FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 469話


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第469話:鋭きナイフは風を裂き


木々の間を縫うように進む鎧の戦士の姿がある。
幸運にも右手には侵入者を阻む、そしてその向こうの建造物を示す壁が聳え立つ。
やがて走り抜けてきた森から開放されて視角の半分を覆う壁のはるか上に騎士は星空を見る。


「大丈夫か? 少し休もうか」
「…まだ大丈夫だよ」
隣を歩く少年の顔にはまだ余裕とでも言いたげな笑みが貼りついてはいるが、さすがに色濃い疲労がわかる。
フィンを気遣って既に二人は歩いてサスーンへ向かっており、その分ジタンは警戒と探査を強めていた。
黙ってはいるものの、先ほども誰かが接近した気配があった。何者かの移動の痕跡もいくつか見つけている。
森という障壁があるとしてもアリアハンがそうだったように城は目立つ場所、誰がいるかは分からない。
そこがどうなっているのかも。


腕を振り、腿をあげ、一切を省みらず一陣の疾風がサスーン城へと向かう。
その風の名はゼル=ディン。
仲間のために彼は闇を切り裂いて走る、走る。
左右に黒く無機質な城壁が見える。中央に星明りの天へ伸びる二つの塔を持つ建物が見える。
目的地へと辿り着いた、その当面の安堵を手に持つレーダーが吹き飛ばす。
自分と城門との間に点が一つ。


物事には優先順位というものがある。
命ある限り主人のために戦うことを決したピエールにとって謁見の前にやらねばならぬことがある。
森の中盗み聞いた会話。盗み見た表情。
我が主君以外のすべては皆討ち果たさねばならぬ。彼が敵意を持つのならばなおのこと。
わずかな差で奴らよりも先んじて城に辿り着くことができた幸運を利せねばならない。
1対2。ならば策で上を行かねばならない。
手持ちのアイテム、周囲の地形、自身の技能…すべて武器としよう。
短時間で手際よく戦闘準備を整えていく。
丁重にもてなすべき客をピエールは出来得る限りの準備と共に正面で出迎えた。


「追いついたぜ、このたまねぎ野郎」
「……貴様は……」

ゼルの走力(+ヘイスト)が異常というだけなのだが、だからこそ追いつかれたことが驚きなのであろう。
一言呟いてそれっきり、うねった刃を持つ変な剣とオートボウガンを構える相手をゼルはそう解釈した。
そして、この相手にどのような受け答えを為すにしろ言葉は要らないということも。
気合を乗せた叫び声と共に疾風は暴風となってスライムナイトに襲い掛かる。

向けられたオートボウガンからの射撃を予期してそれを回避すべく左右へとステップを繰り返しつつ接近。
弾力あるスライム部分がたわみ、向かい来る速度に応対しようとするものの
射撃武器のように点で捉える攻撃ではゼルを捕捉出来ないのか、それが矢を吐き出すことは無い。
スピードを乗せた閃光のごときハイキックが騎士の頭部を捉える刹那、するりとその像が遠くなる。
(あの体勢からバックステップ!? って人じゃねーんだよなあ! クソッ!)
目線の先、離れていく魔物と目が合う。その線上に下からスッと機械式の弓が現れる。

「させるかぁっ!!」

照準を外すべく鋭く身を屈め、脚力に物を言わせて強引に急加速。
わずかに反応が遅れた隙をゼルは見逃さない。低姿勢から一気に跳ね上がっての回転蹴り!
身体にこそ当たらなかったものの硬質の音が蹴り飛ばしたオートボウガンと一緒に地面を転がっていく。
何とか抵抗しようとしたのだろう、怪しく光るねじれた剣はゼルの残像を払うだけ。
回避運動、そのまま回転を利して強烈なローキックが騎士を弾き飛ばす。

障害を乗り越えた先の拳でのコンタクトはしかし二人の間に起こる小爆発で引き裂かれる。
(魔法も使うって言ってたな……っても、こいつは目くらまし。そうだろ?)
弾けた光と音の向こうで相手が何を考えるか?
森での戦闘、ここでの戦闘から接近戦ではまあ…大体互角。
向こうもそう見るだろう。ならば勝負を決するのはその他の部分。つまりは――

