481話

第481話:LE CALMANT


夕焼けの空が一面に広がる。懐かしい潮風の匂いがする。
紅色の水平線をぼんやりと眺めていると、暖かい手が肩を叩いた。
「まーだ練習やってたのか?」
ビサイド・オーラカ往年の名選手は、いつもと同じように呆れ半分の苦笑を浮かべる。
「熱心なのはいいけど、身体壊さないようにしろよ?
 …お互い、ルーには怒られたくねぇだろ」
本人が近くにいるわけでもないのに、最後の方は耳元でこそこそと囁いてきた。
こう言う時、ワッカさんには悪いけれど、『しつけが行き届いているなぁ』と思ってしまう。

「で、どんなもんだ?」
ビサイドへの帰り道。つり橋を渡る途中でワッカさんが問い掛けてきた。
「2分と5秒。まだまだっす」
一応謙遜してみたけれど、本当は2分を越えられたことが嬉しくて。
ワッカさんも私の気持ちを見抜いたのか、笑いながら言ってくれた。
「そんなことねぇって。一年前に比べたら、ずいぶん上達したってもんだ」
「でも、ワッカさんには敵わないよ」
「俺は最近トレーニングしてねぇからな。いい加減、鈍っちまってるよ」
「そういえば、ちょっと太ってきてない?」
「…そう思うか?」
「うん。なんかぷにぷに感が出てきてる」
「くぁーっ。やっぱ運動しないとダミだなぁ」
ワッカさんは頭をぽりぽりと掻いた。
水しぶきの音と、涼しい風が薄闇を駆け抜けていく。
心地よさと、奇妙な懐かしさを胸に、私たちは歩き続けた。

やがて村が見えてきた頃、ワッカさんが昨日と同じ事を聞いてきた。
「明日も練習するのか?」
私は笑って肯く。
一昨日も、その前も。毎日このやり取りを繰り返していた。

『キミのこと、忘れたくないから――』



「ユウナさん! 起きてください!」
ゆさゆさと揺さ振られ、私は目を開ける。
いつの間にか眠ってしまっていたみたい。
ぼんやりとした頭を左右に動かしてみると、焦った表情のプサンさんがいた。
「すぐに支度をしてください!」
良くわからないけれど、有無を言わせない迫力を感じる。
私は首を傾げながら荷物を持ち、階段の方へ走っていくプサンさんの背中を追う。
走って走って、二階に続く隠し扉のところまで来てから、ようやく彼は足を止めた。

「あの、一体どうしたんです?」
「どうしたもこうしたも……あの音に気付かなかったんですか?」
「あの音?」
おうむ返しに呟くと、プサンさんは私に向きなおり、口を開いた。
その時、ばむっ!と勢いの良い音を立てて、隠し扉が開いた

「ユウナーーーッ! 無事ッスかーーー!?」
「え?」
ティーダは、いきなり入ってきたと思ったら、何の脈絡もなしに私を抱き締める。
「ユウナ! 良かった、無事だったんッスね!
 俺、ユウナまで殺されてたらどうしようかと……」
ええと……殺されるって、何がどうなってそういう話になってるの?
その前にプサンさんが『どうしよう』な状態になってるけど。

「ティーダさん。痛いんですが」
よろよろと、扉と壁の間からプサンさんが這い出してくる。
ティーダは口をぽかんと開けた。
「ああ、オッサンも無事だったんだ。良かったー」
「たった今、無事じゃなくなりましたがね」
眼鏡は割れなかったけど、鼻を打ちつけてしまったみたいでハンカチで抑えている。
バツが悪そうに頬を掻くティーダに、プサンさんが尋ねた。

「今の音は、やはり敵襲だったのですか?」
「そうです。既に一人、命を落としています」
答えたのはティーダではなく、扉の向こうから現れた男の人。
長い金髪を真後ろで束ねた、二十台後半ぐらいの男性だ。
どこかで見たような気がするけど思い出せない。
彼は戸惑う私を見つけると、なぜかうやうやしく頭を下げた。
「初めまして、美しいレディ。
 私の名はエドガー、フィガロという小国を治めている者です。
 あなた方にはリルムが世話になったようで、感謝の言葉もありません」
私の手を取り、その甲に口付けようとして――ティーダに後ろ髪を捕まれる。
「何やってるんスか、エドガーさん」
「レディに対する礼だが。騎士の一般常識だぞ」
「そんな常識聞いた事ないっつーの」
「文化の違いだな」
「うそつけ!」
「ユウナか…素敵な名前だな。
 安心してくれ、君のことはオレが守る。襲撃者には指一本触れさせないぜ」
「ってあんたも! どさくさに紛れて何やってんだよ!」
「みんな…そんなことやってる場合じゃないよ」
……もう何がなんだかわからない。
エドガーさんについては思い当たる節があるけれど、その後からやってきた二人組は誰なんだろう?

