FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 540話


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第540話:足りなかった時間を追い求めて


あふれ出る激情は復讐の剣を再び振るえる喜びや、憎しみ一色の燃えるような感情ではない。
もし、最初の日の早いうちにラムザと見えることがあればウィーグラフはただ紅蓮の復讐心を振るっただろう。
けれど、二日目も時が尽きじきに三日目の朝を迎えようという時点での決戦に向かうウィーグラフの心中にあるのは
戦いの苦味を知った後でなお勝利と敵兵の血に飢え続けたあの頃と同じ、乾いた激情だった。
けして戦場に姿を現さない『上』の高みを見上げながら、命のやり取りの中にすべてが矮小化させられる日々の情念。
しかし認めない、ウィーグラフはそんな自分を認めない。
選び取った道を完遂するために、ラムザを殺すために、俯いてきた時間を肯定するために。



襲来を待つように見せていたラムザが、聖剣技の間合いを絶妙に見切った距離から一転して突撃してくる。
三度も戦ったのだ、それくらいはやってくるか――見事な見切りに先を取られ、口元をかすかに苦々しく歪めた。
すぐにウィーグラフは足を止め、突撃を受け止めてから仕留める方針へと一瞬で切り替える。
金属の弾けあう音、夜闇に火花が散る。
ブレイブブレイドを押し返し、いざ反撃の狙いを定めんとしたウィーグラフはだが自分の目を疑った。
通常であれば剣の間合いにいるはずのラムザは予想外の至近距離まで近づいてきていたからだ。
そして一瞬どこを狙うべきかを思案したウィーグラフの目の前で、その足が空中を踏む。
「何ッ!?」
咄嗟に直接斬るべきと判断して騎士剣をけさがけに振り下ろすが――
何もない空間を階段を二段飛ばしで上がるように進んだラムザはその軌跡の上を、わずかにかわす。
「宙を踏む、だとッ!?」
今やウィーグラフの肩の真上、身長より高い位置をラムザが歩んでいた。
振り返り見上げた目線が、文字通り見下ろすラムザの視線と交錯した次の瞬間、ラムザの身体が沈む。
高台から飛び降りるように頭上から背後へまわるラムザに焦燥しつつ、裏拳の要領で反転しながら剣で薙ぎ払った。
再びぶつかり合う剣と剣、しかしウィーグラフにとってはギリギリで弾いたに過ぎない。

動揺したまま不利な体勢を立て直すのと、攻撃位置を確保するための次のラムザの移動を把握することを両立することは困難で、
ともかく避けることを優先したウィーグラフが至近距離を離脱するより早く、腕を剣で強打される。
鈍く広がる痺れを恨みながらも地面を転がり立ち上がった目の前、
見事に聖剣技の間合いよりわずかに遠い位置に、不動の構えでラムザが立ちはだかって……いない!
「貴様……ラムザッ! どこへ消えた!?」
予想外の連続に動揺したウィーグラフがラムザの意図を読み取るまでにはわずかな時を要した。
そして、それは致命的な間隙。
(上か!!)
闇空から急降下してくる剣の一撃を、防ぐのはもう間に合にそうになかった。
回避に身をよじるのが精一杯、そんなウィーグラフの肩へ予想外のラムザの斧のような蹴り足が降ってくる。
「ぐぅぅッッ!」
(剣でなく脚だと、これは鎖骨を……ッ)
さらに、痛みに空気を吐き出した肺に再び酸素を取り込むより早く。
あまりにアクロバティック、あまりの高難度のため力自体はたいして乗っていない一撃ではあったが、
蹴りを受けた同じ箇所へ刀身自体の重さを利した峰打ちの要領でさらに打撃が加えられる。
ウィーグラフは、肩から腕、胸へと連なる骨がみしりと軋む音を聞いた。
(馬鹿な、これほどまで一方的に? ……認めるか、終われるかッ!)
なんとか手放さず握った剣を杖代わりに、どうにか倒れずに踏みとどまる。
気力を振り絞り、懐に持っておいたエリクサーを口にする。
秘薬の力により応急で骨を継ぎ痛みを押さえつけ、燃えるような目で今度は正面より迫るラムザを睨みつけた。
ここは何とか凌いでみせる――強い意志で、消えきらない疼痛に構わず無理矢理に剣を振るう。
「大気満たす力震え、我が腕をして 閃光とならん! 無双稲妻突き!」
ラムザを狙うのではなく、前面に楯代わりに放つ苦し紛れの攻撃。
それでも、流れるように続いたラムザの攻撃をなんとか止めることはできた。
巻き上げられた土ぼこりがおさまり、しっかり安全距離を保つラムザと対峙する。

