383話

第383話:真実の誓い


『彼女の首輪……そうか、魔力を感じないんだ!』
アリーナの首輪を見つめていたエドガーは自らを束縛する首輪に触れ、その感触を確かめる。
この首輪にはエドガーがデッシュと共に行った今までの解析から
魔力と機械の両方の技術によって構成されていると結論を出した。
その内、魔力は爆発の力に使われているはずである。
そうでなければ、魔王クラスの力を持つ参加者やあのケフカを殺せるような爆発を
起こせるはずがない。しかも首を飛ばすほどに範囲を限定された威力をだ。
『だったら……だったら彼女の首輪は取り外せるのではないか?』
魔力を感じないなら取り外そうとしても爆発は起こらないかもしれない。
しかし――。
『これは推論にすぎない。
 私も魔法に精通しているわけではないから、極微量な魔力を感じ取れないだけかもしれない。
 それに、もしそうだとしても何故そんな不良品が彼女の首に嵌まっている?
 魔女のミス? イレギュラー? それとも遊びか?』
爆発しない首輪に怯え、右往左往する参加者を見て嘲笑う。
あの魔女ならばやりかねない。
そして…… 一番考えたくないが罠だった場合。
魔力を感知できないようにしておいて、安全だと思った参加者が首輪を取り外し、爆発。
参加者の希望を刈り取り、絶望を植えつける最良の手段だ。
『だが、それならばその処置を全員の首輪に施していてもおかしくない。
 というよりそうしていなければおかしい。何故彼女だけが……』
全員の首輪に魔力遮断が施されていれば、人の集まる序盤で先程の悲劇は起こっていただろう。
そうすればよりこのゲームを加速させることが出来ていたはずだ。
ならば……本当にイレギュラー? 彼女の首輪は爆発しない?
『もしもそうならば……彼女の首輪を取り外し、中身を解析することができたなら……』
自分達の首輪も外せるかもしれない。
エドガーが推測する首輪に付いている機能は5つ。
あらゆる参加者の命を握る爆破装置。
生死の判断に使用する生命検知装置。(恐らく対人レーダー等はこれに反応している)
参加者の声を主催者側に送る盗聴機能。
主催者の送る爆破信号を受け取る受信機能。
そしてある程度の負荷を一定時間以上受け続けると爆弾を作動させるセンサー。

この内の受信機能とセンサーの二つを外部から無効化できるようになれば……!
いや、盗聴器に関してはいくらでも誤魔化しようはある。
それで主催者を欺くことが出来れば……センサーだけでも無効化できれば勝機はある!
『何とか確証を得たいな……魔法に関してはシンシアは私とそう変わらない。
 アリーナは呪文が使えないということだし……リュカなら、判断できるか?』
シンシアは言っていた。彼の呪文量は高位の神官や僧侶並だと。
彼ならばあるいはアリーナの首輪について
魔力が隠蔽されているのか、そうでないのか判断できるかも……。
期待がエドガーの中で膨れ上がる。だが軽はずみに行動する訳にはいかない。
事を急いたために今朝、右手を失ったばかりなのだ。
そして何より、今度は他人の命が掛かっている。慎重に慎重を重ねなければならない。
アリーナの首輪に我々に嵌っている首輪のように魔力が感じられないのはどういう訳か。
充分に警戒して確認しなければ。
『いや、やはり本職の魔導師ではないリュカでは力不足かもしれん。
 ここは魔術に精通した者を探す方がいいだろう。
 しかし話をする必要はある……が、今はまだ黙っておいた方がいいな。
 リュカもアリーナも傷を負っているし、リュカはリノアの亡くしたばかりでまだ心が弱っている。
 もう少し回復を待ってから話すべきだろう』
それにこの話をするということは、盗聴器のことを考え必然的に筆談ということになる。
おそらく長文を繰り返すことになるため、現在の手持ちの紙では不都合だ。
エドガーはサスーン城に入るまではこの件は自分の心にしまっておくことにする。
しかし今後の為に、エドガーは再び首輪の研究メモと懸案事項のメモの執筆を始めた。
右手がないため書きにくいが、元々左利きの彼はすぐに慣れてスラスラと筆をすべらせていく。
そういえばリュカは強がって動くだけなら問題ないと言ってはいるが、
まともに立ち上がることも出来ないアリーナと似たような状態だろう。
正午までもう少しだが、この場所に留まる時間を延長するべきだろうか。
筆を滑らせながら彼の思考は現実的な部分へと移行していった。



