FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 356話


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第356話:二人より一人、一人より二人


12時頃だったと思う。
といっても、別に時計を見たわけでも太陽の位置を確かめたわけでもないので
もしかしたらまだ11時だったのかもしれないし、あるいは13時をとっくに過ぎていたのかもしれない。
ともかく――アーヴァインが目覚めたのは、それぐらいの時間帯になってからだ。
なおも突き放すような態度を取る彼に、ティーダは例のメモを見せ、今までの事を全て話した。
ミレーユのこと、ターニアとエアリスのこと、ティファのこと、茶色の髪の少女のこと。
ターニアの名が出た時、アーヴァインの顔色が少しだけ変わったのだが――
ティーダは気付かず、ただひたすらに自分が経験したことを話し続けた。
そして。
「昔のあんたがどんな奴で、どんなことをしたのか、俺は知らないッスよ……
 でも、今のあんたは悪い奴には見えないしさ……だから、一緒に居てほしいんだ。
 あの悪魔みたいな奴から、助けてほしいんだ」
そこまで言って、ティーダは顔を伏せた。

数分ばかりの沈黙の後、小さなため息がこぼれた。
「……わかったよ」
承諾の返事に、ティーダは表情を輝かせながら面を上げる。
その鼻先に、いきなり指が突きつけられた。
「ただし、条件がある」
底の見えない冷たい瞳をティーダに向けて、アーヴァインは静かな声で切り出した。

「何があってもバトルには介入するな。誰かが傷ついていても絶対に助けるな。
 例え知り合いや仲間や恋人が襲われていて、死にそうになっていてもだ。
 それが出来ない奴とは一緒にいる気なんてない。僕の身まで危うくなる」

あまりにも冷酷な条件に、ティーダは思わず息を呑む。
「どういう……ことッスか?」
「バトルに介入すればそれだけ敵が増えるだろ。
 それに、助けようとした相手が殺し合いに乗っていないなんて言い切れるのか?」
ソロだって変に仏心なんか出すから、僕に一杯食わされかけたんだぜ――
さらりと言いのける彼に、ティーダは改めて思い知らされた。
彼が――単に記憶を無くしたというだけの――人殺しなのだということを。

「僕らは神様じゃないんだぜ。甘い事言ってたって生き延びられやしないんだよ。
 命を惜しいと思うなら他人なんか見捨てろ。自分の事だけを考えろ。誰も助けるな。
 その程度のことすら出来ないってならお別れだね。アマちゃんに付き合って死ぬのはゴメンだからな」
どこまでも冷酷にアーヴァインは言い放つ。
ティーダは唇を噛みしめ、手を固く握り締めた。
一人になるのは怖い。死ぬのも、確かに怖い。しかし、しかし、しかし……!

「出来ないに決まってるだろ、そんなの!」

真っ向からアーヴァインを見据え、ティーダは叫ぶ。
「俺、決めたんだ。ユウナやリュックと一緒にスピラに帰るって!
 ターニアを、アニキと一緒に元の世界に返してやるんだって!」
だからこそ――エアリスの首輪を持ってきたのだ。
「一人でいるのは怖いッスよ。今でもそれは変わらない。
 だけど……みんなを見捨てて生き延びるなんて絶対嫌だ!
 そんな真似するぐらいなら、俺は一人でも戦ってやる!」
凍てつく氷のような群青の瞳と。真夏の海を思わせるコバルトブルーの瞳が、一瞬だけ交錯し――
「それがあんたの答えか」
先に目を逸らしたアーヴァインが、無感情に呟いた。
「ああ」
ティーダは短く、しかしはっきりと答える。
そして自分のザックを拾い上げると、勢い良く扉を開けて出て行った。


残されたアーヴァインは、やけに緩慢な動作でベッドの上に座り直した。
指をわずかに動かしたり、足を上下に動かしてはため息をつく。
「……これで良かったんだよな」
天井を見上げて、ぽつりと呟く。
その目には、先ほどまでの冷酷さなど微塵も残っていなかった。


