FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 517話


※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

第517話:Raise


周囲は人々の歩む音と怨嗟の声が混じった低い音、振り返れば夜を焦がす赤い光…
葬列のような人の流れ、少年もまたその一部として歩く。
どうして、戦火は自分たちを焼くのか?
なぜ、自分達の側には力が無いのか?
自分達の生活を破壊した狼藉者どもを殴り飛ばす事もできない拳を握り締め、どうしようもない無力を噛み締めて少年はただ歩きつづけた。
少し前を行く母親も隣を歩く妹も一言も発することはない。
地を這うように人々は黙々と進んでいく。
寄り添い歩く老夫婦の背中、我が子を背負った母の背中、持たざる者たちの背中―――
油の流れのように、無力な人々は歩いていく。




足元からの土と木を蹴る音が孤独に森を進んでいた。
少女を背負い約束の場所へと向かう男、ウィーグラフ。
ふと浮かび上がった少年時代の思い出を道連れに、ただ歩きつづけた。


森と山、それらに挟まれたほんの小さな開けた場所。
ラムザのために置いてきた地図に記した場所へはあとほんのわずか北上するだけの位置。
壮年の戦士と別れて以来一言も発することなく歩き通してきたウィーグラフは最後の準備を兼ね休憩を取る事にした。
ラムザに見せ付けるように誘拐してきた少女を静かに降ろし樹へと持たれかけさせる。
ウィーグラフはここまでの道中で彼女に関するわずかな記憶もまた思い出していた。
昼間、カズスの村近辺で六人のグループの一員であった少女。
宵の入り、その六人の一人であった白魔道士がピエールに追われていたことからおそらくグループごとあの時の襲撃に巻き込まれたのだろう。
その後の経緯は分からないが誘拐の直前には既に彼女のいた集団は半壊していた。
そして今はついに一人ぼっちだ。

カンテラの光に照らされたその身体は小さく、頼りない。
顔の右側、右目を覆い隠すように巻かれた包帯はその下の傷を推測させる。
地面に引かれるまま、力の入っていない手足はその無力さを強調して見せている。
そして参加者全てを戒める首輪が――子供につけられているだけより一層――哀れさを演出していた。
ウィーグラフは自分の首にある同じ物をそっと撫でる。
指先に触れた冷たい金属の触感に、自分達はゲームの駒である、という現実を再認識させられる。
無力な子供の姿に、そんなゲームの中でさえ立場の弱い人間がいる事実を再認識させられる。
力を持たぬ者は何をやっても夢を実現化することはできない。
いつか自分が口にした言葉を呼び起こしながら、ウィーグラフは今更“持たざる者”の現実を直視させられる皮肉をあざ笑った。
同時にこのような舞台を作り上げた魔女の残酷さを思い浮かべて嫌悪を感じた自分に気付き、いや、と頭を振る。
――上から見下す目線の残酷さについて自分に語る資格があるだろうか。
自身もまた目的のために利用できるものを駒として扱っているのだ、
だから闘争に夢中になっている人間には見えない視点を思い出したというべきであろう――
自分を納得させるように心中のモノローグを進めながら、ウィーグラフはもう一度無力な姿に目を落とした。
「力を持たぬ者は何をやっても夢を実現化することはできん」
諭すように、声に出してみる。目覚める様子はまだない。


ウィーグラフの前には複数のザックが並べられている。
先ほどから男の手はそれらの中身を取り出しては選り分ける作業を繰り返していた。
鞭に銃器、タンバリンにカードの束、奇妙な力を感じる黒い石。
取り出しては選り分ける、その繰り返しを機械のようにこなす手が、折りたたまれた紙をつかんで動きを止めた。
手にした紙の内容をもう一度、確かめるように眺める。
それからぶ厚い本のあるページを探してしおりのようにその紙を挟みこみ、ザックの一つへと放りこんだ。

『やはり、おまえはわかっていない。我々が剣を棄てない理由を!』
過去の記憶が浮かび上がったせいか。
作業の合間合間に、ウィーグラフはそんなことを思い出していた。
…骸騎士団は義勇軍として、戦禍の被害者として戦乱を鎮め平和を取り戻すために立ち上がった。
…骸旅団は革命軍として、使い捨てられた者の怒りを示すため反貴族を掲げて活動した。
…生き残ったその団長は神殿騎士として、単独の力の限界を悟り力ある組織の一員として動いた。
…そして今は、復讐に逸る剣が残るのみ。
まるで人事のような自己分析は次のように締めくくられた。
「結局は夢も理想も…いや波紋一つさえ残せていない。小さな男だ、骸旅団の団長とやらは」
少女のザックからたった4つぽっちのアイテムをつかみ出しつつ、嘲笑含みに吐き出す。
「何の夢であっても最後まで醒めずにいられたら幸せだったかも知れんな。
 ………今更意味のない話か」
盾を奪い銅製のナイフを懐に収め、何事も無かったかのように二つのザックの口を閉じる。
それからウィーグラフは再び少女を背負い北へ――約束の場所へとこの場を後にした。