エドガーがそんな考えに没頭している間、アリーナは必死に策を練っていた。
『こいつらは正午を過ぎるとサスーン城に向かうと言っていた。
 冗談じゃないわ! そこにはあたしを斬った忌々しいあいつらが……』
そしてこいつらと奴らが接触した瞬間、アリーナの正体は暴かれ、命運は尽きる。
今の自分は歩くことで精一杯だろう。とても逃げ切れない。
何とか行き先を変更させるか、せめて走れるまでに回復するまで逗留を延長させなくては。
その時、ふと気付く。
自分はサスーン城から逃げ出したとき、奴らからザックを一つ奪ったはずだ。
そのザックはどこだろう。
中に入っているアイテム次第では上手く立ち回れるかもしれない。
となりで腰を下ろして休んでいる少女を見る。
確か名前はシンシアといったか。聞き覚えのある名前だが、思い出すことが出来ない。
向こうも自分を知らないようだし、特に知り合いというわけでもないのだろう。
彼女に聞いてみよう。
「えーと、シンシア? 私の持っていたザックはどこにあるか知らない?」
「え? えーとリュカさん、分かりますか?」
『何のためにアンタに話振ったか少しは考えようね♪
 思わず殺したくなっちゃう♪』
湧き上がる殺意を必死で押し殺し、アリーナはリュカの方へ恐る恐る視線をやる。
「ああ、アリーナのザックならここだよ。
 エドガーさんがカインから受け取っていた」
そういって傍らにまとめて置いてあったザックから一つを取り出し、アリーナに渡す。
リュカの態度はどこかよそよそしい。
先程、自分に妻子があることをアリーナに説明して
彼女の求愛をきっぱり断ったのだがそれを気にしているらしい。
この気まずい雰囲気は目を合わせたくないアリーナとしては願ったりだ。
ちなみにカインはそのザックを本当は回収しようとしたのだが、
エドガーに見咎められしぶしぶ諦めていたという経緯があった。
「あ、ありがとう……ポ」
目を合わせないように俯いて、ザックを受け取る。
興味津々で覗いてくるシンシアの視線を背中でガードしてザックを探ってみた。
通常の配給アイテム以外に中から出てきたのは……まず皆伝の証。

『やった! これがあれば……』
早速、装備する。これで相手が一回行動するうちに四回攻撃できる。
現在の自分の状態では役立たずだが、回復さえすれば非常に役立つアイテムだ。
そしてもう一つ……それは紅い刀身の剣だった。
『これは……あの黒い服着てた男が使っていた剣!』
そうだ、そして自分はこの剣で最も手酷いダメージを負ったのだ。
何て忌々しい……自分は剣を使えないし、交渉道具として使うしかないかも知れない。
「わぁ綺麗な剣……」
いつの間にか側面に移動していたシンシアが声を上げる。
『このアマ……!』
思わず声を上げかけるアリーナ。
周囲への警戒を欠いてシンシアの気配に気付かなかった自分も問題だが、
それよりもこれで自分が武器を持っていることを悟られてしまった。
ふと見ると、すでにエドガーとリュカの注目を集めている。
「確かに綺麗だ……けど何か底冷えするような威圧を感じる……
 何か呪いの武器の類じゃないでしょうね」
「いや、あの刀身には見覚えがある。私が知っている物とは多少装飾が違うが間違いない。
 あれはブラッドソードと呼ばれる妖剣だな。
 少々物騒な能力を持ってはいるが呪い等は掛けられていないはずだよ」
リュカの懸念にエドガーが答える。
アリーナは考える。これで自分の手の内は彼らに知られてしまった。
だが自分はこの剣の能力を知らない。情報を引き出さなければ、不利になるだけだ。
「エドガーさん、その物騒な能力って何なんですか?
 怖いけど自分の武器だし、知っておきたくて……」
なるべくか弱そうな声を出す。
ふむ、と鼻をならしてエドガーは顎を撫でる。
「レディは今までその剣を振るわなかったのかね?
 ……まぁいい、お教えしよう。その剣は所謂「吸血」の効果を持っている。
 斬った相手の生命力を血液を介して刀身から吸収し、持ち主の活力へと変換するんだ。
 相手へのダメージと同時に自身の回復を行う、利便性の高い武器ではあるが
 血を吸うというその効果から忌み嫌われ、妖剣と呼ばれるようになった。
 アンデッドモンスターを相手に使うと逆に生命力を奪われてしまうから気をつけたまえ」