「ナンパは後にしなよ…ゴホゴホッ、遊んでられる状況じゃないんだから」
黒髪の男の子が、咳き込みながら金髪の男の子を睨みつける。
私の肩に手をかけていた彼は、尻尾をくたりと下げ、誤魔化し笑いを浮かべた。
その後ろで、エドガーさんが咳払いをする。
「レディには礼を尽くすのが私の主義でね。それに襲撃者も城内に逃げたわけではないようだし」
「どういうことッスか?」と、ティーダは首を傾げる。
「簡単だ。ゼル君の遺体の周囲には緑色の体液が滴り落ちていた。
 襲撃者が手傷を追っていることは間違いないだろう。
 だが、城内には体液や臭いといった痕跡が存在していない。それにこのレーダーにも……」

私は反射的に、説明を始めたエドガーさんの手を掴んだ。
「今、なんて言いました?」
「そ、そうッス! それなんだよ、ユウナ」
詰め寄ろうとした私の言葉を遮り、ティーダがまくし立てる。
「ゼルが死んでたんだ、城の前で。
 誰かに襲われたみたいで、多分さっきの爆発もゼルがやったんだと思う。
 でもアーヴィンとリルムはいなくて、近くにもいないみたいで、それで……」
聞いても全然わからない。
ゼル君が死んだなんて、どうしてそんな笑えない冗談言うんだろ?
ゼル君はリルムとアーヴァイン君と一緒に山の中にいるはずなのに……
「冗談なんかじゃないんだって……俺にだってわかんないっつーの!」
ティーダの声で、私は我に返る。
頭に浮かんだこと、いつの間にか声に出していたみたいだ。
今にも泣き出しそうな顔で叫ぶティーダからは、ふざけている様子は見受けられない。
じゃあ、本当にゼル君は死んでしまったのだろうか?
眠っている間に起きた現実に、頭がついていかない。
混乱する私に、追い討ちをかけるように、エドガーさんが大声を上げた。

「しまった!」
全員の視線がエドガーさんに集中する。
エドガーさんの視線は、彼自身が持っているマキナに向けられている。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもない……奴は建物の影に隠れて我々をやり過ごしていたんだ」
何でそんな事がわかるんだろう?
眉をひそめる私たちに、エドガーさんはマキナの画面を見せた。
中央に幾つかの光がともっていて、そこから離れた場所にある光が一つ、端っこの方を掠めていく。
「この光…もしかして」
「そうだ。動きが無かったから、犠牲者がもう一人いるのかと思っていたのだが……
 だが、この光点が奴だったんだ。そして今、東塔へ向かっている!」
「東塔って……! セージとリュカとタバサ、ヤバイんじゃないッスか?!」
ティーダの言葉に、金髪の男の子が目を見開き、尻尾をぶわっと逆立たせた。
けれど、ティーダとエドガーさんは気付いていないようだ。

「セージは大丈夫だが、リュカとタバサが問題だ。
 襲撃者がゲームに乗っていることを知らない上、奴と知人ときている」
「!! もしかして、襲撃者とはピエールさんのことですか?!」
眼を見開くプサンさんに、エドガーさんは大きく肯いた。
「はっきりと見たわけではありませんが、間違いないでしょう。
 元々このレーダーは、ピエールが私の仲間を殺して奪ったものです。
 それに緑色の体液を持つ参加者など、奴以外に考えられない」
断言するエドガーさんに対し、プサンさんは腕を組み、じっと考え込む素振りを見せる。
「魔物とはいえ、ピエールさんは立派な騎士でした。
 彼が無実の人間をこぞって殺すなど、信じ難いのですが……」
「リュカの知人のデールという青年も、リュカを襲い、同行していた女性を殺しました。
 この殺し合いは人を変えます。今、ここにある現実を見据えるべきでしょう」
加害者の名前は聞いていなかったけど、プサンさんが似たような話を喋っていた。
同行していた女性っていうのが、多分リノアさんのことなのだろう。
デールという人は放送で呼ばれていた。
ゼル君がこの事を知ったら、少しは気が楽になるだろうか?
そんなことが一瞬思い浮かんで、伝えられないことに気付いた。

