52話

第52話:最強同士の同盟


砂浜で激しい旋風が巻き起こっていた。
力と力のぶつかり合い、巨大な竜巻が塔のようにそびえたつ。
アーロンのくり出す風の奥義にセフィロスが応え、トルネドの魔法を覇気とともに放った結果である。

アーロンはアリアハン南の海岸に出現したが、運の悪いことにそれはセフィロス出現場所と同位置だったのだ。
初め、両者は向かいあったまま動かなかった。
お互いの出方を探るため、というより戦う意思表示を先にする方を譲りあったとでもいった方が正しい。
完全にどちらもやる気だった。
理由は両者で異なる。
こいつは間違いなくゲームに乗る、アーロンの理由はセフィロスの瞳の色を見てそう判断したため。
逃げられるとは思えなかったのだ。
一方のセフィロスは最初からゲームに乗っていたため。
単純明快、生き残るために参加者を倒す、それだけだ。

数多の砂粒を吸い上げた風の塔が形を崩して、辺りに砂の雨を降らしたとき、セフィロスは勝機が見えた
と判断した。
すなわち、この視界が奪われた状況で、自分は相手の位置が完全にわかっていると。
敵の殺気を読んだのだ。
目を閉じ精神を高めたセフィロスの頭の中には、二十歩ほど先に赤い靄のような塊が映っていた。
赤い靄こそ敵の放つ殺気をイメージしたもので、それがアーロンである。
姿がはっきり映っているわけではない。
ただ自分がわかりやすい形であればいいのだ、その位置に敵が居ることが把握できればいいのだから。

セフィロスは両手を胸の高さまで持っていく。その手には村正が握られている。
ばっ、と砂地を蹴って、疾走した。目を閉じたままで。
砂粒が全身を叩いたがセフィロスの進路を妨げる障害にはならない。
敵を目前としたところで、跳躍し、勢いをつけて斜めから刀を振り下ろした。
そこには姿勢を低く待ち構えていたアーロンがいた。

金属と金属のぶつかる激しい衝突音。
アーロンはセフィロスの刀を剣で受け止めた。
体重をかけたセフィロスの斬撃を受け流して反撃に出るアーロン。
セフィロスは体勢を崩し、膝をついていた。
「殺気を読めば不意討ちなど!」
なるほど、とセフィロスは思った。
この男も同じことをやっていたか。さて、おもしろくなりそうだ。
セフィロスは歓喜に震え、少し本気を出す気になった。
アーロンが剣を振り下ろす一瞬の間の思考だ。

次の一瞬、何かが深々とめり込む異様な音がした。
「どうした?」
セフィロスは思わず声をかけた。
剣を握ったままのアーロンが彫像のようになって動かない。
数秒間をおいて、ゆっくりとアーロンが崩れ落ちる。
セフィロスは倒れてくる体からさっと身をかわす。
砂浜に巨体が横たわった。

アーロンの背には針が突き刺さっていた。
針には毒が塗られており、それがアーロンに死をもたらした。
セフィロスが視線を移すと風のおさまった砂浜に何とも面妖な衣装をした男が立っていた。
悪趣味といってもいい。
この男がやったのか……セフィロスは不機嫌になった。
「どういうつもりだ。まさか私を助けたなどと言うつもりか」
クジャは心底おもしろそうに笑った。
「まさか。君はどう見てもその男より強いよ。いや、それどころじゃない、僕と同じくらいの力を持っている。
 どう転んでも負けるなんて思えなかったね」
「なら何故余計な手出しをした」
セフィロスの問にクジャは髪をかき上げて答える。
「挨拶さ。君と行動を共にするものとして。これから二人で次々と血祭りをあげようじゃないか」

「共にだと……」
セフィロスは立ち上がってクジャを見つめた。
この男……強い。体じゅうから尋常でない力を発している。
セフィロスは自分がこの男と戦いたがっていることに気づいた。
全力を出すにふさわしい相手を見つけた。その喜びがこみあがってくる。

クジャは両腕をひろげて空を見上げた。
「君は本当に強いね……。たぶん、普通の人間じゃないんだろうね。生まれ持った才覚かな、凡人が
 どんなにがんばっても手に入れることができない……
 僕の隣を並んで歩いていても不自然じゃない者、それは君、初めてだよ」
クジャは自分の言葉に酔っていた。
彼の己の肉体を誇示するような服装も、その性格から来るものだろう。
セフィロスはクジャの性格は拒絶したかった。まるで道化師、到底好きにはなれない。
だが、その内在する力には間違いなく惹かれるものがある。

セフィロスはクジャの申し出に応じる気になった。
「貴様は正直理解し難いところが多い、が、いいだろう。手を組んでやる。
 ただし条件付きだ。最後、私と貴様の二人だけになったところで、本気で闘い合いたい。
 誰にも邪魔をされずに、どちらかが死ぬまでな」
クジャは笑って、いいよとうなずいた。
「まあ、わざわざ条件づけしなくても結局そうなるんだけどね」

【セフィロス 所持品:村正、ふういんのマテリア
 行動方針:参加者を倒して最後にクジャと決闘
【クジャ 所持品:ブラスターガン、毒針弾、神経弾、
 行動方針:最後まで生き残る】
【現在位置:アリアハン南の海岸】

【アーロン 死亡】
【残り 123名】

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最終更新:2008年02月16日 22:14
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