263話

第263話:壊れた音の直し方


ミッドガルの七番街スラムで経営していたBAR「セブンスヘブン」。
そこに置いてあった骨董屋から手に入れたジュークボックス。
デザインが気に入って、お値段もお手頃で、思わず視聴もせずに購入してしまったオンボロボックス。
17曲入りでお気に入りの曲は最後の方なんだけど最初は必ず一曲目の途中で最初に戻っちゃう。
何度も何度も一曲目の頭から繰り返す。そんな時は軽く蹴ってやると直るのだ。
なんとなくそんなことを思い出した。
あのジュークボックスは蹴っ飛ばして直ったけれど、今回のこれはどうやったら直るのだろう。

「夜が明けた。定刻だ…夜の闇に魂を彷徨わせた者達の名を告げる。
 「アレフ」「ゴルベーザ」「デュラン」「メルビン」「ミレーユ」
 「ラグナ」「エーコ」「マリア」「ギルバート」「パイン」
 「ハイン」「セリス」「クラウド」…」
「夜が明けた。定刻だ…………リス」「クラウド」…」
「夜が明け…………クラウド…」
「夜が…………クラ…」

何度も何度も繰り返す。何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も…。
心という名の盤に現実という針が突き立てられる。心が擦り切れるほどに。
壊れるまで繰り返し続けて、やっとその音は止まってくれた。
「ああああァアアアアアアアアアアアッ!!!!」
何も聞こえない。当然だ、壊れているのだから。何も聞こえる筈はない。
私自身の悲鳴でさえも…私には聞こえない。
「うああああああああああ」
愛していた。私の幼馴染。強がりで、でも弱さを隠せなくて。
弱くて、でもとっても強い人。愛していたのだ。
「あああッあああアアアあああ」
愛してくれた。臆病で本当のことを言い出せなかった自分。
強気に、懸命に偽っていた自分。そんな私を受け入れてくれた。
「アアアアアアアアアアアアアアア」
エアリスを殺した私。それを隠そうと、見ていた少女に銃を向けた私。
炎に炙られ、醜く爛れた私。

でもクラウド。私治ったよ?キレイな顔に戻れたんだよ?
それなのに、何で。何でよ!
エアリスなの?私に殺されたから、それでクラウドを連れていっちゃったの?
そんなのズルイよ。あなたは死んでたのに。
あなたを殺したのはセフィロスだったのに。
あなたもセフィロスも死んで、私とクラウドは幸せになれるはずだったのに。
なのに何であなたが生きてるのよ?

一瞬、思考が止まる。

……どうしてだろう。死んだはずのエアリス。死んだはずのセフィロス。
何だか羽虫がうるさい。
……今考エ事しテるんだから邪魔しなイデ……
魔女アルティミシア。あの魔女も死んだはずだと誰かが言っていた。
羽虫が耳元で怒鳴っている。
……うルさイ。
それなのに彼女達は蘇っている。
羽虫が私の肩を掴んで揺さぶる。
……ヤメテ。
そうしたのは、魔女の仕業?あの魔女の魔力が自らと死者を蘇生させた?
三匹の羽虫が私を取り囲む。
……黙レ。
だったら、だったらクラウドも生きられるはずじゃない。
アルティミシアの力ならそれができるはずじゃない。
アルティミシア様なら私のクラウドを助けてくれる。
アルティミシア様にあってクラウドを生き返らせて貰おう。

『今日は貴様等に殺し合いをしてもらう。逆らうことは許されない』
――ワカリマシタ、アルティミシアサマ――

『想以上に良いペースだな。その調子で裏切りと殺戮を繰り返すが良い』
――ワカリマシタ、アルティミシアサマ――

『隣にいる者を殺さなくては、いずれ殺される事になるということを…忘れぬようにな』
――ワカリマシタ、アルティミシアサマ――

『…期待しておこう。次の放送時間には、貴様の殺めた者の名を読み上げられる事をな…』
――ワカリマシタ、アルティミシアサマ――

――ナンデモイウコトヲキキマス。ダカラ、クラウドヲタスケテクダサイ――


覚醒する。
目の前には三人の男女。
ああ、あなたたちだったの。さっきからうるさかったのは。
羽虫だなんて思っててごめんなさいね。
ちょうど良かったわ。ああ、本当にちょうど良かった。
アルティミシア様の為に――『クラウドノ為ニ』――(ワタシノタメニ)――

死ンデチョウダイ


そして…手元から響き渡った銃声を彼女は人事のように聞いていた。

【ティファ 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 第一行動方針:目に映るものを全て殺す 基本行動方針:魔女にクラウドの蘇生を乞う】
【現在位置:東山脈中央部の森・川辺付近】

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最終更新:2008年02月16日 14:27
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