「リュカの知人……人を変える……なら、やっぱり」
一方で、尻尾の男の子が小さな声で呟いた。
それで始めて、エドガーさん達は彼の様子に気付いたようだ。
「どうかしたのか?」
「いやな。あまり言いたくないんだけどよ」
そう前置きしてから、尻尾の男の子は黒髪の男の子を見やる。
「こいつ、フィンがさ。
 湖で魔物に襲われて、何とか逃げ出したんだけど行き倒れて、その時に夢を見たらしいんだ。
 ――つーか、実際に誰かに助けられて、教えてもらったんじゃないかって思うんだけどよ」
「あんまりよく覚えてないんだよね…ゴホゴホ。
 湖に落っこちて、ドーガさんが殺されて、必死で逃げてたら、風邪ひいちゃったらしくて」
フィンと呼ばれた男の子は、火照った顔を俯かせた。
風邪を引いたというだけあり、見るからに具合が悪そうだ。

「それで?」
「声を聞いたんだ。タバサとリュカって魔物使いが、魔物を操って人を殺させてるって。
 それにタバサは僕を襲った奴――ギルダーって赤魔道士の仲間なんだって」
フィン君の話が終わり、エドガーさんとプサンさんが「うーん」と唸る。
「確かにタバサとセージはギルダーという男と一時同行していたらしい。
 しかし、セージは『ギルダーは改心してビアンカに横恋慕していた』と言っていたが」
「おい。ビアンカってリュカの奥さんじゃねーのか?」
「そうらしいな。わざわざリュカが席を外している時に話してきたからな」
……変な本を持ってたり、いきなりナンパしてきたり、人妻に横恋慕したり。
こんなこと考えてる場合じゃないんだけど、『男の人ってみんなこうなのかな』と思ってしまう。
そんな私の心情を知ってか知らずか、エドガーさんとフィン君達は真面目に話を続ける。

「フィン君やリュカのような眼力は持っていないが、私が見た限りでは二人は白だ。
 父親も娘も疑わしい行動は取っていないし、むしろ信頼に足る人間だ」
「俺だって疑いたくはないさ。リュカには俺の兄貴を助けてもらったしな。
 だけど、俺の兄貴は殺し合いに乗ってたし、そのことをリュカも知ってた。
 それにリノアと、リノアのダチ。どっちもリュカの知り合いが殺したわけだろ。
 だから、もしかしたらって思っちまうんだ」
「疑わしい行動は取ってなくても、この状況そのものが疑わしくて仕方ないよ。
 それに他人を操って殺し合いをさせる人は……ゴホゴホ、誰よりも疑われないように行動するだろうし」
エドガーさんは眉間に皺を寄せ、腕を組む。
重たい空気の中、プサンさんが口を挟んだ。

「どちらにしても、今すぐリュカさん達に危害が及ぶ確率は低いでしょう」
「何故ですか?」
エドガーさんがプサンさんに視線を移す。
「ピエールさんはリュカさんに絶対的な忠誠を抱いています。
 ですから、忠誠心ゆえに殺し合いに乗ったということは考えられます。
 私は、リュカさん自身は潔白だと思っていますけれどね」

何か言おうとするフィン君達を手で制しながら、プサンさんは話を続ける。
「リュカさんは自己犠牲回復呪文の使い手ですし、自分のために他人が傷つく事を由としない人です。
 リュカさんの目が届く場所で殺人を行えば、彼自ら命を捨ててしまう可能性があります。
 よって、リュカさんが潔白であるならば、彼の目が届く範囲ではピエールさんも殺人を犯せないでしょう。
 逆に万が一にもリュカさんやタバサ嬢が黒幕であるならば、二人に危害が及ぶわけがありません。
 それに自分達の近くで殺人を犯されれば、彼らにも疑いが向けられるということは心得ているでしょう。
 ですから、ピエールさんを逃がし、何処か遠くに移動させようとするはずです。
 唯一問題が発生するとすれば、ピエールさんが自己保身の為に殺人に乗った場合ですが……
 それでもリュカさんがいるのならば、変心を見抜けるでしょうし、説得も可能でしょう」

「えーと、つまり、ピエールって奴を逃がそうとしたら怪しいってことッスか?」
「状況にも寄りますけどね。
 私が知るリュカさんは、家族と仲間は手元に置いて守ろうとするでしょうし
 部下が罪を犯したと知れば、その責を負おうと考える人です」
プサンさんの説明に、しかしエドガーさんが難色を示す。
「そうは言いますが、城内にはセージもいます。
 リュカ親子が白か黒かは置いておくとして、ピエールを放置しておけば彼に被害が及ぶ可能性が高い。
 捨て置くわけにはいきません」
「しかし、貴方とピエールさんは一度交戦しているのでしょう?
 貴方は厄介な目撃者として認識されていてもおかしくない。
 迂闊に戻れば、それこそピエールさんが暴挙に及ぶかもしれません。
 追い詰められた手負いの獣ほど、狂暴なものはありませんから」