そう、エドガーは説明した。――説明してしまった。
それを聞いてアリーナは心の中の唇を耳まで裂いて吊り上げる。
「そう……それは、とても恐ろしい能力ね……」
アリーナの脳が高速で活動を始める。
生き残るために、勝利するためにどうすればいいのか思考する。
「あの、みんなはどういった道具を持ってるの?」
そして、アリーナは行動を開始した。


全員のアイテムを聞いて ―― ご丁寧にもエドガーの解説付きで ―― アリーナはほくそ笑む。
飛び道具がない。そしてリュカとシンシアは魔法力を限界近く消費しているという。
『あたしのために――ね』
エドガーも下位魔法しか使えないうえに、魔法力も自分の右手の治療のために半分以上消費しているようだ。
彼は元々魔法は得意ではなく、武器や機械での攻撃を好んだため魔石を使用する機会が少なかった。
その為、魔法力の絶対量も習得した魔法の数もティナやセリスに比べて劣っていたのだ。
アリーナはブラッドソードを腰に下げ、ゆっくりと立ち上がる。
途端に眩暈に襲われ、よろついたところをシンシアに支えられた。
「突然どうしたんですかアリーナさん? まだ動いちゃ駄目ですよ!」
「でも私……いかなくちゃ」
そういって足を引き摺る。
「まぁ待ちたまえレディ。突然どうしたのかね?
 そんな身体では何をするにも何処に行くにも不自由だろう。
 話してみたまえ。力になるよ」
「その通りだよ、アリーナ。僕たちを信用して欲しい」
エドガーとリュカも立ち上がり、口々に言う。
アリーナは頬を染めて俯き、ボソボソと喋る。
「や、エドガーさんには絶対付いてきて欲しくないの……
 まぁリュカなら……どうしてもっていうなら……我慢するけど」
「?」
アリーナ以外の全員の頭に疑問符が浮かぶ。
どうやら、このチームから離れるとかそういう話ではないようだ。
アリーナはもじもじと身体をくねらせ、恥ずかしそうに口にする。

「……………………おしっこ、漏れちゃう」

ピギッ
空気が凝固したかと思うような音が全員の脳内に響く。
エドガーは再び腰を下ろし、リュカへと声をかける。
「あー、付いていくかねリュカ?」
「遠慮します。シンシア、彼女に付き添ってあげてくれ」
「はい、わかりました」
リュカは即答し、頭痛を堪えるように頭に手を沿えながら腰を下ろす。
そしてアリーナはシンシアに支えられながら、巨木から少し離れた木陰へと移動した。
『勝つため、生き延びるためならこんなの恥でも何でもない……何でもない』
顔を真っ赤にして、そんなことを呪文のように繰り返しながら。


リュカとエドガーからは完全に見えない位置に移動して、シンシアは呆れたような声を出した。
「アリーナさんったら……ああいうことは最初から正直に話したほうが
 恥ずかしさも少ないんですよ?」
「ごめん、苦労をかけるわねシンシア……」
「もう、おっかさんたらそれは言わない約束でしょ」
茶化して返すシンシアにアリーナは真剣な表情でその目を見つめる。
「冗談じゃなくて、シンシアには本当に世話になってるわ。
 だからお礼がしたいの」
「そんな、お礼なんて……何してもらおうかしら♪」
シンシアは顎に指を当てて、考える振りをする。
「ええ、あなたには本当に世話になったわ……だから……
 あなたが綺麗だと言ったこの剣をあげようと思うの」
「え?」
ふとアリーナの方を向いたシンシアは突然喉を掴まれた。そして――
 ズ ブ リ
ゴキュッ――ズキュン――ドクン――
「か……ハッ、アリー、ナ……あ、なたは」