「潔く負けを受け入れろ、ウィーグラフッ!」
「笑わせるなッ! 見よ、貴様の剣はまだ私にかすり傷程度しか届いていないッ! まだ私は終わらんぞッ!」
「聖石の力に頼り、過去ばかりを引きずり、変われないお前には……僕は倒せない」
「相も変わらずよく喋るッ! そんな言葉で私の執念が消せるはずもないッ!」
叫びながら、ウィーグラフは打ち込まれた腕が異常な疲労感に蝕ばまれていくのに気がついた。
打ち込まれた技の名はパワーブレイク、戦闘力を削ぐ活人の戦技。
たとえエリクサーの力を持ってしても、こうした潜在的ダメージの類までは回復できない。
じわり、と自分が追い込まれている予感に襲われるものの強気を張ってそれを吹き飛ばす。
「決着をつけるぞ、ラムザ=ベオルブッ!」
「まだ、わからないかッ!」
間合いを詰めるべくウィーグラフが動くのと同時に、ラムザもまた動き出した。
射程距離ぎりぎり、無双の一撃を放つべく狙いを定めようとして、ウィーグラフは再び敗れ去る。
剣を振り下ろすより先んじて、標的が消失した。
(ショート・ジャンプだと――ッ)
ついさっき、上空からウィーグラフを襲った攻撃の正体。
何故これが読めなかったかと問うあいだに、誰もいなくなったエリアへと無双稲妻突きが空砲の雷鳴を響かせる。
それでも、動揺して見失った前回と異なり今回は攻撃のネタがわかっているだけ対応可能だ。
狙いを付けづらくするために身を縮め、上方に対し楯を構えて防御に専念する。
だが、攻撃は来ない。代わりにごく近い位置へとラムザが降下、着地する。
「囮――だとッ、小癪なッ!」
音と気配から、ラムザがいる方向を察知、攻撃指定の範囲のみを頭に描き。
振り向きざまに聖剣技を放とうとして、ウィーグラフはラムザが『宙を踏んだ』その意図を知る。
再びウィーグラフの頭上へ向けて空中を登っていくラムザ、自分と重なるようなその位置は――

(そんな封じ方の発想が、あるか――ッ!)
それは汚れなき精神が生み出す技の加護か契約か、聖剣技は使い手自身に危害を加えられるようにはできていない。
いうなれば超至近距離、ウィーグラフを巻き込みかねないその位置には、聖剣技は届かない。
「おのれッ、ラムザァ――ッ!」
「ウィーグラフッ! アグリアスほどの信念も篭らない、雷神の極みにも向かわないッ!
 そんな中途半端な剣は、僕にはけして届かないッ!」
ほぼ真上、空中の見えない足場から落下の勢いを加えてラムザの剣が落ちてくる。
激突、次の瞬間にはブロードソードは手を離れて宙を舞い、肩には傷が刻み込まれていた。




片膝を突いたウィーグラフを凝視しながら、ラムザは一切の優位を誇らない。
空中歩行を用いた常識外れの接近戦と、相手の射程ギリギリから先を取るショートジャンプを組み合わせ
聖剣技を封じきってここまでウィーグラフを追いつめた。
それはすべてかつて苦しんだ経験と、復讐に逸りウィーグラフが冷静さを欠いていたおかげ。
だが、好機があったにもかかわらずラムザの剣はまだウィーグラフに生き延びることを許している。

ウィーグラフとの決戦へ向かう道すがら、ラムザはただ二つのことを考えていた。
一つは実戦、もう一つは、精神面での戦いについて。
実戦においては見事に答えを出してみせたラムザであったが、精神面においても一つの答えを出していた。
命は奪わず無力化し、とにかく話し合う。それからのことはその後決める。
思えばすべての因縁の始まりは自分がウィーグラフの妹、ミルウーダの話を聞いてやれなかったこと。
とにかく足りなかったのは会話、その一念がある。
因縁は捩れているがラムザにとってウィーグラフは理解――いや、部分的には共感さえできる相手なのだから。
二度と叶わぬはずであった生きた彼との会話ができるという奇縁、奇跡がここにはあるのだから。
だから、説得する。それがラムザにとって真の勝利。