「ボウガンを拾いに行く! ってわけだ、甘いぜ!」

二つの影が爆裂魔法でかき乱された大気を掻いて一つの物体へと殺到する。
動き出しは両者ほぼ同時、ならばわずかに距離が近いゼルの方が早い。
脅威のダッシュからその慣性を乗せてブレーキ代わりに目標の機械の上へ足という鎚を振り下ろす。
破壊の感触、後方の消えた気配、違和感。
考えるより、振り向くよりも先に爆音と威力の乱流がゼルを包み込む。


既に矢を撃ち出さないオートボウガンでの最大限のブラフ。
固執しているように見せてインスタントの囮に仕上げる。
もっとも現実に向けられている銃口に対してそれに対応しないことなどそうそう可能なことではない。。
戦闘と言うのは単純化すればポイントの取り合いだ。ファーストヒットは許してもポイント先取はこちら。
ピエールは何の動きすらも見せないままにその敵をじっと探す。
その感情無き瞳にイオラの残滓から現れる真紅の帽子と煌くベストが映る。
戦闘開始時に見えていた嫌な感じの像のブレは既にそこにはない。


「追いつけねえからって瞬時に捨て駒か…たいした判断力だよ、お前は。
 でも…よかったのか? 後は殴り合いだぜ?」

胸、肩、腕と無事を確認するかのように触れながら余韻の間からゼルが姿を見せる。
イオラの直撃。露出していた肌のある部分は焦げ、別の部分には血を流す傷が。
それでも、手足は、身体は十分に動いてくれる。それでも、まだ烈風を止めるには程遠い。
最大の脅威となる飛び道具はもう無い。
規模の違う二種類の爆発を引き起こす攻撃魔法は今、そして以前にも『見た』。
厄介なのは分かるがゼルにはその欠点も既に見えていた。
モーションもある程度見切れているし、距離が離れると精密性が落ちることも見抜いた。遅い、そして甘い。
接近戦のスペシャリストたるゼルに対してはこの速さで間合いを制御することは出来ない。
相手にはもう剣技以外にゼルを制御できる小技を持たないのだ。

「いくぜ、たまねぎ野郎ッ! デュエルスタートだ!」

焦げ臭さを巻き込んだ風はピエールへ向かい直進、急角度でフェイントをかけて右へ飛ぶ。
転回点で例の小爆裂、読みどおり。
ヒュウと一息、一歩遅れたスライムナイトの側面より拳で強打。
さらに遅れて飛んでくる剣の軌跡を上半身だけのスウェイでかわしてのける。
間合いから逃れようとしたスライムナイトを逃すまいと地を蹴り、再接近。

この時点でゼルの戦略はたった一つ。
体力の続く限り超接近戦を相手に強い続け、必殺の連撃までつなぐこと。
この距離を保つ限り相手の爆発魔法は相打ちだ。そして根性勝負なら自分が上を行ってやる。そして、ぶっ倒す!

剣と拳、剣は細かい傷を増やし続け、拳は体力を容赦なく削り続ける。
では。
では、ピエールにはどのような戦略が残っているのか?
影のように執拗に執拗に追ってくる、引き剥がせない相手。
魔封じの杖? ひきよせの杖? ようじゅつしの杖?
否、わずかな隙、タイムロス、それが致命打。交戦する男のジャブはそのどれよりも早い。
では魔法? お得意のイオラ?
否。相打ち上等のこの距離、そしてここで相手を倒すという覚悟において両者の差はほとんどない。
むしろ皮肉にもリュカの存在のためにピエールの方がわずかに劣っているほどだ。
しかもイオラの発動にも隙がある。爆裂を突き貫いてストレートが届くに十分ではないか。
では、ピエールは命を削る消耗戦に乗る以外に手は無いのか?

