FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 393話


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第393話:ある日の授業風景と、生徒の現実


はい、みなさん。P.156、『擬似魔法の確立以前に行われた呪術・第2章』ですよ。
ほらそこ、寝てないでちゃんと開いて。テキストを忘れたなら隣の人に見せてもらいなさいね。

コホン。……えー、太古の昔から、強い願いは現実を変えることができると信じられていました。
『生贄の儀式』も、一般的には、願いの強さを示すためのものであると考えられています。
「何を犠牲にしてでも叶えたい願いなんです、だから神様叶えてください!」というわけですね。
けれども、古代における呪術の中には、他の意図や意味から生贄を用いていたケースもあったようです。
ある遺跡から発掘された石版にはこう記されています。
『時を残すは人の歴史、歴史を紡ぐは人の意志、意志を生み出すは魂なり。
 魂こそは時の源、大いなるハインに頼らずして、現世を変える唯一の力。
 数多の命を奪いて数多の魂を得た者、望むままに時を紡ぐ……』

……と、途中で終わってしまっていますが、言いたいことは何となくわかりますね。
非科学的かつ強引な考え方ではありますが、一部の人々はこうだと信じていたわけです。
その結果、その遺跡がある地域では、生贄として人間を捧げる呪術が誕生したのですね。

それにしても、想像つきませんよねぇ。一人一つしかない魂を、何個も何十個も集めて持ってみせるというのも。
仮に集めた人がいたとして、その人は本当に人間って言えるのでしょうかね……?
もはや別の、人を超越した存在になってしまっているような気がしますが。

……っと、チャイムが鳴りましたか。今日の授業はここまでにしましょう。
あ、どんな願い事があっても生贄なんて本当にやらないように。
バイトバグやケダチク、アルケオダイノスなら幾らでも倒して構いませんけどね。

ところで、スコール=レオンハートとゼル=ディンは今日も欠席ですか。
Seedとはいえ、任務中以外は勉学にも励んでほしいのですがねぇ。
……ん、何ですって? 寮や家にも帰っている様子がない?
リノアさんやアーヴァイン君、サイファーも昨日から行方不明だって、他のSeed達や風紀委員の二人が騒いでた?

……うーむ。
サイファーが一緒というのは解せませんけど、五人でどこかに遊びに行ったのですかねぇ……



「おいおい、風邪でも引いたのか?」
「っ、……そんなわけないだろ」
茶化すマッシュに、俺は鼻をこすりながら答えた。
さっきから何故かくしゃみが出る。
野ざらしで一晩過ごした程度で風邪を引くほど、軟になった覚えはないのだが……
こんな状況だし、ストレスで体調を崩しかけているのだろうか?
それとも、どこかの誰かやサイファー辺りが噂でもしているのか。
「気をつけろよ? 今の状況で風邪になったらシャレにならないぜ」
マッシュの言葉に、俺は内心でこそ頷いたものの、口では別の事を言った。
「大丈夫だ。熱が出ても気合でなんとかする」
もちろん本気で言ったわけではないのだが、マッシュはそうは取らなかったらしい。
眉を潜め、微妙な表情でこちらを見る。
(……俺は、今のを本気で言うような奴だと思われているのか?)
軽い失望と、釈然としない気持ちを抱えながら、俺は「冗談だ」と付け足した。

森は静かだった。『今だけは』で、『ここだけが』だが。
少し西のほうに戻れば墓がある。数十分ほど前に戻れるならば、ネズミ人間と男の死体を見る事が出来ただろう。
男の方がマッシュの知り合いというので、少しばかり時間を割いて埋葬してやったのだが。
二人とも殺されたのは相当前だったらしく、周囲には敵の気配も、生きている人間の気配も見当たらなかった。
そう、今は静かだ。一時だけの、場違いな平穏がもたらす静寂。
それが警戒心や集中力を緩めさせて、思考をどうでもいい方向へと飛ばす。

(あいつらがいたら、どういう風に切り返しただろうな)
ふと、そんな事が頭に浮かぶ。
六人一緒に行動していた頃の、他愛の無い会話を思い出しながら。
そしてそんなことを懐かしんだり、考えたりする自分に、思わず自嘲する。
(……変わったな、俺も)
昔は――Seedになってリノアと出会う前は、他人と関わる事すら避けていたはずなのに。
リノアの事だって、世間知らずでわがままなクライアントとしか思っていなかったのに。
気がつけば、思い出を懐かしむような仲間達がいて。
彼女は、俺の中で掛け替えのない存在になっている。

『あいつなんかよりも、リノアの奴を探してやれ。お前に会いたがってたぜ』

あのセリフを聞いた時は、サイファーも随分らしくない事を言うようになったと驚いたが……
あいつの言う通りかもしれない。
リノア。
この世界のどこかで寂しい思いをしているなら、俺を探しているなら、俺のことを待っているなら。
何よりも誰よりも先に見つけ出して、傍にいてやるべきだったのかもしれない。

だが、同時に思う。
これ以上、アーヴァインに罪を重ねさせるわけにはいかないと。
俺があいつを止めきれなかったせいで、ティナだけでなく、マリベルも死なせてしまった。
そして、恐らくは今も、あいつは誰かを殺すために動いているのだろう。

