18話

第18話:レディには親切に


教会の中央で血に塗れて事切れている老人を目にして、エドガーは思わず唇を噛み締めた。
「――何てことだ」
低くうめく。

誰かが、乗ったのだ。
悪夢のゲームに。殺戮という名の誘惑に。

一体誰が。
仲間達の誰かか、それとも見知らぬ誰かか。
もし自分がもう少し早くここに足を踏み入れていたら、冷たくなっていたのは
自分だったかも知れない。
心臓が絞め付けられるようなプレッシャーを感じて、エドガーは後ろ手でしっかりと
今入ってきたばかりの教会の扉を閉めた。

『……い……』

「うわっ!?」
聞こえてきたかすかな声に、エドガーは文字通り飛び上がった。
慌てて教会の中を見回すが、人影らしき物はない。
まさかと老人に駆け寄るが、その体はすでに温もりを失っている。
心霊現象――というところまで彼の考えが飛躍したところで

『……えてる?……』

再びかすかな――女の声。

エドガーはふと思いついて、老人の支給袋の中を探った。中から現れたのは――草。
『おーい』
そして、その草からははっきりと先ほどの女の声が聞こえてきた。
(これは……こんな草が通信装置の役割を果たすのか!?)
祖国の機械技師達が知ったら目が点になるに違いない、是非とも持って帰ろう、と固く心に誓うエドガー。
持って帰ろう。
もし、帰れるならば。

「……もしもし、レディ?私の声が聞こえるなら、麗しき貴女のお名前を教えていただきたい」
対女性用のトーンで語りかけたエドガー。しばしの沈黙の後、彼の持つひそひ草から
僅かに戸惑った、だがはっきりとした「……バーバラよ」という返事があった。

【エドガー 所持品:ひそひ草(ブライの支給品、エドガー自身の支給品は不明)
 行動方針:バーバラとのコンタクト?】
【現在位置:アリアハン教会】

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最終更新:2008年02月16日 14:16
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