FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 133話


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第133話:救いと偽り


死にたい。
深い闇の中から意識を取り戻した時、思ったことはそれだった。
生きていても、彼には……クラウドにはもう会えない。
会う資格を無くしてしまったから。こんな醜い顔、見せたくないから。
だから私は、勇気を出してナイフを拾い上げて、自分の首筋に当てた。
でも――
「何やってるのっ!?」
私が刃を滑らせようとしたとき、『彼』が現れた。
彼は私の手からナイフを奪い取ると、少し離れた地面へ放り投げる。
「ねぇ、どうしたんだい? 一体何があったの?」
手を握り締められたままそう聞かれたけれど、私は答えず……代わりに顔を上げた。
あまりに醜い、焼けただれた顔に、彼は眼を見開く。
でも、視線を逸らそうとはしなかった。まっすぐ私を見て、彼はこう言った。
「……痛いかもしれないけど、少し大人しくしてて」
それから彼はコートのポケットからハンカチを取り出し、水で湿らせて、私の顔に当てた。
「ここまで重度の火傷だと効くかどうかわからないけど、何もしないよりはマシだと思うからね」
私は彼をじっと見た。それで何を勘違いしたのか、彼はすまなさそうに頭を下げた。
「ごめんね。僕が、回復魔法とか使えればよかったんだけどね……」
「――ッ」
たまらなかった。
何でこの人は、私みたいなやつに優しくしてくれるんだろう。
私には、そんな価値なんかないのに。
「……ほう……て、おいて……」
ハンカチのお陰で痛みが多少和らぎはしたけれど、口は思うように動かない。
でも、喉の奥から声を出すことはできた。
「わたし……なんか、ほう…ておいて。優しくしな…で。
 わたし、エアリス、殺しちゃ…た……もう、死ぬ…かないよ……
 クラウドに…こんなかお、見せられな…よ……生きる価値、ない…」
発音は不明瞭で、内容は無茶苦茶で、聞き取りづらいなんてものじゃなかったと思う。
それでも、彼は全て察してくれたらしかった。
「だからって、自殺したって誰も救われないよ」
悲しげに目を伏せ、彼は静かに言った。

「自殺ってのはね、逃げることと同じなんだ。
 死ねば、確かに罪悪感から解放される。でも、償ったことにはならないよ。
 君が本当にその人達のことを思うなら、辛くても生きなくちゃだめだよ」
彼は私の肩に手を回し、軽く後ろ髪を撫でた。子供をあやすように。
「死んでしまった人の分まで生きるんだ。今、生きている人たちのために生きるんだ。
 罪を償うっていうのはね、そういうことなんだよ。
 それに会わせる顔がないだなんて決め付けないで。
 全てが君のせいばかりじゃない。きちんと話せば、わかってくれるよ」
それから彼は、ふと、何かを思い出したように私に尋ねた。
「ねぇ。クラウドって人、もしかしてこの会場にいるのかい?」
私は首を縦に振る。彼は少し迷った様子を見せ、やがて口を開いた。
「そうか……なら、一つ、彼のためになりそうなことがあるよ」
(クラウドのためになること?)
「向こうの山の中にね、このゲームに乗った連中がいるんだ。
 黒髪の女剣士と、金髪の格闘家と、黒尽くめの男の三人組だけど。
 奴らは強い。クラウドさんって人が連中に見つかれば、殺されてしまうかもしれない」
(クラウドが、殺されるかもしれない?)
有り得ない。けど、そうなったら? 嫌だ。そんなのは嫌だ。
「でも、君には拳銃がある。見つかる前に不意打ちすれば、きっと倒せるよ。
 そうすれば、奴らにクラウドさんが殺されることもなくなる。君が、彼を助けたことになる」
(私が、クラウドを助ける……)
「僕は、この先の村に仲間が待ってるから、一緒には行けないけど。
 何もしないで死ぬぐらいなら、彼のためにがんばってみたらどうかな。ね?
 そうすれば彼も――エアリスだっけ? その子もきっと許してくれるよ」
彼はにっこり微笑み、ナイフを拾ってくれた。ウェーブのかかった茶色の髪が優しく揺れる。
それがエアリスを思い出させて、だから、私は彼の言葉を受け入れる気になれたのかもしれない。
私はゆっくり頷いてナイフを受け取った。それからもう一度頭を下げて、走り出した。
――もし微笑むことができたなら、一緒に言いたい言葉があったのだけれど。今の私には言えなくて。
でも、またどこかで会えたなら、その時こそ必ず伝えようと思った。
「ありがとう」、と。



「ふー。やれやれだねぇ」
少女が去った森の中で、青年は一人肩をすくめる。
その表情には、先ほどまでの優しさなど微塵も残されていない。深青の瞳は冷徹な輝きだけを孕んでいる。
(上手く信じ込んでくれて助かったね。僕も手荒な真似をしないですんだ)
月光に照らされたコートの右袖口が、鋭いきらめきを放つ。
もし彼女が青年の企みに気付いた素振りを少しでも見せれば、袖の中に仕込んだナイフで首を掻き切るつもりだった。
肩を抱いて髪を撫でたのも、実のところ逃げ場を封じるためでしかない。
全ては偽りだ。話の内容も、彼女に見せた優しさも。
(銃声と叫び声が聞こえたから、危険を承知でこっちに来て……
 いきなり自殺を始めたぐらいだから、きっと精神的に参ってるんだな~ぐらいには思ってたけど。
 付け入りやすい理由でよかったよ。
 もー。スコールとユカイな仲間たちの相手なんか、まともにしてられますかっての~)
上手く行けば、スコール達はこれで片がつく。失敗しても足止めにはなる。
その間に自分はレーベに行って、回復用品を仕入れておこう。あるかどうかはわからないが。
服も着替えた方がいいだろう。一目でそれとはわからなくても、臭いはする。最初に殺めた少女の血の臭いが。
それに体力も限界に近い、なにせ一気に山を駆け抜けてきたのだ。
少しでも暖かい場所で食事を取りたい。眠らなくてもいいから休みたい。それが彼の正直な気持ちだった。

ともかく、こうして少女は生きる希望を見つけた。そして青年は『時間稼ぎの駒』を手に入れた。
どちらにも不満はなく、問題もない。
あるとすれば――方向性が誤っているということだけで、それすら二人にとってはどうでもいいことでしかなかった。

【ティファ(顔面に重度の火傷) 所持品:コルトガバメント(予備弾倉×5)、エアナイフ
 行動方針:スコール達を倒す】
【現在位置:レーベ東の森中央付近→南の山岳地帯へ】

【アーヴァイン (HP4/5程度、疲労中)
 所持品:キラーボウ 竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 エアナイフ  グレートソード ミスリルの小手 食料+ランプ等(マリベルから回収)
 第一行動方針:休息を取る 第二行動方針:ゲームに乗る】
【現在位置:レーベ東の森中央付近→レーベの村へ】