湖畔。
身じろぎを見て取り、ウィーグラフは人質の目覚めを知る。
「「んー…………誰? ここどこ?」
寝起きの探る視線はウィーグラフ、そして辺りの風景と順に移り、月光を淡く照り返す湖面で止まった。
「……天国って結構地味なんだー。…結局あたしあのズンドー暴力女に殺されちゃったってコト?
 みんなはどうなっちゃったんだろう………ねーねー、もしかしておっさんも殺……」
くるりと振り返った小さな身体の目の前、一振りの間合いより近い程度の距離にさくりと剣を突き立てた。
「天国ではない」
言いながら、自分の首に手をやってカチンッ、と硬質の音を鳴らして見せる。
確認するように少女の手も己の首に伸びた。空いた手も、肉の実感を確かめるように身体に触れる。
「え、首輪………~~~?~~~~生きてる、じゃあここはどこ? なんでこー…!?」
にわかに混乱している少女を上から見下したまま、ウィーグラフはできるだけ威圧的に告げた。
「簡潔に、私は誘拐者でおまえは人質だ。なに、抵抗せねば危害を」
言葉途中で少女が飛び退り、武器でも探るのかこなれた動きでザックの中へと手を伸ばす。
その速さは予想外ではあったものの、行動自体はウィーグラフの想定範囲内。突き立てていた剣を振り上げる。
「リルム様を…ってあれ? ちょっと、待って、」
彼女が行動を為すよりも早く、そのわずか左側を下からの衝撃が突き上げた。
威嚇の狙い通り直接当ててはいないものの、バランスを崩した少女はしりもちをついて転ぶ。
遅れて帽子がふわりと地面にたどり着いた。
「鬼神の居りて乱るる心、されば人、かくも小さな者なり…。
 立場の上下を理解したら無駄な抵抗は止せ。原因がなければ危害は加えないと約束する」
「………勝手なことゆーな、この犯罪者! あんたなんか、似顔絵描くぞ!」
ウィーグラフには似顔絵、が何のつもりかは分からなかったが、戦力差を理解して口撃にシフトしたことはわかった。
それにしてもほとんどひるんだ様子の無いその態度、なんとも肝の据わっている――
などと場違いな感心さえしながら、聞き流す。
と、突然悪口が止み、さらにはトーンダウン。
「う…ぐすっ…リルム、こんなところで一人寂しく死んでいくんだ…
 リルムなーんにも悪いことしてないのにぃ…えーん、えーん……」


ウィーグラフの中につい本気で泣かせてしまったかという戸惑いがわずかに浮かぶ。
が、根底の冷静さまでがそれに惑わされることはない。
「いつまでも泣いていてくれて構わないが、一つ忠告する。
 こういった局面でそのような態度は相手の逆上を招くこともあることを覚えておくといい」
「うー……」
どうやら偽装だったらしい。
「あとでぜーったい似顔絵描いてやるからな! このー、覚えてろ!」
一瞬でも泣かせてしまったか、などと考えた男は苦笑するしかない。
本当に状況を理解してるのか疑うくらい、敬服に値する程の精神的なタフさ。
その強さ、タフさの向こうに子供の無知と世間知らずを垣間見て、ウィーグラフに生じる小さな苛立ち。
本当のところはただ無力では終わらないと夢見ていたいつかの少年を垣間見たからかも知れない。
ともかくそれが、ウィーグラフに質問をさせた。
「……お前はこの世界、この遊戯、この状況下においてもまだ生きる…
 いや、抵抗する気があるとでもいうのか?」
「あったりまえでしょ! みんなでケバケバおばさんをぶっとばして帰るんだよ!
 リルムがいないと寂しくて参っちゃうジジイをほっとけないし!
 あと、お前じゃなくてリ・ル・ムだからね」
「なるほどな。しかしたとえ独りになっても同じことが言えるか?」
「ひとり……?」
「そうだ。
 求めたものは得られず、仲間を失い、自分の限界を突きつけられてなお、そんな強気でいられるか?」
想像を促すように、圧力をかけるように見下ろしてやりながら言葉を続ける。
「そうなれば、夢も理想も何も実現できない。あとは無惨なものだ!
 恐怖に怯えて一人だけ生き残れるという甘言に擦り寄るか。
 希望を矮小化してせめて生き残ることを正当化していく路を選ぶか!
 それとも、感情を糧に大事な仲間の仇を追い続ける復讐鬼を選ぶかッ!」
「うるさーいッ! ひとの仲間を勝手に殺すんじゃねー!
 そんな最悪なことばっか考えてるから犯罪者なんかになるんだ、このネクラ!
 やってみる前からあきらめちゃってどーするんだよ!」