「じゃあ、僕が様子を見てくるよ……ゴホゴホ」
「キミは止めた方がいいよ!」「大人しく寝とくッス!」「無茶するなよ!」
外へ出て行こうとするフィン君を、私を含めた全員が制止する。
顔を真っ赤にして、咳き込んでいて、頭をフラフラ揺らしている人を偵察になんて向かわせられない。
代わりに、尻尾君が手を上げた。

「オレが行くぜ。オレならリュカと顔見知りだし、ピエールの事も知らないフリができるからな。
 その代わりってわけじゃねーけど……悪いけどそいつ、どっかで休ませてやってくれないか?」
私は3階にあった、暖炉つきの部屋を思い出した。
「わかりました。ここの奥にある部屋に、毛布を運んで寝かせてあげましょう」
「ああ、頼んだぜ!」
「あ、その前に」
走り出そうとした尻尾君を、プサンさんが呼び止める。
「何か、魔力を持つアイテムを持っていませんか?
 用途や種別に関わらず、とにかく強い魔力がこもっていれば何でもいいんですが」
「んー。……強い魔力なら、これなんてどうかな」
そう言ったのは尻尾君ではなくフィン君だ。
彼が取り出した不思議な石を見て、エドガーさんは半ば呆れたように呟く。
「魔石…そんなものまで支給されているとはな」
「使い道もよくわからないし、ただ持っているだけじゃ意味が無いから」
フィン君がプサンさんに石を渡し、プサンさんはそれを尻尾君に手渡した。
彼の力を知らない二人とエドガーさんは、揃って困惑の色を浮かべる。
「説明は省略しますが、魔石を目印にした遠見の術だと思って下さい。
 その石があるところで起きた出来事は、私も知ることができます。
 あくまで一方的なもので、連絡は不可能ですが」
「一種の監視カメラのようなものか?」
「そうです。転移魔法や旅の扉を使われると見失ってしまいますがね。
 今日一日の間は有効だと思います」
「要するに、オレに何かあっても知らせることができるってわけだな。
 ありがとよ、オッサン!」

尻尾君は宙に放り上げた魔石をキャッチし、階段を駆け下りていった。
プサンさんはフィン君に肩を貸し、奥へ向かう。
ティーダがプサンさんを手伝おうとしたけれど、やんわりと断られた。
「この人のことは私に任せて、貴方達はアーヴァイン君達の所へ戻ってあげなさい。
 何か知らせたいことがあったからこそ、ゼル君もこちらに来たのでしょう。
 命を賭した思いを無にしては、彼も浮かばれないというものです」
その言葉に、ティーダはぐっと拳を握り締める。

「わかってるけどさ……でも、大丈夫なんスか?」
「隠し部屋の中ですから、城ごと吹き飛ばされたりしなければどうにかかなるでしょう。
 何でしたら、看病ついでに、錬金釜でも試していますよ」
プサンさんはぱちりとウインクして、フィン君とともに通路の奥へ姿を消した。


結局名前を聞かなかった尻尾君に、フィン君にプサンさん。
三人と別れた私達は城外に出た。
数時間ぶりに見上げた空は、すっかり夜の色に染められている。
「いいんスか? セージとリュカ達のこと」
ティーダがエドガーさんに声をかけた。
「仕方がないだろう。あの御仁の言う通りだ。
 私が出て行ったところで事態が悪化することはあっても、収拾できるとは思えない。
 それにリュカとタバサが潔白であれば、やはり仲間を庇おうとするだろう。
 デッシュ達の仇は取ってやりたいが……」
彼は一旦言葉を切り、ふう、とため息をつく。
「あの青年も馬鹿ではなさそうだし、セージはあれで意外とやり手だ。
 私情で仲間割れを起こすぐらいなら、二人の判断に任せた方がマシだろう。
 それに実際問題としてリルムのことも心配だ。大人びていてもまだまだ子供だからな」
「そうッスね……」
「最も、ティーダ君がユウナ嬢と二人きりになりたいというならば、野暮な真似はしないが」
「なななな、何でそんな話になるんスか!!?」
「冗談だ。私は彼氏がいようがいまいが気にしない性質なのでね」
「それは気にしろっつーの!」
「だから冗談だと言っているだろう」