暗黒の湖に立つ水音、激昂のあまりに発せられる不明瞭な絶叫、そして魔法の光。
剣を失ってもウィーグラフがまだ何か仕掛けてくるのは予期していたが、
自分とウィーグラフ双方を包む魔法は予測の外。
かけ手は人質のあの子……リルムだろうが、しかし相手はあくまでウィーグラフ。
感覚に比べて身体の反応が鈍くなる感触からそれがスロウだと判別、
同時にウィーグラフの手から光の帯が伸びていくのを見極める。
鞭のようにしなるその光はしかしやはり使い慣れぬのか、わずかに外れて地面をたたいた。
素人の鞭は戻りが遅くなる――だから、ラムザは一気に間合いを詰めることを選択する。
鞭先が引き戻され次の攻撃に移れるようになるより早く、飛び込んでいく。
狙うは強打、次の一撃で気絶か行動不能に追い込むつもり。
しかし、結果として勝負を急いだことは裏目に出る。
とはいえ、そもそもの原因は相手に切り札を出させるだけの余裕を与えてしまったこと。
これを失策といわずしてなんというか。そしてミス一つから勝負の流れは変わっていく。

ウィーグラフは鞭を捨て、楯さえ捨てて、半身を自ら攻撃にぶつけるように突っ込んできた。
隠すように、守るように引いたその右手に握られているのは。
(銃だってッ!?)
何もかも、運動法則から逃れられずに事は進んでいく。
もはや止まることもできずラムザの剣は差し出された左肩口を激しく叩いた。
ウィーグラフの銃は押し付けるようにラムザの身体へ伸び、打撃を身に受けるのにわずかに遅れて引き金を引かれた。
衝撃でぶれた銃口はしかし諦めず弾を発射し、その一弾は剣を持たない方のラムザの腕を直撃する。
視界の中で崩れ落ちていくウィーグラフがゆっくりと歪んでいく。
(気絶したか、あるいは……死んだか)
ラムザに判断する時間はない。
打ち込まれた神経弾の効果が痛覚や判断力もろとも意識を奪っていき、ラムザは眠りへと落ち込んでいった。



「…………」
西に傾いた月の光を照り返す湖畔にちょこんと座り、一人遠くの水面を眺める少女。
少女、リルムは――怒っていた。
あの時、止めるつもりでスロウガをかけたのに、彼らは完全にリルムを無視してぶつかりあって、挙句の果てに相打ち。
ナイーブな乙女の願いを踏みにじられたことにとにかく怒っていた。
まあ、とりあえずお仕置きはしておいたし、あれからだいぶ時間が経っているからかなり収まっているのだけれども。
「……はあ。あたしこんなとこでなにしてんだろ?」
確かに相打ちではあった、が二人は死んだわけではなかった。
魔法でとりあえずの治療はしておいたけれど、二人を連れては動けないし置いてくわけにもいかない。
そもそも、リルムには森を突っ切ってキャンプまで帰れる自信がちょっとない。
とりあえずいまできそうなことは待つことだけ。
「……ボウシの兄ちゃんも元団長も、早く起きないかな……」
身体の向きは変えず、首から上だけを回して背後を振り返る。
そこには、二匹のカッパが少し離れて転がりすやすやと眠り続けていた。

【リルム(HP1/2、右目失明、魔力消費)
 所持品:絵筆、祈りの指輪、不思議なタンバリン、エリクサー×4 
 スコールのカードデッキ(コンプリート済み) 黒マテリア 攻略本 首輪 研究メモ
 プレデターエッジ レーザーウエポン グリンガムの鞭、暗闇の弓矢 
 ブラスターガン 毒針弾 首輪 英雄の盾、ブロンズナイフ
 第一行動方針:どっちかが起きるのを待つ 】

【ウィーグラフ(HP1/4、カッパ、気絶)
 所持品:なし
 第一行動方針:ラムザを討つ
 基本行動方針:生き延びる、手段は選ばない/ラムザとその仲間を探し殺す(ラムザが最優先)】

【ラムザ(ナイト、アビリティ:ジャンプ・飛行移動、カッパ、睡眠)(HP3/4、MP3/5)
 所持品:アダマンアーマー ブレイブブレイド テリーの帽子
 第一行動方針:ウィーグラフからリルムを取り戻し、決着をつける
 最終行動方針:ゲームから抜ける、もしくは壊す】

【現在位置:湖南岸部の東端】
※ブロードソードは湖の中、神経弾は撃ち尽くしました。