509話

第509話:修学旅行<バトル・ロワイアル>2日目深夜


ユウナとエドガーが発ってから一時間。
山中には、いつしか静寂が満ちていた。
それを破るとすれば、遥か遠くで、道無き道を往かんとする一つの足音。
あるいは、眼をこする青年の声。

「ふわぁ~……いいよな、みんな先に寝ちゃってさ」

魔法で傷は癒せても、疲労までは取れない。
ましてギードは老体。テリーは子供。ロックはウルでの騒動と長旅、加えて精神的な疲れ。
気がつけば、三人が三人とも眠りについていて、見張りのティーダだけが取り残された。
ギードと違って、首輪の研究をするような技量も持っていない。
やることもなく、ぼんやりと風景を見つめながら、あくびを噛み殺す。
やがて睡魔も限界に達し、うとうとと舟を漕ぎはじめる……

「……ティーダ?」
「うわっ!!」
「あはは。今寝てただろ~」
「あ……アーヴィン!? 良かった、気が付いたんだな!」
「おかげさまでね」

周囲に光はなく、月も雲の間に隠れていた。
闇の中、皆の眠りを醒ますには小さく、敵から隠れるには大きすぎる程度の声が響く。

「よいしょっt……~~~~~~~~~ッ!!?」
「バ、バカ! 右腕! 大丈夫ッスか!?」
「ななななんとかガマンできるような気がしなくもない程度に
 大丈夫だと思ったり思わなかったりしたけど平気でもやっぱ無理かもしんない」
「どっちだよ! ほら、起こしてやるから」

――『せーの』、『よいしょっと』

「サンキューっ、と……いててて。
 ずん胴女め、どんだけボロボロにしてくれたんだよ~」
「本当だよな。正直、もうダメかと思ったんだぞ?
 腕折れてるし、頭や耳からダラダラ血ィ出てたし」
「右の方だろ。アイツに思いっきり抉られてさ。今もあまり聞こえてないんだよね~」
「……ごめん」
「あんたが謝ってどうするのさ。アイツの身内じゃないのに」

――ささやかな笑い声が上がる。

「でも良かった。二人が生きてて。
 愛するユウナが死んだり悲しんだりしたら僕も辛いもん!」
「は? アイスルユウナって……
 あんたもか? あんたも奴らと同類だったのか!?」
「あのさ、冗談なんだけど」
「どーせそう言ってユウナにちょっかい出し続けるんだろ、エドガーみたく」
「彼氏持ちに手を出すほど落ちぶれちゃいないってば~」
「それもエドガーが言ってたッス」

――しばしの沈黙。

「そういやさ。さっき、ゼルの夢見たんだよ」
「え?」
「『お前は早く帰れ』って追い出されちゃった。
 そのくせ自分は、ラグナとか変な赤い服の人とかと、すっごい楽しそうに話しててさ。
 あ、そうそう。リノアもちょっとだけ見かけたんだよ~」
「え? ……な、あ、アーヴィン?」
「それで、少しだけ意識戻ってさ。
 あんたとユウナとマティウスが、色々喋ってたの、聞いたんだ。
 あはは、大丈夫だよ。夢の意味も、本当のことも、全部わかってるから」
「アー、ヴィン……」

「ゼルはバカだよ。そんで、そんなことに気付かなかった僕が一番バカ。
 けど、何もしないであんた達が死んでたら、その方がずっと許せなかった。
 僕もそうだし、きっとゼルだって悔やんでない」
「何、言ってんだよ……」
「僕らは傭兵になることを選んだ。
 誰かの為に戦って、いつかは誰かの為に死ぬ道を選んだ。
 僕はその道を見失ってしまったけど、ゼルは、ちゃんと全うしたんだ。
 ……ティーダ。本当に、あんた達が生きてて良かった」
「ふざけんな……何が良かっただよ!」

