19話

第19話:占いネコ


暗くてジメジメした洞窟を、リュカは一人でサクサク進んでいた。
もちろん警戒は怠っていない。洞窟探索など慣れたものだ。
ただいつもと違うのは、命を預けられる仲間がいないことと、洞窟の陰に潜むのが魔物ではなく、
このゲームの参加者だ、ということぐらいだろうか。
(あっ、でも参加者に魔物もいた気がする・・・)
頭の隅でそんなことを考えながら、足は止めない。
動けばゲームに乗っている連中に見つかる危険もあるが、地理を把握しなければ逃げるときが困る。
それに、早く家族や仲間達、親友に再会したい気持ちが強かった。

角を曲がると、袋小路だった。
頭の中に描いた洞窟の略地図に×をつけ、そのままそこを去ろうと踵を返す。
と、その時、リュカはなんとも奇妙なものを見た気がして、もう一度振り返った。
震える王冠が浮かんでいる?
正確には、岩陰に隠れたのに、頭の上の王冠だけ隠し切れなかったというところか。
「あの、その王冠は脱いだほうがいいよ。光って目立つし」
とりあえずそう言ってみると、往還はビクッと揺れて、すごすごと岩陰の中に消えていった。
王冠さえなくなれば、そこに誰かがいるとはわからないのだが・・・。
「ねぇ、俺の他に、ここには誰か来なかったかい?」
とにかく、誰かいるなら聞いてみるべきだろう。
怯えて隠れているなら、ゲームに乗っている訳ではなさそうだし。
「あんさん人捜しか?こんなけったいなゲームの中で、なんでそんな危険冒す気になるん?」
「うん。まぁ、大切な人たちだからね」
「ボクはここに来てから、誰も会わんかったけど・・・ちょっと待ってぇな」
そういわれて少し待つと、何と岩陰から王冠をかぶったネコが出てきた。
「・・・君、魔物?」
「失礼やなー。ボクは占いマシーンのケット・シーや。
 兄さんいい人っぽいから占ってやろ思たんに、やめましょか?」
「あ、ゴメン。僕はリュカって言うんだ。捜しているのは家族とか仲間とか、親友なんだけど」
「ふうん、リュカさんか。ほな、占ってみましょか」

ケット・シーがそういうと、今度は袋小路のずっと奥、最初ケット・シーが隠れていた岩より
ずっと大きい岩陰から、よくわからないピンクのデカブツが動き出した。
リュカにはこいつこそ魔物ではないかと思われたが、ケット・シーが素早くそいつの頭上に納まり、
次いでケット・シーがそいつの全身を揺り動かしだすと、攻撃するのもままならず、
ただじっと事態を静観するのに努めた。
「出ましたでーって、あっ、アカン。これ間違いや。前に使うた分残っとった」
「出たって、占い、なんて出たのさ?」
 ピンクの物体、デブモーグリ人形から出てきた紙を、リュカはケット・シーから掠め取る。

『求めれば必ず会えます。しかし、大切なものを失います』

紙にはそうとだけ、書かれていた。
「あー、ボクの占いって外れるんで有名やから、気にせんほうがいいですよ?」
ケット・シーの気休めを聞き流すリュカの手は、占いの結果を握りしめて震えていた。
「ありがとう。とりあえず急げってことだけはわかったよ」
 リュカにとって、最も大切なものとは家族だ。求めて、会えて、それで失っては元も子もない。
早く探し出して守らなければ・・・。
リュカはそのままそこを後にしようとする。それをケット・シーが遮った。
「ちょい待ちい。占い屋ケットシーとしてはこんな占い不本意なんです。
 きっちり見届けんと気持ちがおさまらん。一緒に連れてってもらいますよ」
リュカは立ち止まり、まくしたてるケット・シーをまじまじと見つめる。
ケット・シーはなんだか気恥ずかしくなった。
「本当は、一人でここに隠れとるんも怖いから、連れてってほしいだけです」
気恥ずかしさのあまり、思わず本音が出るほどだった。
リュカはにっこり笑い、それを肯定の返事に変えた。

【リュカ(DQ5主人公) 所持品:不明
 第一行動方針:家族を探す 第二行動方針:仲間とヘンリーを捜す】
【ケット・シー 所持品:不明
 第一行動方針:リュカに従う 第二行動方針:生き延びる方向で臨機応変】
【現在位置:岬の洞窟】

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最終更新:2008年02月16日 15:56
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