思わず失笑してしまうほどにどうしようもなく青く、幼い考え方だと思った。
神殿騎士だった頃ならそれこそ反射的に罵倒していただろう。
けれどあの頃の少年やミルウーダだったら、きっと少なからず共感を覚えていただろう、とも思う。
では、今は――――?
返答を探るように見上げる視線に気付き、我に返る。

固くなった空気をぶち破るように。
ウィーグラフは楽しさをみじんも感じない居丈高な笑いを浴びせかけてやった。
「ハッハッハ、そう思うならやるだけやってみるがいい。
 さんざ罵ってくれた礼だ、私からも骸旅団団長の汚名を贈ってやろう」
「団長? ムクロリョ団?」
「その骸は戦火に焼かれた骸、一度ならず地を這いずった者達の集う旗……だった。
 だが本質は叶いもしない夢の笛の音に踊らされていただけだッ!
 ふふふ、愚か者にはぴったりだと思わんか」
「難しい言葉並べればコドモにはわからねーだろとか考えてるな!
 要は悪口でしょ! いらないッ!」
「いらないとは我侭な。悪名をえり好みできるなどとは聞いたことも無いが――
 好きにすればいいさ、リルム団長。
 さて無駄話もこれまで。どうやら――時間だ」
視線をそのままに、男は後背にざわめいた気配に注意を向けた。
ゆっくりと二人の間の地面に剣で線を引き、いくらか温んでいた雰囲気をがらりと変えて鋭く冷たく警告した。
「もう一度言っておくが、邪魔立てせねば一切危害は加えない。
 逆に干渉する気なら遠慮なく戦闘に巻き込む。いいな」


持ち上げた剣を、威嚇に見せつけた一撃の鋭さを想起するようにすらりと下ろしてみせ、
それから既に目で判断できる範囲内に入っていた宿敵の方へと向き直る。
「来たぞ、ウィーグラフッ! 僕らの因縁にその子は関係ない!
 まずはその子を解放しろッ!!」
あたりに、どうしようもなく男の敵意を呼び起こす声が届いた。
この不思議な復活の生における決着の時がまさに来ようとしているのだ。
一瞬にして燃え盛った闘志が不倶戴天の相手との対決に一歩を踏み出させる前に、
けれど思い出すようにウィーグラフは振り返った。
懐を探り、おもむろにリルムへ向けて取り出した小ビンを放り投げる。
「それは餞別に差し上げよう、団長。
 それから、少しでもあがくつもりならエドガー=ロニ=フィガロという人物を探しだすがいい」
言い終わるやいなや、ウィーグラフは振り切るように地を蹴る。
後ろでリルムが何か叫んだようだが、もはや雑音でしかない。
宿敵へと近づいていく一歩一歩ごとに、激情が溢れ出してくる。
いつかのように整った舞台の上で、ウィーグラフはその気持ちをぶちまけるように叫んだ。
「“持たざる者”の気持ち、境遇ッ、少しは肌で理解したかッ、実感したかッ!
 思えば今我々は初めて対等な関係にあるのだッ!
 さあ、決着をつけよう! あの娘を返して欲しくば私を倒してからにするがいいッ!!
 いくぞッ! ラムザ=ベオルブッッ!!」

【ウィーグラフ(HP2/3)
 所持品:ブロードソード プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭、暗闇の弓矢 
 ブラスターガン 毒針弾 神経弾 エリクサー×4 首輪 英雄の盾、ブロンズナイフ
 第一行動方針:ラムザを討つ
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】

【リルム(HP1/2、右目失明、魔力消費)
 所持品:絵筆、祈りの指輪、不思議なタンバリン、エリクサー 
 スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪 研究メモ
 第一行動方針:戦闘を止める? 】

【ラムザ(ジョブ・アビリティ不明)(HP4/5、MP3/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ウィーグラフからリルムを取り戻し、決着をつける
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在位置:湖南岸部の東端】