310話

第310話:新しい主人


「………」
放送後、明らかにドルバの様子がおかしい。
何とか旅の扉があるという塔の最上階まではやってきたが、ここまでに全く口を聞いてくれない。
元々寡黙ではあったが、話しかけても答えようとしてくれないのである。
もちろん、原因は分かりきっているのだ。放送で呼ばれた中に、知り合いがいたのに間違いない。
モンスターと喜びも悲しみも共有できる関係を築いてこそ、そのモンスターのマスターとなれるはず。
でも、どうすればいいのかがよく分からない。自分だって、まだ気持ちの整理はできていないんだから。
せめて、悲しさを和らげることはしてあげたい。確か袋にあれがあったはず…。

ルカはザックから霜降り肉を取りだし、ドルバに差し出した。
「ほら、食べなよ」
ドルバは顔を上げるが、またすぐにうつむいた。
「全部忘れろっていうことじゃないさ。これ1つで忘れられるほどの関係じゃないってのも分かる。
 でも、少しでもつらさを紛らわせることができたらいいなと思ったんだ」
もう一度ドルバは顔を上げる。
「食べなよ」
霜降り肉を差し出すルカの顔が、どことなくキーファに重なった。

ギードによれば、ルカもここで妹を亡くしたそうだ。
まだ子供だ、落ち込んでいてなんらおかしくはない。
なのに、その素振りも見せず、我を気遣ってくれている。
イザも、ギードも、仲間や知り合いを失っているはずだ。だが、心配をかけるようなことはしていない。
それに比べて、我はどうだ?協力するといいながら、事あるごとに塞ぎ込み、迷惑をかける始末。
確かにりゅうおう様は尊敬すべき主君であった。キーファは自分が初めて仕えたいと思った人間だった。
だが、そちらばかりに固執して、そばにいる者に迷惑をかけるのはあまりにも愚かだ。

りゅうおう様なら、キーファなら、どう仰せられただろうか?
『人間、しかもその子供に情けをかけられるとは、竜族の恥曝しめが…
 我が同胞であり続けたいと思うならば、世界の覇者たる竜族に相応しき器を身につけるよう、己を磨き、出直すのだ!』
『ドルバ、お前はこのキャラバンでガードモンスターをやってきたんだぜ。
 きっと、元の世界までみんなを無事に連れて行けるよな?』
…聞こえるはずがないのに、そう聞こえたような気がした。

「ルカ、もう大丈夫だ、済まなかった」
「食べなよ」
「いや、もう我は」
「食べなよ」

支給されてから丸一日ほど経っているのだろうが、
色も匂いもつやも、鮮度さえ落ちていないように見える。
美味い。確か、初めて食べたステーキがこのような味だったか?
「お~い!」
湖の方から声が聞こえる。ギード達が戻ってきたのだろう。

「久しぶりだね、テリー!何だ?その魔物は?見たことないけど」
「俺もここで初めてあったんだ。種族は分からないけれど、名前はトンヌラだ。
 そっちもカッコイイの連れてるじゃんか」
「ドルバっていうんだ。♂だったよな?」
突然、トンヌラがじたばたと騒ぎ出す。
「そうか、あれが欲しいのか。なあ、ルカ。その霜降り肉、分けてやってくれないか?」
「いいよ、な?ドルバ?」
トンヌラは同意を得る前に霜降り肉に飛びつき、包丁で上手く切り分ける。
ドルバがその横で少し残念そうな顔をしたのは気のせいだろう。

「これで3匹揃ったね」
「やはりワシも入っておるのじゃな」
「みんなで力を合わせれば、あいつだって倒せるかもしれない…。みんな、悪者をやっつけて絶対に帰るぞ!」
「? っおー!!」

「ところでギード、イザはどうした?」
ドルバが尋ねる。放送で呼ばれていないので、不安そうな感じはあまりない。
「彼は、向こうで別の人と行動しておるぞい。少しでも仲間を増やすそうじゃ」
「もしかして、怪我して動けないのかと思ったけど、仲間がいるなら、安心だね」
ルカが安心したように言う。
「ところで、これだよな。旅の扉は。そろそろ行くことにしないか?」

さっさと旅の扉に入ってしまおうとするテリーをドルバが引き留める。
「待って欲しい。もう少しだけ、ここに一人でいさせてはもらえないだろうか。
 竜王様、マチュア、キーファ、そして多くの者が眠るこの地に別れを言いたい。
 大丈夫だ、時間までには戻る」
「テリー、少し待っておやり。ドルバよ、好きにするがええよ」
「感謝する」

先ほどまでの不甲斐ない我とはここで決別するのだ。
竜王様に仕えていたとき、毎日が充実していた。
だが、竜王様の復活をただ待ち続けていたとき、ただひたすらに退屈であった。
キャラバンに入ったとき、改めて非常に有意義な時間を過ごせた。
では、ここでの一時は、一体どのようなものになるのだろうか?

いつの間にか、全員そばに来ていた。ある者は一点を見つめ、ある者は目を閉じて十字を切っている。
我が見ているのに気付いたようだ。
「終わった?じゃ、行こう。次の世界へ」

【ギード 所持品:首輪、不明
 第一行動方針: 第二行動方針:首輪の研究】
【テリー(DQM)(精神不安定回復気味) 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖
 第一行動方針:ルカ達と合流 第二行動方針:わたぼう、わるぼうを探す】
【ルカ 所持品:ほしふりのオーブ 行動方針:同上】
【トンベリ(トンヌラ) 所持品:包丁(FF4) スナイパーアイ 行動方針:テリー達についていく】
【ドルバ 所持品:不明 行動方針:同上】
【以上、ナジミの塔の旅の扉から次フィールドへ 最終行動方針:ゲームを脱出する】

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最終更新:2008年02月16日 01:37
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