――木の幹が揺れる。

「アーヴィン! 俺ら、もっと早くこっちに戻ってこれたんだぞ!
 俺がエロ小説巡ってユウナに怒られたり、『オンギャース』とか気絶してなけりゃさ。
 ちゃんと真面目に探索してれば、もっと早く城を出て来れたし、ゼルだって……!」
「え? え? ……ティーダ?」
「ゼルだって好きな奴とかトモダチとか一杯いたんだろ!?
 ユウナはともかく、俺なんていつ消えるかわかんないんだぞ!?
 俺、ただの夢なんだぞ。死んだ奴らが見てて、目が覚めて一回消えた夢なんだぞ!
 どうしてここにいるのかも、この先消えずにいられるのかもわからないんだ!
 そんな俺のせいで、生きてるゼルが死んでいいわけない!!」

――『う~ん……』と、誰かの唸り声。
――ひそひそと、囁き声に変わる会話。

「あ~、ちょっと話が見えないんだけど。
 エロ小説とかオンギャースとかもすごい気になるけど、そっちは一先ず置いといて。
 こうして僕と喋ってるあんたが『夢』だっての?
 それってどこから来た電波? UFO? アデルセメタリー?」
「電波じゃねっつーの。本当に祈り子の夢なんだっつーの。
 俺も、俺が住んでたザナルカンドも、全部さあ!」
「いや……イノリゴって何よ?」
「人の魂を閉じ込めた像だよ。
 ずーっと夢を見てて、召喚士はそこから召喚獣を呼び出してた。
 俺のザナルカンドもそうだった。そこに住んでた、俺も……」
「ん~~。さっぱり理解できないけど、あんたは召喚獣の親戚なワケ?」
「まあ、そうなるッスね、多分」
「じゃあ、消えちゃったとしても、ユウナに召喚してもらえばいいんじゃないの?
 スピラを救った大召喚士だって胸張って言ってたじゃん」
「無理だっつーの。祈り子、使えなくなったんだから。
 ユウナも、ユウナの話じゃドナだってイサールだって、もう召喚士じゃないんだ」
「使える祈り子ってのを作りゃあい~じゃん?」
「それが出来る奴は俺らで異界送りしちゃったっつーの。
 だいたい誰が祈り子になってくれるってんだよ。殆ど死ぬのと一緒なんだぞ?」
「当てがないなら立候補してもいいよ」

――数秒の、微妙な間。

「ふざけんな。ちっとも嬉しくないっての」
「そりゃ~残念。じゃあ、アプローチを変えて考えてみようか」
「アプローチ?」
「あんたは自分の意志や精神を持ってる。ロボットとかゴーレムじゃない。
 これは間違いないよね」
「……俺は俺ッスよ。心まで作り物だったらこんな風に悩んでない」
「良かった。
 で、夢なのに実体化しているってことは、どういう理論?」
「さあ? 死人や魔物とかと一緒で、幻光虫ってのが集まってるらしいけど」
「げ、ゲンコーチュウ? 虫? 謎の虫の集合体?
 それ、グロ映画か何かのネタだよね? ネタだと言ってよティーダ!」
「嫌な言い方するなよ。引くなよ。
 虫って言ってるけど、本当はふわふわしてる変な光だよ。
 なんつーか、人の思いに反応して輝くエネルギーなんだろうな」
「あ、そういうことね」
――『よかったー』『あのなぁ、人を何だと』……

「要するに、あんたは実体化した自律エネルギー体なわけだ」
「……そう、なるのか?」
「そうなる。自律エネルギー体ってことは、すなわちあんたはG.F.と同類!
 つまり、どっかで実体化が解けてエネルギーの塊状態になっちゃったとしても!
 僕がジャンクションしてひたすら召喚しまくれば、もうバッチリ万事解決っ!」
「するワケねーだろ!」

