185話

第185話:苦悩


もう、どれだけこうしているだろうか。
早くこんなところ立ち去りたい。
でも、いつまでもここにいたい、いなくちゃいけない、という気もする。

大小二つの小山を見つめ、アイラは溜息をついた。
死ぬべきじゃない人達が、死んでいく。
この山の下に眠る二人も、そう。
その悲しみ。その怒り。
きっと、それを味わう事無く過ごせた日々は幸せだったのだろう、と思う。

この数時間のうちで、誰もが、何か辛い体験をしたと思う。
この、隣で無防備に寝ている少女も、きっと、そう。
でも、彼女の心の声に耳を傾け、自分の心と向き合わせたとき、気づいた。
彼女の瞳にはちゃんと残っていた。
――誰かを正しく愛する心が。
彼女に信用されているということより、彼女にそれが残っていることのほうが、嬉しかった。

思わず、上半身を後ろに倒し、上を見上げた。
綺麗な星空に、満月。
血が染めていないのはあそこだけなのかもしれないと、そんなことを考えた。

あの日、自分が新たな人生を歩み始めた夜。
仲間達と、川辺で同じように寝転がって月を見上げていた。
あの時もそう。綺麗な星空、満月。
気持ちいい空気の中で、見上げていた。
今は、どこか違う。
同じように見上げているのに。
どこか、違う。

「眠れないのか?」
急に後ろから声をかけられた。
振り返ると、そこにはマッシュが立っていた。
「マッシュ?スコールはどうしたの?」
二人を弔った後、男性と女性で寝る場所を変えようと提案したのはアイラだ。
この少女の不安を取り除く方法の一つだと思ったから。
「アイツは寝たよ。まだ若いから、しっかり寝ておかないと、な」
マッシュはちょっと寂しい笑いを見せると、アイラの隣にドッカと座り込む。

そう、マッシュも、スコールもそうだった。
目の前で、何も出来ないまま、大事な人の一人を失った。
――私も、そう。
――理不尽な罪悪感に苛まれる。

「ティナは、幸せだったのか…?」
マッシュは唐突に口にした。
「え?」
「いや。俺達には…わからないよな」
また、寂しげな笑いを見せる。

笑顔は子供っぽくて、怒った顔は熊みたいで…
きっと、そんな風だったのね?
でも、私が見ている彼は、泣き顔や悲しそうな顔、そして寂しげな笑顔だけ――

「そういえばアイラの話、全然聞いてないよな…?」
マッシュは不意にそんなことを聞いてきた。
「え…?」
「聞きたいんだ。アイラはどういう道を歩んで来たのか…」
マッシュは、アイラの目をじっと見ていた。
――彼の目に月が映りこんで、キラキラと輝きを放っていた。

「いいわ。話すとちょっと長いけど…眠れない夜にはちょうどいいわね」



マッシュが静かに立ち去った後、スコールは静かに目を開けた。
やがて、マッシュとアイラの話し声が聞こえてきた。

皆、それぞれに苦悩している。
マッシュはそれを、アイラと話をすることで紛らわそうとしているのだろう。
そしてアイラも、それに応じることで紛らわそうとしているのか。
…自分はどうか。
寝たふりをして、マッシュがいなくなるのを待っていた。
一人になりたかったのだろうか。自分でも気づかぬうちに。
――リノアがいたら。
やはり彼女を、心のどこかで求めている。
マッシュとアイラの会話に背を向け、もう一度目を閉じた。
眠れる気がしなくても、そうしていたかった。

【マッシュ 所持品:ナイトオブタマネギ(レベル3)、モップ(FF7)、ティナの魔石
 第一行動方針:アイラの話を聞く 第二行動方針:ゲームを止める】
【アイラ 所持品:ロトの剣、炎のリング、アポロンのハープ
 第一行動方針:マッシュに話をする 第二行動方針:ゲームを止める】
【ティファ(睡眠) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 第一行動方針:不明】
【スコール 所持品:天空の兜、貴族の服、オリハルコン(FF3) 、ちょこザイナ&ちょこソナー、セイブ・ザ・クイーン(FF8)
 第一行動方針:出来れば寝ておきたい 第二行動方針:ゲームを止める】 
【現在位置:東山脈中央部の森・川辺付近】

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最終更新:2008年02月16日 14:28
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