ピエロみたいにふざけたやりとりを後ろに、私は城門を潜る。
草叢の中、視界の端に、横たわる彼の姿を見た。
「冗談じゃ……なかったんだね」
動かなくなってしまった彼に触れる。
昼間、もうダメだと諦めた時は、無事に帰ってきたのに。
今、こうして冷たい体を見せ付けられても、現実味が沸いてこない。

「ユウナ」
ティーダの手が私の肩に触れた。
「連れて行ってあげられないかな?」
肯いてくれる事を期待して問いかけてみる。
でも、ティーダは、そうしてくれなかった。
「野晒しじゃ可哀相だってのはわかるけど、今はあんまり時間ないんだって。
 どこかに隠しておいてさ、アーヴィンとリルム連れてきてから埋葬しよう?
 その方がゼルも喜ぶッスよ。何だかんだ言って、あいつらと仲良しだったから」
ああ、とため息が出た。
受け入れられてないのは私だけなんだ。
ティーダの中では、ゼル君は本当に死んでしまっているんだ。

ティーダがゼル君を背負って、茂みの奥に連れて行く。
城壁のそばの深い植え込みだから、一目では気づかれないだろう。
「行こう」
戻ってきたティーダは、そう言って私の手を握った。
夜だからだろうか。すごく冷たい気がする。
何ともいえない、もやもやした思いを抱いていると、ティーダは唐突に頭を下げた。
「あの……さっきはごめんな」
「え?」
「俺、ユウナと会えただけで嬉しくてさ。ユウナの気持ちとか全然考えてなくて。
 せっかく会えたのに、ユウナのことあんまり見てなかったよな。
 おまけにあんな本まで読んで……だからユウナも怒ったんだろ?
 ……ホント、ごめん」

違う。
確かにあの時感じたムカツキは、ティーダが言ったとおりの理由かもしれないけど。
今、私の胸で渦巻いている感情は、そんなんじゃない。

思い出にしがみついて生きることが正しい事だとは思わない。
でも……私が死んだら、ティーダは私の死を受け入れるんだろうか。
隠しておくとか、物のような言い方をして、物のように運んだりするんだろうか。
生きている人のために後回しにされるようになるんだろうか。
もしかしたらそれは仕方がないことなのかもしれないけれど。
キミがいなくなった時のことと、私がいなくなる時のことが頭に浮かんで、

 物になって、思い出になって、そうしていつか忘れられてしまうような気がして――

胸の奥が、ずきりと痛んだ。

【ティーダ(変装中@シーフもどき)
 所持品:鋼の剣、青銅の盾、理性の種、首輪、ケフカのメモ、着替え用の服(数着)、自分の服、リノアのネックレス
 第一行動方針:待ち合わせ場所に戻り、アーヴァインとリルムの無事を確認する
 第二行動方針:サスーンに戻り、プサンと合流
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【エドガー(右手喪失 MP1/2)
 所持品:天空の鎧、ラミアの竪琴、血のついたお鍋、再研究メモ、ライトブリンガー、盗聴注意メモ(書きかけ)、対人レーダー
 第一行動方針:リルムの無事を確認する
 第二行動方針:首輪の研究/アリーナ2を殺し首輪を入手/仲間を探す
 最終行動方針:ゲームの脱出】
【ユウナ(魔銃士、MP1/2、落ち込み気味)
 所持品:銀玉鉄砲(FF7)、やまびこの帽子、官能小説2冊
 第一行動方針:ティーダについていく
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
【現在位置:サスーン城→サスーン南東・アーヴァイン達の居場所へ】

【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス、聖なるナイフ、魔石ミドガルズオルム(召還不可)
 第一行動方針:リュカ達と合流し、様子を探って真相を確かめる
 第二行動方針:フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在位置:サスーン城の隠し部屋→東塔へ】

【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:風邪を治す/ジタンを待つ
 基本行動方針:仲間を探す】
【プサン 所持品:錬金釜、隼の剣
 第一行動方針:フィンの看病をする/ジタン達の様子を探る
 第二行動方針:首輪の解析を依頼する/ドラゴンオーブを探す
 基本行動方針:仲間を探しつつ人助け】
(*旅の扉を潜るまでは、魔石ミドガルズオルムの魔力を辿って状況を探ることができます)
【現在位置:サスーン城3F・暖炉がある部屋】

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最終更新:2008年02月16日 14:22
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