――木の枝で引っぱたく真似をする。

「あんた、GF使ってると記憶障害になるとか言ってただろ!
 若年性痴呆や記憶喪失通り越して廃人になったらどーすんだ?!
 結局約一名犠牲になることには変わんねーし!」
「別にいいじゃん。どうせ僕の人生、ある意味終わってるんだしさ~」
「何でだよ?」
「ラグナ殺したのは僕だってイクサスが言ってたからさ。
 覚えてなくても、よりによって一国の大統領を殺害してたわけだ。
 エスタ警察に捕まったら、フツーに死刑か終身刑だね」
「いや、急に、そんなメチャクチャ現実的な話をされても……
 アレだ、洗脳されて強制されましたでどうにかならないんスか?
 サイファーって奴だって、魔女に操られてたけどそれで通ったって言ってたじゃんか」
「他の人ってゆーか、スコールが口添えしない限り、証明してくれる人いないじゃん。
 僕自身が操られてたって言っても無駄。印象悪くなるだけ。
 そんで、裏切って父親殺した犯人を助けるほど、うちの班長お人よしじゃないし」
「そんなこと……」
「ああもう、僕のことはどうでもいいよ。結局自業自得なんだから。
 ティーダ。あんたが『夢』だっていうなら、『現実』になる方法、探そうって。
 ここにはいろんな世界の人がいるんだ。きっと誰かしら知ってるさ。
 そんでアルティミシアを倒して、ユウナと一緒に帰ればオールオッケ~!」

――ため息。

「なんつーかさぁ……元気なのな」
「え?」
「俺、ユウナに言われてここに残ってたんだぞ。
 俺がいなかったら、あんた、きっと不安がったり心配したりするだろうからって。
 それなのに、思ってたよりずっと元気でさ」
「……あ。そういやユウナいないね。どしたの?」
「ああ。リルムがウィーグラフとかいうオッサンに誘拐されてさ。
 エドガーが一人で取り返しに行くって言ったんだけど、危ないからってユウナが着いてった」
「ゆ・う・か・い?」
「――あれ。そこは聞いてないッスか?」
「あ、当たり前だよ! ナニソレ!? 誘拐!?
 何それ、何それ……リルム大丈夫なの? もしものことがあったら、僕、僕……」
「ちょ、静かにしろ! みんな起こしちまうっつーの!
 それに大丈夫だから! ラムザって奴も向かってるし、エドガー達も……」
「それってユウナ達にもしもの事があったらどうするんだよ?!
 そうなったら、うっく、全部、僕のせい……僕のせいだぁ~~……」
「お、落ち着けアーヴィン!
 ユウナは俺よりずっと強いから大丈夫だっての!」
「そんな理屈が通用するならリノアだってゼルだって死んでない~~!
 何でだよ、リルムが誘拐ってどうしてだよ?
 僕が逃がさなかったから? ……うっく、えぐっ、うう、うわぁあああん……」
「大丈夫だって!
 さらった奴、ラムザと決闘する為にリルムを連れてったって話だから。
 わざわざ殺したりしないって! そんなことしたらラムザだって逃げるだろうし」
「うっく……じゃあ、何でユウナまで行くんだよ?
 どうして引き止めなかったのさ? 本当に何かあったら……ぐすっ、ぐすっ……」
「エドガー、右手吹っ飛ばされて使えないんだ。
 せっかく色々調べられる人なのに、変な奴に殺されたら困るだろ?」
「じゃあ、何でティーダは一緒に行かなかったんだよ~?
 僕がいるから? ……やっぱり僕のぜいじゃん~~~……」
「違うって! ロックもギードもテリーも、みんな怪我してるんだよ。
 ほら、こんだけ騒いでるってのに、誰も目ぇ覚まさないんだぞ!?
 それぐらい疲れてるんだよ、みんな! 置いてくなんて有り得ないだろ!」

「えぐっ、うう………だけど、だけど……」
「ユウナだって、リルムやみんなの事を考えて、俺に残れって言ったんだ。
 何かあったとしても、それはアーヴィンのせいじゃないから。
 誰も、あんたを責めたり怒ったりしないから、な?」
「………うっく、えぐっ……」