唐突ではなく定められたように決着の瞬間が迫っていた。
圧縮された時間、濃密な交錯。
ついにピエールは音をあげたのか、戦闘のど真ん中へ向けてイオを炸裂させる。
閃光、衝撃、熱量が両者へ降り注ぐ。けれど肌でつかんでいる戦闘の気配そのものをゼルは離さない。
無論、ピエールも承知の上。このイオは杖を取り出すわずかな隙を作り出すための苦心の一手。
よく狙え。外すな…!
そして、振り下ろされた一本の杖から光弾がほとばしった。

「悪いな、そいつも聞いてんだ! その隙、もらったあっ!」

ピエールの動きから読み切ったその手、光弾は当たることなくゼルの肩の上を抜けてゆく。
向こうには大きな隙、こちらには決め技のチャンス。
電光石火の左右連打――ラッシュパンチが遂に憎むべきスライムナイトを捕らえる。
ぐらつく身体へ向けて鮮烈なるマッハ・ロー・キック。
弱点を過たない。本体が下のスライムであることはテリーから既に伝え聞いている。
苦悶のうめきをあげる魔物へ向けてさらなる猛攻、振り上げた足がかかとからスライムを抉る。
死まで導く力と技の狂風。止める術などピエールのどこに残されている?
些細な抵抗かゼルの腹へと伸びる騎士の腕、すがるように足へ絡みつくスライム部分、
それを無視してゼルは情け無用の次なる一撃へ――………?



感覚が異変を教えている。
腹部に発生した熱い痛覚はドルフィンブロウへと移行しようとしていた動きに合わせて増幅しながら広がっていく。
抜ける力を奮い立たせて大地を蹴り目標を捉えぬままイルカは水面より跳ね上がる、だが勢いはない。
(――ナイフ!? どこから!?)
手品のように、ワープのように、一体どのタイミングで奴は刺した?
宙から見下ろしたゼルの眼に映るのは自分の胸から生えるナイフ、そして体液を撒き散らしながらもこちらへ掌をかざす姿。
呪文が、紡がれる。

「イオラ」


引き寄せの杖。
遠くの人や物を一瞬で手元へと転移させる魔法を秘めた杖。
外れた光弾の先にこそピエールが狙ったものがあった。仕掛けておいた奇襲、真の飛び道具。
杖で繋いだ線を貫きやってくる、それは聖なるナイフ。


体験二度目の爆裂がゼルを包み、傷の増えた身体を容赦なく焦がしていく。
真紅の帽子が闇へと舞い上がる。
勢いに吹き飛び倒れるその身体を殺人者は見逃すはずもない。
動きの鈍ったゼルが周囲の判断を取り戻すよりも早くスネークソードは彼の喉笛を噛みちぎっていった。

(ダメ…いや、まだ……せめて届け、轟音…!!!)

最後の力が右手拳へ、そして全力で大地へと叩きつけられる。
最期の、バーニングレイヴ。轟音がサスーンに存在する全てを叩き、反響する。



「~~~っっ!! なんて音だよっ!」
「何? ジタン、何喋ってるの? 爆発?」
「何だ、フィン? あー耳、おかしくなっちまったか。とにかく…何があったんだ」

勝利を実感する背後で完全に仕留めたはずの相手が生み出した常識はずれの轟音。
その強震の真っ只中からピエールは飛び込んできた別の空気の振動で我に返る。
誰かがやってきた、ならばそれはおそらく森で垣間見た二人。
今はまずい。策は使い果たした、すぐに閃く事もない。勝算が見当たらない。
落ちているレッドキャップを素早く拾い上げ、スライムナイトは城門を押し開けて中へ飛び込んでいく。

取り憑いたかのような残響が引いた後にはかえって偽りなき静けさが後に残るだけ。
声ならざる最後のメッセージはどこまで届いたか?

風は、止まった。

【ピエール(HP1/6、MP1/3)(感情封印)
 所持品:スネークソード、毛布、魔封じの杖、死者の指輪、王者のマント、
 ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカに王者のマントを渡す
 第二行動方針:回復と戦闘準備
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】
【現在位置:サスーン城内】

【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬、厚手の鎧、般若の面、釘バット(FF7)、グラディウス
 第一行動方針:音の発生源を確認する
 第ニ行動方針:サスーンに向かい、真相を確かめる/フィンの風邪を治す
 第三行動方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す
 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪)
 所持品:陸奥守、魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:サスーンに向かいとにかく休憩する
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:サスーン城前】
※音の規模に関しては後続の方の裁量にお任せします。

【ゼル 死亡】
【残り 57名】