「へえ、本当に力が湧いてくるわ。傷もだんだんと塞がっていくのが分かる……」
アリーナの握るブラッドソードはシンシアの腹部を貫いていた。
紅い刀身が輝き、溢れ出る血液を吸収しているのがわかる。
急速に失われていく生命力と喉を掴まれているせいでシンシアは声を出せない。
皆の前であんな恥ずかしい小芝居をしたのも、全て自然な形で彼女と二人きりになるため。
シンシアの懐から万能薬を回収し、アリーナはニッコリと微笑んだ。

「ゴメンね、あたしの栄養になって♪」

シンシアは答えない。答えられない。
完全に脱力したシンシアから、ずるり、と剣を引き抜く。血は殆ど流れ出ない。
しかし全身を真っ青に変色させながらシンシアにはまだ僅かに息があった。

「……ソ、ロ……」

  ―― もう一度だけ……会いたかったな…… ごめんね ――

その呟きと思考を最後にシンシアはがっくりと項垂れた。
そしてその言葉を聴いて偽りのアリーナはオリジナルの記憶を思い出す。
「ああ、この娘……隠れ里でのソロの幼馴染だっけ。
 話に聞いてただけだから判らなかったなー」
『でも、これでソロに対する呪いの材料が増えたわね……』
勝利するために、生き残るために、呪える奴らは皆呪ってやる。
だが手始めはあの二人だ。
吸血のおかげで大分回復したとはいえ、まだ本調子ではない。
怪我人とはいえ二人の戦闘巧者を無理に相手にするつもりは更々なかった。
自分は学習する女だ。だがこのまま逃げたのでは面白くない。
後を有利にするためにも、呪いは是非ともかけておきたい。
アリーナは随分と軽くなったシンシアの身体を担ぎ、木をよじ登り始めた。
「呪いを効果的にかけるには演出が大事よねー♪」
そんな事を口走りながら。



「遅いですね、シンシアたち」
「レディには色々とあるものだ。気を長く持つべきだよ」
「はぁ」
リュカが力ない受け答えをしたその時、ガサリ、と木々が揺れる音がした。
二人は即座に立ち上がり、周囲を警戒する。
「この気配は……」
「判りません、だけどただの動物や風ではないみたいです……」
ふと二人に降りかかっていた木漏れ日に影が射す。
「上だ!」
リュカの声で咄嗟に降ってくる何かから身をかわす。
ドサリと音を立てて落ちてきたのは……血塗れのシンシアだった。
「シ、シンシア!?」
エドガーはすぐに駆け寄り、容態を調べる。
リュカも駆け寄ろうとしたその時、哄笑が聞こえてきた。

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ」

その声は……アリーナ。
「アリーナ、君は!?」
その問いを発した瞬間にもうリュカは理解していた。
シンシアを手にかけたのが彼女だということに。
ガサガサガサ、と音が鳴り、木の上からアリーナがリュカの前に降り立った。
10mほどの間合いを空けてアリーナは不敵に微笑んでいる。
「ウフフ……彼女の血はとても美味しかったわ……ごちそうさま♪」
唇を舐めるアリーナを見て、リュカの全身はざわつく。
「はじめから……騙していたのか!」
「そうよ、はじめから騙していたの。おかげで吸血剣の話を聞けたのは幸運だったわ。
 ビアンカっておばさんの血もこうして吸えたら良かったのにな。
 ま、とりあえずこれで満足だから私は行くね。また会いましょうリュカ」
そういってアリーナはくるりと無造作に身を翻し、歩き去っていく。。

しかしリュカは先程のアリーナの言葉に戦慄していた。
全身から汗が噴出し、不安が心臓を締め付けてくる。
「待て、何故ビアンカの名を知っている。
 会ったのか、彼女に!? 彼女をどうした!!」
アリーナは振り向いたがその問いには答えない。ただ、笑った。