空は青く、太陽は高い。
昼間であるにもかかわらず――昼間だからなのかもしれないが、相変わらず町には人気がなかった。
忍者のような格好の二人組の姿も見えない。建物の中に入ったのか、目の届かない場所にいるだけか……
ともかく、不気味なまでに静かな町を、ティーダは一人で歩く。

また、一人。
ティーダにしてみればその事実は心細くもあったけれど、同時にこれで良かったのだと思った。
「全く……あんな奴、助けなきゃ良かったっつーの!」
苛立ちをぶつけるかのように、空に向かって言い放つ。
自分の事しか考えるな、他人は見捨てろだなどと、平気で言える人間を……
車に轢かれかけながら、森や平野を駈けずり回って、重たい身体を担いで家の中に運び込んだりして。
バカみたいだ。一回や二回助けられたといって、何を期待していたのか。

(――?)
……ちょっと待て。少し、不自然だ。
アマちゃんに付き合って死ぬのはゴメンだと言うなら、何故自分を助けた?
何故、自分の命を取引に使うような真似をした?

(……まさか、アイツ……俺のこと焚き付けるために、わざと?)
有り得る。十分有り得る。というより、そう考えた方が自然だ。
ここに連れてくる前にも散々訴えていた。自分のような人間を連れていても、ティーダ自身の身が危うくなるだけだと。
――だからこそ、アーヴァインはあえて悪役を演じたのではないのか。
ティーダの身を案じて、一人で行動する強さをもう一度呼び起こさせるために……

ティーダは足を止め、宿屋を振り返った。
壁の向こうにいるはずのアーヴァインを睨みつける。
宿屋に戻ろうとは思わかった。
ただ、小さな声で「バカヤロウ」――とだけ呟いて、踵を返した。


――そう。本当に、戻る気はなかったのだ。
――視界の端に、その人影が映るまでは。


扉を開け、階段を慎重に下りていく。
「辛いなぁ……やっぱ」
鉛のように重たい身体に、アーヴァインは口の端を歪めた。
毒のせいか、解毒剤の副作用か。身体が鉛のように重たい。
関節は錆びた蝶番のように軋み、鈍い痺れがあらゆる筋肉に纏わりついている。
それでも、足はそれなりに動くからいい。
歩けるのだから、多少であれば走ることもできるだろう。
問題なのは手の方だ。ドアノブは確かに掴めたし回せたが、それ以上は指が動きそうにない。
グーチョキパーのうちパーしか作れないし、これでは剣を持つのも難しいし、ましてやトリガーなど引けるわけがない。
もっとも、銃も剣も持っていない上、手に入れるアテもないから、その辺は心配するだけ無駄なのだが。

「あーあ。一緒に行った方がラクできたかな~」
呟いてはみたが、即座に頭の中で否定する。『これで良かったのだ』と。
それはもちろんこの身体のせいもあるし、ティーダの身を心配しているというのもあるが――
(あんなメモがあるんじゃねぇ……)
結局は、その一言に尽きる。
ばら撒かれているであろう例のメモを読んで金髪の人物を疑う人間の数と、『殺人者アーヴァイン』を探している人間の数。
どちらが多いかと聞かれれば――メモの枚数にもよるが――やはり前者だろう。
それに髪の色だけではない。日焼けした浅黒い肌といい、服装といい、ティーダの風貌は目立ちすぎる。

自分にしてみれば、ティーダは人目を集めてしまう、悪い意味での目印。
ティーダにしてみれば、自分は要らぬ嫌疑をかけるだけのお荷物。
一緒にいてメリットがないわけでもないが、現状ではデメリットの方が大きいだろう。
それに、レーベでは罪悪感とその場の勢いに押されて行動してしまったが――
時間が経ち、感情が落ち着いてくるにつれて、別の思考が浮かび上がってきた。

殺し合いが続く限り、結局最後はみんな死んでしまうのだ。
ならば、敵討ちに殺されるのも、殺人者と相討ちになるのも、誰かを守って死ぬ事すらも無意味ではないのか。
ソロ達に救われた命。一発きりの銃弾。
それを使って自分がすべきなのは、もっと意味のある……それでいて殺した人への償いになる事……

