:ナジミの塔の小島東】

【ドルバ 所持品:不明
 行動:竜王の墓を作っている 最終行動方針:同志を集め、ゲームを脱出する】
【現在地:ナジミの塔入り口】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月16日 01:35
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。