――すすり泣きが響く。

「……うぐっ、ティーダ……」
「どうした?」
「ホントに、ユウナが、言ったの? ……僕のために残れって……」
「あ? あ、ああ。そうッスよ。だから心配しなくていいって……」
「……うう、ティーダ。
 それ、多分……ユウナ、怒ってる……」
「え?」
「僕も一回ケーケンあるけど……
 女の子って、自分が一番じゃないと、拗ねて怒るんだよ……」
「は?」
「ティーダ、エアリスって人の事も、女の子絡みで色々酷い目にあったこともさ。
 僕には話してくれたけど、ユウナにはぜんぜん話してなかったじゃん……」
「え? それは、エアリスとかターニアとかミレーユさんのこと話したら
 ユウナがやきもち焼くと思って……」
「けど、エアリスって人と、茶髪の僕と、何となく重ねちゃってるんだなーとか。
 女の子とトラブルばっかり続いて、ニガテになってるんだなーとか。
 ちゃんと話せば、ユウナだってそう解釈して納得してくれたかもしれないのに……
 ティーダ、僕やゼルとばっか話して、ユウナのこと放りっぱなしで……」
「え、だって、そりゃあんたが心配だったからだぞ?
 ユウナのこと放っておいたのは悪いけど、それはさっき謝ったしさ。
 まあ……エアリスやアリーナのこと、引っ掛かってない、とは言えないけど……」
「僕が心配だとか、謝ったとか、ティーダはそう思っててもさ。
 ユウナがそれで納得してくれないと、意味無いんだよ……」
「う"っ……」

「助けたっていっても、襲われた原因も僕だしさ……
 傍から見れば、ただの行きずりの相手に理不尽なほど入れ込んでるだけ……
 恋人なのに延々放置プレイで、それについても説明らしい説明がない……」
「うぐっ……」
「おまけにエロ小説とか言ってるし、そりゃあ愛情試されて当然だってのに……
 ユウナ、絶対、自分を選んで欲しくて、わざと聞いただろーに……
 どうしてそこで本当に僕を取るかなあ……ぶっちゃけ有り得ない……」
「あ……ロックが言ってたの、そういうことッスか?
 うわああああああ! 気付いてたなら教えてくれよ!」
「……気付かないあんたがダメすぎるんだよ」

――大きなため息がこぼれた。

「もうダメ。爆弾マークついた。……刺されても文句言えない」
「さ、刺されるって、ユウナに限って……」
「ガーデンにも、そんな風に甘く考えて彼女を放っておいた奴がいました。
 ある日、何故か訓練中に、そいつと友達の銃が揃って暴発……
 本人は全治二ヶ月……友達の方は、寮に花瓶が飾られ……」
「ヒィイイイイ! お、俺はどーしたらいいんスか?!」
「……ユウナが戻ってきたら、僕、ここ出てく。後はあんたが探しに来なければいいだけ」
「はぁ!?」
「僕がユウナからあんたを取ってる形になってるワケだしさ。
 僕がいなくなれば、二人の仲も自動修復するよ、きっと……」
「だ、ダメダメ、ダメだって!
 今のあんた一人にしたらフツーに死ぬっつーか殺すのと同じだろ!
 仲直りする為に死人出すなんて有り得ないっつーの!」
「そうやってあんたが僕を庇うから、ユウナは寂しくなるんじゃん。
 そんなことやってたら、僕もあんたも、どんどんユウナに嫌われるじゃん……」
「ユ、ユウナはそんな奴じゃないって!
 ユウナはな、自分が死ぬってわかってて、シンを倒すために旅してた奴なんだ。
 自分の気持ちのために、アーヴィンを見捨てるとか死んでいいとか思うかよ!
 そんな我侭女だったら、俺だって好きになるわけないっつーの!」

