364話

第364話:銀の別れ


ジタンと別れて、リュカたちはは西へ西へと歩み続けていた。
目の前に森が広がろうと、その速度は落ちることはない。
付き従うリノアに歩調をあわせることさえ忘れて。
少しでも、息子を殺した仇敵から距離を離したかった。
自分が助けた、あの男から。

あまりに感情が高ぶっていて、リュカは地図を見ることさえ疎かにしていた。
だからぱっと視界が開けたとき、森を抜けたということに気づくのに、
森の中で広がった瞳孔が適当な大きさに縮むまで、待たなくてはならなかった。

草原には、今は誰もいなかった。

銀髪の剣士も、神殿騎士も。

ただそこにあったのは…。


銀色に輝く、モノ。


それが何なのか、リュカは知っている。
あるいは知っているような気がする。
自分が知っているモノと、今そこにあるモノは、同じである可能性がある。
けれどその可能性を、出来れば否定してほしい。

リュカは恐る恐る、ソレに近づいた。

銀色に輝く、液体のような、固体のようなモノ。
優しく触れれば柔らかに、激しく叩けば硬く固まる。
命の灯火を失っていても、その性質は変わらない。

そう、命を失っている。
深く矢が刺さったままに。

「うぅ…、ぁあぁ……」

嗚咽。
彼の名を呼ぶことも出来ずその場にうずくまる。
悲しみと憤り。
助けられなかった。

また。

また。

また。

叫んでしまえばどれほど楽か。
感情に身を委ねればどれほど楽か。
だがそんなことは出来ない。
身に危険を呼ぶわけにはいかない。
まだ、大切な人々は、確かに生きているはずだから。


ソレは照らされる太陽の熱のためか、あるいは大地に茂る草々の生命力に吸われているためか、少しずつ体積を減らしている。
もともとの小さな身体は、日没までには跡形もなく消え去っているかもしれない。

リュカはそこに土を盛る。
ソレがもし消えてしまっても、自分になら、彼がどこに眠っているのかが分かるように。


これからどうしよう。
もしここでソレを見つけることがなかったら、そのままこの草原を、やはり西へ西へと歩んでいたに違いない。
リュカはようやく地図を見た。
そしてまた、ようやくリノアと目をあわせ、言葉を掛けた。
東には、つまり自分が歩んできた道の方向に村がある。
北西に森を進めば城がある。
このまま西へ行き、山脈を回って東に行けば、大きな山と村がある。

どこでもいい。
どこに行けば会えるのかだけを考えて、行く先はリノアに決めてもらった。
リュカたちは北西に進路を取る。

はぐりんに、一度だけ振り返り、別れを告げて。

【リュカ 所持品:竹槍 お鍋(蓋付き) ポケットティッシュ×4 デスペナルティ スナイパーCRの残骸
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【リノア 所持品:賢者の杖 ロトの盾 G.F.パンデモニウム(召喚不能)
 基本行動方針:スコールを探す+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【第一行動方針(共通):北西の城(サスーン城)に向かう】

【現在地:西の森西の草原→サスーン城へ】

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最終更新:2008年02月16日 22:29
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