そんなことを考えながら最後の段に足を降ろそうとしたその時――突然、大きな音が響いた。

「――っ!!」
驚いた拍子に足がもつれ、身体が宙に投げ出される。
痺れた手では受身を取る事も叶わない。全身を強かに床へ打ちつけてしまう。
だが、アーヴァインの受難はそれだけでは済まなかった。
「何やってるんスかアーヴィン!! 早く立つッスよ! つーか走れ!!」
「へ?」
聞き覚えのある声とともに、いきなり襟首と片腕を掴まれる。
「お、ちょ、あんたどうして、てか、ま、待ってよ、僕、身体動かないんだってば~!」
必死の抗議も呆気なく無視され、立ち上がることもできないまま、階段の上へと引き摺られる。
「痛、待てって、痛いってマジで! あいた、止め、痛たたた、止めて! 痛いって!」
段差の部分に胴体や手足をこすられ、頭を打ち……そうやって二階の部屋に連れてこられたところで、ようやく解放された。
「何するんだよ、あんた! 出て行ったんじゃ 「しっ!」
猛然と噛み付くアーヴァインの口を抑え、ティーダはそっと廊下に首を出す。
耳をそばだてながらきょろきょろと周囲を確認し、やがて、ほっと息を吐いた。
「……どうしたんだ、一体?」
只ならぬ様子にアーヴァインが声をかける。ティーダは答えなかったが、あらぬ場所から返ってきた。
二つの小さな足音と、聞き覚えのある――そして最も聞きたくなかった幼い声が、階下の方で響いてきたのだ。

『……に…・・なのか?』
『間違い…・・いよ……ちゃーんと見たんだもん。アイツと一緒……金髪が……ってくの』
『見間違いじゃ……だろうな』
『あのね、イクサス……いいかげん信用してよね。あたしのこと』

「……」「……」
二人は顔を見合わせ、素早く部屋の奥に移動する。
そしてお互いの肩を掴み、囁くように怒鳴りあった。
(ナニやってるんだよアンタはっ! 一番厄介な奴にいきなり見つかってどーするんだよ!)
(仕方ないじゃないッスか! あいつらが向こうから歩いてきたんだっつーの!)
二人が言い争っている間にも、足音はどんどん近づいて来る。
この部屋は宿屋の一番奥になっているが、声の主――イクサスとバーバラが辿り付くのは時間の問題だろう。
(マズイッスよ、マジで。どうする、戦って追っ払うッスか?)
(子供とはいえ一人で敵う相手じゃないだろ? ここから逃げる、あんたにも手伝ってもらうからな)


「どうやら、オレら以外に誰かいる事だけは間違いないみたいだな」
二階から聞こえた物音に、イクサスはにやりと笑う。
「だから絶対ここにアイツがいるんだってば」
バーバラは少し拗ねたように口を尖らせた。
けれどそれは束の間のことで、急に真顔に戻り、イクサスに問い掛ける。
「ねぇ、イクサス……本当に、アイツと一緒にいた奴まで殺すつもりな 「当然だろ」
言い終わる前に帰ってきた答えに、バーバラは表情を曇らせた。
それを見たイクサスは、冷たい瞳でバーバラを見上げる。
「別にお前に手伝えとは言ってねえよ。
 ただ、オレの邪魔はするな。すれば殺す。お前だろうと、誰だろうとな。
 それが嫌ならさっさと消えろ。オレは一人でもやってやるからな」
「………でも」
何かを言おうと、バーバラが口を開きかけた時。
二階から、先ほどよりも遥かに激しい音が響き渡った。

アーヴァインとティーダは、ありったけの魔法や技を必死で壁にぶつけていた。
見た目は頑丈そうな石造りとはいえ、壁自体の厚みはそれほどではないし、そもそも硬度の高い石材ではない。
魔法による急激な温度変化で脆くし、その後で一箇所に集中して衝撃を与える。
そして――
「これで……どうだっ!」
わずかにヒビの入った壁に、ティーダはふきとばしの杖を叩きつけ、その力を解放させた。