「うーん……ティーダがそう言うなら、そうなのかな……」
「そうだっての。
 そりゃ、色々寂しい思いさせたけど……それは俺が悪いけど。
 でも、アーヴィンがどうこうって話じゃないのはユウナだってわかってるって」
「そうかな……」
「ああ、そうさ。ユウナはそこまで自分勝手じゃない。
 いつだって、自分のことは、最後まで我慢してた」

――また、しばらく静寂の帳が落ちる。

「……ティーダ」
「ん?」
「さっき、冗談だよって言ったじゃん……ユウナのこと。
 あれ……半分嘘で、半分本当……なんだ」
「え……え?」
「ユウナの声、どこかで聞いたことある気がした……
 そしたら急に、ひどく懐かしく思えてきて……胸が締め付けられる感じが止まらない」
「……それって」
「わからない……すごく辛くて苦しいんだ。
 でも、好きなんだ。多分、ユウナのことが……」
「な、あ、アーヴィン?」
「あはは。何言ってるんだろうね、僕。
 ……ごめん。今の全部忘れて。
 安心して。彼氏持ちに手ぇ出す気がないってのは本当だから。
 そんなことしたらユウナにもあんたにも嫌われるし、そんなの嫌だ」
「アーヴィン……」
「あはは……でも、何でこんなに懐かしく感じるんだろうね。
 小さい頃、ユウナみたいな声の人と、どこかで会ってたのかな。
 あの、太陽みたいに元気で、眩しい……声……
 ……眩し、すぎて………遠、くて……とど、かな…い……」
「アー……ヴィン?」
「あ……」

――ごしごしと、拭う音。

「あ……あはは……あは、はははは。
 さっきから、僕、何言ってるんだろうね。
 おかしい、な……迷惑、かける気、なかったのに」
「別に掛けたって構わないっつーの。
 ……俺、倍の迷惑掛けてるんだから」
「その迷惑の元は、僕、じゃんか」
「だったら、お互い様ってことでいいじゃないッスか。
 変な風に背負い込まないでさ。友達同士、どっちもどっちで」
「トモ……ダチ?」
「なんだよ。アーヴィン、俺のことそういう風に思ってないのかよ」
「だってさ……いいの、かな」
「いいって。俺がいいって言ってるんだから」
「でも、僕は……いつ記憶が戻るかわかんないよ」
「そうなったら俺が止めてやる。あんたも、他の奴も、絶対に死なせない。
 ……だいたい、そんな体で、どうやったら人殺しなんかできるんだっつーの。
 銃も撃てなきゃ、剣だってすっぽ抜けるくせして」
「あ……あははは、そうだね。
 確かに、何も、できないね」

――くすくすと笑う声。

「なあ、ティーダ」
「ん?」
「僕、探すよ。あんたが『夢』でなくなる方法、見つけてみせる。
 ずっと、ユウナと一緒に暮らせるようにさ」
「……サンキュー。
 けど、一つだけ、頼みがあるんだ」
「頼み……?」

「俺のこと、ユウナには黙ってて欲しいんだ。
 きっと、知ったら心配する。
 それに……例え俺が消える事になっても、こんなこと仕組んだ『ヤツ』だけは、絶対に倒したい。
 その時、ユウナに迷って欲しくない」
「ティーダ……」
「ゼルとかアーロンとかエアリスとか、皆の仇、討たなきゃならないしさ。
 それにアーヴィン、『ヤツ』はあんた達の世界を狙ってたんだろ?
 ゼルの好きだった子とか、あんたの友達とか、見捨てるわけにいかないもんな」
「うん……そうだね」
「だから、約束だぞ。絶対ユウナには言うなよ」
「わかったよ、ティーダ。
 ……でも、あんたが消えることなんて、絶対無いから。
 受けた任務は必ず達成するのが、SeeDだからね」
「あれ……? あんたはSeeDじゃないって、ゼル、言ってなかったっけ?」
「心はSeeDだよ。給料だって貰ったりしてたよ、代理だったけど。
 だいたいゼルでさえSeeDなのに僕がSeeDになれないわけないだろ?
 ぶっちゃけ居るガーデンの問題なんだってば。オーケー?」
「お、オーケー……」
「じゃ、そーゆーことで、ティーダは早く寝なよ」
「え?」
「あんただって寝れないと困るだろ。あくびしてたし。
 それとも、僕は精神不安定過ぎて任せられっこない?」
「あ、いや、それは……」
「大丈夫だよ。仕事とか命令だって思えば、スイッチ入る。
 そうじゃなきゃ傭兵だの狙撃手だのなんてやってられないよ。
 それに悪いけど、ニブチンのあんたよりは僕の方が見張り役に向いてるね」
「ニブチンって……女心に鈍感だってのは認めるしかないけどさ。
 それとこれとは関係ないっつーの、いくらなんでも」
「んー。じゃあ、あっちの方ウロウロしてる人の事、気付いてる?」
「え……?」
「まだ、距離がありそうだけど。
 僕達の声、聞き付けてきたのかな」