ニタリ、と口を裂いて。

「貴様ァーーーーーーーーーーー!!」
リュカはアリーナに向かって駆け出そうとするが、足が動かずにすぐ膝を突いてしまう。
強がってはいてもやはり戦闘に耐えられるほど回復はしていないのだ。
それならば、とリュカは手をかざし呪文を唱えようとする。
「あら、いいの? 私なんかに残り少ない呪文使っても?
 彼女はまだ生きてるんだけどなー?」
ハッとしてシンシアの方を振り返る。
そこには必死にシンシアに回復呪文をかけるエドガーの姿があった。
「彼女の言うとおり、シンシアはまだ生きている!
 リュカ、手伝ってくれ! 彼女を追うよりもこちらが先決だ!」
リュカは仇とシンシアを前に一瞬、迷いをみせたが
ついにアリーナに背を向け、シンシアの治療に入る。
呪文を唱え、癒しの光をシンシアにかざした。
しかしリュカの魔法力はすでに残り少なく、すぐに光が弱まっていく。
「頼む、助かってくれ……頼む、もう嫌なんだ……目の前で人が死んでいくのを
 ただ見ているのは、何も出来ないのはもう嫌なんだ……頼む……」
額に汗を浮かべ、必死に何かにリュカは懇願する。 だが……。

「ああ、忘れ物しちゃった。 私はもう使わないし、コレ、あげるね」

ヒュオッ
そんな声の後、鋭く風を切る音がした。
治療に集中していたリュカは反応できない。エドガーはもとより気付いてもいない。
鋭利な何かがリュカの背後から風を切って襲ってくる。

『殺られる!』
ドカァッ
リュカがそう思った瞬間、飛来した剣は突き立った。
―― シンシアの即頭部へと。
紅い刀身がシンシアの頭蓋を断ち割り……彼女は即死した。
「あ……」
リュカもエドガーも声を発することが出来ない。
振り向いたそこにはアリーナの姿はすでに見えない。
リュカは呆然とシンシアを抱きかかえる。
そこにまたアリーナの声が聞こえてきた。

「ウフフ、楽しんでくれたかしらリュカ?
 私はあなたに心を覗かれそうになってからずっと思っていたわ。
 こんな屈辱は初めてだって。絶対に苦しめて殺してやるって。
 苦しめて苦しめて一番最後に殺してやるって! 貴方は今、苦しんでくれているかしら?
 リュカ、私はね……私はあなたを……」
そしてアリーナは静かにその言葉を口にした。

「私はあなたを憎んでいます」

それは真実の誓い。
しかしその場に居たもの全てを絶句させるほどの力を持った呪いの言葉。
そして再び哄笑を残して、彼女の気配は完全に消えた。
沈黙が、降りる。
ガン、とエドガーは巨木の幹を叩いた。
「糞、私の責任だ……! 私が彼女を救ってしまった!!」
自分の見込みの甘さのせいでシンシアを失ってしまった。後悔しても仕切れない。
『だが、これで遠慮はいらなくなった……次に会うときは
 そのそっ首叩き落として首輪を頂くぞ、アリーナ!』
エドガーは暗い決意を秘める。
そして……リュカはただ心を失ったようにシンシアを見つめていた。
唇が震える。

「何故だ……僕は家族や、手に届く人たちだけは守りたいって……
 ただ、それだけで……なのに、なのに僕は……どうし、て……何も……できない?
 どうして……」
リュカはシンシアの頭蓋を割っているブラッドソードに手を掛けた。
そこから流れ込んでくるのは正真正銘、シンシアの命の最後の一滴。
不意に涙がポロポロと溢れ出てくる。

「う、うぁ、うああああああ……」

力ない慟哭が……静寂の森の空気を僅かに震わせた。

【アリーナ2(分身) (HP4/5程度)
 所持品:E:悪魔の尻尾 E皆伝の証 万能薬
 第一行動方針:潜伏する場所を探す
 第二行動方針:出会う人の隙を突いて殺す、ただしアリーナは殺さない
 最終行動方針:勝利する 】

【リュカ(HP1/2程度 MP残量一桁 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋 ポケットティッシュ×4 アポカリプス+マテリア(かいふく)  ブラッドソード
 第一行動方針:慟哭  基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【エドガー(右手喪失 MP1/3)
 所持品:天空の鎧 ラミアの竪琴 イエローメガホン 血のついたお鍋 再研究メモ
 第一行動方針:シンシアを埋葬する
 第二行動方針:アリーナを殺し首輪を手に入れる
 第三行動方針:仲間を探す 第四行動方針:首輪の研究 最終行動方針:ゲームの脱出】

【現在地:カズス北西の森の巨木の根元】

【シンシア 死亡】
【残り 67名】

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最終更新:2008年02月16日 14:19
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