――そして――

「……っのヤロウ!」
大急ぎで階段を駆け上ったイクサス達が見たのは、埃の舞う広い部屋と、崩された壁から覗く広い青空だった。
イクサスは苛立たしげに壁の破片を蹴り飛ばし、開いた穴に向かって走る。
「待って、イクサス! 危ないよ!」
バーバラの制止も間に合わず、イクサスは渇いた地面へと飛び降りていた。
たかだか一階分の高さだ。着地さえ失敗しなければ怪我もないだろう。
実際、イクサスは平気な様子で走って行ってしまっている。
バーバラは小さくため息をつき、急いで彼の後を追った。



「上手くいって良かったね~……」
イクサス達が出て行った後。宿屋の二階の部屋で、アーヴァインが呟いた。
外に出てから戻ってきたわけではない。種を明かせば事は単純。壁を壊した後、ベッドの下にずっと隠れていただけである。
アーヴァインと同じようにベッドの下から這いずり出してきたティーダは、外に視線を向けながら言った。
「なぁ、アーヴィン……さっきオレに言った条件ってヤツ、あれ全部ウソだろ」
「あ、バレた?」
「そこまでマヌケじゃねっつーの。言ってる事とやってる事、全然違うしさ」
「へー。その割には、最初は思いっきり騙されてたみたいだけど」
「……言うなっつーの」
口を尖らせるティーダに、アーヴァインは吹きだす。
「笑うなっつーの!」と怒った後で、ティーダはアーヴァインの方に向き直った。
「あのさ、アーヴィン……やっぱ、俺たち一緒に居た方がよくないッスか?
 そんな身体じゃ大変だろうし、俺もアーヴィンがいた方が心強いしさ」
アーヴァインは答えなかった。黙ったまま、目を閉じていた。
けれど――やがて、ゆっくりと口を開いた。
「そうだな……タンスのある家に寄ってくれるならいいよ」
「はぁ?」
謎の返事に呆気に取られるティーダ。
そんな彼に、アーヴァインは意地の悪い微笑を浮かべてみせる。

「あんたの服装、絶対目立つから。
 黄色に黒の標識カラーで、ズボンの裾の長さも違うって、もう格好の標的だよねー。
 赤いヘルメット被って森の中歩くのと同じくらい目立つって」
「コートに変な靴だって十分目立ってるっつーの!
 自分の事棚に上げるなよな!」

二人は一瞬睨み合い――同時に吹き出した。
もし、この場に誰かがいたら……きっと、二人を旧来の友人同士だと思ったことだろう。

【イクサス(人間不信)
 所持品:加速装置、ドラゴンオーブ、シルバートレイ、ねこの手ラケット、拡声器、
 紫の小ビン(飛竜草の液体)、カプセルボール(ラリホー草粉)×2、カプセルボール(飛竜草粉)×3、各種解毒剤
 第一行動方針:アーヴァインを探して殺す/ギルダー・スコール・マッシュを殺す
 第二行動方針:アーヴァインの仲間であるソロ達を殺す/生き残る】
【バーバラ 所持品:ひそひ草、様々な種類の草たくさん(説明書付き・残り1/4) エアナイフ
 第一行動方針:イクサスに着いていく 第二行動方針:自分をハメたアーヴァインに復讐する
 最終行動方針:エドガー達と合流/ゲーム脱出】
【現在地:カズスの村・ミスリル鉱山入り口近辺を移動中】

【ティーダ 所持品:鋼の剣 青銅の盾 理性の種 ふきとばしの杖〔3〕 首輪×1  ケフカのメモ
 第一行動方針:着替え探し(?)
 第二行動方針:ユウナ・リュック・ターニア・ロック・ソロを探す
 最終行動方針:ゲームからの脱出】
【アーヴァイン(身体能力低下、HP2/3程度、一部記憶喪失(*ロワOP~1日目深夜の行動+セルフィに関する記憶全て)
 所持品:竜騎士の靴 G.F.ディアボロス(召喚不能)
 第一行動方針:着替え探し(?) 第二行動方針:罪を償うために行動する/ゲーム脱出方法を探す】
【現在位置:カズスの村・宿屋2階→移動】