――二人の思い出作りの夜にぴったりの場所があるんだ。目印に古雑誌置いといたから、あんた達使いなよ――
――あんたの事情も気持ちもどうでもいいんだ。ただ、リノアのためにそうしてやってくれ――
――リノアには殴られたり蹴られたりしたからね~。こうなってくれると僕も痛い思いした甲斐があったってもんだよ――

(…………)

嫌になるほど浮かぶ思い出を振り切りながら、俺はマッシュに声をかけた。
「急ごう。日没までには、物資の補給と地形の把握を完璧に済ませておきたい」
マッシュは「おう!」と胸を叩き、俺に続いて足を速める。
目的地は既に話してあった。
カズスの町。
大陸の中央にあり、拠点から拠点に移動する際の休憩地として、最も人が集まることが予想される場所だ。
アーヴァインの能力と武器、計算高さを考えれば、目をつける確率は高いといえる。
もちろん、あいつ以外のマーダーも集まるだろうし、他のどの拠点よりも危険な場所だが。
それでもマッシュは嫌そうな顔一つ見せず、快く了解してくれた。
『他にアイツみたいな奴がいたら、そいつらもまとめてやっつけてやるさ』
がっはっは、と笑いながら言いのけた、その単純さには少しだけ呆れたが……
陽気で明快な態度に、心強さと頼もしさを覚えたことも確かだ。
そしてまた、幾ばくかの罪悪感も。

「すまない」
ぽつりと零した言葉に、マッシュが振り向く。
「ん? 何だよ、いきなり?」
「一方的に俺に付き合わせている」
そう答えると、マッシュは一瞬きょとんとした表情を浮かべ、ややあって破顔した。
「今さら何を言ってんだよ。仲間だろ」

出会って一日半の、性格だって掴みきってない相手を。
頼りになるとはお世辞にもいえない、10歳も年下の俺を、仲間と言って付き合ってくれる。
その気持ちは嬉しいし、この上なく有り難いものだった。
だが、だからこそ『悪い』と思ってしまう。
彼の仲間であるティナを殺したのは俺の仲間だから。仲間と言えた存在だったから……

そこまで思った時だった。
思考に沈む俺の意識を呼び戻そうとするかのように、急に木の葉がざわめいたのは。

「何だ、ありゃ?」
マッシュが目を細め、行く手の空を見つめた。
「なぁ、今、あっちで何か光らなかったか? それに、音も聞こえたような気がしたんだが」
マッシュが指で示したが、俺にはわからない。
空は相変わらず青いまま広がっているし、響いた音といえば風と木の葉と鳥の声ぐらいだ。
「気のせいだろ」
俺の返事に、それでもマッシュは納得がいかないように首を傾げる。
俺は軽く肩を竦め、歩き出した。
南東の方角から吹きつけた突風が、木の枝を揺らしながら俺の耳元を通り過ぎる。
その時だった。

 ――スコール――

すぐそばで聞こえた女の声に、俺は反射的に辺りを見回す。
けれども、マッシュ以外に人影らしいものはどこにもない。

気のせいだったのかもしれない。
甲高い、聞き覚えのない声だったし、そんな声を出せるような他人の姿も見当たらないのだから。
けれど、悲しげな声だった。
拗ねるようで、甘えるようで、寂しそうな声だった。
……そのトーンが、少しだけ、リノアに似ていた。

そのせいだろうか、ひどく嫌な予感がした。
認めたくはないけれど、決して否定できない可能性が、頭に浮かんだ。
それを振り切ろうと、俺は頭を振りながら目を閉じる。

なのに、また声が聞こえた。
今度こそ、はっきりと。間違いようもないリノアの声で。

 ――スコール……愛してる――

……俺は目を開けた。淡く儚い期待を込めて。
けれどもやはり、彼女の姿はどこにもない。
相変わらず静かな森。
木の葉の間から垣間見える、無意味に澄んだ平和な空。
正午過ぎの青い空。
あのワンピースと同じ、スカイブルーの空――

「どうしたんだ?」

心配そうなマッシュの声が、俺の意識を引き戻す。
そして、気付いた。
いつの間にか、涙が頬を伝っていることに。
「何でもない。ゴミが入っただけだ」
そんな嘘くさい言い訳で誤魔化しながら、俺は目をこする。

――ふと、思った。
魔女討伐班の六人が、仲間達がバラムガーデンに揃う日は……この先、二度と訪れないのではないかと。

『そんなことはない』と言って欲しかった。
ここにはいない、あいつらに。
サイファーに。
ゼルに。
アーヴァインに。
誰よりも、リノアに。

けれど、現実は優しくない。
俺の願いを叶えてくれるほど優しくない。

――風はいつの間にか止まっていた。
リノアの声も……もう、聞こえなかった。

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石、神羅甲型防具改
 レオの支給品袋(アルテマソード、鉄の盾、果物ナイフ、君主の聖衣、鍛冶セット、光の鎧、スタングレネード×6 )】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 吹雪の剣、ビームライフル、アイラの支給品袋(ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ)】
【第一行動方針:カズスへ向かい、アーヴァインを探す 第二行動方針:ゲームを止める】

【現在地:カズス北西の森・南部→カズスへ】