――風が吹いた。
――どこかで、草叢が揺れる。

「……どこに、何人ぐらいいるッスか?」
「わかんないや。片耳使えないからなぁ。
 なんとなーく物音がしてるとか、人の気配を感じるってだけ」
「良くわかるッスね……」
「そりゃ、授業で一週間に一度は野戦の訓練やってたからね。
 で、どうする? みんな叩き起こす?」
「いや、下手に騒いで全員見つかっても仕方ないッスよ。
 ここは俺が出て行って……」
「とか言ってる間にどんどん近づいてきてる。
 とりあえず武器持ちなよ、武器」
「あ、ああ……」


二人は口を噤む。
そして、片方だけが立ち上がり、木々と岩の向こうに浮かぶ一つの影を見る。
道無き道を進んできた壮年の剣士は、やがて彼の姿に気付くだろう。
そして彼ともう一人の口から、己が息子に関わる疑惑の顛末を聞き出すのだろう。
あるいは、苦悩に満ちた青年の頼みを思い出すのかもしれない。
あるいは、分身を追いかける少女のことを話すのかもしれない。

けれど剣士は一人の女性の過ちを知らず。
故に二人も、愛する者の過ちを知ることはなく。
思いはただ、すれ違うばかり。

【パパス 所持品:パパスの剣 ルビーの腕輪
 第一行動方針:リュカに関わる事態を聞き出し、把握する
 第二行動方針:ラムザを探し(場合によっては諦める)、カズスでオルテガらと合流する
 第三行動方針:仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの破壊】

【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:フラタニティ、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:現れた人物(パパス)と応対
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け/アルティミシアを倒す】
【アーヴァイン(変装中@白魔もどき、身体能力低下、一部記憶喪失、軽症、右腕骨折、右耳失聴)
 所持品:竜騎士の靴、ふきとばしの杖[0]、手帳、首輪
 第一行動方針:様子見
 第二行動方針:ティーダが消えない方法を探す/ゲームの破壊】

【ロック (軽傷、左足負傷、MP1/2、睡眠)
 所持品:キューソネコカミ クリスタルソード 魔石バハムート 皆伝の証
 第一行動方針:お休み中
 第二行動方針:ピサロ達と合流する/ケフカとザンデ(+ピサロ)の監視
 基本行動方針:生き抜いて、このゲームの目的を知る】
【ギード(HP1/4、残MP微量、睡眠) 所持品:首輪
 第一行動方針:お休み中/首輪の研究
 第二行動方針:ルカとの合流/首輪の研究】
【テリー(DQM)(軽傷、右肩負傷(7割回復)、睡眠)
 所持品:突撃ラッパ、シャナクの巻物、樫の杖、りゅうのうろこ×3 、鋼鉄の剣、雷鳴の剣、スナイパーアイ、包丁(FF4)
 第一行動方針:お休み中
 第二行動方針:ルカ、わたぼうを探す】

【現在位置:サスーン南東・山の中、森との境付近】

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最終更新:2008年02月16日 01:44
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